10年ぶりの中南米旅行を振り返って

学生時代に僕は1年間休学して中南米を旅したことがある。当時はまさか10年後に今度は嫁さんと2人で同じ地を旅するなんて思いもしなかった。
地球の裏側にある中南米は、日本から最も遠い国々であり、そんな所を一生のうちに2回も長期に旅することが出来た僕は本当に恵まれていると思う。

今回の旅先で出会った人に、僕が10年前にも中南米を旅したことがあるという話をすると、必ず聞かれるのが「10年前の中南米はどうでしたか」という質問だった。

僕が今回の旅で感じた大きな変化は、「街の様子」に見出すことができる。この旅の最初の驚きは、グァテマラのアンティグアを訪れた時だった。旅日記にも書いたが、10年前に僕は2ヶ月この町に滞在したことがある。まあ当時から旅行者は多かったのだが、まだ落ち着いたのんびりとした雰囲気は残っていた。
それが、今や目に付くのは旅行者目当てのレストラン、インターネットカフェ、そして旅行代理店ばっかりという、かなり俗っぽい街に様変わりしていた。

この変化は、グァテマラを旅をしたあと訪れた中南米の国々の一般的に観光地と言われるところでは、どこにでも見られた現象だった。一昔前は、それぞれの街が各自の「色」を持っていたのであろうが、この俗化現象によりどの街の様子ももかなり画一化してしまったのではないかと思ってしまう。
いつまでも、昔のままであって欲しかったという僕の願望は、一旅行者の身勝手な思い込みであることは当然に分かっているのだが、この変化の大きさに一抹の寂しさを感じたのも正直な気持ちだった。

その反面、旅行者にとって便利になったことは間違いなく、今回の旅で僕もその恩恵には充分に預かることになった。
最もその恩恵を感じたのは、今回の旅で1番感動したウユニ2泊3日ツアーだろう。このツアーは10年前は存在しなかった。というか、ウユニの街に旅行代理店など一切無かったのだから当然だろう。
ウユニに行くためには、自分でタクシーをチャーターして行くしか方法がなかった。それでもウユニ湖までしか行くことが出来ず、さらに南にある美しい山々や湖を訪れるのは非常に難しかった。
それがウユニに到着したその日にツアーに参加できるのだから、便利になったことをこの時ほど感謝したことはない。

観光産業が外貨獲得手段として根付きつつある中南米の国々が今後さらにどのように変わっていくのか。その国あるいはその街が持つ文化や景観と観光開発が調和しながら、さらに発展していくことを切に願ってやまない。

さて、もう一つの変化は歓迎すべきものである。
道路とバスが格段に良くなったのである。
未舗装の田舎道が舗装道路となり、一車線の道路が複数車線となり、一般道路が高速道路となっていた。そして、移動時間が短縮されるという広大な南米大陸を旅する旅行者にとっては大変有難い結果となったのである。

さらにバスである。僕が一番嬉しかったのはトイレ付のバスが一般化されたということだ。10年前は南米で一番良いバスが走っていたブラジルやアルゼンチンでさえトイレ付のバスには滅多に当たらなかった。 それが、今や最もバスが酷かったペルー、ボリビアでさえトイレ付バスが結構走っている。
途中のトイレ休憩もなくなり、さらに移動時間が短くなるといいう副産物も持たらした。
おしっこが近い僕にとってはバスにトイレがあるかないかは死活問題。10年前ならば長距離バスに乗る時はその日の朝から水断ちしてバス旅行に備えていたのが、今回の旅行ではトイレ問題に悩まされることも無く精神的にはかなり楽だった。
そして、忘れてはならないのが「セミ・カマ」や「カマ」と呼ばれるデラックスバスの登場である。残念ながら僕たちは座席が水平に倒れる「カマ」には乗る機会に恵まれなかったのだが、「セミ・カマ」でも充分に移動が楽になった。特に夜行バスでは熟睡できるので翌日に疲れが残ることもなかった。

もちろん、変わっていないこともたくさんあった。
それは、パタゴニアで感じた自然であり、各都市の文化の香りであり、遺跡の素晴らしさであり、人の優しさであった。このような昔のままの中南米に触れるたびに、この地を再び踏みしめることが出来た幸せと嬉しさが何度も胸に込み上げてきた。
一方、治安の悪さ、貧困、子供が働く姿、観光客を食い物にしようとする大人たち、これらは不幸にも何の変化も見られなかった。いや、10年前に比べるとさらに悪化の方向を辿っているのかもしれない。

今回の旅で悩んだこともあった。もう中南米の旅が嫌だと思うことも一度や二度ではなかった。
でも、中南米の旅を無事に終えた今ならば声を大にして言うことができる。

「やっぱり僕は中南米が大好きだ!!」

 

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