先日、五千円札をどうしても千円札に変えなければいけなかったので
コンビニへ行った。そして、5千円札を店員に渡そうとした時、私はふと
そこに書かれた不思議な走り書きを目にしたのだ。
『 スクーターダイナリ 』
私は眉間にしわを寄せ、瞬間的に『 あっ、やっぱり結構です 』と言うや否や
その5千円札を握りしめ、すぐさま自宅の部屋にこもった。
スクーターダイナリ.... これはいったい何を意味しているのであろうか。
そして私は、これを見知らぬ誰かからの挑戦状と受け取った。私への挑戦状なのだ。
もしかしたら、これはコロ助の仕業ナリか?いやいや違う、そんな訳は無いナリ。
私は悩んだ。そしていくつかの私なりの回答を出してみた。
まず一つ目は 『スクーター代也 』。これである。
だがしかし、こんな安易な回答を出す自分が嫌なのでこれはすぐに却下した。
次に私が考えたのは(まあ、これはかなりの自信作なのだが…)
『 スクターだ!稲荷(君)!』 、これである。
これは、ある日、ある商社で今後中国に輸出する製品についての会議が行われていた時、
木田部長が係長の稲荷へ (法政大学 法学部 男なのにラクロス部 )そっと 書いたものなのだ!
そしてこの5千円札の走り書きが功をそうし、社内のライバルの徳田部長を抜き、
木田部長と稲荷係長はそれぞれ昇進したのであった。
違うな…
次に私はこの5千円札に、まだ仕掛けがあると考え火で炙ってみたのだ。
そしたら、新渡戸稲造が 『 熱い熱い!』と言ったので辞めた。
みなさん、『 スクーターダイナリ 』 。これはどういう意味ですか?
私は根っからの人間好きである。それに私は常に『
凄い奴 』(これは私のスケールでみた凄い奴)と出遭いたいと思っている。
浜野 篤
通称 マンモス西、(以後
マンモスと呼ぶ)この男は凄い….
マンモスはもの凄く食べる、大食らいなのである。
大学時代のある日、彼は僕を『餃子の王将』に誘った。
彼はなんと今から《30分で7人前の餃子を食べたらただ》、これに挑戦すると言うのだ。
『餃子の王将』と言うだけあって、餃子一つの大きさが物凄く大きい、
しかもマンモスは2時間前に大学で学定(当時350円)を食べてばかりなのだ!
しかし、マンモスはそんなものは物ともしない。なんと23分でその山のような餃子を平らげたのである。
そしてマンモスは店を出るや否や、歯に挟まったニラを楊枝で突付きながら、にんにく臭い息で独り言をいった。
『
熱さが問題だ..』と。その時私には、この言葉の意味を微塵にも理解しなかった。
そして次の日、彼はなんと再び私を『
餃子の王将 』へ誘ったのだ。二日連続で挑戦するのだという。
店員はひきつりながら、7人前の餃子と1杯の水を持って僕らの席へきた。
そしてマンモスは僕にウインクをしてグラスの水を半分だけ飲み、餃子を食べ始めた。
実はこの日、彼には作戦があったのだ。
なんと彼は小皿に入った醤油、酢には目も向けず、箸に掴んだそれをなんとグラスの水に浸したのだ!!!
