From South Lake to Dusy Basin 2000年8月31日〜9月2日

参加者:三平、重、私

今回は、シエラの山奥に住んでいるといわれるマボロシの鱒であるゴールデントラウトを釣りに行くのが目的である(ということにして「釣り」という言葉に免疫がない三平を誘ったというのが事実に近い)。行き先は、キングスキャニオンナショナルパークの北東端ノースパリセード付近である。登れそうなら14000フィート級の山の一つであるMt. Agassizにチャレンジしようと思っている。

8月31日

午前5時に1333 Gough下で三平と待ち合わせる。実は部屋を出るときに少し遅れたため、三平からと思われる電話が鳴ったのだがそのまま放って出掛けたのは内緒である。5時15分頃に重を予定通りピックアップ。珍しいことにキチンと起きて道へ降りていた。高速に乗り、反対車線の渋滞を見ながら順調に580〜205〜108を走る。ヨセミテ行きなら途中で120に別れるところを、今回はソノラ・パスを通るため、まっすぐ進む。次第に山道になり、右手に釣りよさそうな川が見えてくるが、まずは我慢してまっすぐ緑に覆われた峠を越える。峠近くはなかなかの急な山道であった。峠を越えると次第に森林から開けた景色に変化し、しばらく行くとUS395に突き当たる。全く他車がいないため、スピードもだし気味になってしまう。道の脇に湯気が見えるので何かと思うとどうやら温泉が川に湧いているらしい。イェローストーンのようである。興奮した我々は見に行こうとしたが、裸のオッサンとオバサンが既に入っており邪魔をしては悪いので遠慮したものの、オバサンのパイナップル並みの巨乳はしっかりと拝むことができた。

  出発 

10時直前にタイオガ・パスとUS395が突き当たる辺り、リー・バイニングのレンジャーステーションに寄る。ここでパミットをピックアップし、ベア・キャニスターを借りてさらに南に向かう。ドライバーが三平に代わったところ、あっという間にパトカーに止められ15マイルオーバーで切符を切られる。三平いわく、三度目の正直であった。12時前にはサウスレーク・トレイルヘッドに到着、居合わせたカップルのバックパッカーに写真を取ってもらった後、登山を始める。天気は良い。

 美しい湖

緩やかな登りを淡々と詰めていく。ロングレークやサドルロックレークなどいくつもの湖を通り過ぎる。やはりシーズンも終わりとあってあまり積雪は無い。6時くらいには最終目的地のデューシーベイジンに到着できそうだったので、やはりビショップ・パスを一気に越えてしまうことにする。 

 しげ

 ビショップ・パスの遠景

稜線の東側の最後の湖であるビショップ・レークスを通り過ぎるあたりから、重と私の歩みがのろくなる。やはり、車を使って3000mの高度まで一気に来たツケだろうか、呼吸が苦しい。パスまでの急登は急ながけのつづら折になっているが、もうフラフラしながら気絶寸前である(重は気絶していたらしい)。急に立ち上がったり、ちょっとジャンプしたりすると頭が痛くなってくる。一方、三平は海軍兵学校、じゃなかった海上保安大学校での激しいトレーニングの成果か、全く平気であり、軽い足取りでホイホイ登っていく。私の持っていたビール2本他を持ってもらってもその勢いは衰えることは無く「先に登っているから」と行ってしまう。超人である。

 ひたすら登る

ビショップパスの頂上(11972ft.=約3600m)に着くと、トレイルヘッドに居たカップル(こいつらも強い)と三平が待っていた。再度ここでも記念写真を取ってもらう。目的地までの下りは打って変わって速いペースで進む。しかし、15分も歩くと次第に頭がフラフラしてくる感じであり、これはもう完全に高山病的な症状である。去年ミネラルキングからSaw Tooth Passに登ったときに体験していなければ、もっと焦ったかもしれない。

