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それでは、僕は何のために登っているのか。
計画を完遂した時の達成感?征服欲?平凡でまったりとした生活の中で、山が与えてくれるdrasticな刺激を求めた?
内省してみるに、僕が山をやる最も大きなの理由の一つは「モノサシ」なんだろうなぁ、と思う。
体力があるわけじゃない。ガタイも小さい。冷静沈着なること山の如し、というような精神力があるわけでもない。
集中力があるわけでもない。頭が切れるわけでもない。
だから、その事実から導かれる当然の結論として、色んな事柄においてそう高くないところに自分の限界があることはわかっている。
決して悲観的な意味合いではなく、前向きにそう、理解している。
それは、自分に生えている腕が3本ではなくて2本であることを別に嘆いたりしないのと同じように。
3本あれば色々便利なことも多いのかもしれないけれど、僕はきっと戸惑ってしまうだろう。
3本の手があることによって引き起こされる不幸なんかもあるかもしれない。
腕が2本であることを嘆くよりは、その2本の腕で何ができるのか、どうすればその能力を最大限引き出すことができるかを考える方がずっと建設的な考え方だ。
だから僕は、そのような一つのモノサシとしてクライミングを位置付けている。
そうでなければ、とても登攀なんてやってらんない。
今回の須築もそう。果たして、一年間こういうことをやってきて、こういうような努力をすれば、自分は北海道の沢の中で屈指の難しさを誇るという須築に太刀打ちできるようになるのだろうか?
これは部活のOB連中を巻き込んで行った一つの小さな実験の記録である。
なかなかの好天。海がきれいだった。4時間程で須築橋に到着。 トンネルを抜けて進行方向に向かってすぐ右手に車3台程の駐車スペースがあり、 左手には車100台くらい停められそうな広場がある。そちらの広場に停めることにする。 出発準備をしていると、一人のオッサンが車に乗って現われ、うちらの車からやや離れたところに駐車。 徐に「密漁監視中」みたいなステッカーを出して車に貼りだした。 ・・・メチャクチャ警戒してやがるな、このヤロウ。そりゃあ、確かに車にはボロンと立派な釣竿が積んでありましたけど? これから須築を遡行するって言ってるのに、釣竿なんて持っていくわけないだろうが! 入れ食い?塩焼き?何それ?
そんなこんなで出発。記録通り、ダムまでは左岸の林道跡を使う。 手入れはされていないかもしれないが、まだ車で走れそうなくらいの快適な廃林道。 一度右岸に渡ったり、河原を歩いたり。最終的に左岸に戻り、ダムはそのまま廃林道から越えられる。そこでその廃林道は終了。
その先は本当になんもの河原。c70右岸の枝沢はデポ布あり、水流もありわかる。そのすぐ手前には左岸から不明瞭な枝沢。 イワナの沢、熊見沢、熊追の沢は確認できる。間違えようもないだろう。 ナメとか淵とかがけっこうきれい。で、すぐにc190二股。
時間的にc420のS字峡手前の天場まで行けないこともない時間だったので迷うが、今日はc190で泊まってウダウダすることにする。 天場はc190二股からちょっとの左岸の砂地。かなり快適天場。薪もけっこうある。 夏天を建て薪を集めて焚火を点けてしまうと、後は飯時まで自由とする。 明日は厳しい一日になるだろうから、今日だけはのんびり。 天気はスカッと晴れなかったけど、久しぶりにゆったりとした時間を過ごした。何もすることがないという贅沢。 山の快適さは、その選択肢の少なさにあるのかもしれない。 とか考えながら米を炊いたら、水の分量をちょっと間違えた。ゴメン。
焚火にあたりながら、炊き込みご飯を食べてビールを飲む。
謎に包まれているT田の私生活のことを聞き出そうとしたら、案の定はぐらかされた。
否定しなかった辺りがアヤシイ?かな?
