北アルプス幕営縦走 白馬岳〜蓮華岳
日 時 平成10年7月24日〜29日
場 所 小蓮華山・白馬岳・杓子岳・鑓が岳・唐松岳・五竜岳・鹿島槍が岳・爺が岳・赤沢岳・スバリ岳・針ノ木岳・蓮華岳
参加者 木村正人・木村貴子
コ-スタイム 24日 伊豆高原〜栂池高原
18:00 23:00
25日 栂池高原−自然園−天狗原−乗鞍岳−白馬大池−小蓮華山−ー白馬岳ーーテント場
6:30 7:30 8:30 9:40 10:10-00 12:50-13:10
14:30-50 15:10
26日 テント場−杓子岳−鑓ヶ岳−ー天狗山荘−U峰上り−不帰ノ険−唐松岳−五竜テント場
7:00 8:00-10 8:50-00 9:40-50 12:30-40 13:10
14:30 16:30
27日 テント場−五竜岳−ーキレット小屋−鹿島槍−冷池山荘−ーー爺ガ岳−ー種池テント場
5:00 5:50-6:10 9:20-10:00 12:10-30 13:50-14:20 15:20-30
16:10
28日 テント場−新越山荘−赤沢岳−スバリ岳−ー針ノ木岳−テント場−ーー蓮華岳−ーテント場
5:40 7:40-50 9:40-00 11:30-00 12:50-00 13:40-14:10
15:10-30 18:10
29日 テント場−大沢小屋−扇沢登山口〜 伊豆高原
4:50 6:40-7:00 7:55
報 告 木村正人
昨年から計画していた後立山の縦走を、梅雨明けの7月下旬に合わせたが、実行の日には梅雨は明けていなかった。
24日
夕方車で家を出発。栂池高原に着いたのは23時半だった。車は事前に調べておいた、リフト乗り場迄徒歩10分で、無料の体育館駐車場に置く。私達以外は誰もいないので、玄関の軒下にテントを張った。
25日
始発のリフトに乗り、ゴンドラに乗り換え自然園に。今日は、時間に余裕があるのでビジタ−センタ−を見学してから出発。
湿地帯の天狗原を越え、小さい雪渓を渡って乗鞍岳に着く。この辺りからガスが出てくる。大きな岩の上を注意しながら、歩いていると足元は白馬大池の湖だった。

小屋を過ぎると咲き終っていたが、チングルマの綿毛が一面に有り、とてもきれいだ。
稜線漫歩を楽しみながら小蓮華山に着く。鉄の剣が祭られていた。三国境の分岐で、私は生まれて初めて駒草を見る。(思っていたより小さく可愛い花だ)気持ち良く歩いていると、非対称山稜の白馬岳に着く。
山頂はすごい人で、まだどんどん登ってくる。やはり人気の白馬だと実感する。
ガスの晴れ間に剱岳が見え、2年前の登頂を思い出した。人であふれる山頂を下り、1500人収容の白馬山荘へ。ここはもう銀座だ。あるツア−リ−ダ−が、今日は1畳に3人寝るようですと、お客に説明していた。一年で一番混み会う頃だから当然かも。
この様な日はテントが良い。ところが、村営頂上宿舎のテント場も、多くのテントで溢れていた。ズ−ッと奥迄行ってやっと空きを見付ける。石でゴツゴツしているが他に良い所が無いので仕方がない。

設営し終えストレッチを十分行う。水は小屋横にある雪渓から豊富に流れているので心配ない。食料はレトルト食を2人合わせて30食持ってきた。うまいとは言えないが、味はまあまあだ。
明日のコ−スタイムが長いので早々に寝る。(18時30分)
26日
デリケ−トな私は、背中の石が気になってぐっすり眠れない。
2時頃から雨が降りだし、風も強くなってきた。テントはペグがきかないので、岩を抱かせたが飛ばされるのではないかと心配する。4時になっても風雨はおさまらず、半ば停滞を観念して横になっていた。そのような中でも5時頃になると、外で話し声が聞こえ、出発する人もいる。携帯ラジオは持っていたが電波の入りが悪いので、宿舎へ気象情報を聞きに行くと、「良くなる傾向にある。」と言われたので行くことに決める。出発準備が出来たのは、予定より2時間遅れである。
雨具を着ての歩行は辛い。雨は小降りになってきたが、杓子岳山頂はガスの中で何も見えない。鑓ヶ岳でも同じだが、少しづつ風がおさまってきた。天狗山荘辺りから時折青空も見えだし一安心。山荘を少し過ぎた所で雷鳥の親子に出会う。コマクサも咲いている。この辺りは色々な花がいっぱい咲いていて、高山植物の宝庫だ。
天狗ノ頭の下り始めに危ない所があった。300mの大下りを過ぎ、今日の核心、不帰キレットにさしかかる。
T峰はたした事ない。U峰もクサリやハシゴがあるので、通過出来たが、荷物が重くバランスを保つのに苦労した。V峰を越え唐松山頂に着く。振り返ると天狗ノ頭から、T峰・U峰・V峰とアップダウンの激しい岩峰が見え、あの様な所を通ってきたのかと話し合う。
落石が起こりそうな砂礫帯を越え、予定どうり五竜山荘に着く。目の前には明日登る五竜がデ−ンと構えている。
テント場は段々畑のようだ。テントの中でストレッチをしていると、外がやけに騒がしい。貴子が「きれいだから早く来て」と言う。カメラを持って行くと、ブロッケン現象が出ていた。薄い虹色の輪の中に、「私の影ある。」と。貴子は手をパタパタ動かし、「ほら、ほら私よ。」と喜んでいる。私も言葉では聞いていたが、見るのは初めてなので感激した。色が薄く写真には撮れなかったが脳裏にしっかり焼き付けた。
27日
今日は今回のハイライト、五竜岳、八峰キレット、鹿島槍ケ岳に行くので、5時にテント場を出た。
浮き石でまぎらわしい登山道を登り五竜岳山頂へ。頂上からの眺めは素晴らしく、美しい双耳峰の鹿島槍ケ岳や、立山三山、剱岳、剱沢の雪渓も見える。いつまでも眺めていたいが、これからが難所の核心部分に差し掛るので、気持ちを引き締め山頂を後にした。