 一息

それでもなかなか着かないと思っていたら突然目的地の湖Lake 11393が目の前に見えてきた。この頃にはもう6時頃であり、少し雲があったのと地形的な理由で日差しがなくなったので、とたんに寒くなってきた。 個人的には屏風のようにそそり立つ険しい岩峰に囲まれたストイックな美しさがある湖だと思うが、三平に言わせれば「火星のような場所」というほど殺風景な場所でもある。 確かに生き物の気配があまり無いという点で行ったことが無い異星に居るような気がしてくる場所である。

 テントを張り、急いでスパゲティ・海草サラダの代り映えの無い飯を作るが、もう寒くて死にそうになってくる。比較的平気な重を除き、三平と私はブルブル震えながら殆ど飲み込むようにタラコスパゲティを胃へ送った。せっかくのビールも飲む気にならない。 テントに入るとさすがに少し暖かい。しかし、寝袋に入っても足先が冷えるのと軽い頭痛と胃もたれと便意で気分は最悪である。9時頃に思い切って、キジ打ちに行くことにした。外は曇りであり、放射冷却がない分だけましかもしれない。真っ暗闇でクマを警戒しながらお尻を出すのは嫌だったが仕方が無い。テントに戻ってしばらく立てひじで寝ているとようやくつま先も暖かくなり、喉が異様に渇いたため1時間おきに水を飲んでではあったが、寝ることができた。

9月1日

 まさに火星

火星の朝である。

ゆっくりするつもりだったが、7時30分頃には目が覚めてしまった。個人的には昨日寝るときよりはよりははるかに気分がよい。が三平は喉が痛く頭痛がするという。どうやら風邪を引いてしまったようだ。しきりに「だまされて火星に連れてこられた」と責められる。雲が多くなかなかテント場に日が差さないため、いつまでたっても寒い。我々がテントを張ったLake 11393のほとりからは、Mt. Agassiz、Thunderbolt Peak、North Palisadeと14000フィート級の鋭い岩峰が見えるが、頂上には雲がかかり、何か実に寒々しい。それでも何とかパワーうどん(我々の用語でインスタントうどんに角切りにした餅・ふえるワカメちゃん・ニンニクスライスを加えたもの)を食い、朝食を済ませる。昨日一本も飲めなかったビールを無理やり飲んでみる。

ふと周りを見ると人のような生物がいる。

これはいったいなんだろうか。そこで、顔面部分を拡大してみたのが次の写真である。

やはり「火星人」であった。

それはさておき、寝ている三平を置いて釣りを行うことにした。しかし寒い。釣りざおを振っていてもどうも気が重い。こんなところで釣れるのだろうか?と思いながら竿を振っていると、三平がやって来た。重によれば私が釣りを始めるとすぐそわそわし始め、どうにも我慢が出来なくなってやってきたらしい。三平は浅瀬に出ていたらしい大魚を見かけると、もう血圧が一気に上昇し、爆発する脳内麻薬により寒さや頭痛も感じなくなるようで、おもむろに釣りを始めた。 私も魚目撃のニュースに気を取り直し、釣りを続ける。と、何の気なしに投げたエルクヘアーカディスに来た!!水中で踊る魚体が金色っぽい!!慎重に取り込むと、黄色い魚体と赤い側帯のコントラストが眩しいこれまでに見たことがない鱒だ。ついに火星に住むゴールデントラウトを釣り上げた。うれしくなった私は皆に見せびらかしてしまった。

Golden Trout

赤い側帯があり、魚体の前半部下半には殆ど斑点が無く、かつ黄色みが強いこのタイプはVolcano Creek Golden Troutと呼ばれるタイプではなかろうか。本来の生息地はキングスキャニオンNPをもう少し南に下ったボルケーノ・クリークである。公的プログラムでこれを生息可能な湖水に移し、個体数の増加を図っているわけである。もう一匹釣った少し小さなゴールデンは少し銀色味が強かったものの、上半身?の上部の黒点が殆どない(写真は白く飛んでしまった)タイプであり、より典型的な模様と言えるだろう。この黒点は日焼けであるという説があるが真偽の程は定かでない。 その間に三平も一匹釣り上げる。調子の悪い三平は何匹も合わせそこなったらしい。

 雪だよ!

