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| 【地図】 | |
| 十勝岳 1/2.5万 | |
| 【メンバー】 | |
| L | M本(政) |
| SL | T橋(学) |
| M | K崎 |
| 【予定の行動】 | |
| 12/19 | 地下鉄東西線ひばりが丘駅―凌雲閣駐車場C0 |
| 12/20 | C0―旧噴C1―正面壁左クーロアール―上ホロPeak―下降ルンゼ―C1 |
| 12/21 | C1―(12/20に完遂できていない場合は左クーロアールAt.)―凌雲閣駐車場下山 |
| 【実際の行動】 | |
| 12/19 | 予定と同じ |
| 12/20 | 07:10 駐車場発―07:50 旧噴―09:20 中央バンド―10:00 1ピッチ目取り付き―17:00上ホロPeak―18:20上ホロ避難小屋ビバーク |
| 12/21 | 09:00 避難小屋発―下降ルンゼ―10:00 旧噴 10:15―10:40 駐車場下山 |
| 【装備】 | |
| 共装 | . |
| 個装 | . |
| 【資料】 | |
| . | |
このルートは、去年のミックスクライミング入門で取り付き、敗退しているルート。
ミックスの「ミ」の字も知らなかった僕に登れたはずもなく、終始フォロー、数度テンションをかける、という体たらくだった。
同じメンバーだったN海君とガクガクブルブル震えながら、「こんなのリードできるわけない」と言っていた記憶がある。
あれから1年以上経ったとはいえ、まだ初心者の域を出るレベルではなく、アイゼン登攀の経験は薄い。満足にミックスのトレーニングができたとも言い難い。
でも、登るからにはもうフォローでは登りたくない。フォローなんて、登っていないのよりまだ悪いのだから。
準備不足からくる拭い去ることはできない不安と、それでいながらもこれまで1年の成果からなんとか勝負にはなるのではないかという期待感、高揚感。
I was born to climb you !
雪は11月の登攀企画の時よりは多いものの、まだまだ少ない。
今回は地下鉄待ち合わせということもあって荷物を減らすためにワカンにしたのだが、ワカンだと這松の空洞にハマッテけっこうゴクイ。
雪が少ない時はスキー推奨。どうせ旧噴にデポっていけるんだし。旧噴のウンコ岩の陰にワカンとストックをデポし、アイゼン着用で出発。
途中尾根状を行き過ぎて、取り付き尾根への沢へ降りづらくなったりしたが、取り付き尾根に乗り、中央バンドへ。
曇ってはいたものの、ずっと正面壁は見えていた。意外と天気悪くなかったりして、と浅はかな期待をしてみたり。
中央バンドで準備をする。1ピッチ目K崎、2ピッチ目MT副隊長、3ピッチ目MM隊長、と決まった。
去年は全然登れなかった左クーロアール1ピッチ目、リベンジだ!
去年はGンキと二人で「こんなのとてもリードできない」と((((;゚Д゚)))と震えていた。
あれからいくらかミックスをこなして、僕はここをリードできるようになったのか。
はっきり言って、分のいい賭けではないと思っていた。良くて五分五分か。でも、だったら、チャレンジしない手は無いのだ。
「基本を忘れなければ、恐怖心に負けなければ十分勝算はある。」そう自分に言い聞かせた。
1pitch(45m, W+, K崎)(※ グレードに関しては僕の独断です)
ここからトラバース気味に左上する。山谷に書いてある「かぶり気味の岩に頭を押さえられる」部分の手前に残置の軟鉄ハーケンがある。
この先の2〜3mが傾斜は無いが非常にのっぺりとしていて、たぶん1ピッチ目一番の核心になっている。
そして、ようやく、雪田に出た。
充実感やら、安心したやら、時間がかかりすぎて申し訳ないやら複雑な心境だったけれど、きっとこの登攀は自分にとっての一つのターニングポイントになるだろうと思った。
取り付き尾根から中央バンドに出たその真正面が左クーロアールの1ピッチ目取り付きである。
浅い凹角が5m程続き、その上が小テラス(山谷にも記述のあるテラス)になっている。
去年はこの最初の凹角にエビの尻尾ができていてそれを払い落とすことから始まったが、今年は雪が少ないせいか、エビの尻尾はできていなかった。
この凹角を3m程登ると空洞があり、その上がテラスまで2m程立っている。
この空洞でキャメをきめたいところだが、どこにもきまらなかった(去年はきめてたはずなのに!)。
そこで、あまりきまっていないハーケンを打ち、その上に挑むことになる。
はっきり言って、この次点で僕にとってはかなりシビアで、交代してもらえるものなら交代して欲しかった。下ではMT副隊長が心配そうに見ている。
でもきまっているのかどうかよくわからないハーケン1本では降りることすらできない。
「やっぱりここをリードするのは時期尚早だったのかな」という思いが頭を過ぎる。
でもだったら、何の為に忙しい時間を割いて来たのか。やっぱり交代なんて悔しすぎる。絶対登ってやる。
登ると決めたのなら、もう怖がったり守りに入ったりするのは逆効果だ。何があっても冷静に、理詰めで登るのだ。そう言い聞かせる。