彼は見事熱さに勝った。
あとはマンモスの思うがまま、成すがまま。凄い勢いで7つの皿を空けた。
7分と12秒…
あれから約4年、未だにこの記録は破られていないらしい。
それから1週間後、大久保商店街に新しいラーメン屋ができたというので
僕は一人でふらっと立ち寄った。何を注文しようかと壁に書かれたメニューに目をむけたとき、僕は衝撃的一品を目にした。
それは、マンモスが空になった大きなどんぶりを持ち上げ、満面の笑みで写っているポラロイドであった。
そして、そのポラロイドの余白の部分にはマジックでこう書かれていた。
『
浜野 篤 満腹御満悦
』
世の中凄い奴が沢山いる。だから私は人生が楽しくてしょうがない
小学校の時の話。
今日は月に一回の児童集会の日。僕たち4年生はいつも通り廊下に男女背の順に並び、
体育館まで行く。面倒くさいよね。やんちゃな僕たちは真っ直ぐになんかならばない、ふらふらふらふら。宇井君は女の子にちょっかいを出してるし、裕ちゃんはキャプテン翼の替え歌を大熱唱。
そんな時日野君が、階段の手すりとその手すりのついている壁に手を入れて、『わ〜助けて!ぬけないよ!』って叫んでいる。
フッフッフッ、だまされない、だまされない。
だって日野君はいたずらが得意で有名なんだ。この前だって、新しく入ってきた佐藤先生を泣かしちゃったんだ。それだってひどいんだよ。日野君、先生ザリガニ嫌いって知ってるのに黒板のチョークおく所にザリガニおいといてさ、先生間違えてザリガニつかんだんだから。
『
はい、顕微鏡の見方は、キャー!!!!!』
だから僕らは、ほうっておいたんだ。
『
日野!お前にはもうだまされないぞ!』って。
それから、僕たちはいつも通り校長先生の面白くない話をきいてさ、そしたらその時、委員長の沢谷君が僕に、
『日野君がいないね』って言うんだ。
確かに、前にも後ろにも日野君はいなかった。
まさかって思ったけど僕たち、やんちゃ組は児童集会が終るとすぐに先生の目を盗んでダッシュで階段を駆け上がった。
もしかしたら日野君、本当に階段の壁と手すりに手を挟んでいるのかもって思ったから。
そしたら、日野君やっぱり挟まれていた。そこにいたのは、まるで卵を産み終わった鮭のような日野君がいたんだ。(これって擬人法っていうんだよね。)
そして日野君、『
ぬけない』って一言だけ言って首をうな垂れたんだ。
僕達、日野君
死んじゃうと思ったからすぐに、非常警報器の赤いボタンを押した!
『ジリリリリリ!』
階段の窓から下を見たら先生達が大騒ぎをしている。
でも僕たちのやったことは間違っていないよ。
だって、日野君、死んじゃったら校長先生テレビの前で『
私たちのミスであります。もうあと2センチでも壁と手すりの間が広ければ…』とか言うんでしょ、そんなのかわいそうだと思ったから。
結局、4組の三本杉先生が僕たちを見つけた。それから日野君の救出作業が始まった。
でもみんなで引っ張っても全然ぬけないんだ。そんなとき、僕らも一目おいている、2組の藤井君がこういった。(藤井はドッチボールが上手なんだ。)
『 抜けなくなった指輪を取るみたいに石鹸水をぬってみれば』って。
それで僕たち御手洗い場から急いで石鹸水をつくって持ってきた。そしたらさっきのが嘘みたいに抜けたんだ。
生活の知恵。
その日から藤井君のあだ名は『博士』、日野君のあだ名は『手すり』。
変なあだ名がつけられる人間社会って大変だよね。
私にもにもこんなピュアーな時がありました
持病の腰痛が久々に再発し歩行が困難になった為、休みをもらい国立病院にいった。
(なんかこういう時、得した気分になるのは僕だけであろうか。)
まあいつも病院に行くと思うことだが、看護婦さんはよい。凄くよい。良いest!
看護婦さんは、病院や患者が持つ独特の陰気臭さとか、ネガティヴな部分をできるだけ取り払ってくれる。
まさに天使なのだ。看護婦さんがいない病院というのは、黄身がない目玉焼きのようなもだ。
『
キミが必要なんだ!』
そして何よりも看護婦さんの服装である。
最近は、薄い青だのピンクだのいろいろあるみたいだが、私は根っからの白派なのである。
なんか透けそうで透けないその白の白衣を見る度に、
僕は『わ〜、後ろから100wの電球5個ぐらい使って透かしたい!』とか思うのである。
そんな今日も、待ち合い時間に無意識のうちに『ハイビームもいいな..』とか言っていた。
最近は皆さんもご存知の通り、椎名林檎のミュージッククリップでも白衣は話題になり、
『椎名林檎セット』と称し看護婦の白衣(何故か聴診器付き!)が飛ぶよれているそうだ。
しかも驚くことに男性が買っていくそうだ。
僕は悩んだ。誰が着るのであろうか、自分で着るのかそれとも....
