予てから、計画していた北岳バットレスに2001年九月の十六〜十七日で行ってきた。

朝7時に入江家に集合し、田中さんのハイエースで一路、高速をめざしたのだった。途中パーキングで朝食をとり甲府南のICで一般道に降りコンビニで今夜の食料を買い52号線から南アルプス街道で広河原に向かった。小野寺君の携帯に頻繁にメールがあった。(なにか急用でもあったのか顔色が悪い)先週の台風で早川がかなり増水しており道路が通行止めで、迂回する場所があった。「もう近いですねー」なんて言っていたら、突然トンネルのゲートがしまっており、通行止めになっていた。「なじんゃこりゃー」・・・先週の台風の影響で通行不能であった。いきなり「敗退」の文字が脳裏に浮かび気が抜けた。しばらく悩んでいるとバイクの兄ちゃんが広河原方面からやって来て、ゲートを抜けられず困っていたので助けてあげた。どうするか悩んでいると山道から降りてきた人が昨日バスで広河原に行き、北岳を登り農鳥岳から降りてきた、とのことだ。そうこうしているうちに「大菩薩でキャンプでもしよう」に決まり車を高速に向けて走り出した。しかしさっきの「バスで広河原に行き」と言うのが気になり、夜叉神峠越えの林道で広河原まで行くことにした。すると以外にも、すんなり広河原に着くことができ(ラッキー)いそいで支度をし、いざ出発。白根御池小屋をめざし、たんたんと歩くと傾斜が次第にきつくなってくる、所々休憩を取りながらひたすら登る。今晩の鍋に入れるキノコを探すと、ナラタケやチャナメツムタケが採れた、やがて青いトタン張りの建物が見える、白根御池小屋だ。なんとか明るいうちに着くことができた。受付をすませ、さっそくテントを設営する。設営が終わる頃には暗くなり始め、すぐに食事の準備をし「キノコ鍋うどん」で一杯やり8時頃にはシュラフにもぐる。(星が手に届きそうな夜だった)夜中に寒さで目が覚め、なかなか寝付けなかった。小野寺君の時計のアラームが4時になり目が覚める、寒くて起きる元気が出ないが「早く行かなければ」というおもいで何とか起き、スープとパンで朝食を取りテントをかたづける。登攀に必要なギヤをアタックザックに詰め込んで荷物を小屋に置き、バットレスめざし出発する。大樺沢を詰めていくがガラガラで歩きづらい、見上げると青空の中にバットレスが光っていた。意外とBガリーの取り付きまでが時間がかかる、息を切らしながらやっとのことでBガリーの取り付きに着いた。ここからがロープを出すクライミングの始まりだ、フラットソールに履き替え私がトップで行かせてもらう、気合を入れてクラックを登り適当な所でピッチを切る。この上もやさしく、問題なく下部岩壁帯をこなしCガリーを上り詰め第四尾根の取り付きテラスに着いた。1ピッチ目またもやトップで行くが、ここは出だしがいやらしくレイバック気味に上がり左足をクラックに突っ込み強引に越える。2ピッチ目は簡単であった、だんだんガスが出始める。3ピッチ目は「白い石のフェイス」と呼ばれる所だ、特別むずかしい所もなく快適にロープを伸ばす。小野寺君がユマールの操作をやりづらいと言っている、今後の課題だ。4ピッチ目いよいよここからが空間に飛び出たようなリッジに出る。ここは短く10〜 5mぐらいか、第一のコルと言うところでピッチを切る。第二のコルの出だしが核心部でX級と言われている。確かにホールドが細かく右に振られると中吊りになりそうな感じだ。私がトップで行く、爪の先ほどの細かいホールドをひろいながらシューズのフリクションを効かせて慎重に攀じると思ったほど難しくなくW級ぐらい。次にナイフリッジがあらわれた、両側がすっぱり切れ落ち、晴れていたら素晴しい高度感が味わえるだろう。あいにくガスで何も見えないのが残念だ。四つん這いで上がっていくとやがてマッチ箱のピーク、狭い場所でビレイするのに苦労する。Dガリー側に15mほど懸垂下降で降りることになる。(ここで落ちたらケガではすまない)田中さんがトップで行く。続いて小野寺君だ「コエー」と言いながらじりじり降りていく。最後に私が降りるがおり始めが緊張する、ザイルが10.5ミリなのでエイト環のすべりが悪い。これで何とか核心部を越えた。次のピッチはマッチ箱から見たときは難しそうに見えたが、実際はホールドが豊富なクラックとフェイスで問題な く登る。6ピッチ目は事実上最後のピッチだ、田中さんがトップで行くが上部の枯れ木の所でロープの流れが悪くなるので少し手前でピッチを切った。あとは傾斜のゆるいリッジを登る、歩いても行けそうな所だが念のためロープを出す。やがて登攀終了点に着き「やったね」なんていいながらシューズを脱ぐ。ケガも無く無事に登れて最高、あとは踏み跡をたどり、やがて日本第二の高峰、北岳山頂だ。記念撮影をし、朝仕込んだ赤飯を食べる。ゆっくりしたいがそうもいかず、早々に下山する。

ここからの下りが想像以上に長く、白根御池小屋が見えてからもなかなか着かずにバテバテだった。小屋でジュースを飲み荷物をパッキングし直す、このクソ重いザックを背負い広川原まで行くのかと思うと気が重い。しかし捨てるわけにも行かず出発する。休憩を取りながら黙々と歩く、あえぎながらやっとの事で広河原までたどり着いた。本当に長い下りだ、約12時間の行動であった。帰りに、ガラガラにすいている怪しいラーメン屋でラーメンを食べビールで乾杯し高速道を八王子に向かい、今回の山行を無事終えた。


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