鳥 見 山

(734.6m)

                                 鳥 見 山


 奈良・榛原の町の北方には、秀麗な山容をもつ大和富士・額井岳や
 貝の化石が出土したという貝ガ平山などの山なみが東西に走っている。
 その西端で鳥が大きく羽根を広げたような稜線を見せているのが鳥見山である。

 かつて初代・神武天皇が皇祖天神を祀った山であるとされており、
 中腹には鳥見山公園が整備され、東海自然歩道も通じている。

 榛原から鳥見山へ登り、東海自然歩道をとって高束城跡、まほろば湖を経て、長谷寺へ向かうコースをとった。




近鉄大阪線榛原駅の南側から東進し、国道の手前の筋を左折する。
近鉄の高架をくぐると巨大な石の常夜灯や石に刻まれた道標、本居宣長が宿泊したという旅篭があって、
江戸時代に伊勢参りが盛んであった頃、伊勢街道の宿場町として栄えた当時の面影が今に残っている。

石の常夜灯 「右いせ本かいどう 左あをこえみち」と刻まれた道標


本居宣長が宿泊したという旅篭



商店街を抜けて広域農道を渡ると田園の風景が広がってくる。
道標のある三叉路を右にとりゆるやかに登っていくと左に登山口がある。

田園沿いの道 登山口

しばらく行くと東側が開けた林道に出るが、ここから仰ぐ額井岳は大和富士と呼ぶにふさわしい勇姿である。
すぐ左の分岐から再度山道に入り薄暗い植林の中の急坂を登っていき、
あたりが明るくなってくると鳥見山公園にたどりつく。

額井岳 鳥見山公園



鳥見山公園は山頂に近い台地に整備された高原状の自然公園で、
「日本書紀」に初代の神武天皇が皇祖天神を祀ったと記されている
「鳥見山中霊畤跡(とみやまなかまつりのにわあと)」の石碑や勾玉池、展望台などがある。
春のツツジの名所として名が知れるとともに紅葉もすばらしい。散策するのにとてもいい場所であろう。


「鳥見山中霊畤跡」の石碑 勾玉池



公園の展望台方面へ伸びる階段を登り、東海自然歩道との交差を過ごして山腹道を上へたどる。
このあたりは南側が大きく切り開かれており、真下に公園を見下ろしながら、
西は音羽山から竜門岳へいたる稜線、正面は榛原の町の向こうに伊那佐山、
東は三郎ガ岳から室生火山群までの展望が楽しめる。

切り開かれた山腹の道 公園の向こうに榛原の町と伊那佐山



 稜線まで登りきると桧に覆われた道となって、いくつかの小さいコブを越えると鳥見山の山頂に着く。
 木に掛けられた山名板と四等三角点があるピークから先は、貝ガ平山への縦走路が続いている。

 
鳥見山山頂



山頂からは、来た道を東海自然歩道との交差まで引き返し自然歩道を右にとって、長谷寺方面へ向かう。
ここから長谷寺まではずっと東海自然歩道を歩くことになる。
鳥見山公園を抜け舗装路を進むと植林帯の中の平坦な道を通るようになる。

桧林の中の東海自然歩道の道標 漏れ日に照らされて



高塚山への登りとなり傾斜が増してくると、道沿いに高束城跡を見る。
東海自然歩道の案内板によれば、898年に長谷寺と関係した藤原家賢の住居として建てられ、
戦国時代の1,564年に松永久秀の攻撃により落城。山頂には礎石と思われる石と馬乗石と呼ばれる岩が残るという。

案内板の後ろから右へわずかに登ると高塚山ピークである。
山頂の小広い広場には礎石か馬乗石かはわからないが、それらしき巨石が地面に埋もれている。

高束城跡の案内板

高塚山頂と埋もれた巨石


自然歩道に戻って高塚山の下りに入ると石畳の道がしばらく続く。
高束城への道として敷かれたものであろうか。

石畳の道を下りきって、口倉の集落にさしかかると右手にまほろば湖(長谷ダム)の湖面が見えてくる。
集落を過ぎて出合う車道を右にとって、まほろば湖へ進む。

桧林の中に伸びる石畳の道



まほろば湖はダムに堰きとめられた山間のダム湖であるが、奈良らしい好感の持てる名前であろう。
南岸沿いの車道をたどりダムの上を通って対岸へ渡る。
ダムの上からは、湖面の向こうに浮かぶ鳥見山の稜線が望むことができる。

長谷ダム まほろば湖の奥の鳥見山



対岸からバスの路線道に出て、山裾を巻くように進むと長谷寺の山門前にたどりつく。

真言宗豊山派総本山で、西国三十三カ所の第八番札所でもある長谷寺は、
春のボタンと秋の紅葉の名所として知られ、山門から本堂までの登廊や本堂外舞台、五重塔などの伽藍も見ごたえがある。

長谷寺山門前

登廊の入口

この寺院は、686年に道明上人が天武天皇の病気平喩を祈願して千仏多宝塔を建立したことに始まり、
本尊の十一面観音像は国内最大の木造仏といい、本堂にたたずむ大きな御姿はすばらしい。
源氏物語や枕草子にも「初瀬詣」として登場し、花山法王が詠んだ
「いくたびも まいる心は はつせ寺 山も誓いも 深き谷川」の歌は印象に残る。

長谷寺山門前から土産物店や旅館などで賑わう門前町を抜ければ、近鉄長谷寺駅までわずかである。

本堂と登廊

外舞台から見た登廊と山門


本堂欄干から見る五重塔



 
 榛原から鳥見山を経て長谷寺へ向かうこのコースは、歴史探訪ハイキングとしてなかなかよい。
 旧宿場町の名残りが残る榛原の町にはじまって、神武天皇ゆかりの鳥見山から高束城跡、
 登廊や五重塔が印象深い長谷寺まで、まほろば湖を含めて見どころが多く飽きさせない。

 全行程は約12キロで距離もほどよく、真夏意外は季節を問わず楽しめるであろう。
 長谷寺の拝観に時間をかけるならば、少し早めの出発がいいかもしれない。
 



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