岩手県 猿岩
2002年10月11日(金)n〜14(月)
【メンバー】M本,T平,N川,G藤,I屋,黒崎
【予定の行動】
10/11(Fri):札幌―苫小牧フェリーターミナル21:15―船中C0
10/12(Sat):04:00八戸―08:00クアパークひめかゆ―猿岩トンネル―クライミング―キャンプ場C1
10/13(Sun):C1―猿岩トンネル―クライミング―キャンプ場C2
10/14(Mon):C2―岩泉 竜泉洞 観光―13:00八戸―22:00苫小牧―札幌
【実際の行動】
10/11(Fri):札幌―苫小牧フェリーターミナル21:15―船中C0
10/12(Sat):04:00八戸―08:00クアパークひめかゆ―猿岩トンネル―クライミング―キャンプ場C1
10/13(Sun):C1―猿岩トンネル―クライミング―盛岡 H本邸C2
10/14(Mon):C2―川目の岩 フリークライミング―13:00八戸―22:00苫小牧―札幌
猿岩は岩手県の焼石岳の麓、石淵ダムの右岸に位置する。
玄武岩で逆層、柱状節理の幅500m、高さ150m余りの岩場である。ルートは11本ほど。
顕著にハングした部分以外は概して斜度が緩いが、その代わりにホールド・スタンスは細かい。
そのようなホールド・スタンスで耐えながら足をスメアリングでだましだまし上げていく、スラブ系の登攀になる。
ルートによっては人工登攀技術が必要になる。
人気ルートは比較的支点が整備されているが、あまり登られていないルートは概して支点が古かったり無かったりするので要注意。
記録は少なく、事前に得た詳しいルート図は白水社の『日本登山大系』の1巻とホームページの記録一つのみであった。
それほど有名な岩場ではないが、中央労山のM本さん・G藤さんの知り合いの盛岡山想会の方々の協力によって遠征が実現した。
この場を借りてお礼を言いたい。
【10/11(金)】
21:15のフェリーで苫小牧を発った。
翌朝4時までの船旅となる。
ちょうど札幌登攀倶楽部のOさん、Hさんも猿岩での登攀を計画していて、一緒にフェリー内で宴会をする。
北海道から4パーティーも来るというのは、猿岩史上、初めてのことだったかもしれない。
学生は下っ端なので、当然の如く遅くまで酒を飲むことになる。25時頃就寝。
【10/12(土)】
高速を飛ばして盛岡山想会パーティーとの待ち合わせ場所、『クアパークひめかゆ』まで。
盛岡Pは3人。H本さん、S机さん、M田さん。
案内してもらって猿岩トンネル脇の駐車場所に着く。
すでに岩手医大の車が一台ある。登攀倶楽部も先に到着していた。
各ルートの話を聞いて、どのルートを登るか検討する。
ここから取り付きまで約30分の歩きとなる。
猿岩トンネルの右手の道を入る。
(余談だが、猿岩トンネルは心霊スポット。ネットで検索すると色々出てくる)
ちょっとしたブッシュ漕ぎをすることになる、との話だったが、ダム工事の関係できれいにブッシュが刈られている。
3週間前に来た時には刈られていなかったそうだ。ダム工事万歳。
10分ほど平坦地を歩くとガレに出て、そこからはガレの登りとなる。落石注意。
10分ほど登り、今度は10分ほどトラバースすると猿岩の基部に出る。
特にトラバース部分が迷いやすいので要注意。
T平-黒崎:一ノ壁 菱形ルート
M本-I屋:一ノ壁 右ルート
N川-G藤:二ノ壁 KGカンテルート
盛岡P:一ノ壁 ダイレクトルート
となる。菱形ルートは猿岩最難ルートとのこと。
いきなり取り付いてホントに大丈夫なのか?不安がつのる・・・
以下、菱形ルートのルート詳細。(『?』の付いているグレーディングは黒崎の主観によるグレーディング)
一ノ壁 菱形ルート
猿岩最難ルート。概してピンはボロい。全くピンが無いピッチもある。人工登攀主体のルート。
残念ながら、時間切れで完登はできなかった。
1pitch(X+?,A2?):T平リード
3回ほどハングの乗っ越しがある。人工登攀主体。
ハング以外の部分はそれほど斜度が強くないが、手がかりが極端に少ない。
一応、残置支点はあるが、錆びていたりしてあまり良くない。
2回目のハングが特に辛い。
