共同利用研究集会
内水面における魚類の移植・放流と資源管理 2002年11月21−22日 東大海洋研講堂
水産大学の丸山隆先生(京大時代より淡水魚保護に関係していて、淡水魚保存協会の機関紙(廃刊)等にも記事がある)の講演では、魚の移植が神代の昔より行われており、日本においては江戸時代くらいより盛んになった。これは各藩が積極的に行ったようである。
ヘラブナ、ブラックバス、ブルーギル、コイなども盛んに移植され在来魚を圧迫した。
河川、湖沼の釣堀化が進み人々の自然への感受性の低下が起こっているのではとの指摘。
また第5種共同漁業権における増殖の義務も各漁協の野放図な移植放流に繋がるのかもしれない。
中村智幸さん(水産総合研究センター)はイワナ、ヤマメ、アマゴの種苗法流の現状と問題点というタイトルで話された。
昭和初期から国策として続けられてきたニジマスの放流に対し昭和36年に長野県水産試験場が稚魚放流での生残率が低いことを指摘、その後、成魚放流が行われるようになった。
しかしながら、その時点ではまた、イワナやヤマメはそれほど養殖がされていなかった。
昭和50年代前半には発眼卵放流も行われるようになる。
しかしながら、イワナ、ヤマメ、アマゴについては稚魚、成魚、発眼卵のいずれの放流が資源添加効果や対費用効果に優れているか分かっていない。
遺伝的問題として放流魚との交雑により地域遺伝子の消失という事が起こっているようだ。
堰堤によって天然魚と放流魚がかろうじて隔離されている例もある。
病理的問題としては放流魚からの疾病の感染の問題、アユにおける冷水病はイワナやヤマメにも感染するが、自然界での調査はされていない。
社会的問題として漁協の高齢化による効率的な放流が難しくなりつつある。資源増殖が放流に頼り、産卵場整備といった生息環境の保全や改善といった活動にならない。遊魚規則の見直し(禁漁区の設定、体長や尾数制限など)が必要。
内田和男さん(中央水産研究所)はアユの種苗管理について話された。その中で日本での堰堤数は13130、その内魚道付きは3733箇所だと言われた。
藤原公一さん(滋賀県農政水産部)はニコロブナ(フナズシの原料)の種苗放流に関して実験による科学的データを示し環境(ヨシ群落)との関係を明確にした。さらな外来魚の食害にも言明した。
橘川さん(芦ノ湖漁協)はワカサギの自家生産と自然産卵に関して話された。
これまでの外部からワカサギ卵の移植から自家生産、自然産卵の方法を確立した。ワカサギが釣れなくなった原因の一つにブラックバスやニジマス放流の影響もあるようだ。
谷口義則さん(山口県立大学)はニジマスの侵入、定着に関して話された。
日本の河川ですでに何箇所かは外来魚のニジマスが自然繁殖しさらにはその河川での優先種となっている。それによりその河川からサクラマスが絶滅した可能性を示唆。ニジマスが定着する因子をアメリカ等のデータと較べて解析し、本邦においては流量比と水温が関係するのではとの結論であった。個人的にはその他の因子(水生昆虫の捕食や餌)も関係因子として調べる方がよいのではと感じた。
淀太我さん(学術振興会、ポスドク)はオオクチバスとコクチバスの現状と問題点について説明した。詳細な生態特に生殖や食性に関して話され。柔軟な食性(なんでも食べる)が本邦への定着を可能にしたと示唆。両種とも1925年に日本に導入されたが、コクチバスに関してはその後定着を示すようなデータは無かったが1992年に突如として生息が観測されたとの事。非合意のうちに導入された産物に上に形成されたバス釣りの構造上の問題を指摘。
立川賢一さん(東大水産研)はウナギ放流に伴う外来種問題について説明。
ウナギのDNA解析の結果:宍道湖31.4%、三河湾12.4%、新潟県魚野川93.5%が外来ウナギであると言うデータを提出。
ウナギ資源管理の難しさを示唆。
中井さん(滋賀県立琵琶湖博物館)は移植放流の類型化について説明。
同一種、近縁種等の関わりを遺伝的影響などを指標に分類化を試みている。
河村功一さん(養殖研究所)は古座川のアマゴのミトコンドリアDNAハプロタイプ、形態観察により天然種と放流種の差異を解析した。非常に綺麗なデータで、天然種と放流種を鑑別出来る事を示唆した、さらに交雑により在来種が遺伝的影響を受ける事も示唆。
今後のさらなる研究により本邦の在来渓流魚の遺伝的背景が明らかになるものと思われる。
長澤和也さん(水産総合研究センター、日光支所)は魚病の問題について説明。
多くの魚類の感染症が知られているが、アユの冷水病以外は自然での感染実態は明らかでない。また養殖放流魚での病原体検査が十分とは全く言えない。今後各水域での病原体の分布等の調査が必要。
他略