明日の朝も早いので19時頃就寝。例の如く、明日の核心のプレッシャーから僕はうなされた(らしいですよ)。
c215二股手前までなんも。二股手前でいよいよ最初の泳ぐ淵が出てくる。 とは言っても、水量が多くなく流れも緩いので、全然大したことはない。9月の朝一にしては水も冷たくない。 適当に手をかき足をかいて通過。その後、c300二股まで4〜5回程の泳ぎがあるが、いずれもなんも。
c300二股の右股は釜を持った10mくらいの滝になっている。ここの左股から幅2mくらいの狭い函地形が始まる。 だが、水が少なかったせいか、途中まで足がつく。 途中から泳いだりするが、「長い距離を泳ぐ」とか、「激流に逆らって全力でクロール」みたいな泳ぎはない。 いずれも平泳ぎで2かき3かきくらいだったと思う。(あまり詳しく覚えてない。口ほどにもない、という印象だけ)
c350手前のチョックストーンの滝は顕著。 とても直登できる気がしないので、素直に記録通りの左岸とチョックストーンの間の探す。 一見「どこ?」という感じなのだが、上の方から光が漏れているのが見える。 「左岸から岩の間をくぐるように高巻く」との記述から蟹歩きのような横這いを想像していたが、実は縦穴だった。 でも、なんも。出口の辺りで落石する可能性があるので、それだけ注意。あと、でかいザックだと出口の通過が困難。 最初に抜けて後続が出てくるのを見ていると面白い。大脱走、みたいな感じ。 記録に無ければ気付かないだろうな。最初、「埋まっちゃったんじゃないの?」と思ったもんな。 そのまま踏跡っぽくなっている左岸を高巻く。降り口は次第に低くなっているので簡単に降りられ、そこがc350二股。 右股は岩盤の滝になっている。ここで休憩。
c350二股〜c420二股の間はあまり覚えていない。 途中に、複雑に渦を巻く釜持ち滝があったので左岸から小巻きしようとするが、ちょっと微妙。 釜に落ちたらヤバそうなので、無理せずロープを出す。 左岸上部の弱々しい木にFixして、セカンド以降はゴボウトラバース。僕のみ支点から落ち口へ3mの懸垂。
c420の辺りもよく覚えていない。水流があって顕著にわかるのは確か。 c420二股の辺りも増水不可の天場があるはずだが、確認しなかったのでどんな天場かはわからず。 そこからテクテク歩くと、第一の核心F1。
F1(8m)
とても登れなさそうなので、左岸ルンゼ状を巻くことにする。
黒崎リード。ザックは背負っていくことにする。リードの確保用アンカーはハーケンで作る。
登りだしが立ったカンテ状で、そこからすぐ上の小テラスに出るまでの一手がヤラシイ。
手も足もあまり確信の持てるものはない。仕方が無いので、小テラスにある残置ハーケンにA0して登ることにする。
A0した残置が引っこ抜けた時の保険として1本ハーケンを打った。A0すればなんも。
小テラスに出たら、後はルンゼ状を詰めて2m程岩を登れば上部の小テラス。ピンは下部と打ったハーケンのみ。
ここに太いが折れている若干心許ない木があって、それで後続用にFix。残置スリング有り。
2番手を登らせ、その間にもう1本のザイルで懸垂下降のセットをする。
3番手が登っている内に2番手を下に下ろす。落ち口まで3m程なので、懸垂でもゴボウでも降りられる。
3番手のSLが、僕の打ったハーケンと一緒に誤って残置ハーケンも回収してしまった。
このハーケンが無いとリードはけっこう怖いかと思います。ごめんなさい。
二人は「リードで登る気がしない。」と言っていた。
せっかく尊敬してくれているので、僕がA0したことは黙っておいた。士気にもかかわるかもしれないし。
頼りになるリーダーと思ってもらっている方が山行を進めやすい。
(もしかしたら、出だしの小テラスまでの悪い部分は、ショルダーとか空身で登ってザック手渡しの方が確実だったかもしれません。
みなさん自分で一番確実と思える方法で登ってください。
まあ今時のクライマーは、ザック背負ったままフリーで登れるんでしょうが・・・。)
F2(2m)
F1からすぐ。10m先くらい。「左岸をへつる」とかいう記録があるが、沢中を歩いて取り付ける。
一見のっぺりしているが、水流中などを探せばそれなりにホールドはある。
落ちたとしても下は釜なので怖くはない。
T田がF1を登っている内にY口が懸垂してF2をリード。若干シンドそうだが越えられた。
そしてY口がT田にスリングを出す。登れないことはないのだが、皆が時間をかけて登る必要はない。
こういう難しい沢では、何よりもパーティーシップが大切なのだ。
そんな時に変なプライドを持ち出して自力で登ろうとするセカンドなんて愚の骨頂としか言い様がない。
さすがOB、よくわかっている。
僕はF1で懸垂をしてそのロープ2本をザックにしまう。
そして、「よーし、お兄ちゃんもスリングを使って楽をさせてもらっちゃうぞー」と思ってF2を見ると、落ち口には誰もいない。
あっ、あの、スリング・・・?