そこで待ち合い時間を利用し、僕は50人の看護婦さんにアンケートを取ってみることにした。
『あなたは彼氏や、ダンナに看護婦プレイを強要されたことはありますか』
プレイをしないかと誘われた
41名(内、実際に行なった人25名)
そういうのよくないと思う
4名
無回答
2名
朝はパン派だ
3名
このような驚くべき数値をたたき出したのだ。
要するに今回僕が何が言いたいかって、看護婦さんありがとう!なのである。
あっ、もうこんな時間だ。月1回のお医者さんごっこクラブに行かなければ。
三年前のちょうどこの時期、僕は先輩のN氏とドイツのベルリンにいた。
灼熱の太陽の下、僕たちはポツダム広場に集まった100万人ものクレージーな輩達と
クラヴミュージックというアンダーグラウンドなものを媒体として一つになっていた。
7,8時間ノンストップで踊りつづけ、ナチュラルハイになった辺りで
僕はN氏の様子がおかしいことに気づきはじめた。
雲一つない真っ青な空に舞いあがる色とりどりの風船を指差して、『
あっ、UFOが俺らを空で見守っている
』だの
笑顔で踊っているゲイのドイツ人を横目で見て、『
おい!このドイツ人達、
俺らのことを狙っているぞ!
』だの。
このデンパツにあごヒゲを蓄えサムイを着込んだ、どうみても一癖ある日本人の様子が明らかにおかしいのである。
そしてラブパレードがいよいよ佳境に入り100万人が一つになったとき、
いよいよN氏の様子が尋常ではなくなった。
震え、幻覚、被害妄想、もうN氏のそれは散々足るものであった。
僕は煮えきらぬままメインステージであるポツダム広場を後にした。
僕には実は理由が分っていた。その日、N氏はドラックをヒッピーから購入していたのだ。
日本屈指のジャンキーを自負するサムライN氏も、本場ドイツの前では太刀打ちできなかったのだ。Too
much drag!
その後大和魂もぎ取られたサムライN氏は、僕たちには決して見る事ができない敵を追い求め
100万人中に消えて行ったのである。
失踪、そしてピンチ…。
僕は爆音と人でもみくちゃになりながらもN氏を探し続けた。
だが100万人の中から1人の日本人を見つけることなど不可能に近いのだ。
僕は無我夢中でN氏を探し、何人もの人に訪ねた
『
あごひげを貯えたを見なかったか?』と..
