甲斐駒ガ岳ー 厳冬期の黒戸尾根を登る。

日  時   平成13年2月9日〜12日
場  所   南アルプス北部
参加者   木村正人・木村貴子
コースタイム   9日   伊豆高原ー竹宇駒ガ岳神社駐車場
            18:00     21:30
       10日   駐車場〜笹ノ平〜  八丁坂口〜刃渡り〜 五合目小屋
             7:00   10:30-50  11:40-00 14:30-50  18:30
       11日   五合目小屋〜七丈第二小屋〜八合目〜  駒ガ岳〜 八合目〜  五合目小屋
             8:10      9:20-30      10:40-00  12:50-00  14:10-20   15:40
       12日   五合目小屋〜刃渡り〜 笹ノ平〜名水公園・湯ー伊豆高原
             7:00      8:10-20  9:30-40  11:00-
                                                           報告 木村正人

 昨年の同時期、仙丈ガ岳に登ったおり、甲斐駒ガ岳の堂々とした姿に感動して、来年はあの山と決めていた。
冬山の経験も少しついてきたので、登りがいのある標高差2200mの黒戸尾根からにした。               

   19日
 今年は積雪が多く、白州尾白の森名水公園までしか除雪されていないと言われていたが、竹宇駒ガ岳神社駐車場まで入れて助かる。 広い駐車場には無人の車が1台だけ。 夜中2台入ってきた。
明日のラッセルを心配しながら車中泊。

  10日 晴れ
 予定では無人の五合目小屋に泊まるつもりでいたが、早いようだったら冬季開放の七丈小屋迄行き、翌日登頂後、下山の案も考えていた。

 6時にスタートした男性が言うには、「七丈小屋は連休中、小屋番が入っているかもしれない」と言う。 ガッカリ。
七丈小屋で水が貰えるので、ガス1個とランタンを車に置いていく。非常用にテント・ザイル・ワカン等を持ち出発。
竹宇神社で登山の安全を祈願し、積雪30cm位の尾白川を渡る。

 いきなり十二曲がりの急登に迎えられる。粥餅石は雪の為解からなかった。 笹ノ平で朝の先行者に追いつく。
その人は「6年連続で来ているが、今年が一番雪が多い」と言った。 此処までは樹間でたいした雪ではなかったが、低木のこの辺りから深雪となり、トレースも付いていなかった。

 八ガ岳にはげまされ、3人でラッセル行軍が始まった。 雪が膝を越えたので、八丁坂口でワカンを付ける。
坂を少し登ると、貴子の足が攣り辛そうだった。やむをえず昼食休憩をしていると、3パーティー5人が登ってきた。駐車場を8時に出たと言う。私達がトレースを付けておいたので、ワカン無しで歩けて追いついてきたのだ。
ガッカリするやら嬉しいやら。新しく加わった若者と朝の人と私で、再びラッセルが始まった。

 刃渡りはアイゼンに履き替え、鎖につかまり通過する。

 時間はかなり遅れていた。ここから2時間で五合目小屋だが、着くかどうか???七丈小屋はとても無理だった。 プロガイドらしき人が来て先頭に立ち、力強く進んで行った。いろんな人が二番手になり進む。
薄暗くなると皆の間隔が次第に開きだし、いつの間にか2人だけで歩いていた。

 日没はとっくに過ぎたが、電池を節約する為、ヘッドランプは点けずに雪明りの中、トレースをたどった。
風が無く助かる。目印のペンキマークの間隔が長く、私が先頭ではこの暗闇の中、迷って歩けなかっただろう。
下り斜面になり小屋が近い事が解かる。真っ暗なのでやむをえず、2人で1つのランプで下った。

 コル付近に建つ小屋は、入り口が雪で埋まっていて開けるのに一苦労する。
戸を開けると、中も雪が一杯だった。  想像していたよりはるかにお粗末な小屋の板の間にテントを張る。 水をつく
る雪もいろんな所から吹き込んだ雪が沢山有るので、テントから手を伸ばせば取れた。

                   

結局、小屋に着けたのは私達以外に、2パーティーの3人だけだった。少なくとも4パーティーはビバーグしたようだ。
 この深雪で明日登頂出来るだろうか?心配しながら眠りにつく。

