登山口に向かって独り林道を歩いていると、後ろから来た車が自分の横で止まった。
「よかったらお乗り下さい」
「ありがとう。でも時間を計っているから結構です」
乗れば20分は短縮できる。でも今日は下見だ。自分の足で確かめなければならない。
それにしても、親切な人たちに出会うのは気持ちの良いことだ。

頂上に着いて休んでいると、「コーヒーどうですか?こちらに来ていっしょに飲みましょう」と 誘ってくれた人がいた。
さっきの車の人たちだ。
見ず知らずの人に気楽に声を掛ける心のゆとりを学んだ。
まだコッヘルを持たず、汗を拭きながら登って来て、ここで熱い飲み物を口にする習慣を自分は持っていなかった。
しかし、その美味しさが、新しい習慣への幕開けとなった。
ぽんぽんと出てくる山の話題に、応じられる知識がなく、もっぱら聞き役に回った。「山は人を幸せにする」と感じた。

一緒に下山して、小川の流れる所で休憩をとった時も、熱い飲み物を頂き、これはいい事を見つけたと思った。
「暑い時でも熱い飲み物が疲れを和らげる」、それに「この親切がさらに疲れを癒す」って事を…。

登山口の売店で「冷たいラムネ」を買った。自分の分だけ払ったが、お釣りが合わないように思えた。考えるより、先ず喉を潤すのが先になった。
親切な人たちとは、ここで別れ、また独りで林道を歩き始めた。

途中で、お釣りのことを思い出した。
「しまった!」
売店の人は三人が同じグループだと思い、自分にお釣りを渡したのだ。
「恩のある人のお釣りまで自分が受け取ってしまったようだ。」
しかし、その人たちの住所を知らない。
「岡崎」の地名と 「阿久津」姓を思い出し、これに該当する電話番号に何度も電話をした。
そして、ついに見つけた! その人の住いを…。

その後、絵葉書が時々届くようになった。
山に行った時に山荘などで買ったであろうスケッチの絵葉書だった。
何通か頂くうちに、絵の中のサインに目が止まった。
おや?「AKUTSU」のサインがある!
前のも取り出して見た。確かに 同じサインがある!
なんと直筆のスケッチだったのだ!
てっきり、その出来の良さに市販品だとばかり思っていた。

………
という訳で、阿久津昭治さんの優れた作品をここで紹介致します。
また、三河くらぶでは、阿久津昭治さんと共にスケッチ山行を定期的に行っていて、卓越した筆さばきを学んでいます。

 

このページは阿久津昭治さんのスケッチアルバムからスキャナーで取り込んだもので、原画はもっと大きく鮮明です。