山道を戻り出口へと向かいました。空気がきれいで静かで、ブナ林を出るころには心 が穏やかになっていました。 車で移動して歌才自然の家という町の厚生施設で昼食をとりました。ブナセンターと いい、黒松内町のこういった施設は素晴らしいと思います。活気があり旅行者はもち ろん地元の人たちも交流の場として楽しんでいました。 食後はブナセンターから近いのと、メンバーの一人がキノコを採りたいとのことで、 施設の森の中を歩いてセンタ−帰ることにしました。途中、黒松内町が一望できる展 望台で景色を眺めました。なだらかな緑の丘が遠くまで広がり、あいだにある小さな町が見えました。
黒松内は低地帯で、これより北には針葉樹と広葉樹が入り交じった北海道固有の針広混合林が広がり、冷温帯落葉広葉樹林であるブナは存在し。歌才ブナ林は森林の植生の重要な境界線なのです。 蚊よけの網を頭からかぶり昨日の夜のような完全防備した姿でブナ林へと山道を進みました。ブナ林の入り口には沢にかかった橋がありここで足についた泥を落とし、外 の世界からの種子の侵入を防ぐそうです。 歌才ブナ林はうっそうとしながらも、ブナの白い木肌のためか明るく爽やかな印象を受けました。想像していた、地面には苔の絨毯が広がるような暗く深い森という感じ ではありませんでした。下には背丈が1.5メートル程の笹が生い茂っていましたが、 東京の雑木林とは違いこの状態が極相であるためこれ以上伸びることはないそうです。 山道を外れ、笹の中に分け入ってブナの実の調査が始まりました。メジャーで木から 等間隔の位置を測りブナの実が採集できるようなネットを数個設置するのです。道が なく足場が不安定な中での作業のため苦労しました。笹の間から地面を見てみるとハ ナビラタケや珍しいキクラゲのようなあまり見ることができないキノコがたくさん生 えていて一人心を踊らせていました。
すべてのネットを設置し終えて山道に戻り、斉藤さんたちの案内のもとブナ林を散策 しました。歌才のブナは幹が細く比較的若い木が多いのですが(このブナ林の特徴ら しい)、途中に樹齢250年はあるというミズナラの巨木に出会い、みな一同に「おお!」と声をあげていました。この森の神木なのでしょうか?背が高く太い幹、つた をからませていましたがものともせず生命力に溢れていて圧倒されました。ここで記 念撮影。
施設の敷地内の森はとてもよく管理されていて歌才ブナ林とはまた異なった雰囲気で した。この森は松が多く、ハナイグチというキノコがよく生えているらしいのです。 ハナイグチはイグチ科の中でもヤマドリダケとならんで人気のあるキノコで僕は前か ら見てみたかったのでした。みなが下を見ながら探していると、ありました。ハナイ グチです。見つけたのあずみでした。傘は赤茶で傘の裏と柄は黄色でとても綺麗でし た。これ以外に見つけたキノコはなかったのですが、ギンリョウソウという珍しい腐 生植物を見つけることができました。葉緑体が退化してなくなった植物で全身が白く、 美しくも妖しい感じがして印象深かったです。 そうこうしているうちに、ブナセンターに到着しました。 ブナセンターでは再び展示物を見ていましたが、工房の前にあったバードコールとい う鳥の鳴き声がするおもちゃに一同が心を惹かれ作ることになりました。バードコー ルはよく乾燥させた木に穴を空けてネジを差し込んだだけのシンプルな仕掛けなので すが、鳴らし方によっては本物と聞き分けられないほどよくできたおもちゃなのです。 うまく鳥の鳴き声を真似できれば鳥をよぶことができるとか。製作ノートを見つつ作 りあげ、みなで鳴らして楽しみました。 途中、斉藤さんたちが子供のシマヘビを捕まえてきて触らせてくれました。ヘビを掴 んだのは初めてで、以外とぬるぬるしていて腕に巻きつてきたのが面白かったです。 外に出て、ヘビを捕まえた場所に行ってみるとさらに二匹も見つけました。よく回り を見てみるとヘビの抜け殻がたくさん落ちていました。北海道は寒いからヘビは少な いのかと思ってましたがそうでもないんですねえ。二匹はアオダイショウとヤマカガ シの子供らしくこれも捕まえて遊びました。 工房で好きなものを作ったり図書コーナーで本を読んでるうちにセンターの閉館時間 になり日もかげってきたので、夕食を買いにセイコーマート(北海道では有名なコン ビニらしい)車で出発しました。車は斉藤さんと、斉藤さんの先輩にあたる三浦さん が出してくれました。三浦さんにはこのあとにもいろいろお世話になります。 夕食は宿舎で食べる予定だったのでコンビニでは自炊用の食材を買いました。さあ宿 舎に帰ろうと思った矢先、斉藤さんの案で近くの海に行くことに。今この文章を書い ていて思うことですが、今回の旅の良さはこういった予定や時間にとらわれずにやり たいことをやって時間を過ごすことができたことだと思いました。東京にいると生活 するのに外部から様々な制約を受けているし、そういう環境にいると知らず知らずの うちに自分自身が時間の枠の中で過ごそうとしてしまいます。自分がその瞬間にやり たいと思った感覚を表現できるのは生活に喜びをもたらすためにとても大切なのでは と思うのです。普段気付かなかったを教わった気がしました。




バック




二日目
小川泰史
人のいない広い砂浜に着いた時には、夕日はほとんど沈んでいてあたりは暗くなりはじめ ていました。風と波の音とともに、グレーの海と紅く照らされた雲がはるか遠くに見え、 そこにいた私たちは喋るのをやめて何かを感じているようでした。海からの風の中に身を 浸しながら、もの想いにふけているようでもありました。 やがて焚き火をしようという話になり、流木をたくさん集めました。斉藤さんは趣味が焚 き火ということもあって、小さな海草からつき始めた火はいつの間にか太い流木へと大き くなっていきました。火をこんなにも見入ってしまったのは初めてでした。赤やオレンジ の鮮やかな色。静かに燃える炭からは火の粉が飛び立ち、漂ってはまた静かに消えていき ました。 今回の合宿では毎晩焚き火をしましたが、そのたびに面白さを知るのでした。「100円 ライターでこれだけ楽しめるんだよ」という斉藤さんの言葉が印象的です。また一つ教 わった気がしました。
前日夜は大自然の中にたたずむ宿舎にカルチャーショックを受け、大騒ぎでしたが朝はみ な爽やか目覚めることができました。 今日はどんな一日が始まるのでしょう? 朝8:30、斎藤さんの車に乗ってブナセンターへと向かいました。 ブナセンターの建物は木をふんだんに使い、風景に溶け込みつつも近代的な感じがしまし た。中には黒松内町の自然を紹介した展示や、ギャラリー、工房や陶芸教室、大人から子 供まで楽しめる図書コーナーなど様々な施設があります。 センター内にある展示物をみなで見ていると、ブナセンターの職員の方が今日私たちがや ることについて説明してくれました。センターでは毎年ブナの実の調査をこの時期にやる らしく、今年は人手の多い今日行うとのこと。 こんなイベントに参加できるなんて嬉しいです。 準備をして、調査をする歌才ブナ林へと向かいました。 歌才ブナ林は黒松内ではもっとも有名な日本の最北端 に位置するブナ林で国立公園に指定されています。