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第4回設立準備会:合意の萌芽
1999年2月20日、つくばグランドホテル(茨城県つくば市)において、第4回設立準備会が開催され、7名が集まった。つくば市で準備会を開いたのは、日本有機農業研究会の第27回大会が同市で開催され、学会設立準備会メンバーが「有機農業の思想と食料自給」「アジア型有機農業と地域自給」「アイガモ農法の新展開」「生態防除のメカニズム」「農の“心と技”」「基準・認証への取り組み」などの分科会等に座長や報告者として参加したためである。今回は@過去の論点整理と事務局の見解を事前に文書で配布し、Aそれを踏まえて3分野の研究者がそれぞれの立場から「取り組むべき研究テーマ」と「取り組み方」について報告し、Bそれらを叩き台にして、先に一時棚上げした懸案の「4つのキーワード」及び「研究のための研究に終始しない人」について議論し、事務局サイドの認識との距離が埋められるかどうかを再検討する“最後の機会”にしようと考えた。
第4回設立準備会報告(議論の要旨)
【近代化のドクマからの脱却】
@自然科学も社会科学も「生産力主義・効率主義のドグマ」に囚われている。
A仮にそれらを「近代化のドグマ」と呼ぶなら、それらを如何にして乗り越えるのか、乗り越えるための「新しい
視座」は何か、それは「近代化のドグマ」に対する対抗軸となりうるか、などについてキチンと議論し、検証す
る必要がある。
B「有機農業研究と言っても、研究対象を単に慣行農業から有機農業に置き換えただけではないか」という批判が
ある。皮相な批判だが、何処が皮相なのかについてキチンと答えられなければ、有機農業研究者としての社会的
存在意義が問われることになる。
C「新しい農学のビジョン」を示すこと、それなくして学会を新設する意味はない。
D新しい視座、新しい農学のビジョンとは何か。それらは研究者個々人の価値観と無縁(中立)でありうるか。
E有機農研が編集・刊行した『有機農業ハンドブック』の売れ行きがいいと聞く。時代は、いま、有機農業の総体
を鳥瞰する質の高い即戦的知識を求めているのではないか。有機農業研究者はそれに応える義務がある。
【総サラリーマン化からの脱却】
@研究者と“百姓”との間には「見えざる壁」がある。社会科学では調査する側とされる側、自然科学では研究す
る側と経営する側という立場の違いに由来する、越えがたい意識の壁がある。その壁を、そのままにしていてよ
いか。
Aこれまで、研究者は研究だけしていればよい、とされてきた。それが既存の学会の基本姿勢だが、果たして、そ
れでいいか。
B「研究とフィールドとの連携のあり方」を中軸にして、研究者のこれまでの姿勢を問いなおす必要があるのでは
ないか。“百姓”と同じ地平を共有することが必要なのではないか。「わたし研究する人、あなた実践する人」
という意識を払拭し、「リスクを共に担う同行者」にならなければ、「新しい視座」「新しい農学のビジョン」
も生まれないのではないか。
C研究者にも百姓にも、いま求められているのは、リスクに挑戦する起業者精神ではないか。有機農業を研究する
ということは、様々なリスク負担から“逃げない”ということ、単なる「研究公務員」「研究サラリーマン」に
は陥らないということと同義ではないか。
D研究者には「説明責任」がある。研究成果を“百姓”に、消費者に説明し、理解と協力を得て、普及させる努力
をしなければ意味がない。「語る」「説得する」という運動的要素も必要なのではないか。
表現の仕方は異なるが、思う所は一致しており、ようやく基本的な所での合意が図れそうな状況になったので、次回準備会を最終回と位置づけ、“駄目押し”のため、今回口頭で報告した内容を文章化して、準備会としての「締め括り」を行うことになった。