ニセイノシキオマップ川(”天国への階段”)

2002年8月4日(日)


【地図】ニセイカウシュッペ山 1/2.5万
【メンバー】
  K.K. (HUSV X)
  T.T. (HUSV X)
  Y.O. (HUSV X)
【予定の行動】
  8/4:札幌発 01:30−05:30 層雲峡ニセイノシキオマップ林道途中車止め 06:00− 07:45 069下降沢出合−08:45 F1下−11:15 F3上−12:00 南稜大槍基部− 12:30 c1550コル−14:30 069下降沢出合−16:00 車止め下山
【実際の行動】
  8/4:札幌発 01:20−04:50 層雲峡ニセイノシキオマップ林道途中車止め 05:30− 05:45 c645橋跡−06:00 最終堰堤−07:00 069下降沢出合−08:00 F1下− 11:15 F3上−12:15 南稜大槍基部−13:00 c1550コル−15:45 069下降沢出合− 16:50 最終堰堤−17:05 c645橋跡−17:20 車止め下山

バイトは忙しく、研究は遅々として進まない。 精神的に追い詰められてくるし、だから余計に物事がうまくいかない―
このところずっと負のスパイラルの中でもがいていた。
だから少し難し目のクライミングをして何かをふっきりたかった。
土曜の夜発、もしくは日曜の朝発で行ける!!くらいの沢。
白羽の矢を立てたのは、北大雪ニセイカウシュッペ山に突き上げるニセイノシキオマップ川、通称「天国への階段」だった。

「ニセイノシキオマップ」とは、アイヌ語で「峡谷の中央にあるもの(川・山)」を意味する。
峡谷とは、言うまでもなく石狩川によって作られた層雲峡の柱状節理の岩壁のことだ。
層雲峡に向かって石狩川に沿って車を走らせると、次第に周囲に絶壁が見え始める。
しばらく進むと「高山」というバス停があり、そこがニセイノシキオマップ林道の入り口となる。
名前の通り、峡谷の中央、というわけだ。
その少し先には発電所があるのでそれを目印にするとよい。
僕はついこの前の3月に使った林道なのですぐわかったが、初めて来たら入り口はわかりづらいかもしれない。

事前に営林署に林道の情報を聞いたが、「今担当者がいない・・・」ということで、林道状況は判然としない。
整備してないので、年代もののミニカでは途中までしか入れないだろうと踏んでいたが、正にその通り。
ほとんど傾斜が無いにもかかわらず、途中で苦しそうになり、歩くのより遅くなってしまう。
何か調子がおかしいとは思いつつも、仕方ないので途中で車を残置。
早めに着いたのでゆっくりと準備をして出発。
天気予報では朝のうち曇で午後から晴れ。
ドライブ中から霧雨が降っていて、まだそれが続いていた。
こんな天気ではテンションは上がらない。

林道を進むと次第に轍が深くなり、そのうち倒木が道を塞ぐ。どっちみち、終点までは入れなかったわけだ。
c645の橋は春の時と同様に架かっていない。
春にはわからなかったが、橋の残骸が河原に転がっている。そういうことか。納得。
そこからも荒れた林道がしばらく続く。
地図上では林道はc670二股辺りまでになっているが、最終堰堤まで続いている。
(堰堤工事用の林道なんだから、当然最後の堰堤までは続いている)
最終堰堤は地図上よりももう少し先にある。そこから入渓する。

最終堰堤の上は様相が一変する。
山スキー部OBのAO山さんの記録にブタ沢と書いてあり、散々けなしてあったが、頷ける。
「日本ブタ沢100選」というのがあったら、選ばれるのは間違いない。
悪天のためかかった深いガス。鬱蒼とした沢岸。沢に散在する倒木。あちこちにゴロゴロとある大小の石。
まるで「賽の河原」を思わせるような様相だった。気味が悪い。

この沢は下流・中流部は何も無い。
若干滑りやすい石の河原を歩き、倒木を乗り越え、蜘蛛の巣を払いながら進む。
・1069手前の左岸から入ってくる枝沢は水流がある。
これを・1069二股と間違えた記録もあるが、しっかり方向を確認すれば間違うことは無い。
この枝沢の手前に一瞬一枚岩が出てきて沢様の変化を予感させるが、そんなことはなく、すぐブタ沢に逆戻り。
・1069で一服する。

・1069から先も特に何も無い。やがて伏流しガレになる。
c1250右岸からの枝沢は水流のあるナメになっている。
その辺からF1の辺りのゴルジュ地形やF1が見える。程なくc1350二股に着く。
右股はハングした10mくらいの滝になっている。
たぶん平山ユージとかを連れてこないと登れない。
そんな馬鹿なことを考えながら左股に入るとすぐF1がある。
ここで滝登りの準備を兼ねて休憩。
さて、ここからが「天国への階段」の始まりだ。

F1は5〜6mの滝。
右岸が階段状で簡単だが、シャワークライムとなる。左岸は濡れずに登れるが、若干難しい。
今回は簡単な右岸を行った。黒崎リード。確保のアンカーはハーケン。
ホールドもスタンスも豊富に有り、岩登りとしては簡単だが、水流が直接顔にあたるのが辛い。
窒息しそうになりながらなんとか越える。
水流が辛いので念のため後続は確保する。
まだ天気が悪いうえにたっぷりと濡れてしまい、非常に寒い。

