日本には分布していませんが、サケ科の魚の王者はキングサーモンです。もちろん、アトランティックサーモンも王者にふさわしいサケで、こちらを推すアングラーも多いでしょう。
ところで、アトランティックサーモンは数年間海洋生活をして巨大なサケになりますが、中には約1年しか海洋生活をしないグリルスという小型早熟魚がいます。詳しくは小さなサクラマスとグリルス!をご覧下さい。
キングサーモンにもこのような小型早熟魚がいます。トランプのカードの名前をもじって、キングに対してジャックと呼びます。キングサーモンも数年間海洋生活をして巨大なサケになりますが、ジャックもグリルス同様約1年しか海洋生活をしません。そしてオスです。他のサケでも同様な小型早熟魚がいるのか調べてみました。次の図書を参考にしました。
■サクラマス
降海した年の秋に遡上する魚体がいる。
■シロザケ
一冬だけ海で過ごし、降海した翌年の秋に遡上するオスがいる。(通常は2〜4回の冬を海で越すことが多い。)
■ギンザケ
通常1年間の淡水生活の後、降海する。そして、2〜3年を海で過ごし大きく成長する。なかには、降海した年の秋に遡上する500gに満たない早熟のオスがいる。やはり、ジャックと呼ばれている。
■カラフトマス
通常成熟年齢は2歳(海で一冬を越す)。しかし、降海した年の秋に遡上し海で冬を越さない、体長30cmに満たない小型早熟のオスがいる。
例えばシロザケの場合、私はすべてのシロザケが4年で成熟すると思い込んでいました。もしそうだとしたら、ある川が産卵期に大きな災害に見まわれて卵や稚魚が全滅した場合、その川には、4年に1度ずつサケが帰って来ない年が出現します。何万年もの年月の間に、そのようなことが何回も繰り返されることでしょう。そうなると、あらゆる川のシロザケは全滅してしまいます。実際には、そのようなことは決して起りません。
きびしい自然環境で生き残ったシロザケは、2〜6年と成熟年齢に幅を持たせることにより、そのような危機を克服しています。これはほかのサケ科の魚でも同様に見られることです。また、有名なサケ科の母川回帰性も完全ではなく、なかには生まれた川とは別の川に遡上する個体もいます。そのような、生態系の多様性が、サケ科の魚にとってきわめて重要な生物学的戦略なのです。
サケ科の魚の生態の多様性はサクラマスにも当てはまります。短期降海型サクラマスはサクラマスの重要な生態学的戦略なのです。