T「水流中にホールド・スタンスあるから。」
K「(見てたからわかってるけど、スリング・・・。)」
遠のく背中。泣く泣く自力で登りました。
F3(2m)
F2からすぐ。F1〜3は連続している。全然記憶にないが、確か左岸をトラバリ気味に登る感じだったと思う。
ムーブとしては高々V級くらい?でも高さがないので全然プレッシャーは無い。フリークライム。
F4(3m)
「泳いで落水の内側に入ってから左岸水際をシャワークライムする」という滝だが、全く記憶に無い
(F3後、テクテク歩いて気が付いたらF6だった)。
少なくとも、泳いで落水の内側に入ってもいなければ、シャワークライムもしていない。ロープも出していない。
おそらく特筆すべき難しい滝ではないのではないかと思う。それ以上の批評は僕の能力を超えている。
F5(5m)
「右岸を登り落ち口へ、楽勝」という滝だが、こちらもF4同様全く記憶に無い。
ロープを出していないのは確かだし、これも特筆すべきポイントがある滝ではないのだろうと想像します。
F6(5m)
Y「じゃあ斜め懸垂するんでザイル貸してください。」
K「(何言ってんだ。まだF4も過ぎてないだろうに。)」
そう思いつつY口のいる場所を見ると、そこは写真で見たことのある例の斜め懸垂をするF6だった。
あれ?F4とF5は?腑に落ちないが、そこは見間違いようもないF6。嗚呼、現在地誤認。
ザイルを出して3m程の斜め懸垂。残置ハーケン4枚ほど、残置スリングもあり。
ちょっと緊張しながらの懸垂。振られると面倒臭そう。
F6の落ち口の先は釜になっていて緩いのっぺりした1m滑滝がかかっているが、水が少ないせいか釜は左岸から歩いて通過可能。
滝はフリクションをきかせて越える。
その先は幅1.5m×長さ50m程の非常に狭い函となっているが、手足のツッパリで簡単に通過できる。
水が少ないせいか、足がついたりした。水が多かったり、水流が強ければ大変でしょうけど。
狭い函を抜けると、S字峡の代名詞と言っても過言ではないほど有名な、通称「ヤカンの底」が出てくる。
周囲は立った岩壁、滝はのっぺりした滑滝で直登不可。登れる部分は、左岸のカンテ状岩壁しかない。
記録では「二つの釜の間の左岸カンテ状」とあるが、下の釜は水が少ないせいか釜には見えなかった。
空身でK崎リード。メンバーから必要最低限のヌンチャクだけを残して全てヌンチャクをもらう。
先人が残してくれた残置ハーケンが有り、タイオフ用の細スリングを持って行けば5個はランナーが取れる。
ホント、ハーケンを打ってくれた先人には頭が上がらない。ハーケンが打ってなかったら、リードする気になれないかも。
打ちながら登るにも、なかなか両手を離せる余裕はない。ホント、感謝感激。
高さは上のテラスまでで10m程。傾斜は立ってはいるがハングや垂直の箇所はない。
ホールドは全体的に甘めなので、足をうまくつかうこと、ハイステップからの足への乗り込みが重要。
Yスキー部の記録ではW〜W+とのグレードを付けられているが、まあそんなもんだろうと思う。
高さと場所的なプレッシャーに潰されなさえしなければ、