縦型の軟鉄ハーケンにアブミをかけ、草付きの凹角の泥の中のカチを使って無理やり体を上げる。
その際、ハーケンが動き(!)、乗っている間にどんどん折れ曲がってくる(!)のが怖い。
3つ目のハングの乗っ越しはアブミに乗り、甘いホールドを使いながら左から回り込むように登る。
・・・リードじゃなくて良かった(笑)
2pitch(X?,A0〜1?):黒崎
フェースクライミング。残置支点は探せばあるが、少ない。
ルートがはっきりせず迷走し、上部でダイレクトルートと合流してしまい、終了点までやらしいトラバースをする羽目になる。
リードだったのでA1した。セカンドのT平さんはA0。
3pitch(Y?,A2〜3?):T平
菱形ルートの核心ピッチ。
ハングを乗っ越し、垂壁を越えて木までたどり着いて一安心、その少し上が終了点。
だが、ほとんど支点が無い。それが最難たる所以である。
小さめのキャメロットやエイリアンを駆使してアブミの掛け替えで登る。
垂壁の上はカム類をきめられるクラックもないので、ハーケンを打ってアブミの掛け替えで木まで登る。
どれだけ巧くカムを使えるかが分かれ目。というより、カム類を巧く使えないならリードしてはいけない。
・・・ここもリードじゃなくて良かった(笑)
4pitch(X?,A3?):黒崎
フェースクライミング。ここもピンはほとんど無い。
おまけにカムを決められるクラックもほとんどない。
ハーケンを打てるような両手を離せる場所も無い。
正に無い無いづくし。
たまに出てくるクラックに確実にカムを決めながら登る。
終了点手前にハングの乗っ越しがあるが、ピンが無い。
チョックストーンの隙間にカムをきめてアブミで乗っ越すことになる。
クラックの形状的に下方向の引きには強いが横方向の引きには弱いため、注意して乗り込む必要がある。
しかも、乗っ越しきってしまうとアブミの回収が困難。
セカンドのT平さん曰く、キャメロットを横に引いたらあっさり取れたとのこと。ゾクッ。
5pitch(X?,A2〜3?):T平
右上の方にM本さん達が見えたので、ハングを乗っ越して右上して終わり、かと思いきや、
ハングを乗っ越した後に左上する方向にボルトが打ってある。ガーン!
ハングを右上する部分はフリー、左上する部分はA1する。
ボルトはけっこうあるがボロい。
T平さんの「(ビレイを)頼むぞ!」の声にこのピッチの厳しさを知る。
6pitch(Y?,A3?):黒崎
スラブを登っていくとハングにぶつかる。このハングの乗っ越しと、その上部のフェースが核心。
ハングの中ほどにボルトがあり、上部にアングルがある。どちらもボロい。
特に、アングルの方は根元まで打ち込まれていない上にやや下向きである。
このアングルにアブミをかけて乗っ越すのはなかなか危険を感じるが、他に支点も無く、ハーケンを打つ余裕もない。
意を決して、「神様!」と祈りながらアブミを掛けて乗り込む。
が、ハングの傾斜が強く上部に手がかりも無いため、うまく立ち込めない。
この間にもアングルにダメージを与えているはずで、冷や汗が出る。
甘いホールドでなんとか体勢を保持して、上のリングボルトを掴んだ時は心底ホッとする。
だがその上もハングはしていないが傾斜が強く、ホールド・スタンスも無く、全然登れない。
先のリングボルトにアブミを掛けるも、なかなかバランスが取れず、前進用のハーケンを打つのもままならない。
もう日が傾いてきていて、T平さんが「もう懸垂下降で降りよう」と言うが、身をあずけられそうな支点はないのだ。
もうすぐ終了点に着くはずなので、もう少し待ってくれるよう頼む。
もう登るしかないのだ。覚悟をきめ、なんとかハーケン2枚を打ち込み、それにアブミを掛けて、カンテラインへの乗っ越しをかける。
「(ハーケン)外れてくれるなよ」と念じて一気に乗っ越す。
カンテ上に這い上がって、一息つく。ハーケンはなかなかきくものだ。
ここからは傾斜はだいぶ緩いが、ホールド・スタンスがほとんど無く、
支点はだいぶ上にいつ打ったのかわからない錆びたコパーヘッドが一つ、そのやや上に終了点。
もう何でもありで、置くところが無く滑る足でだましだまし登る。
コパーヘッドにピンをとり、だましだましA0して終了点をキャッチ。・・・ヤッター!
