第七回『銀幕日記』

『ベルベッド・ゴールドマイン』


1998年イギリス映画
原題;VELVET GOLDMINE
監督;トッド・ヘインズ
主演;ユアン・マクレガー、ジョナサン・リース・マイヤーズ

彼自身の曲が一曲も流れない『デビッド・ボウイ物語』。タイトルである『ベルベッド・ゴールドマイン』も、彼の初期シングルのB面から取られている。この映画、制作に彼の賛同が得られなかったらしく、逆にストーリーは(エピソードのおいしいとこ取りで)かなり自由に作られている。

構成はやや手が込んでいる。ヘラルド誌の記者がある企画で、10年前に姿を消した伝説の歌手を探すことから物語は始まる。昔彼に関わっていた人達の話を聞いていくうちに、彼とその時代が徐々に浮かび上がってくる。それぞれの証言が時系列にそっていないおかげで、映像では時間の流れが行き来する。いったい今、彼は何処にいるのか?そして、何をしているのか?

その記者を演じているのが、スピルバーグの『太陽の帝国』で主人公の子役をしていたクリスチャン・ベール。子役あがりは大成しにくい、とはよく言われることだが彼のケースも例外ではなさそうだ。狂言回し役の彼に実際のモデルがいたのか知らないが、登場人物の中でも醜男振りがひとり鼻に付いた。主人公との対比とはいえ、薄汚ない化粧をして街を歩く姿は滑稽でおぞましい。しかし皮肉なことに、青春時代の独りよがりな感じはよくでていたと思う。そうした彼も若き時代、グラムロックに憧れ、主人公に自分を投影させた一人であった。

主人公のブライアン・スレイド演ずる、ジョナサン・リース・マイヤーズ。これまでも幾つかの作品には出ていたが、主役級はこれが初めてらしい。バイセクシャルでカリスマ性のある主人公をかなり上手にやっている。しかしのし上がっていく過程には、歯がゆさなり、差し迫った状況描写が少し物足りなかったように思う。仮にも彼は一度、上り詰めた地位を放棄することになる。そこにいたるまでの厳しさが弱かったために、ラストに繋がる彼の音楽に対する執着心が素直に納得できなかった。

もう一人の主人公、カート・ワイルド役(イギー・ポップがモデルらしい)を演じるのが、今をときめくユアン・マクレガー。下半身出しまくりで、キレて歌って踊ってくれる。こうした破天荒なミュージシャン役を演じるのは、さぞかし楽しかったことだろう。その一見刹那的な行動からは、彼の生き様が本人同様にビンビンと伝わってきた。

70年代初めのイギリスで、音楽シーンがモッズからパンクに移る狭間で、一瞬吹き荒れたグラムの嵐。全編を通じてこの映画は実録調で、ファンタジーにはしていない。だから要所要所のエピソードは、かなりの部分で事実を基にしているらしい。この時代の音楽が好きで詳しい輩には、楽しめるネタが存分に詰った作品だろう。もちろん、門外漢の俺でも充分にその時代の先見性と狂気性を感じることができた。その手の観客のみを対象にしたマニアックな作品ではなく、エンターテインメントになっているのには、とても好感が持てた。

もし少女マンガのように美男美女をちりばめて、官能的で耽美な映像にしていたらこの作品、どうなっていたのだろうか。観ていて突然、坂本隆一と忌野清志郎が『いけないルージュマジック』を歌っていたころを思い出してしまった。


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