ところが、血圧が上昇気味のところへ、突然冷水を浴びせ掛けられた。 何と、雪!が降り出した。昨日まで8月だぞ、おいこら、と言いたくなるが、最初はちらちらと降っている雪は無情にも徐々に強くなって来た。潮時と思い、釣りを続けていた三平を呼び返し、テントを撤収して下山することにした。重がご飯を炊いていたので急いでオニギリにする。そうこうしているうちに、最初は「積もんないよ」と高をくくっていた雪が見る見る積もり始め、周りは徐々に銀世界である。12時に出発する頃にはトレイルにまで雪が積もり始めるありさまである。気温も摂氏2〜3度しかないだろう。とにかく早くビショップ・パスを越えたいということで急いで引き返す。パスまで来ると雪はやや小降りであり一安心である。雪につかまらないように急いでさらに下りつづける。急坂を降りながら「よくこんなとこに来よったわ」と重は感慨深げである。 ロングレークまで降りて来ると、たまに雪が風で飛ばされてくる以外は、晴れていて暖かくすらある。ここで休憩することにした我々は重に茶を淹れてもらっている間に釣りをし、数匹のブルックトラウトを釣る。

 

ここでキャンプしても良かったが、大事をとって下まで下ることにし、ひたすら下りつづける。途中で登ってくるパーティと何組かすれ違ったが、皆上で雪が降っていることを知っているにも関わらず、ニコニコして登ってくる。異常である。やはり白人の丈夫さにはかなわない。5時半頃にはサウスレーク・トレイルヘッドに戻ることができた。 さて、やはり暖かいところでキャンプしたいということになり、車で2500mくらいのところにあるキャンプ場まで下る。メシを作るのも止め、近くにあったレストランまで食べに出掛けた。ワインを飲み、暖炉の火で暖まりながらステーキを食っていると、朝には火星にいたことが嘘のようである。テントに戻り、なかなか燃えない薪を燃やしてキャンプファイヤーを静かに楽しみ、寝た。1日が2〜3日分に感じられる本当に長い日であった。

9月2日

今日は帰るだけなので、釣りをすることにする。まずはパワーラーメン(我々の用語でインスタントラーメンに餅の角切り・ふえるワカメちゃん・ニンニクスライスを加えたもの)を食らった後、キャンプ場の前の川ビショップ・クリークで釣りである。昨日のレストランには50センチはあろうかという魚を抱えた写真が大量に飾られていたが、この小さな流れであんな巨大魚が釣れるのだろうか。林・茂みの中で釣りをする感じで非常に竿が振りにくい。テントをたたみ、上流へ移動しながら数匹の活きがいいブラウントラウトを上げたが、巨大魚にはついぞお目にかかれなかった。三平はここで尺上の大物を掛けたが、おニューのOrvisのロッドが柔らかくて上手にコントロールできないうちに岩の下に潜られてしまい、逃してしまったらしく、いつまでもそれを嘆いていた。

12時頃に出発し、ビショップの町でサンドウィッチを食い、US395を往路とは逆に北上する。往路で見た温泉に入りたかったのだが、帰りにはなぜか見つけることは出来なかった。オバサンの特大巨乳はマボロシだったのだろうか?雪がうっすら積もったソノラ・パスを逆向きに越えると、往路で釣りを我慢した川=ミドルフォーク・スタニスラウスリバーである。今回は我慢できないため、またまた釣りを始める。三平は明日から便宜供与があるにも関わらず、もう歯止めが利かない状況である。ここでは、パーマークが付いた若々しくて元気が良いレインボーが食いついてくる。 夕方になるとさらに反応が良くなったが、6時で切り上げて帰ることにした。重は我々が釣りをしている間、さぞや暇だったに違いない。再びスマン。今回は早く出たせいもあって午後10時頃には家に帰り着くことができた。

 参考文献: Sierra South, 6th Edition. Wilderness Press, Berkeley, CA. 1993. pp138.Sierra Trout Guide, by Ralph Cutter, Frank Amato Publications, Portland, OR. 1991. pp20  by Keisuke T. All copyrights reserved.