黒部上廊下、赤木沢 '07.08
<加藤祥倶OBからの山行報告です。>
会社の後輩と酒を飲んで話をしている内に黒部川上の廊下に行こうということになった。
当初はツエルト、シュラフカバーの軽装でと考えていたが、素人でも良いから体力のある
若手の荷物持ちを調達し、岩魚を釣りながら優雅に行こうということになり、テント、
寝袋持参で行くことになった。
メンバー:村田(43)、鈴木(38)、加藤(63)
装備 :8mm20mザイル×2、10mフローティングザイル、テント(3〜4人用)、
つりざお3本
食糧 :4日分(6日分)
(写真 13葉)
8月13日(晴れ)
ムーンライト81号信州で5時過ぎに信濃大町に3人で降り立つ。扇沢でトロリーバスに
乗り替え黒四ダム到着。7時30分勇躍本日のキャンプ予定地(東沢出合先の黒部川本流)
に向けて出発。途中の対岸に渡る「平の渡し舟」は偶数時間に出るとかで、当初は10時
発に間に合うのではないかとの思いもあったが、Sが遅れ12時発にやっと間に合う。S
は更にバテバテになり予定時間をはるかにオーバーし4時20分東沢出合着。本日はここ
でテントを張ることにする。既に10張り程度のテントが張ってあり約半数がツエルト。
当初の目論見では初心者でも体力が有り荷物を持てる要員であった筈のSがこの状態では
明日からが思いやられ、Mと協議する。幸いなことに天候は暫く安定していそうで、不要
不急な物は捨てることとし、食糧2日分、ウイスキー1本他を捨てて行くこととし共同装備
は我々二人が分担、Sには個人装備だけにすれば何とかなるだろうということになる。
本日の夕食のおかずはウナギのかば焼きとサイコロステーキ、Sも元気が出るだろう。
明日からは現地調達の岩魚の塩焼き。本日は新月、満天の星、天の川を久しぶりに見る。
8月14日(晴れ)
7時前に2人パーティーが上の廊下方面に向かう。我々は7時出発。下の黒ビンガで下
ってくる7人パーティーに会う。高天原から来たとのこと。さらにその先で2人パーティ
ーに会う。下ってきたのかと思ったら撤退して来たとのこと。下の黒ビンガは渡渉を繰り
返し通過。口元のタル沢先の難関ゴルジュはヘツリで通過。最後のヘツリは右岸をヘツル
が水流強くトップのMは超人的頑張りで突破するが、残り二人はザイルに掴まるが、水流
に押されなかなか突破できず、ザックを下ろし空身になりやっと岩の上に這い上がる。長
時間冷たい水の中に胸までつかっていたせいでふるえが止まらない。その後、日のあたる
所へ出て休息し震えも治まり一息つく。その後は石のゴロゴロしたところが続き、旧黒五
ダム跡の広大な玉石の川原へと続く。Sのスピードが落ち遅れ出す。中のタル沢出会いの
右岸台地の上に先行の2人パーティーのツエルトが見えるが、我々は先を急ぐ。途中下っ
てくる6人パーティーに会う。このパーティーも高天原から来たとのこと。上の黒ビンガ
は石の殿堂で迫力がある。飛び込み、泳ぎを繰り返し上の黒ビンガを通過し、スノーブリ
ッジを残した金作谷が望まれる右岸寄りの砂地を今日のテント場とする(16時50分)。
盛大な焚火で濡れたものを乾かす。Sは疲れたのか砂の上で爆睡。岩魚は釣れず、さみし
い夕食となる。本日も満天の星、流れ星を久しぶりに見る。
8月15日(晴れ)
4時過ぎに起きると、Sが焚き火番をしている。1時頃からずーっと濡れたものを乾か
していたとのこと。本日の朝食はモチいり味噌煮込みうどん。
6時30分出発。幕営地前からまず腰までの渡渉。せっかく乾かしたものも数分の命。
金作谷出会い先のゴルジュを
ヘツリ、飛び込み、泳ぎで順調に通過する。日向ぼっこしながら休息していると下で泊まっ
た2人パーティーが追い越して行く。赤牛沢手前のトロは左岸を途中まで詰め岩に這い上が
り巻く。その先で下ってくる浮き輪を持った3人パーティーに会う。上の廊下を浮き輪を使
