槍ケ岳〜穂高完全縦走
槍ケ岳・大喰岳・中岳・南岳・北穂高岳・涸沢岳・奥穂高岳・前穂高岳・天狗岳・間ノ岳・西穂高岳・西穂独標
日 時 平成9年8月21日〜25日
場 所 北アルプス南部
参加者 Yさん・Mさん・木村正人・木村貴子 他3人は双六方面
コ-スタイム 22日
新穂高温泉−白出小屋−槍平小屋 −飛騨乗越−槍岳山荘
6:00 7:35 9:45-10:45 14:00-20 14:30
23日
槍ケ岳往復−槍岳山荘−南岳ーーーー北穂高小屋
7:00-8:00 8:20 10:40-11:00 14:50
24日
北穂高小屋−涸沢岳−穂高岳山荘ー奥穂高岳−紀美子平−前穂高岳−ー奥穂高岳−穂高岳山荘
6:00 8:00-20 8:30-9:00 9:30-45 11:00 11:40-12:10 14:00
14:40
25日
奥穂高山荘−奥穂−ージャンダルムー天狗岳−間ノ岳−赤石岳−西穂−ーー独標− 西穂山荘−
ロ-プウェイ 4:30 5:00-40 6:50-7:00 8:40-9:00 11:15-40 12:35
13:15-30 14:10
報告 木村貴子
憧れの穂高に登れると思うと、心がはずむ。でも、今回は槍ガ岳から北穂、奥穂、前穂、更に西穂への縦走コ−ス。昨年の剣岳登山同様、不安な気持ちにかられる。
槍から奥穂迄も難ル−トがいくつもある。果して、私がそこを通過出来るだろうか。西穂まで行ければ最高だが、奥穂迄でも十分だ。一人で涸沢に下山してもいい。そう心に決め参加をする。
「西穂に行けるかは、奥穂迄の間でテストする」と夫に言われる。何人もの先輩に、西穂へのル−トのアドバイスをしていただく。「大丈夫行けます」と言われても不安は消えない。
22日
朝6時、双六方面の人達と別れ、Yさんと私達夫婦で槍ガ岳をめざす。
9時間のコ−スタイム。長い道程を歩けるか心配になる。Yさんはテント泊なので、ザックが重そう。槍平小屋で十分休憩をとる。槍平からは急登になり、高度をかせぐ。天気も良く双六方面、笠ガ岳が素晴らしい。めざす槍ケ岳が見えてから、長い登りが続き苦しいが、ハクサンフウロ、イワギキョウ、トリカブトの花が美しく疲れを忘れさせてくれた。お花畑から見上げると、Yさんが明日通る西鎌尾根が目の前に迫る。やっとの事で飛騨乗越に着くや、表銀座の常念岳、大天井、東鎌尾根の山並みの美しさ、更に槍の穂先から槍沢にスッパリ切れ落ちた光景は圧巻。
写真を撮っるている間に、槍の穂先はもう霧に包まれている。穂先に行く時間はあるが明日にすることにして、山荘で乾杯!
23日、
雨前線が昨夜から朝にかけて、通過しているので、ガスっている。昨夜は風雨が強かったようだ。テント泊のYさんはどのような一夜だったのだろうか?
朝5時頃、雨が降っていたので、予定を変更して、天候の様子をみる。
7時ガスの中頂上を目指す。濡れて滑りやすい岩稜に気をつけながら穂先に登頂。頂上直下の長く垂直なハシゴ
もガスっているせいか、そんなに恐くなく、一安心。

1時間位で戻ると、Yさんが心配して待っていてくれた。ありがたいことだ。
しばらくして、西鎌尾根から双六に向かうYさんと別れ北穂をめざす。天気は見る見るうちに良くなり、大喰岳に着いた時は、槍の穂先が顔を出し、周りの山々も姿を現し、青々とした夏山に変わった。

