2004年度 日本魚類学会公開シンポジウム

淡水魚の放流と保全―生物多様性の観点から

 

2004年6月19日(土)

東京海洋大学 品川キャンパス

 

「淡水魚の放流と保全 生物多様性の観点から」

 

 

開催趣旨:

 我が国では,過去30-40年間,人間活動にともない水辺環境が悪化していく中で,多くの淡水魚が生息場,繁殖場を失うことによって急激に減少し,さらに外来魚の増加,密漁などがこれに拍車をかけています.こうした中,そのひとつの対応策として,近年,国内各地でメダカなどの希少淡水魚の放流が住民団体や学校,行政等により行われてきています.こうした魚類の放流は地域の自然環境保全のためのシンボルとして行われることが多いようですが,かつては利用価値が少ないとされていたこれらの魚類が放流の対象とされている現状は,過去数十年間に私たちの身のまわりの水辺環境がいかに劣化してきたかを象徴的に物語っているようです.
 希少淡水魚の放流は,その生息環境や社会環境が整うなど一定の条件の下では,その種を自然環境下で存続させるための有効な手段の一つであり,また地域の人びとの視点を身の回りの自然環境へと誘う上でも効果的な活動であると言えます.しかし一方で,こうした魚類の放流は,研究者によってこれまでしばしば指摘されてきたように,野生個体群や地域生態系にさまざまな影響を及ぼし,時として当初の意図とは逆の効果を及ぼす危険性をはらんでいます.このような危険性が十分に省みられることの少ない現状の中,これまでの魚類の放流の実態を振り返り,そこから派生する問題を多面的に議論することを通して,研究者と魚類放流に携わる人びとの間で共通の認識を形づくることが今日是非とも必要とされています.
 本シンポジウムは,今日各地で盛んに行われつつある淡水魚の放流に焦点をあて,それに関わるさまざまな課題を抽出し,今後の望ましい放流のあり方を模索しようとするものです.特にメダカをはじめとする希少淡水魚の放流に直接関わっている現場の方をはじめ,放流に関心ある一般市民の方,また身の回りの自然環境保全,生物多様性保全等に関心のある方などいろいろな分野からの多数の参加を歓迎します.

 

 

開催日時:

2004619() 午後1 - 5

 

 

開催場所:

東京海洋大学 大講義室
東京都港区港南4-5-7
http://www.kaiyodai.ac.jp/Japanese/

 

 

参加費:

無料(要旨集 300円)

 

 

 

 

 

中村さん

栃木県内におけるミヤコタナゴの保護と放流に関しての発表。

現在県内に4箇所の生息地域が確認されており、保護管理が行われている、また水産試験場にて系統保存を行っている。しかしながら、最近の調査でまったく確認されない地域も存在し、復元のための放流も検討されている。

しかしながら、減少した理由が明らかでないのに放流することが果たして正しいのかと言う議論もある。

また一部に関しては遺伝子解析も行われており、生物多様性の観点からのアプローチも可能である。

中村さんは以前よりイワナの調査も行っており、非常に行動的な研究者である。ゾーニングによる生物多様性の維持等にも積極的である。

 

原田さん

水産と言う立場からの放流を考える。

漁業組合の増殖義務は放流義務と同一視されていることが多く、資源維持や管理方策が不十分なまま放流が行われている場合がある。

今後の流れとしては、産卵床造成や種沢保存などによる増殖も重要となるであろう。

また渓流域におけるゾーニング(源流域は禁漁、上流はC&R,中下流域は放流といった)といった調査検討も必要となる。

 

森さん

根拠ある放流のためのガイドライン作成の重要性をアピール。

他地域からの持込放流(メダカが有名)による遺伝子かく乱などの可能性。行政や教育現場での不理解による間違った環境保護などを改めていくためにもガイドラインは必要。

 

第2部       パネルディスカッション

 

小澤祥司さん

NPOや地域との連帯により、環境教育を充実させて、安易な放流等で自然は豊かにならないことを理解してもらう。

 

小林光さん

法整備による自然環境保護の必要性。

レッドデータブックに掲載されている淡水魚76種のうち、種の保存法で保護の対象になっているのは4種だけ。

行政への働きかけも、淡水魚研究家に必要。

 

前畑政善さん

水族館等における系統保存の必要性。系統保存された魚種の放流の可能性。

 

丸山隆さん

希少魚や在来魚のいる現場での取り組みを第一義に、そしてその周りからの支援の重要性。

 

雑感

今回は希少淡水魚がメインではあったが(逆に言うと、在来渓流魚より危機的な状況)、今後やらなければいけない事は在来渓流魚にもまったく当てはまる事であろう。単に希少種を保存するのであれば、水族館等で系統を保持すればよいだけである。しかし重要な事は今まで、どこにでも居たメダカがレッドデータブックに記載されたり、ミヤコタナゴが生息地で絶滅の危機に瀕していることである。これまでの自然破壊がやがて人間にしっぺ返しとして戻ってくるのは明らかであるのに、相変わらず森林は壊され、渓流は魚道すら無い砂防ダムでズタズタにされている。さらに心無い釣り人によりブラックバスやブルーギルがゲリラ放流され、在来魚が絶滅の危機に瀕している。

本来であれば放流などしないで、自然再生を促すような方策が取られれば、生物の多様性は維持されるのであろう。しかし、すでにそれ以上に悪化してしまった自然がそこにあるのかもしれない。単なる釣り人を楽しませるための放流が必要なのか?釣り人の一人として真剣に考えたい。

当日の抄録集(pdfはこちら)思ったら容量オーバーなのでご希望の方はメイルください。