第六回『銀幕日記』

『完全なる飼育』


1999年日本映画
監督;和田勉
主演;竹中直人、小島聖

この作品、30年程前に実際起こった誘拐事件をもとに作られている。妻に逃げられた中年男が、真実の愛を求めて一人の女子高生を誘拐する。彼女を監禁し、共同生活をするにつれて、その主従関係が逆転していくというストーリーは、小説より奇なり。二人の関係性は束縛から信頼、そして愛情へと変わっていく。

悲しいかな、和田勉の演出がひどく古くさい。昔の今村昌平タッチのような大袈裟な効果音が、話の節目節目に入る。煩わしい。また劇中流れるクラシックは、作品をフィクション性の高いものにしていて興醒め。時間の経過を日めくりカレンダーで表現するなんて、いまどき感覚が古いにもほどがある。ギャグかとも思うが、観客は誰も笑っていない。

文字通り素っ裸で頑張っているのが、高校生役の小島聖。裸イコール体当たりの演技でもないだろうが、このドラマにはその必然性があった。一般的にどれほどの評価が得られるのかは疑問だが、まず満足のレベル。竹中直人はいつもの調子。ほとんどぶれる事なく、彼のペースで主人公を演じている。上手いと思うが、予定調和の範疇で、吃驚させてはくれない。舞台となるアパートの住人達も、個性的なキャラクターを集めている割りには、いまひとつ。特におかま役の泉谷しげるが不真面目でいけない。たいした役どころでもないが、全く演技に身が入っておらず、居るだけ邪魔に思えた。

物語中盤、アパートの玄関で絡み合うシーンあたりからこの映画、俄然面白くなってくる。周りが見えなくなった二人の愛欲生活が、延々と続く。夜昼となく、覚えたての性交に耽る姿は壮絶ですらある。しかしラスト近くの長い絡みで、彼女が少し遠慮がちなのはいただけなかった。キスしながら舌を入れ返す位でないと、この異常な状況のテンションは保てない。気を抜いた途端に物語のウソはばれ、世界すべてがぶち壊しになってしまう。

いつ女に逃げられるか、いつ他人に見つかるか、と思うからこそ観客も一緒にドキドキできる。だがこの男、最初からどこか開き直っているおかげで、折角の話がサスペンスでなくなり、面白さも半減してしまった。発覚すれば死刑になるくらいの覚悟でこの事件を起こしているくせに、行動が大雑把で杜撰すぎる。生活に慣れるにつれて大胆になっていくのは分かるが、もう少し前半に繊細な部分があっても良かったのではないか。

そして舞台のボロアパートを完全セットで組んだのは、大失敗だろう。事実とはいえ、男の夢のような話だからこそ、リアリティが必要だった。セットにしてしまったことで、物語の現実感は稀薄となり寓話になってしまった。題材が良くて、役者もそこそこ揃っていたのに、残念無念。歳をとって感覚が衰えるというのは、こういうことか。出来はともかく、巨乳好みの輩には、御満足の一本だろう。

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