夢中で気にしていなかったが、もう日暮れ前。
T平さんには申し訳ないが、僕が6ピッチを登った時点で下降開始となった。
僕が5ピッチ目の終了点まで懸垂下降し、そこから懸垂下降4ピッチで取り付きに降りた。
すでに暗くなり始めている中、急いで下山する。暗くなってきていたので、けっこう迷う。
他のパーティーはとっくに登り終えて下山していたので、心配していたようだ。
盛岡Pはさらに遅れて、真っ暗な中一つのヘッドランプで下山してきたらしい。
酒を買い出し、キャンプ場に行って盛岡Pも交えて大宴会。
僕が食事担当だったので、適当にカレーを作る。
盛岡Pはビールやら刺身やらをジャンジャン出してくれる。ゴッツァン。
盛岡山想会はダイレクトルートの5ピッチ目で相当難儀したらしく(リードだけで2時間!)、
H本さんがしきりにその武勇伝を語りたがるのが可笑しかった。
酔っていたので、20回くらい「5ピッチ目が・・・!」と同じ話をして、G藤さんに「うるさい(笑)」と注意されていた(笑)
当然の如く遅くまで飲む羽目になる。
【10/13(日)】
この日は昼過ぎまでクライミングをしてから、盛岡のH本さんの家にお邪魔して大宴会をすることになった。
そのため早起きして登るはずが、寝坊やら怠惰やらで結局岩に取り付く時間は昨日とさほど変わらなかった。
T平-黒崎:一ノ壁 右ルート
M本-I屋:二ノ壁 KGカンテルート
N川-G藤:一ノ壁 右ルート
以下、右ルートの詳細。
一ノ壁 右ルート
壁の弱点を突いていて、1ピッチ目以外はほぼA0で登れる好ルート。KGカンテルートと並んで猿岩の看板ルートらしい。
支点も比較的整備されている。傾斜はほとんどが垂直以下だが、ホールド・スタンスは細かい。
1pitch(W+?,A1〜2?):黒崎
外傾し、ホールド・スタンスの少ない壁をアブミの掛け替えで登っていく。支点はしっかりしている。
若干支点の遠い部分もあるが、リストループなどを使うことで解決できる。
中間部のハングの乗っ越しがやや難しいが、しっかり巻き込めばなんも。
上部は探せば割としっかりしたホールド・スタンスのあるフェースを登って終了。
2pitch(X?,A0〜1?):T平
凹角を登っていき、ちょっとしたハングを越えて左上し、フェースを直上して終了。
先行したN川パーティーのG藤さんがハングの乗っ越しでフォール。リードだとややシビアか。
リードはA1で越えていた。セカンドならA0。
フェースの直上でカラビナを落とした。反省。
3pitch(X+?,A0?):黒崎
カンテを直上し、木の生えたチムニーをフリーで乗っ越す。
その後は、比較的斜度の緩い、非常にすっきりとした凹角を微妙なホールド・スタンスで登る。
N川さんはリードにもかかわらずほぼフリーで登ったらしいが、僕はリードで落ちたら怖いので迷わずA0した。
上部での凹角からのトラバースと、終了点への乗っ越しが難しい。
指先しかかからない甘いホールドを信じて体を上げられるかがポイント。
4pitch(X+?,A0?):T平
凹角を登り、小ハングを越えて左のフェースに移って直上して終了点。
凹角を登る際に右隣りのカンテも使うと楽になる。小ハングの乗っ越しがやや難しい。
全体的にホールド・スタンスは細かい。
5pitch(Y?,A0?):黒崎
数m直上し、小ハングを乗っ越す。N川さんは初見なのでアブミを出していたが、よくスタンスを探せばA0で乗っ越し可能。
その上のフェースは最初は比較的ホールド・スタンス豊富だが、ハングにぶつかって右に避けるあたりからホールド・スタンスが少なくなる。
ハングのクラックに逆さ打ちしてあるハーケンにA0しながら、なんとか右上のリングボルトにA0すれば、ほぼ終了。
あとはホールド・スタンスが豊富なので、終了点の林の木まで。
逆さ打ちのハーケンの中からまともなものを選び、うまくA0するところが核心。
懸垂下降4ピッチで取り付きに下りてみると14:30。またまた予定オーバー。反省。
盛岡Pは登攀中に落石でロープを切ってしまったため、一足先に下山していた。
待たせると悪いので、そそくさと下山。
『クアパークひめかゆ』で汗を流す。(1時間\310。カードを渡されるので、時間のごまかしはできない!)
