小学校低学年は面白い
松田愼二
私は、時たま小学校などにお声がかかり、話をしに行く。
中でも、低学年の子供達は面白い。
まず車イスに乗った脳性マヒの私が体育館に入る、すると、それまでざわついていた子供達が私を見た瞬間、シーンと静まり返る。そして私が前にでていくと、子供達のあっちこっちで小声で話す声が耳に入ってくる。『気持ちわる』とか『おばけみたい』とかいう言葉である。
そんな中、私は話を始める。話す内容は幼いとき近所の友達「健常児」と遊んだことや養護学校でのこと等々、思い出話を中心に話をする。けっこう子供達は話を聞いてくれる。話をした後、私は必ず質問の時間を設けている。この時間が実に楽しい。
『なんか質問ないですか?』と尋ねると、小さな手が次から次に挙がってくる。低学年の子供達がよく尋ねてくる質問は身体のことだ。『なぜ首を振るの?』『なぜ苦しそうに喋るの?』『手や足は痛くない?』など私を見て素直に感じた疑問ばかりである。こんなストレートに質問を投げかけてくれるのはやはり小学校低学年の子供達だけだ。そして質問に対して一つ一つ答えてあげる。
でも、これまでに一度だけ、予想外の質問をされ、答えられずに謝ったことがある。
市外のある小学校に行った時のことだ。『津市に住んでいる松田さんです。…』と最初に紹介され、話を始める。いつものように話の後、子供達から質問を受けることになった。真っ先に手を挙げる子がいた。この子は私が話をしている時から、何か聞きたそうに私に目で訴えていた子だった。身体のことを聞かれると思い込んでいた私にとっては意外な質問を受けたのである。
『質問は?』と聞くと、彼は大きな声でこういった。『津の天然記念物って何ですか?』というものだ。まさかこんな質問が出るとは夢にも思っていなかった私は、彼に『知らないです。すみません。』というしかなかった。
つまり彼にとっては、ただ単に津から来た人に津市の天然記念物を聞きたかっただけで、私の話や「障害」の有無などはどうでもいいことだったのだ。彼にとって、私の存在は「障害者」ではなく、「津に住む人」だったのである。子供は本当に面白い。心のバリアは年齢とともに高くなり壊しづらくなるように思う。