オイゲン・ヘリゲル『日本の弓術』(岩波文庫・青)
著者はドイツ人哲学者。ふとした契機で日本に長期滞在することになるが、これを機に従来より西欧言語で解明することに限界を感じていた東洋の思想の一端を理解するために、近代日本において弓聖と呼ばれた阿波研造氏に師事し伝統的な弓術を学ぶ。東洋的な精神文化の根本を「禅」の中に見出そうとする著者が、6年間に渡る苦難の稽古の末に彼なりに見出した東洋的「価値」あるいは「自」「他」の認識を、帰国後一冊の書物に著した。西洋人であるにもかかわらず彼の洞察・理解の深度は一般的な東洋人のそれをはるかに凌駕していると言える。友人である訳者の類稀な力量を差し引いても、著者の東洋思想に対する正確な認識は脱帽モノである。西洋人と東洋人の間に横たわる認識論上の差異の一面を、弓術という行いを通じて解明した名著(と言いたい)。うすっぺらくてすぐ読めるのでおすすめ。
大森曹玄『剣と禅』、鈴木大拙『東洋的な見方』とかも最近よんだけど、深かった。書評はまたの機会にします。西欧文化にどっぷり浸かり、西欧で発展した科学・哲学・論理学・言語学にまみれ、国関という最もWesternizeされたコミュニティにいると時々日本人としてのアイデンティティがゆらぐんです。国際関係論も東アジアやイスラムやアフリカなど多様な価値観が交錯するステージだし、人間を動かす根底の精神文化に触れてみるのも意味があるのでは、と思い最近少し東洋思想かじってます
(大迫さん)