答えは
『 ナイン 』
やはり無理だったのだ。見つけられる訳が無いのだ。
その後、私は不覚にも疲労のあまりつい駅のロッカーの前で眠りに落ちてしまった。
どのくらい寝てしまったのであろうか、僕は身長190はあろう白人に起こされ目を覚ました。
そして彼は片言の英語で僕に言った。
『
あそこにいるのはお前の友達じゃないか』と。
そこにいたのは紛れも無くN氏であった。
『 ノブさん!!』
僕は出せる限りの声でそう叫んだ。
そして僕はN氏の元へ駆け寄り、未だ状況を把握しきれていない彼を思いっき抱きしめた。(感動のシーン)
その日僕はN氏の最高(最悪?)の演出と共に一つ年をとった。
おそらく、後にも先にもあんなにエキサイティングな誕生日はないであろう。
今年のラヴパレードはなんと150万人もの人が集まったらしい。
きっとそこには150万通りのドラマがあったに違いない。
また機会があれば参加したい。
この間、現場が成田山から近かったので(ちなみに私は現場監督!うふ!)、「劇団捨身」の成功祈願という名目で足を運んでみた。(サボリといいたい奴はそう言うがいいさ..)成田山なんてもう15年以上いっていないと思うし、そもそも「神頼み」という行為が自分には合っていないんだがこの際そんなことはどうでもいいのだ。
何か面白い物を見つけられれば…。
成田山へ続く通りは土産屋がなん軒もある。その日は、熱い平日の昼間ということもあって人はあまりいなく、物売りのおばちゃんばかり目に入った。お土産というのは大概どこでも同じ物を売っている。鉄砲漬、直径30センチはあろう醤油煎餅,少年隊の生写真etc...そしてここにもあったのだ、たっちゃん漬け。皆さんはご存知であろうか、梅宮辰男人形の股間を触ると女運がよくなるということを。僕は悩んだ、恥を捨て女運を取るか否か。それに近づくに連れ僕の心拍数が上がる。時間が無い、勇気を振り絞れ、大丈夫だ!周りには腰のまがったジイさんが一人。そしてあと数メートルという時、僕の視界にたっちゃんの股間部が目に入った。僕に追い風が吹いた気がした。確実に奴のエプロンの赤い部分が剥げ白くなっているのだ。僕に勇気が湧いた。大丈夫だ!
皆もやっているんだ!お前にできない訳が無い。僕は歩くのを止めずに顔を前に向けたまま、通り過ぎる瞬間右手でたっちゃん人形のそれを触った。
やった!僕にもできた!(ジーコ風)だがその3秒後、僕の背後からしゃがれ声が聞こえた。「右手じゃ駄目だ、左手で3回」僕は後ろを振り返らずそのまま成田山へ向かった。
33段の急な石段を駆け上がる。僕の頭上には昔見たのと変わりのない大きくて真っ赤なちょうちんがあった。僕はなぜかニヤつき、次の石段を2段抜かしで上がっていった。
おみくじを引いてみることにした。100円玉を入れ引いてみる。「お見事、大吉!」
普通ならそこで止めるのだろうが、僕は違う。「もう1回引いたらどうなるんだろう。」素直でないのである。100円玉が無かったので50円で勘弁してもらった。「お神子と、小吉!」ケチった罰があたったようだ。
いよいよ本題の劇団捨身の成功祈願へ。なんていったって、ここ数ヶ月、終末返上して劇団員皆力を合わせ頑張ってきたのである。何としても成功したい。そんなことを思いながら賽銭箱の前にたったちょうどその時、坊主一団がどこからともなく列をなして入ってきた。得した気分でお賽銭を入れ、お願いをしたのだ。
「
近い将来、ポルシェに乗れますように...」(人間なんて所詮自分がかわいいのである。)
そんなこんなで久々の成田山だった訳だが、情緒にひたれてよかった。たまには皆さんもぷらりと行ってみてはどうであろうか。その時は是非「左手で3回」。
NO7
僕はちょっと前からペットを飼っている。
車の中でである。
そいつはある日突然、僕の車の中に現われた。
初めてそいつを見つけた時は、本気で追い出そうとした。
だがそいつは、なかなか出ていってはくれなかった。
それどころか、勝手に僕の車に住み始めてしまったのだ。
僕は通勤に車を利用している為、1日最低でも3時間はそいつと顔を合わせなければいけない。始めのうちはたまらなかった。
だが不思議なことに2,3日もするとそいつに愛着が湧いてきたのだ。