中岳、南岳と進み、いよいよ核心の大キレット。滑りやすい砂礫の急斜面なので慎重に下りる。垂直な岩壁の所で、前を下りていた若い女性が、行きずまって動けなくなりリ−ダ−が盛んにアドバイスしていた。私も足場をしっかり探して下りた。
長谷川ピ−クが此処なんだ。本に紹介されている写真を思い出す。心配していた程でもなく助かった。
飛騨泣きという悪場は滝谷側がスッパリ切れ落ちていて、不安定な岩場なので緊張の連続。「三点確保をしっかりやれ。二点ではダメだぞ」と言われる。クライミングをしてきた事が役立つ。
A沢のコルから北穂高への登りはきつく浮き石も多い。落としても落とされても大変だ。注意して登る。「ガラ、ガラ、ガラ」小石ではない。大きな石が岩にあたる音だ。下を見ると、私達より少し離れて上ってきている若者が、心配そうに見上げた。「私じゃないよ。」思わず言う。私達の前を歩いていた人に「落としたら落石と大声で言えよぉ−」と夫が注意した。一瞬ヒヤリとする出来事でした。
北穂小屋のテラスから滝谷側を見ると、垂直の大岩壁に、クライマ−が数人取り付いている。すごい!ため息がでる。反対の涸沢側は、屏風岩から北尾根、前穂と続く稜線が素晴らしい。

Mさんと無線連絡が取れないので、心配していると、数分後、元気な顔を見せてくれた。上高地から涸沢北穂と増野さんならではの健脚ぶり。
そして、偶然にも同室になった女性にビックリ。以前城山のクライミングレッスンで、知り合った人でした。話が弾み、意気投合し、西穂縦走の体験話等も聞き、私はとても勇気ずけられました。
稜線にガスがかかり、雲海が湧き、ガスの中に、赤く燃える夕日は、とても幻想的でした。

北穂小屋は小さく、山小屋的な雰囲気があり、食事の時はクラッシック音楽が流れ、食事も美味しく、又来たいと思う小屋でした。
私達夫婦は、4日間も歩いた事が無いので、筋肉痛を心配し、湿布をペタペタ張ったり、ストレッチをしたり、疲労回復に良さそうな物を食べたりして、バテズに毎日歩ける事をただ願っていました。
24日
今日も天気が良い。御来光も見れ満足。
まずは涸沢岳。此処も難所が幾つかある。小屋を出てからずっと岩場が続き、緊張の連続。涸沢のカ−ルの底には、ヒュッテが小さく見える。滝谷側はすごい高度感だ。涸沢岳から見える奥穂、ジャンダルム西穂の稜線。目に映るこの景色、どんな難所が待っているのだろうか?

穂高岳山荘に、荷物を置き、休養するというMさんを残して、奥穂、前穂に向かう。
山荘からすぐに垂直なハシゴを登る。この辺りに来ると、登山者も多い。奥穂高山頂の大ケルンの場所は狭く、せいぜい5〜6人立つのがやっと。写真を撮る人で賑わう。ヘリコプタ−が何回も旋回して、私達の方にカメラを向けている。調子にのって手を振った。首も360度回転させた。もしかして、テレビに映るかも・・・・・
紀美子平近くにきた時、大勢の人の呼び声が「オ−イ、オ−イ」と谷間に響く。何かしら?数m下を見ると、服の様な物が置いて有る。前穂に登って解った事でしたが事故だった。ヘリコプタ−が来て、人を運んでいる様子が見えた。25日の新聞に、北アルプス吊り尾根付近で、中年女性滑落死と載っていた。そんなに危険な場所ではないのに、バランスを崩しての様だ。恐い事だと思う。
前穂頂上でYさん達と、無線で交信する。M・Sさんが「そちらの様子が見えますよ。私達が手を振っているのが、見えますか?」とユ−モアたっぷりな元気な声。そこへMさんが「私は今、奥穂頂上にいます」と入る。
Yさんとは、順調に交信できていましたが、女性組とは3日目にして、ようやく交信ができた。
穂高岳山荘で同室の西穂から来たという2人の男性の話では、間ノ岳は浮き石が多く怖かったという。
私も西穂縦走に参加できる事になったので、話を聞くと、又不安になる。槍ケ岳から前穂まで、難所と言われる所を、幾つか通過して来る事が出来た。でも明日縦走する奥穂〜西穂間は、更に難しそう。天狗のコルからエスケ−プル−トもあるから無理な場合は、そこから下山も考えなければならない。歩行不能になった人もいるとか・・・
私は無事縦走出来るか心配が募るばかり。明日は早出なので準備をして、早めに寝るが、睡眠剤を呑んだにもかかわらず、気持ちが高ぶるせいか、眠れないまま朝を迎える。
25日
3時30分頃起床。4時30分出発。
ライトをつけ奥穂へ。朝早いせいか、風が冷たい。でも天侯は何も心配ない。御来光に登山の安全を祈り、いよいよ出発だ。
直ぐに馬の背。狭いナイフエッジ状の岩稜を急下降。スリリングだが、手を両方に付いていれば、安心できた。「第1関門クリアできた」と声を出す。
ロバの耳というクサリ場は、飛騨側を巻いて慎重に登る。落ちたら大変だ。「ホ−ルドが、しっかりしている。3点確保で登れば大丈夫だ。」と注意される。
ジャンダルムへは直登のル−トもあったが、巻いて登る。奥穂より1時間位で、私が立つ事など、想像もしなかったジャンダルムの頂上に着いた。とても嬉しかった。