赤岩でX級あたりを登りこんでいる人なら十分リード可能だと思う。
空身だったせいもあるが、僕は幾分余裕を持って冷静に登ることができた。
ランナーがたくさん取れるおかげで、「落ちてもどれかで止まるだろう」と思えるのも大きいだろう。
上部は若干草付きっぽい部分を越えて上部のテラスに出る。
ここはヒト10人くらい居られそうなくらい広いテラス。
確保はテラス奥の岩壁にハーケンを打ってすることになるだろう。
記録ではビレイ用の残置ハーケンが2枚あるはずだったが、1本も見当たらず。
僕が探せなかっただけなのか、誰かが抜いていってしまったのかはわからず。
もし抜いていったのだとしたら、許し難い。名乗り出ろ。
ハーケン3枚を使ってセカンド用の確保支点を作り、セルフビレイ用にF1で誤って回収してしまったハーケンを打つ。
セカンド以降はザックを背負って登ってもらい、Y口はFix、T田は支点ビレイ、僕のザックは吊り上げ。
ここでも二人はしきりに「リードで登れる気がしない」と繰り返す。たぶんそれは、ザックを背負ってたからだと思うんだが。
僕もザックを背負ってたら登れるかどうか微妙だ。
F1で回収してしまったハーケンは申し訳程度にここのビレイ用のピンとして残置することにした。
沢には、テラスからのバンド状をスタスタ歩いて降りられる。なんも。
そこからやや歩くと、F9(8m)チョックストーンの滝。
チョックストーンの両側から水が落ちている。
右岸のバンド状に登り、トラバースしてから右岸とチョックストーンの隙間をチムニーっぽく登る。
一見難しそうに見えたため、バンド上でザックを置いて空身でロープを引いて登るが、登ってみると大したことはない。
落ち口上やチョックストーンにホールド・スタンスを求めてチムニー登りをすると簡単に抜けられる。
だが念のため後続には岩角でロープをFixする。
それなりに高さがあり下は釜っぽくないため、落ちたら怪我をするので、面倒臭がらずにロープを出した方がいいかもしれない。
残置ハーケンがあるとの話だったが、見かけなかった。
c570二股手前にF10(5m)
山谷のカラーページにも載っている滝で、けっこう激しい水流中に流木が掛かる5mの直瀑。
山谷の写真にあるように水流中を直登することもできるようだが、左岸から巻いた方が楽。
巻くパーティーが多いせいかだいぶ荒れてしまった草付きを5m程登って5m程トラバースして木で終了点。
終了点に残置スリング有り。草付きではバイルがあると安心できるかも。
一応バイルとピック付きハンマーを持ってリードしたが、バイルのみ一手使った。
終了点は確か下向きっぽい木だったし残置スリングは若干古びているので、長いスリングの巻き結びで支点を取るのが有効。
下降は落ち口へ10mの懸垂。残置スリングを使った。
F10を懸垂で落ち口に降りるとすぐc580二股。ここは二股の間の岩の上に増水可の天場があるとされている (確認しなかったので主観としてはなんとも言えない)。ここで休憩。 ここからF11が見える。次のF11さえ越えれば、あとはなんもだ。気合いを入れていこう!