そいつは今では僕のナビゲーターだ。
すっかり僕になついたそいつは、お腹が空くと手をスリスリし僕の方を見ておねだりしたり(まあ実際にはどこを見ているのか解らないんだが。)、昼食後、車の中でシエスタをかましていると僕の顔を舐めたりするのだ。全くかわいい奴である。
そんな彼の大好物はポテトチップスだ。僕は毎日そいつの為にポテトチップスを買って来ては好きなだけ食べさせてやるのだ。
おかげでそいつは今や体長1.3センチはあるであろう。
ふっふっふっ、もっと食え、そして大きくなるんだ。
お前は気づいてはいないと思うが、お前の動きは日に日に鈍くなって来ているんだ。
いいぞいいぞ、もっと食え。そして俺はいつかお前を食ってやる。
う〜ん、どんな風にしていただこうかな〜。
おっ、そうだフライにしよう。
NO8
僕が稲毛ボクシングジムの門を叩いたのは今から約6年前の春、大学に入りたての頃でった。かなりのボクシングマニアだった僕は『体を鍛える』だけという条件付きで入門を許可してもらった。だがある日ジムに行くと『千葉県クラブチーム対抗試合
フェザー級 工藤 英之』
と筆で書かれていた。大人は嘘つきである。
試合当日 選手は皆マイクロバスに乗り会場に向かった。途中コンビニに寄り食料調達。もう直行われる、計量さえ終わっちまえばこっちの者なのである。会長の『消化に良い物を選べよ!』と言う言葉をよそにシュークリームをGET!ずーっとこれが食べたかったのだ。
千葉県市原市武道会館に到着。武道館中央にあるリングを見ると、不思議と昨日までの恐怖感や緊張感が消えた気がした。もうやるしかないのである。
会場は一種独特な雰囲気が漂い、ガチンコよろしくメンチをきりまくっているヤンキー、計量が間に合わないらしくウエットスーツを着込んで汗を絞り出している自衛隊のボクシング部の面々、個性的な奴が多かったが共通して言えることは、どいつもこいつも皆強そうに見えると言うことである。
その中でも一人異彩を放つ男がいた。のびきったテンパに褐色の肌、そして100%締まっていない体、会場にいる選手達に片っ端から愛想を振りまく120%迷惑男、どう見ても日本人ではないその男の正体は、三度の飯よりサンバ好き八千代市役所ボクシング部所属
ブラジル出身サントスであった。(*本当の事を言うと、名前は忘れたのでブラジル風な名前付けさせていただきましたのであしからず。)外人と聞くと強そうなイメージがあるが彼は確実に弱そうなのである。
まあいい、サントスは張り詰めた会場を和ませてくれたのだから。
アマチュアの計量は全裸である。50人以上の男が全裸になるのだから凄い物がある。
計量は軽い級つまりフライ級から行われる。そしてバンタム級まできた時、会場からざわめきが起きた。やってくれたのだサントスが!見事2.5キログラムオーバー。100グラムや200グラムなら、まあ自衛隊のメンツのようにちょっと走れば落ちるが2.5キログラムは…
問題外なのである。後500グラムで一階級上の僕と同じクラス、つまりフェザー級なのである。周りの素でシビアな反応も完全に眼中に無い彼は満面の笑みで計量員の人に話し掛けている。流石ラテン!
しかし、彼は運良くフェザー級に欠員が出た為、特例で1階級あげ出場できるようになったのだ。
計量も終わり自分の試合までの待ち時間、会場に見に来てくれた友人達に挨拶に行った。
親身になって応援してくれる奴もいれば、試合を見ながら酒を飲み一試合ごとに賭けをしている悪友など。(後に分ったのだがそいつらは僕の試合でも賭けていたらしい。しかも掛率は2−3で対戦相手に..トホホである。)
選手は自分の試合の2試合前になったら、自分のコーナーに行きグラブをはめなければならない。いよいよ僕の番が来たのだ。なんだかんだいったってやはり緊張している。
そんな時事件が起きた。またサントスがやってくれたのだ。今リングで行われている試合が終わり次第、彼がリングに上がらなければならないのにもかかわらず、彼はまだグラブも付けていないそれどころか本人がいないのである。ピンチ!
サントス陣営のトレーナーは血眼になって彼を探している。
その1,2分後、販売機の方からこんな会話が聞こえた。
『バカヤロー!!!