無線でYさんに「登ったり、下りたり、もう、大変です」と言う。「気おつけて歩いてください」と言われる。その後も、何回か連絡を取り、私はその都度励まされ、心強く思いました。
西穂まで下りのコ−スとはいっても、登り下りの激しいコ−スです。登りがきついと、下りはどんなだろうかと、絶えず不安が付きまとう。
畳岩ノ頭を過ぎ、天狗のコルに急下降の時、岩にしがみつくと、Mさんに「もっと岩から離れないと、足場が見えないよ」とアドバイスを受ける。私は下降が苦手で、特に砂混じりのガレ場は、腰が引けてしまう。そんな時は、膝を曲げて足裏全体で歩くよう教わる。
天狗のコルは、テントが1張り出来るような場所になっていた。(非難小屋の跡地でした)
天狗岳への登りは、垂直な逆層スラブのクサリ場。勢い余って、夫は最初の1歩を岩にぶつけ「痛たた、、、」と叫ぶ。
クサリが長く続くので、手の力に頼らず、足で登るよう指示される。本で調べて一番難しい場所と思っていた、逆層スラブの下りは、傾斜が垂直で無くほっとした。靴底のフリクションん効かせ、クサリを頼りに下降。

いよいよ話に聞いていた、浮き石の多い間ノ岳への登り。岩場の崩壊が激しく、落石の巣のような所。落石の起こりそうなクサリ場では、一人ずつ登り、後に続く人は岩陰に隠れたりしました。
岩に目をやると、紫色のイワギキョウが咲いている。心が和み、歩く元気を与えてくれる。 やっとの事で西穂に着いた時は、もうこれで終わりだと安堵した。3人で無事縦走出来た事を喜び、感激の固い握手する。
私は終始、真ん中を歩き、2人に引っ張ってもらい、私の実力ではまだまだ大変なこの縦走をする事が出来ました。
又この山行に当たって、岩陵経験のない夫と歩くのは、一抹の不安がありました。雷雨やガスになって非常時になったらどうしよう?心細い面がありました。でも、天気に恵まれた事で、不安も解消し、私を導いてくれた夫に感謝しています。
動霧会に入会しなければ、私にとって、穂高は眺めるだけの山で、登る山ではありせんでした。この2年間、先輩の皆様に御指導していただいたお陰です。
十二ガ岳で初めて岩場を経験し、クライミングで恐る恐る岩壁に張り付いたり、懸垂下降の練習をした事。昨年登った剣岳。今、思い起すと、それらの体験あってこそ、今回の山行が無事出来たのだと思います。
皆さん本当に有難うございます。