F11(10m)オーバーハングの滝。
ここは右岸草付きを巻くというのと左岸を高巻くという2通りの方法で越えられているが、
前者の方が楽らしいということで、右岸を巻くことにする。
右岸草付きは、下部が緩く上部が立っている。下部はブッシュが少なくあっても草ばかり。
また、滝の落ち口に近い方は草さえも疎らで黒々としている。
そこで、右岸の広い草付きをノーロープである程度詰めそこから右上気味に登って、
F11落ち口からのカンテ状上に出て懸垂数ピッチで沢に降りることにする。
メンバーがもう少し下からトラバることを主張したが、そのラインは明らかに緑が少なくあっても草がほとんど。
おまけに出だしが立っている。却下。行って登れないことは無かったかもしれないが、おそらくもっとハマッタのではないか。
右岸草付き帯の上部には立った岩壁があり、そのけっこう近くまで登った。そこからロープをつける。
アンカーを取るためのいいブッシュが無かったので、大きな岩で取る。
一応動かなそうではあったが、フォールのような動荷重がかかれば動いて落ちるかもしれない。
だが、アンカーがないと救助時の仮固定が困難なため、二つの問題を秤にかけて岩にアンカーを取ることにした。
どちらにしろ求められることは同じ、「落ちられない」ということだ。
ここを越えられれば9割がた完遂は堅い。自分を奮い立たせてトラバり始める。
トラバリ始めると実際あまり足場が無く、騙しのテクニックが必要であることがわかる。
ところどころ出てくるブッシュ(カサカサで下向きで一本一本は細い)をホールドにし、束ねてランナーを取りながら前進。
ところが、途中のランナーの取り方が悪かったのかロープの流れが非常に悪くなり、二進も三進もいかなくなる。
わかりやすく例を挙げると、赤岩のテーブルリッジ4ピッチ目の最後の2倍くらい重い感じ。
もはや手の力では体を進めること能わず、というレベル。
草ブッシュを寄せて集めて掴み、あまりきかないバイルを打ち込んでホールドにし、
2/5くらいしか入っていないイボイノシシにA0(スタンス)し、という途方も無いクレイジーアルパインクライミング。
あまりのシンドさ・イライラから、薄々「ロープの流れが悪いんだろうな」とは知りつつも
「ロープ出せって言ってんだろーがー(#゚Д゚)!」とビレイヤーを罵倒する始末。情けない。要反省。
それでも何とか落ち口からのカンテ状上のブッシュまでたどり着いたものの、
登れる部分を繋いでいったらだいぶ上の方に出てしまった。
ここから本当に懸垂で降りられるんだろうか、と不安になる。カンテ状上の木を繋いでいけば20m×3ピッチくらいで降りられるだろうか。
だが、カンテ状上の一段下のブッシュになんと、残置スリングがあった。ということは、全くの間違いルートでもなかったわけだ。
これを残置したパーティーが何mのロープを持っていたのかはわからないが、ちょっと安心。
悩んでいても仕方ないので、セカンドをFix、サードを確保でビレイ点まで来させる。
SLにロープを持って懸垂させる。ロープいっぱいじゃなくてもいいから、セルフを取って懸垂できそうな木があったらピッチを切ることにする。
20mで大丈夫だろうか、ドキドキしながら待っていると、後続OKの合図。
懸垂で降りてみると、懸垂して15m程の地点から踏跡がある!先人様、ありがとう!
ありがたくその踏跡を下り、10m程で沢に出られた。意外と近かったのか。
沢に降りてホッとする。やっぱり人間は地を這う生き物だと実感。地に足が付かない状態はシンドすぎるわ。
(今回のルートは非常に高くを巻いていて、おおよそ最適なルート取りとは言えない気がします。
この記録を鵜呑みにすることなく、各自で最適なラインを探してください。)
この後はF12(5m)とF13(5m)が出てきて、その後F14(大滝,20m)のはずだが、大滝まで滝は一つしか見なかった。 おそらく、F11と一緒にF12を巻いてしまったか、F12と一緒にF13を巻いてしまったのだろう。 本記録では、この次に現われた滝を暫定的にF13と呼ぶことにする(記録に出てくるF13と様相が似ているため)。
