2002年       たいせんざん    ひ  じ  だけ
  5月25日  大船山・平治岳 
                  (大分県 九重連山)
                

 5月下旬から6月にかけて、九重ではミヤマキリシマが咲き乱れる。全山がピンクに染まり、人の顔までもがピンクになるともいう。そんな山を経験してみたい。3年前からこう思い続けて、やっと登れるチャンスがやってきた。


朝の三俣山
 前の日の夕方家を出る。そして、夜の12時をすぎて、九重に到着した。登山口の駐車場で夜を明かして、明日の朝登り始めることにした。

 朝4時50分、バスの音で目が覚めた。早くも大型バスが2台到着している。ミヤマキリシマを求めて登山客を乗せたバスだ。
 洗面をすませ、朝食を食べ、5時30分、長者原の駐車場を出発。目の前に三俣山(みまたやま)がそびえる。このやまは、九重連山の中央に位置し、どこから見ても三つの山に見えるためにこのような名前になったという。


三俣山を左に見ながら登る
 三俣山の右側をまいて登る。カッコウとウグイスが鳴く中を朝日を浴びながらゆっくり登る。ところどころにミヤマキリシマが咲き、実にのんびりできる天国のようなところだ。
 天国に来て、急ぐことはない。ゆっくりのんびり、味わりながら登る。次々と人が追い越していくのもおかまいなしだ。
 

九重の花々(初夏)


ミヤマキリシマ
ハルリンドウ

イワカガミ

天然記念物の
コケモモ

今も噴煙を上げる硫黄山
 三俣山の向こう側に白い煙を上げている山が見え始めた。硫黄山(いおうざん)だ。シューシューと音を立てて、穴から煙を吹き出している。吹き出す硫黄で穴の回りは、黄色に染まっている。喘息の人は注意してくださいと札に書いてあった。私は、ちょっと喘息があるのだが、風向きの関係で何ともなかった。


スガモリ越
 硫黄山と三俣山の間の岩場を登ると、スガモリ越に着く。昔はここに売店があったらしい。今では、頑丈な避難小屋が建っているだけだ。空が青い。カランカランと鐘の音が鳴った。人の顔くらいの大きさの鐘が設置してあり、それを誰かがならしていた。澄み切った空に、牧歌的な鐘の音が響く。


東千里ガ浜から
硫黄山をふり返る
 スガモリ越から向こう側に下ると、中岳が顔を出した。下には、なだらかな東千里ガ浜が左右にのびている。
 岩だらけのスガモリ越から一転して、砂地の平らな広い道が広がった。
 ふり返って、硫黄山の方へいくと久住山へと至る道だ。
 ここを久住山とは反対の方へ向かう。
 なだらかな道は、まもなくまた1mをこえるような大きな岩だらけの道へと変わる。この変化の大きさも九重の魅力だ。


下の方に坊ガツル
その向こうに大船山が
見えてきた
 岩の道を下っていくと、下の方に坊ガツルが見えてきた。九重の山々に囲まれた盆地のようなところだ。あそこで、冷たい水を補給しよう。
 その向こうには目指す大船山と平治岳が見えてきた。あとひとふんばりだ。


坊ガツルにある
法華院温泉
後ろは三俣山
 坊ガツルに着く。ここ法華院(ほっけいん)温泉は、九州で一番高いところにある温泉である。今はお湯が抜かれており、夜しか入れない。
 冷たい水を補給して、一休みして、今度は大船山(たいせんざん)を目指す。

坊ガツルのキャンプ場
後ろは中岳
 坊ガツルは、キャンプ場にもなっている。色とりどりのテントが並ぶ。ここに何日か泊まって、まわりの山々を巡る人たちもいる。
 ここから、大船山の上りに入ると、坂が急で足にこたえる。すでに登山口から5時間近く歩いている。
 大船山の上りにかかって間もないというのに、ハアハアと荒い息をし、うめき声を出しながらきつい坂を上っている人もいた。この方は、頂上までいけるだろうか。