次はお前番だぞ、何やってんだ!っていうか何飲んでんだ!』
『リアルゴールド。』
試合直前に炭酸はない。
そして彼はコーナーに連れ戻された。そして彼はグラブを付けてもらいながら緊張を隠せない僕の表情をみて最高の笑顔でこう言った。
『GOOD
LUCK』と。
『あっ、ありがとう』と思わず僕。実際は確実にお前がGOOD
LUCKな訳なのである。
結果はサントスの方は当り前だが1RKO負け。(しかし何故か会場から拍手が。カリスマだ!)
僕の方は残念ながら判定負け。しかし僕自身は満足の出来だ。それにいい経験をさせてもらったから。これが僕のアマチュアデビュー戦の話。
NO9
金魚すくい
突然ですが、あなたの家族自慢をして下さい。えっ、お前からやれっ?分かりました。
毎年夏も終わりになると、僕らの地区の小さな商店街では小さな夏祭りが行われる。
僕は母から前借りした小遣い千円を握り締め、悪友供と夏祭りに乗込んだ。
さあ、千円で何をしようか?当時(小4)の僕には大金だ。
わたがしを買うのも良し、チョコバナナを買うのもよし、熱海に1泊彼女と旅行に行くのも良し。
そんな楽しい妄想に浸っていると、悪友の坂井大輔が僕の所に駆け寄って来た!
『くどう、お前のカーちゃんが、お前のカーちゃんが!』
もう、大変な状態なのである。
僕は坂井に連れられ毎年豆腐屋さんがやっている金魚すくい屋さんの前まで来た。
そこには5,6人の人だかりが出来ていた。意味不明の僕は人をかき分け最前列へ。
そこにいたのは何と、さっきまで皿洗いをしていた僕の母親だった。
しかも物凄い勢いで金魚をすくい上げている。彼女の手にはすでに2皿目の金魚が….
僕は驚いた。母のあんなに素早い動き、そしてこんな才能が有ったという事実に。
もし、当時一芸入試があったならば確実に亜細亜大学に入学していると思うし、
もし『金魚すくい、一枚で金魚30匹すくったら100万円』なんて番組があったら、その収録の後、確実に家族で焼肉パーティを開きその後、健康ランドとかに行ってサウナとかに入っているだろう。
それほどの手つきなのである。
『おい坂井、すげーだろう、お前にも後で金魚分けてやるからな。』と僕。今その事実を知ったくせに….。
母親の凄まじ睨みにビビル金魚達。もう口をパクパクしているのである。
金魚の中の一匹が僕に訴えかけていた。
『おい、お前!何とかしろよ、お前のかーちゃんだろ、何とかしてくれ、僕ら金魚を救って、救って!』と。(駄洒落でゴメン!)
そんな僕は優越感にどっぷり浸り、憧れのまなざしで母を見ている野次馬供を見渡す。
『うちのかーちゃんは凄いんだ!』 しかし人生とは得てして上手く行かないものである。
なっ、なんとそこには当時僕が大好きだった、クラスメートのアキコちゃんの姿があったのだ!
そのとたん、僕は急に金魚すくいの上手い母の存在が恥ずかしくなったのだ。
【 金魚すくいが上手い=貧乏 】
こんな奇妙な図式が僕の頭の中に描かれた。
僕は母親が持つまだ後5匹は捕まえることが出来るであろうその代物を睨み、
『
早く、穴あけ、早く、穴あけ!』と念じた。
そんな息子の声は母には届かず、計20匹近く捕獲に成功した母。(デメキン2匹を含む)
豆腐屋のおじさんの
『いや〜まいったな、工藤さんは豆腐ん(当分)金魚すくいは禁止ね!』
なんて地区ならではのオヤジトークを聞きながら、僕は金魚すくい屋を後にした。
次の日、アキコちゃんの
『クドウのお母さんの職業って何?』って聞かれた時は小4ながらに失恋を感じた。
でもこれだけは間違いではない。うちの母は物凄く金魚すくいが上手いのである。
これが僕の家族自慢。あなたの自慢を聞かせて下さい。