F13(5m)
泳いで取り付いて直登している記録もあるが、左岸から簡単に巻けそうだったので巻くことにする。
踏跡っぽくもなっている。下部は岩登りチックで、上部は草付きチック。草付きチックな部分が若干悪いか(F11の巻きに比べたら簡単だが)。
念のため後続のためにロープを太い潅木にFixする。小尾根上からはフリーで巻く。
最初は踏跡っぽかったが、だんだん判然としなくなるので濃い笹ブッシュの中を適当に漕いで巻く。
詳細には覚えていないが、50mくらいは巻いたかも。その内に緩くなって沢に降りられる。
ポクポク歩いてF14の大滝(20m)。
記録では「右岸直登、フリー、なんも」とのことだったが、とてもなんもには見えない。ラインもうまく読みきれない。
滝のラインからだいぶ離れた右岸のカンテ状から取り付くのは確かなのだが、下部はわかるとしても、落ち口辺りが微妙そうである。
僕らの前に来ているH井パーティーもここでけっこうハマッタとか。
まだ時間はあるので、大事を取ってロープを出すことにする。
リードしてみると、落ち口方面に向かう緩いフェース状で足が滑りそうでどうしても敬遠してしまう。
落ち口あたりも細かそう。また、上部は非常に脆いため、落ち口方面には向かいたくない(ボロボロ崩れる)。
そこで、H井パーティーと同様に騙し騙しカンテ状をバリッと直登し、その上の草付き帯、続いて笹ブッシュ帯に突入し、懸垂で落ち口上に降りることにする。
40mロープほぼいっぱいで支点にできる太い潅木に出る。そこでセカンドをFix。サードはセカンドに確保させる。
ここにH井パーティーが落としていったスカイフックとカラビナがあったので、それも回収。
ここでまた問題。またまた高巻き過ぎたようだ。
しかも、もともとカンテラインは大滝からちょっと外れていた上、だいぶ左寄りに笹ブッシュ帯を登ってしまったせいか、
大滝がけっこう遠くに見える。これは相当笹ブッシュを漕がないといけないぞ、と溜息。
(実は、遠くに見えた滝は山谷でいうところの大滝の次の7m滝だったのではないか、という話もある。
真相は闇の中。とにかく、山谷に書いてある「大滝後の7m滝」は見かけなかった。)
沢に沿ってブッシュを漕いでいくと、またまた残置スリングのかかった潅木を発見。ホント、先人様様。
ここから何とか降りられそうという情報を得られたわけだから。
でもうちらの20m懸垂(40mロープ)で沢まで降りられる保障はない。
おまけに、この辺りは潅木がほとんどなく、沢に届かなくても途中でピッチを切ることができなさそう。
つまり、懸垂してみて届かなかったら登り返し、という悲惨な事態。ここは僕が最初に懸垂することにする。
「もし届かなかったら、プルージックでユマーリングしてくるわー。」
こう言って先陣を切って降りた僕はカッコイイと思います。メンバーが女の子だったら惚れられてたかもしれない。(言い過ぎ)
でも何とかギリギリ届いて、核心終了と相成るのであった。懸垂18m。
核心を越えたということで胴上げでもしたい気分だが、生憎そろそろ薄暗くなり始めていた。
暗くなる前に今日の天場を探さなければならない。すぐ出発する。
「大滝から少し行った左岸に薪が豊富な良い天場」が有るそうだが、それが見つからない。
もしかしたら例によって高巻きすぎてその天場の先に降りてしまったのかもしれない。
微妙に泊まれそうな場所は出てくるが不快そうなのでパスしていると、
日が暮れる時間も迫ってくるわ地形的にも天場が無さそうになってくるわでひどく焦る。
だが、神は僕らを見放していなかった。歩くこと20分ほどで石をどかせば泊まれそうな天場を発見。
薪も一晩分くらいはすぐ集められそう。そこに決定する。
こうして13時間強に及ぶ!!!の核心突破というハードな行動が終わった。
みんな疲れているというのに薪集め、焚火、炊事とよく動いてくれる。さすがOBだ。
僕は疲れと脱力から実は少しサボってた。薪もあんまり集めてなかったし。
「もうこんなもんでいいんじゃない?足りるしょ。」ばっかり言ってた。ゴメン。