って下るのは楽しそう、もう一度遡りたいとは思わないが楽しく下るのならいいかなーと思う。
高天原温泉に通じる岩苔小谷が左から落ち込んでくる。このころからS遅れ出す。立石奇岩対
岸に絶好のテント場あるが先を急ぐ、川原が広がり所々に砂地のある左岸寄りの所で先行2
人パーティーが泊まる準備中。我々もその少し下の右岸から湧水の出ている絶好の砂地を今
日の泊地とする(14時)。
Sは今日も砂地で爆睡。今日は時間も早く、濡れたものは強力な日差しで乾かす。今日も
盛大な焚火で岩魚を待つが、中々朗報が聞こえてこない。結局今日も質素な夕食となる。夜
は満天の星。
8月16日(晴れ)
6時テント場出発。本日は取りあえず薬師沢出合まで行き、その後赤木沢へ行くか一般登
山道を行くか決めることにする。本日も渡渉、ヘツリ、泳ぎを繰り返し7時過ぎにB沢出合
の大東新道が対岸に望まれるところに達する。S遅れ出す。その後は所々赤ペンキ印の付い
た岩が現れる右岸伝いに進み、9時15分に一般登山道と交差する薬師沢出会いに達する。
3人で協議の結果、Mと私で赤木沢を遡行し、Sはテントを担ぎ一般登山道から太郎平に達
し薬師峠のテント場に設営して赤木沢隊を待つこととする。
9時45分薬師沢出発。赤木沢の出会いまでは1時間もあれば十分と思っていたが、以外
に手強く、着いたのは11時15分であった。赤木沢の出会いは、赤木沢を挟んで上流側と下
流側が滝状になっており、赤木沢も滝となって流れ込み大変きれいなところである。我々は
本流の滝の落ち口の岩の上の浅瀬を渡り、赤木沢左岸から取りつく。赤木沢に入ると、階段
状の滝、滑滝が続き噂にたがわず息をのむ美しさ。4〜5mの滝がところどころ出てくるが、
難なく乗り越せる。黒部川本流では見かけなかったが、これまでに岩魚を3匹見かける。1
3時20分大滝の上部着。その後も小さな滝は現れるがいずれも難なく通過でき、苔の中か
ら水が湧いている水源に到着(14時50分)。ここでタイツ、沢靴を脱ぎ縦走スタイルに
着替える。その後は水の枯れた水路を暫く登る。やがて高山植物帯の中に入り所々這い松が
現れてくる。這い松を避け左方の赤木岳の手前のコルの縦走路に出る(16時15分)。
18時前にはSの待つ太郎平に到着できるだろうと思っていたが、以外に長く、また二人と
もバテバテで予想以上に時間を食い、予定外の太郎山から夕映えに輝く薬師岳を堪能するこ
とになる。Sの待つ太郎小屋前に着いたのは夕闇せまる7時前であった。
薬師峠のテント場はここから15分、休息の後ヘッドランプに導かれ、暗くなったテント
場に到着。既に30張ほどのテントが張られている。尾根筋は流石に沢の中とは違い少し寒
く今回初めてフリースを羽織る。本日は13時間の行動で疲労困憊し食欲なし。2名分のジ
フィーズ五目ごはんを3人で食べる。
8月17日
5時テント場出発、太郎小屋でバスの時間を確認し身支度を整え下山開始。8時20分に
折立に到着。9時半の富山駅行きバスに乗り、富山駅から北陸線、上越新幹線経由で猛暑の
東京駅に3時40分に到着。無事今回の山行終了。
今回の山行は予想外のこともあり全員バテバテになったが、幸いなことに天候に恵まれ、
何一つトラブルらしいこともなく、黒部川上の廊下の青い淵、ほとばしる激流、水に磨かれ
た白い花崗岩、圧倒的な岩の回廊、夜には盛大な焚火の下で満天の星空を楽しむことができ、
そのうえMと私は日本一美しいといわれる赤木沢も遡行することができた。
疲れはしたが充実感のある大変素晴らしい山行であった。

8.14
下の黒ビンガ核心部

口元のタル沢出会いで

旧黒五跡
玉石の河原

上の黒ビンガ

8.15
金作谷

金作谷出会い先
ゴルジュを泳ぐ

日向に出て一息つく

右岸トロを泳ぐ

快適なテント場

8.16
赤木沢出会い

赤木沢

夕映えの薬師岳