三 郎 ガ 岳
(879m)

三郎ガ岳
               

 奈良・室生の山々では、倶留尊山を長男として住塚山は別名次郎岳ともいい、
 その三男坊とされているのが三郎ガ岳である。 

 この山塊は南北を由緒ある古道に挟まれ、北麓には「女人高野」室生寺へ通じる室生古道が、
 南麓には伊勢神宮へ至る伊勢本街道がそれぞれ走っている。
 周辺の山里は昔日の風景を今においても色濃く残しているようである。 

 高井から仏隆寺を経て、前衛の高城山から三郎ガ岳まで縦走したのち、室生寺へ向かうコースをとった。




近鉄大阪線榛原駅から奈良交通バスに乗り、高井で降りる。
「左室生山道」と刻まれた石標を見て、舗装された道を40分も登ると仏隆寺山門下にたどりつく。

真言宗室生寺派に属し室生寺の南門にあたる仏隆寺は、
850年に弘法大師・空海の高弟である堅恵により開かれたと伝えられている。
山門まで一直線に伸びる石段右の樹齢900年という桜の木は、
周囲が7.7mもある巨大な根元から11本に分岐しており、県下で最大最古とされている桜の大木である。

桜の大木と長い石段

この寺は大和茶発祥の地ともされ、空海が中国から持ち帰った茶の苗をここで栽培したものが
全国に広まっていったという。とても素朴な雰囲気が感じられる寺である。


大和茶発祥伝承地の石碑 本 堂



仏隆寺山門下の分岐で室生古道を左に分けて上俵の集落を抜けていくと、左手に「高城岳」「三郎岳」を指す道標を見る。
ここが登山口で桧林の中を登り雑木林の急坂を過ごせば、高城山の山頂(標高815m)に出る。

長い台地状の山頂には祠が祀られ山の説明書きが立ち、
額井岳や貝ガ平山、鳥見山などの榛原北部の山々や音羽三山から竜門岳にかけての稜線が眺められる。

東屋の横から道標に従って三郎ガ岳への縦走に入る。 


登山口 高城山の山頂



桧林が周りを覆い足元に熊笹が茂る中、斜度があるアップダウンを繰り返していくつかのコブを越えていく。
最後の急坂を登りきれば、二等三角点のある三郎ガ岳の小さなピークである。

三郎ガ岳への縦走路 熊笹の急坂



二等三角点のある狭い三郎ガ岳のピークからは、高城山を指呼の間にして住塚山や古光山などの室生火山群の山々や、
高見山、鳥見山、竜門岳などが見渡せてほぼ360度の展望が広がっている。


三郎ガ岳頂上(右奥は高見山

高城山への稜線

住塚山(正面)と古光山(右奥) 鳥見山(左奥)と貝ガ平山(右奥)



展望を楽しんだあとは、頂上の南側へ急傾斜の坂を横に張られたチェーンを頼りに降っていく。
傾斜が緩まり岩壁に彫られた石仏への横道を左に過ごすと、廃家が建つ石割峠と血原橋方面への分岐である。

室生寺へは血原橋方面が近いが、伊勢本街道を少し歩くために右の石割峠方面へ向かう。
薄暗い植林帯の道を降って出会う拡幅の広い道が伊勢本街道で、これを左にとる。
木立に覆われうっそうとしつつも、かつて旅人が往来した道であったことを思えばどこか風情も感じられる。

石割峠と血原橋の分岐 伊勢本街道出合い

石割峠 伊勢本街道



石割峠を越えて街道を右に分けると石割の集落にさしかかり、明開寺跡の前に出る。
山門をくぐると寺跡に礎石だけが残っており、時の流れを感じずにはいられない。


明開寺跡入り口 明開寺跡の礎石



明開寺跡からは、山間部の舗装道を進みいくつかの集落を抜けていく。
不動野橋でバス路線の道に合流してから北上し、室生の里が近づいてくれば、
神域が杉の巨木に覆われた龍穴神社を右手に見る。

この神社は延喜式内の古社で室生寺よりも古く、雨乞いの神様を祀っており、
神域奥には龍穴と呼ばれる洞穴があって、ここに雨や雲を司る龍神が棲むとされているという。

龍穴神社



さらに進むと室生寺の門前町に入り、右手に太鼓橋が架かる室生寺参拝口に着く。

奈良時代末期、この地で山部親王(のちの桓武天皇)病気平癒の祈祷がかなったことから創建されたとされる室生寺は、
真言宗室生寺派総本山であり、真言宗総本山の高野山が明治まで女人禁制を堅持していたのに対し、
早くから女性の参拝を許してきたことから「女人高野」と呼ばれている。春のシャクナゲや秋の紅葉の名所としても名高い。

室生寺太鼓橋前

外塀と門

朱塗りの太鼓橋を渡り仁王門をくぐる。自然石を積み上げた鎧坂の上に伽藍がたたずんでいる。
平成10年の台風で損傷した国宝・五重塔も、今は修復され元の美しさを取り戻している。
息の切れる石段を登りつめて奥の院までたどるのもよいであろう。

室生寺前からは奈良交通バスに乗り、磨崖仏で有名な大野寺を過ぎて近鉄室生口大野駅へ。


鎧 坂 五重塔



 
 この室生周辺は、室生火山群の峰々を東に眺めながら室生寺を中心として
 赤目四十八滝、室生ダムなど多くの見どころを抱えたつつ、里山の奥に日本の村の原風景が点在する地域である。
 奈良・榛原や三重・名張の市街地の中間に位置し、それらから距離的に近いものの
 山間部へ少し入りこめば、まわりの光景は一変するような感覚を覚える。
 
 室生寺の西南にそびえる三郎ガ岳も、地元の人たちと登山者だけが歩く、この地域の静かな一峰であるに違いない。
 



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