晩飯はカレー雑炊。ミートボール2袋。美味ー。
リーダーのビール(発泡酒)も飛び出す。須築をなめてるのか、という話だ。ウイスキーも持ってきてた。
みんな疲れていたので、食うもんを食い暖をとったら早々に寝ることにする。
僕は今日は核心を越えたのでもううなされないと思ったら、この日の行動のゴクさを思い出してうなされた(らしいですよ)。
この先は技術的に困難なものは無し。一つ3mくらいの立った滝が出てくるが、右岸の草付きを小巻く。 直登も可能そうだったが、念のため。若干ヤラシイと言えないことも無いが、核心を越えてきたパーティーにはなんもだろう。
山谷では狩場山Peakまでの道順は「c980二股を左」と書いてあるが、おそらく僕らの辿ったルート、
「c980二股を右・c1090二股を右・c1210二股を左・あとは親沼(2.5万図上の池マーク)を目指して登る」というのが一番楽なのではないかと思う。
c970左股は明瞭な沢型、c1090左股はやや不明瞭な浅い涸沢型、c1210は不明瞭な浅い凹状だったように記憶している。
2.5万図上のc1300〜1350の崖マークが明瞭な岩壁になっているので、これを目印にすればよい。
ただ、僕らはこれを目指して登り過ぎてc1210二股を右に入ってしまい、
岩壁の基部の緩い草付き帯を左股までトラバースする羽目になった。
同じミスをしたパーティーがいるのか、不明瞭ながら同様にトラバースしたような踏跡があった。
c1210左股に入ってからやや登っていくとやがて笹ブッシュが覆いかぶさるようになるが、
沢地形を外さずに詰めると(ちょうど漁川の詰めのブッシュのトンネルのように)笹ブッシュを手で払いながらコンタを稼ぐことができる。
ほとんど足で歩く感じのブッシュ漕ぎ。
小沢が消えてからの手を使うようなブッシュ漕ぎは実質5分も無く、すぐに親沼に出て夏道に乗れた。U〜V級のブッシュ漕ぎであった。
夏道に出てガッチリと握手。みんな安堵の表情を隠せない。これで無事帰られそうだ。僕も少し肩の荷が下りた気がする。 ポクポク歩いてすぐに狩場山Peak。ここであらためて握手。あとは夏道を下るだけ。記念写真を撮ってロンバケ。 せっかくのPeakだというのにガスがかかっているのが残念だ。
あとは長い長〜い茂津多コースを下る。山谷では廃道寸前と書かれているが、なんのその。 ヒト2人が両手を広げて歩けるくらい幅の広いすごく快適なコースだった。 中間くらいからは1kmごとに標識がある。登山口や下部の夏道は地形図とは異なっていて、茂津多灯台辺りまでは車の入れる立派な道路になっている。 ただ、見かけた熊の糞は20個以上(できたて)。足跡もたくさん。終始笛を吹きながら歩いて登山口に下山。 ペーパードライバーのリーダーを除いた2人でジャンケンをし、負けたY口が須築橋まで車を取りに走ったとさ。
色々と問題があったものの、一言で言ってしまうと「完遂した」ということになる。
冒頭で述べたことについて、モノサシとして何がわかったのか。
クライミングの観点から言えば、こういう準備をすることによってこういうことができた、というデータを得ることができた。
少ないデータから考えることに危うさを考慮しながらも、次こういう準備をすればこういうことができるのではないか、という一つの指針を得ることができそうだ。
そして何より、この成果によってもたらされる自信も大きい。このモノサシはより一般的な尺度として、他の活動にも役に立つだろう。
長々と薀蓄を書いてはきたけれど、こういう堅苦しい理由の他に、やはり山をやる上で外すことができない最も大きな理由のもう一つには、山登り自体が持つ楽しさ、がある。
困難な滝を突破した時。
自然の悪戯としか思えないような仄暗いゴルジュの造形美を見た時。
自分の言語能力ではとても表現しきれないほどに美しい景色を見た時。
山の夜の深い闇の中で何をするでもなく焚火を見つめている時間。
困難を乗り越えてピークに立った時。
食傷気味と思ってしまうほどに過剰な刺激と楽しさを与えてくれた須築に敬意を表して、こんな言葉を送りたいと思う。