あっ、そうだ金沢に行こう!

 

「あっ、そうだ金沢に行こう!」ということで、私を介助をしてくれる二人の学生さんとの一泊二日の珍道中が始まった。旅の目的はもちろん「金沢のバリアフリー状況の調査」…などというカッコイイものではなく、ただ「雪の兼六園を車イスで行きたい。」という介助者泣かせの極めて単純でわがままな私の思いつきの旅であった。
 出発の前夜私はふと気がついた。金沢といえば、以前、私達のサークルで一緒に活動していた片尾さんが居ることを、そこで早速、片尾さんに電話。すると片尾さんは優しい声で「金沢には車イスのまま乗り込める路線バスが二種類ありますよ。」と教えてもらい、資料となるFAXまで頂いた。そして七、八年ぶりに宿泊先のホテルで会う約束をして電話を切った。これで旅の準備はOK!。
 さて当日、津の我が家を朝八時に出発し、近鉄で名古屋まで行き、それからJRの特急「しらさぎ」に乗り、午後一時半ごろ金沢に着いた。
 金沢までの道中のバリアフリー情報としては、まず近鉄とJRとでは乗車券の障害者割引の介助者人数に差があることだ。近鉄の場合、障害者割引は一人の障害者と二人の介助者までは乗車券は半額料金なのだが、JRの場合は障害者一人につき、一人の介助者しか割引はない。また新しくなったJR名古屋駅は以前よりは使いやすくなったが、車イスでホームに上がるためには、駅員さんに申し出て、施錠がしてある貨物用通路【駅の裏街道】のドアを開けてもらい,そこを通ってエレベーターを使いホームまで行く。駅が新しくなったにもかかわらず、車イスだと、なぜかメインストリートではなく、【駅の裏街道】を通る羽目となる。金沢駅でも名古屋ほどではないが、やはり【駅の裏街道】を通った。ウゥー、早くカタギなって真っ当な道を歩きてぇー!
 金沢に着くとそこはもう銀世界…,のはずが、殆ど雪はない。雪は何処へ〜。
 とりあえず三人とも空腹だったので、駅ビル内のレストランで昼食をとった。もちろん酒好きの三人は昼間だというのにビールを飲み、ほろ酔い気分で少し早かったがホテルにチェックインし、片尾さんとの待ち合わせ時間まで部屋で休むことにした。
 待ち合わせ時間になりホテルのロビーへ行くと、片尾さんが来てくれた。
 久しぶりの片尾さんである。私は久しぶりに片尾さんと会うので、伊勢名物の赤福を何故か尾張名古屋で買い,ささやかなお土産として片尾さんに手渡した。
 夕食は片尾さんが知っている地ビールの美味い店に連れて行ってもらい、ごちそうにまでなった。
 金沢でも片尾さんは地道にボランティア活動を続けられており、明日私達が利用する車イス対応バスのこと等を色々と教えてもらうことができたのである。
 これで予備知識もでき、もう完璧!。余裕まで出てきた三人は片尾さんと別れた後、カラオケに行き夜遅くホテルに戻った。
 朝になり、いよいよ雪の兼六園へ…と気合いを込めてホテルの窓を眺めると、外は曇ってはいるものの雪ではなかった。朝の身支度をして、ホテルの最上階にある展望台レストランで朝食をとった。なかなか景色は良かったが、自分たち以外にそこで食事をしている客が居なかったのを思うと、このホテルが格安価格で泊まれた意味も何となく分かった。
 いざ兼六園へ向けて出発!。まずは、昨日片尾さんに教えてもらった「ふらっとバス」に乗り込こもうとしたが、ここで第一のアクシデント!。なんと、車体は低く下がったものの車内から手動で出るはずのスロープが出てこないのである。運転手さんは頑張って必死に何度もそのスロープを出そうとするのだが、何かが詰まってピクともしないようだった。まあそれでも何とか乗り込んで約20分間、狭い路地の間を走って目的地に到着。
 兼六園はまさに介助者泣かせの場所だった。障害者と介助者一人分は入園料免除だったが、ここを車イスで訪れる人にとっては介助者は二人はいるのではないかと思った。「雪の上を車イスで進みたい」という願いは、新雪ではないが、日陰でカチカチに固まった残雪めがけて車イスごと突進、危うく車イスから落ちかけたという結果で終った。
 何とか願いを果たして兼六園を後にした三人は、今度は「レトロバス」に乗ろうとバス停で待った。片尾さんの話の通り、運転手は女性でしかもなかなか可愛いかったので男三人はバスよりもその運転手に一瞬気を取られてしまった。まあそれはさておき、バスに乗り込もうとしたがここで第二のアクシデント!な、なんとリフトが動かないじゃあーりませんか。女性運転手は何回もボタンを押してみても、うんともすんとも音を立てることもなく止まったまま。「すいませんが次のバスに乗っていただけませんか。」と、いわれたので渋々次のバスを待つことにした。そして約10分、待っていたバスが来た。今度こそは乗れるだろうと思ったが…、世の中そう甘くはなかった。
 第三のアクシデント!「うっそー!」と思わず叫んでしまう学生さん。なななんと、またまたリフトが動かないのであった。一度ならず二度も同じバス会社で同じアクシデントが続くなんてアンビリーバボー!!
 私達は腹を立ててバス会社に電話をした。すると「毎日点検をしてから運行してるはず何ですけど…」という返答だったが、それならこんなことは起こるはずはないじゃないかと思うのは当然で、納得のいかないままバスに乗ることを諦め、歩いて近江町市場まで行き昼食をとった後、市場街を散策し車イスを押してもらってそのまま金沢駅まで行き、「バリアフリーGメン」の旅は終わったのである。
 今回の旅を通して感じたことは、「地ビールが美味い!」。いや、そんなことじゃなくて…、やはり「ハード面でどれ程バリアフリー化が進んでも、いつでも使えるようにメンテナンスされていない限り、私達が乗れなかったバスのように無用の長物になりかねない。」ということを痛感したのである。


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