下り始めてすぐクサリ場の連続で落石に気を配り、自分も起こさないように歩く。G4・G5・北尾根ノ頭を越え口ノ沢のコルへと下る。アップダウンの激しい峰を幾つも越えると、キレット小屋に着いた。小屋のトイレがきれいなのに驚く。広場も耐えず従業員がゴミ拾いに廻っていた。汚さないよう気をつけよう。
再び岩と格闘する。ザックが軽ければ何でもないが、重く、ロ−ルマットが岩に当たって、何度かバランスを崩した。でも危険と思われる所には鉄バシゴとクサリが設置されているので、多少クライミングを経験した人ならわけなく通れる。
やがてハイマツ帯に出、一安心。岩場の渋滞もなく、スム−ズに通過できたので、大幅に時間を短縮できた。
吊り尾根分岐にザックを置き、北峰へ。山頂はガスの中で何も見えないので、すぐ下山。南峰もガスの中で残念。
後立山連峰の盟主鹿島槍ケ岳を後にし、布引岳を越え、お花畑を過ぎると、冷池山荘に着く。予定より早かったので、種池まで行く事にした。爺ガ岳の上りはきつかったが、下りはハイマツの広い尾根でゆっくり歩いた。いや本当は足が痛くなってきたので、ステッキを使って足へのショックを少なくしていたので、ゆっくりになったのだ。貴子もアキレス腱が痛いと言っている。もう少しだ頑張ろう。
やがて素晴らしいお花畑が現れた。ガスの為遠望はきかないが、近くの花は見える。一年のうち最も花の咲く季節に来ているので、当然かも。何種類もの花が咲き競っているようだ。妻が名前を言うが何回言われても頭に入らない。ようやく、種池山荘に着く。山と渓谷社のコ−スタイムで、11時間10分はチョットきつかった。
テント場は真っ平で、私の知っている中で一番整備されていた。小雨がテントをたたいていたが、地面が平で良く眠れた。
28日
出発の準備をしていると夜が明け、空を紅に染める素晴らしい朝焼になった。しばらくすると虹が出て、大きな弧を描いた。写真を撮ろうとすると、外側に薄くもう1つ出てきた。めずらしい二重虹に感激する。

小雨の中雨具を着て出発。棒小屋乗越のお花畑に歓声を揚げ、岩小屋沢岳を過ぎ、新越山荘へ。昨年改修したという木の香のする小屋で一休み。
雨が上がったので、雨具をしまい出発。鳴沢岳辺りで又雨が降だす。ガスがなければどんなに良いか、という思いが通じたのか、赤沢岳山頂で黒部側が見えだし、眼下にはコバルトブル−の湖。私がモデルになって、パチリ。小雨で体も寒く、長く休んで入れない。 ガレ場の石に気を使い、幾つかの尾根を越えスバリ山頂へ。空模様を気にしながら昼食のレトルトおこわを、腹に流し込みすぐ出る。目の前には針ノ木岳が見えていた。 「うゎ−」これは凄い。山頂直下にコマクサの群落があった。三国境からここまで幾つかの所に咲いていたが、この様に密集した場所は他に無かった。蓮華岳はこれより凄いのか、楽しみだ。休むと体が冷えるし、針ノ木岳も遠望もないので、写真だけ撮り小屋へ急ぐ。
針ノ木岳のテント場は、風の通り道のような所にあった。小屋で手続きをし、明日の天気予報を聞くと、あまり良くないのでテントを設営し、雨具とカメラと水だけ持って蓮華岳に向かう。
コマクサで有名な山だが、今年はどうかな?チョット遅いかな?心配はいらなかった。山頂近くは、うっかりすると足で踏みつぶしそうな所に迄咲いていた。このような所を、私達は後世に遺さなければならないと思う。
小雨とガスの中なので、山頂らしき所が次から次に現れ、その度惑わされ、裏切られた。下りではガスが取れ、小屋を挾んで針ノ木岳の全体が見えた。それにしても今日は、雨具を着たり脱いだり、何回したのだろう。スパッツを着けたので、足も蒸れ靴の中がしっとり濡れてしまった。
夜は満点の星空で、天の川まで見えた。
29日
朝から晴れているのは、久々のような気がする。今日は車の回収もあるので、早く出発する。朝早いので、雪渓の雪が凍っていたり、紅がらの赤い色も消えている所も多く、歩きにくい。私は雪が腐っていてステッキもあるし、アイゼンはいらないと思って持ってこなかった。もし、ステッキが無かったら下れなかったかもしれない。

30分の緊張した雪渓を過ぎ、樹林帯を通って、針ノ木登山口の扇沢に着き、5泊6日の縦走は終った。
花の名前を知っていたら、もっと楽しかったと思う。勉強しよう。
一般コ−スの岩場は、三点確保とバランスを保てば大丈夫。 歩行時間8時間を超えると、足が痛くなり辛かったが、ストレッチを充分行なえば、翌日に持ち越さないのが解った。スパッツは靴の中が蒸れるのでよし悪しだ。
初めての事も多く、ブロッケン現象と二重虹・可愛いコマクサ。雷鳥には飽きる程会った。天候には恵まれなかったが充実した山行が出来た。