F1上からF2まではなんも。すぐにF2に着く。

F2は3段100mくらい?の滝。(人によっては2段としている)
ここは本当に階段状なので確保無しで登る人も多い。
黒崎トップで沢中を行く。
1段目・3段目はなんもなのでフリーで登る。
2段目は若干立っていて、少しぬめっているので、念のため後続にザイルを出す。

F2からF3の間では枝沢が入ってくるが、右右と選んでいけばF3に出る。

F3は10mの滝。これが核心である。
右岸基部にリングボルトが5個くらい有る。それでアンカーをとる。
右岸を登っているパーティーが多いが、のっぺりしたフェースで見たところホールド・スタンスが少ない。
左岸は割とホールド・スタンス豊富だが水流を浴びることになる。
右岸をちょっと登ったところにバンドが有り、その少し上に残置ハーケンがあるので、
協議した結果、右岸を登り、途中から左岸水流中に移って登ることにする。
黒崎リード。
右岸を登り、残置ハーケンにランニングを取る。
水流中に移るも、浮石が多く、なかなか苦戦する。
途中、気休め程度にしかならないがハーケンを打ちランニングをとる。
水流を浴びながらのハーケン打ちは厳しい。
岩登りとしてはW級くらいのムーブだが、水流を浴びること、水流でホールド・スタンスが見えづらいこと、
浮石が多いことを考えるとそれよりも難しく感じてしまう。
少なくとも同じ!!のグレードが与えられているエサオマントッタベツ川ガケノ沢や豊似川右股沢には
F3と同じくらいに難しい登りはなかったように思う。
ここも後続のためザイルを出す。

F3上から少し登って、安全なところで一服する。
この辺りから天気が良くなってきて、やっと夏らしくなる。
地獄から天国へ、といった感じだろうか?
小滝群を越えていくと、やがて岩峰が見え始める。大槍基部のローソク岩だ。懐かしい。
それの右を目指して登っていくことになる。
しかし、天国はまだ遠かった。
南稜に出る手前は草付になっているが、ここが一番の核心、というのがパーティーの統一見解だった。
足元はボロボロ崩れ、ホールドにできそうな潅木もほとんど無い。
一同冷や汗をかきながら登ったのだった。
ちなみに、踏み跡らしきものがあるので、それを使った方が楽だとは思う。
僕はトヨニでの失敗を生かさずに果敢にガレを攻めたが、かえって大変だった。
ここは落石に要注意である。(メロン大の落石が直撃した、との記録もある)

ニセカウ南稜に出ると、荒井川源頭部の一面のお花畑が目に飛び込んでくる。
加えて、天気予報通りの好天。天国への階段、納得である。
時間があれば春に大槍に残置してしまったヌンチャクの回収やニセカウPeakアタックをしたかったが、
あいにく時間読みより遅れていて、そんな余裕は無し。
ニセカウはこれで3度目だというのに、またしてもPeakを踏めなかった。
大槍に残置したヌンチャクはそのままの状態で残っていた。

南稜は踏み跡があるが、ブッシュが覆いかぶさっているところもあり、不快。時間読みよりも遅れてしまう。
部分的に非常に細いところがある。
c1550コルに下ると、下降沢への降り口には記録どおり目印がある。ピンクテープ2本。

下降沢へ向かって踏み跡がしっかりとついている。
笹や木を掴みながら下りると、程なく沢地形に出る。
落石に注意しながら沢地形を降りていくと、2箇所くらい2mの絶壁が出てくる。
笹を掴みながら脇を降りられる。
右岸から沢が出合うと開けた地形となる。(c1450だと思うが自信が無い)
その後、大きな滝は5回くらいで、4回懸垂下降し、1回クライムダウン。
懸垂下降の残置支点はほとんど無く、全て木に捨て縄をかけて支点とした。
適当な木が無く、だいぶ上の木で支点を取らないといけないこともあった。
残置ハーケンがある滝もあったが、腐っているので、使わなかった。
下降沢は上流・中流部は割ときれいな沢だが、・1069出合が近づくにつれてブタ沢になる。イマイチ。
僕が懸垂下降の作業に手間取ってしまったため、予定時刻よりだいぶ遅れて下降沢出合に着く。(申し訳ない・・・)

後は行きと同じ道のりを延々と歩く。
小石が多く、非常に足の裏が痛くて、皆ペースが上がらない。
車に着くと17:30前。終わってみると約半日の行動であった。

P.S.
帰りに層雲峡で「黒岳の湯」に入った。\600。お手ごろ。
車を動かすと、調子がおかしかった。時速60km以上出ないという安全運転っぷり。
深川でついに動かなくなり、札幌からOBに迎えに来てもらっての帰札となった。
帰宅したのは翌日の3時頃であった。

火曜日に思い立って作った計画なので準備が慌しくなってしまったのにもかかわらず、力を貸してくれた二人には大感謝、である。
T田氏はSLとしてバックアップをしてくれた。特に下りでは氏の力に大いに助けられた。ありがとう。
O杉氏は早朝・夜間ドライバーをしてくれた。ありがとう。(しかも車は中破・・・)
そして、わざわざ深川まで迎えに来てくれたNa良さん、ありがとう。

結局、現実逃避的に沢に出かけたものの、当然それによって物事がうまく進むなんてことはあり得ないし、
そんなことは行く前からわかっていたはずだった。
むしろ山に費やした時間を研究に当てた方が利口、というものだ。
だが、山を登り降りてくるという行為にはある種の「救い」のようなものがある気がする。
しんどくても一歩一歩登れば、やがて山頂には辿りつくのだ。
・・・また明日から頑張るとするか。一歩ずつ。

記:2002年8月13日(火)


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