第八回『銀幕日記』

『エバー・アフター』


1998年アメリカ映画
原題;EVER AFTER
監督;アンディ・テナント
主演;ドリュー・バルモア、アンジェリカ・ヒューストン

下着姿で木には登るし、服を着たまま湖で泳ぐ。何とも逞しいシンデレラ(役名ダニエル、もちろんドリュー・バルモア)。自分よりも大きな男を担いだと思えば、ジプシーに交じって夜通し酒も飲む。とても昔話のキャラクターからは想像がつかない。リアルな実録シンデレラ物語。当然、魔女も魔法も出てこない。だから彼女が待つだけの娘だったら、何のドラマも生まれなかった。とにかく一貫して、プラス思考の女性が描かれる。そこで彼女は次々と積極的な行動を起こしていく。現代女性の共感を得つつ、かつストーリーに整合性を持たせるためには、主人公をここまで強くする必要があったのだろう。

となると義母に育てられたというだけで、ダニエルが召し使いに身を落としているのは、どうにも腑に落ちない。それに実際の境遇がどうあれ、身分上では貴族ではないのか。その状況を王子に告白しそびれて、一時は気まずいことになってしまう。彼女に裏切られたと勝手に思い込んだ王子は、せっかちにも別の国の王女と婚約をする。気持ちは解るが、精神的にはあまりに幼い馬鹿王子。ところがその相手も同じような境遇(身分を越えた恋)で捨て鉢になっていたので、喜んで破談にしてしまう。彼はようやくそこで、自分が彼女の存在そのものに引かれていたことに気付く。だが、時遅し。哀れ彼女はいやらしい豪商に目をつけられ、遠くへ売られたあとだった。その破廉恥な主人を逆に痛めつけて、単身逃げ出してしまうダニエル。強烈な娘!そこにノコノコ駆け付けてきた王子と、最後にはメデタシメデタシの一件落着となる。

王子はこれから、刺激的で楽しい結婚生活を送ることだろう。しかしこんな娘をかみさんにしたら、随分と苦労もするに違いない。身分や固定観念に囚われない、好奇心旺盛な彼女は、数々の教育設備を整えるなどして、どんどん国政に関わっていくだろう。そのうち弱者の気持ちを理解できる彼女は人望を集めて、王子亡き後、国の実権を握ってしまうかも知れない。そこには暗躍を目論む側近たちの甘い罠が待ち構えていて・・・。アフター・エバー・アフターといった後日談を想像させてくれるぐらい、魅力的なシンデレラだった。なんだか、春日の局のようだ。

惜しむらくは、脇役として登場したレオナルド・ダビンチ。もう少し上手くストーリーに絡ませることは出来なかったのだろうか。モナリザや水中歩行器、飛行機モデルもいいが、肝心なところで何の役にも立っていなかった(***から彼女を救い出すなんてことは、彼じゃなくてもできるだろう)。彼独自のやり方で活躍してくれていたら喝采をおくれたのに、残念だ。飛べない彼女に飛べない翼を付けてやることしかできないのなら、凡人とさして変わらない。王子との再会シーンで、天才ダビンチが彼女を大空へ飛ばしてやることができていたら、この映画、傑作になったかも知れない。本当は自分の力で泳ぎ、歩くことが一番大切なことかも知れない。しかし破綻のないストーリーに固執せずに、最後の最後で映画としての大嘘をみせて欲しかった。

けして美人とも思わないが、今回もバルモアの魅力を再確認させられた。彼女を見ていると、力が湧いてきて、人間の可能性を信じられる気がする。ちょっと気恥ずかしいが、本当だ。

注)未見の方のために、あえて一部を伏せ字にしてあります。

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