盛岡のH本さん宅にお邪魔し、奥さんの手料理をいただく。超豪華!
当然の如くたらふく酒を飲む。
【10/14(月)】
当初は有名なフリークライミングゲレンデ、岩泉の竜泉洞の観光をして帰る予定だったが、
近所にフリークライミングのできる岩場があるとのことなので、
そこに寄って数本フリークライミングをして帰ることとする。
正確な位置はわからないのだが、川目という場所にある。
水路のある山道に車を止め、徒歩5分ほどで着く。
途中、細い丸木を水路に渡した即席の橋があり、それを渡らなくてはいけない。かなり怖い。
(今回のクライミングツアーの核心はこの丸木橋だという話もある)
ルートは6本くらい。
グレードは付けてあるがかなり主観が入っており、当てにならない。
中央労山Pが登ったのは『5.9のルート』『5.10aのルート』『5.10dのルート』の3本。(名前が付いていないのだ)
5.9のルートは登っていないのでなんとも言えないが、5.10aくらいはあるらしい。
僕が登ったのは『5.10aのルート』のリード(フラッシング)と『5.10dのルート』のトップロープ(時間が無かったため)
全体的に傾斜はきつくなく、細かいホールドで耐えながら登る感じのルート。
H本さん、M田さんにお礼を告げ、八戸のフェリーターミナルを目指す。
途中、時間があったので冬のM本さんのキリマンジャロ隊の成功を願って、『キリマンジャロ』という名前のレストランに入る。
料理が出てくるまでえらく時間がかかるという難点はあるものの、料理はかなりしっかり作っていて、とても美味しかった。
サンドイッチを頼んだらパフェが付いてきたのにはびっくりした。
あとは13時のフェリーに乗り、22時に苫小牧に着き、帰宅した時は24時を回っていた。
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猿岩は冒頭にも書いたように逆層、柱状節理の岩場で、あまり北海道にはない感じの岩場である。
(もっとも、北海道の岩場なんて、赤岩とフリークライミングしかやってないのだけど・・・)
壁の上部はハング帯となっていて、『KGカンテルート』や『一ノ壁右ルート』のような
壁の弱点を突いたルート以外はハングの乗っ越しに人工登攀を強いられるだろう。
また、マイナーな岩場ということもあり、人気ルート以外はあまり支点が整備されていない。
特に、『一ノ壁ダイレクトルート』や『一ノ壁菱形ルート』のような難度の高いルートはあまり登られていなく、
支点が古かったり、すぐ抜けたり、時には全く無かったりするようだ。
今回の盛岡山想会パーティーの取り付いた『一ノ壁ダイレクトルート』5ピッチ目は
ピンが手で引っこ抜けるほど支点がダメになっていて、一々ハーケンを打って登る羽目になったらしい。
彼らは実力のあるパーティーだから何とかなったが、取り付く際はぜひ注意して欲しい。
以上マイナスのイメージのことばかり書いたようだが、猿岩は非常に良い岩場である。
だが残念なことに、盛岡山想会の方の話によると、アプローチの刈り分け道はダム工事の関係で埋まることが決まっているらしい。
そうなるとアプローチは非常に困難になるか、最悪の場合取り付くことすらできなくなる可能性もある。
その前にぜひ訪れて登ってみて欲しい。きっと極上のフェースクライミングと人工登攀が楽しめるはずだ。
記:2002年10月16日(水)
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