   11日 曇り
 テント内は暖かく良く眠れた。でも、昨日のラッセルで膝の裏に違和感があり、チョット心配だ。もし登頂出来ても七丈小屋泊まりになるかもしれないので、ガス・食料などを持ち、遅い出発。他のパーティーは1時間前にスタートしていた。
 いきなり雪で埋まった梯子の急登に苦労する。山岳信仰の山らしく、あちこちに石碑や鉄剣が建っていた。
七丈小屋の小屋番は「八合目から上は雪も深く、鎖も埋まっているから、先頭が的確なルートを付けないと危ない」と言い、「登るなら余計な物は置いて行け」と言われた。

 貴子の体調は良かったが、私の膝裏が痛くなってきた。下りの事も考えなくてはいけなく、内心登頂できる確立は50%と思っていた。最低限の物を持ち、小屋裏の梯子を上る。八合目で最終決断をするつもりでいた。八ガ岳や富士山まで見え、天気は良かったが、高度が増すと少しづつ風が出てきた。岩陰で休む時、絶えず屈伸運動をしていた。鳥居のある八合目に着くとガイド登山の人や別パーティーの人が10人くらい休んでいた。

 黒戸尾根の確心部は此処からだが、山頂はもう見えていた。私も安易で人が多くなると心強い。よし、決めた、進もう。でも昨日の反省から、決して先頭には立たず、後ろを歩き楽をさせてもらった。露岩を巻き、鎖の出ていない鎖場、そしてナイフリッジを進む。大岩から厳しい雪壁になった。トップは大変だろう。各パーティーの間隔が無くなり数珠つなぎになる。ずるい私はこの間に後ろの方で行動食を食べていた。

 上りはピッケルを雪面一杯に刺し一歩一歩登ったが、下りは確保が必要だろう。
九合目から岩混じりの尾根となり、さらに緊張する岩場が出てきた。足の痛さなど忘れていた。小ピークを過ぎ、北沢峠からの合流点から一登りで、石祠が祭られた頂上に着いた。 「やったー」厳冬期の甲斐駒を黒戸尾根から登れた。パートナーと握手し万歳をした。大勢の先導者のおかげで、ほぼコースタイムで登れたが、風が強いので長居は無用。直ぐ下山する。

                  

 九合目の岩場は、テープ補助で貴子を降ろし、八合目の壁は迷ったがザイルは出さなかった。 (ガイド登山のパーティーは確保して降ろしていた)おかげで早く下れ、一緒に登った人の中には七丈小屋に泊まる人もいたが、私達は明るい内に五合目小屋に着けた。しばらくすると強風が吹き荒れ、山頂には雪煙が舞っていた。 もう少し遅れれば辛い下山になっていただろう。

 その日の小屋は私達だけだった。心配な事が2つもちあがる。ガスとランタンを車に置いてきたので、電池が翌朝迄もつかだった。ガス2個と予備の電池は持っていたが!ガスは翌朝の水まで作り、目途はついたが、節約して使っていた電池が寒さのため長持ちせず、予備の電池も使い果たしてしまった。やむをえず無線機の電池を使った。

 早めに寝ようとしたが、脚から下が寒くてなかなか眠れない。昨日と同じ条件なのに何故だろう。テントシューズを履いても足先は冷たかった。二人とも眠ってはいるのだろうが、一晩中寒くて寝た気がしなかった。 この現象は、昨日体から出た水分がシュラフの中に溜まり、冷たいシュラフに熱を奪われ、暖めきれなかったと考えた。どうだろうか

   12日 曇り
 昨夜の強風で消えかけたトレースをたどり下山する。所々にテントが張ってある。この人達は私達以上に寒かっただろう。黒戸尾根は刃渡りが有名だが、昨日の緊張した場所と比べると、なんと簡単な事か、鎖に頼らず楽に通過できた。
 竹宇神社で無事下山できたお礼をし、車で5分の名水公園で風呂(500円)と食事をして帰路に着いた。
  反省 
 最初から避難小屋泊まりのつもりでいた為、テントの外張りを持たなかった事と、ガスとランタンを車に置いてきた事だ。他のパーティーのように小屋に着けなけい時はビバーグしなければならず、そうなった時、寒くないテントと水があれば4・5日は生きていれるだろうからだ。
 そして、元気だからといって後の事も考えずに張りきらない事。(ラッセルの事)