大船山頂上近くから
段原・米窪を見下ろす
 大船山の山頂が近くなると、噴火口あとの米窪(こめくぼ)を上から見下ろせるようになる。中央に見える土色のところが噴火口だと思っていたら、その右側の大きく切れ落ちたところが噴火口あとであった。本当なら、このあたりからミヤマキリシマのピンクが広がるはずなのだが・・・ どうも変だ。


大船山の山頂から
三俣山・硫黄山を見る
 登り始めて5時間半、やっと大船山の山頂に着く。360度の大展望だ。
 来るとき、すぐ横を通ってきた三俣山・硫黄山が見える。2つの山の間に通ってきた道が見える。
 岩の上でゆっくり眺めを楽しみながら、むすびを2個食べた。
 山頂にはたくさんの人がいて、にぎやかだ。

 

大船山から
由布岳が見えた
(中央右の双耳峰の山)
 遠くに阿蘇山も見える。由布岳・祖母山・傾山もはっきりとよく見えた。「ふだん見えない山も、全部見えますよ。」地元の方が言っておられた。それほどのいい天気だ。
 山頂にいると、いろんな人の声が耳に入ってくる。「登山口から2時間で来ました」と、びっくりするようなことをしゃべっている人もいる。私と同じルートだ。ここまで来るのに、私は5時間半、この人は2時間だ。えらい違いだ。
 リュックからパンを取り出した大学生は、気圧の差でパンの袋がパンパンになっているのにびっくりしていた。

 40分ゆっくりしたあと、山頂をおりる。いろいろな人が話しているのを聞くうちに、どうも今年のミヤマキリシマはおかしいということがわかってきた。

大船山から
寝観音ともいわれる
阿蘇を遠望する
(左が顔、その右が体)

ほぼ全滅に近いミヤマキリシマ
 
 全山をピンクの染めるというミヤマキリシマ。そのミヤマキリシマが壊滅的な被害を受けている。去年(2001年)から大量のシャクトリムシのような蛾の幼虫が大量発生して、ミヤマキリシマを枯らせてしまったのだという。
 地球温暖化のせいかもしれないし、酸性雨のせいかもしれない。たぶん複合的な理由のためなのだろうが、様々な原因によってミヤマキリシマ自体の抵抗力もかなり落ち、今は枯れた木ばかりが目立っている。はたして九重のミヤマキリシマは、生き返ることができるのだろうか・・・・


段原付近
手前・くぼみ中央近くに枯れたミヤマキリシマが目立つ


北大船山付近
ここでも枯れたミヤマキリシマがたくさん見られる


北大船山付近
茶色く見えるところがほぼ全滅したミヤマキリシマ


平治岳(ひじだけ)北峰
ここが全山ピンクに染まる
はずだったところ
今は、茶色ばかりが目立つ

わずかに残るミヤマキリシマ
向こうは三俣山・硫黄山
 たくさんの枯れたミヤマキリシマの中で、わずかに生き残ったミヤマキリシマもあった。
 大船山を下りて、平治岳に上がると、ピンク色が残っていた。色はあまりよくないが、その風景はやはり美しい。
 ここは、例年たくさんの人で渋滞する。そのため、上り専用と下り専用の2本の登山道がある。
 

この絶景を見ながら
お弁当を食べた
 昼の1時をすぎて、お弁当にする。この時間帯なので、いい場所があいていた。坊ガツルとそのまわりの山々を見下ろせる絶景の岩の上で、ゆっくりとお弁当をほおばった。
 左から大船山、中岳、硫黄山、三俣山と続く九重の山々が美しい。
 
 

大船山をふり返る
 平治岳を下りるとき、大船山の大きくゆるやかな姿が目の前に広がっていた。
 ここからは、三俣山の反対側を回って下山する。
 

思い出多い九重をあとにする
 午後4時30分、長者原登山口を出発して11時間後、再び長者原に戻ってきた。充実の11時間であった。
 九重連山をふり返ると、そこにはやはり美しい九重の山々の姿があった。

 



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