ホールドとスタンスをしっかり確認する。そして雪壁にバイルを打ち込み、「勇気、根性、冷静・・・」とブツブツ言いながらゆっくりとそれに荷重していく。
足は事前に確認しておいたスタンスをしっかりと拾っていく。グサグサの雪になるテラスへの乗っ越しも慎重にして、やっとのことでテラスに這い上がる。
ここまでで1ピッチ目の全体の1/3だ。最初に踏ん切りがつかなかったせいで、えらく時間がかかってしまった。
ここまでホールドは雪壁・草付に打ち込んだバイル。
この辺は難しくはないのだが、雪や草付にあまりバイルがきまらなかったり、落ちたら間違いなくグランドフォールするのが怖くて慎重になりすぎてしまう。
「左のリッジに抜ける」部分も雪がグサグサでイマイチバイルのきまりが良くない。そのため残置の軟鉄ハーケンにスタンスA0。
フォロアーの話では、そのせいでかなり致命的に曲がってしまっていたそうです。ごめんなさい。
このリッジを左上気味に詰めると、山谷にも書いてあるテラスに出て、ここから左手の壁に沿って右上する。ちなみに前年はここでピッチを切った。
ここに残置ハーケンが1本ある。Alien紫でもう一本支点を取る。
アイゼンで全然立てず、去年はここで数度テンションが入ってしまった。
足はほとんど凹凸の無い壁の中では比較的使えそうな凹凸や、ベルグラに置く。
手は雪があるところではバイルを打ち込んだり、ドライツーリングを交えつつ、少しずつ少しずつ進んでいく。
やはり足が外れたりベルグラが切れたりして足が滑ることはあったが、基本に忠実に3点支持をしていたため、フォールすること無かった。
途中でAlien黄を1本きめられた。右上していき、雪田への最後の詰めも若干立っていて、ここも少し緊張する。
しっかりとバイルを打ち込み、変な方向に力をかけないように注意しながら乗っ越す。
ロープの流れまで気にする余裕が無かったためロープは非常に重く、また雪の質や付き方も良くなかったため雪田では全然前に進めなかった。
仕方が無いので、人幅チムニーより少し手前でスタンディングアックスでビレイする。
雪を掘ってハーケンをきめられそうな岩を探したが、どこにもきまらなかった。
初めてここを登ったMT副隊長は「難しいな」と言っていた。
前回ここをリードしているMM隊長は「フォローなら全然怖くない」と言っていた。ごもっとも。
2pitch(45m, W+, T橋(学))
MT副隊長が人幅チムニー手前にイボイノシシを1本打ち、カムを1本きめたので、それでリードのビレイをする。
このイボイノシシは回収できなかったので、ここを登る人はビレイ用に使ってください。
人幅チムニーは、去年はそれほど奥まで入らずに登ったが、今年は奥まで入ってから登った。奥に1本残置ハーケンがある。
奥まで入ると、向かって左の壁にそれなりに凹凸があるので、それと背中のフリクションを使ってズリズリと登る。
山谷には「7m」とあるが、実際には5mくらいだったような。5m登ると、両側の壁の間に足場があり、そこに立つ。
そこから左手の切り立った壁に取り付き、トラバース気味に右に回りこむようにして凹角に入るのだが、ここが怖い。
下は断崖絶壁で、その高度感で足が竦む。
左手の壁にリングボルトの頭だけ残ったものがあるので、それやカムを使ってここでしっかりと支点を作っておく。
以後ゆったりと支点を作れる場所はなく、残置支点もないので。
恐々とトラバースして凹角に入り、その凹角を詰める。傾斜は緩いが、バイルのききは良くない。
やがて右手に壁(リッジ)を見ながら緩いバンド状を詰めるが、ここもベルグラでスタンスが非常に良くない。
当然バイルのききも良くない。ここで岩を叩きまくってしまった。支点も無いので、要所要所で自分で作るべし。
バンド状を詰めて、乗れそうなところで右手のリッジに乗ると傾斜が緩い雪の斜面に出て終了。
今回は岩にハーケンを2枚打ってビレイ点とした。適当な岩が見つからなければスタンディングアックスで。
3pitch(30m, V-, K崎)
このピッチはMM隊長がリードという話だったが、2ピッチ目をフォロー中にMM隊長のアイゼンが片方崩壊してしまったので、僕がリードすることに。
山谷には「リッジを右側から巻いて主稜線に出て終了」とあるが、
右に巻く手前のスタンス部分が岩が出ていてヤラシそうだったのでそのままリッジを詰めたら、上部が微妙に立っていて失敗した。
時間も押していたため悠長に支点を作っている暇もなく、けっこう緊張した。
時間は無いわ、支点は取れないわ、足場は崩れるわで、一瞬吼えた。後から「なんか吼えてなかった?」と聞かれてちょっと恥ずかしかった。
Peakなのかどうかわからなかったが、平らな部分に出たところで終了。(実際はもう15mくらい歩いた先がPeakだった)
ビレイ点は当然無いのでスタンディングアックスをしたが、バイルが頭まで入りきらないという雪の少なさだった。
フォローが登ってくる時にはすでに真っ暗で、ユラユラとヘッドランプの灯りが近付いてくるとホッとするのだった。
3人目まで登り終えて上ホロカメットク山Peakに着いたのは17時だった。あたりは真っ暗。風はべらぼうに強いわけではないけれど、そこそこ強い。
今日中に下山できないことはもう確実で、今日はどこかでビバークして寒い一夜を過ごさなければいけないとわかっているのに、この充実感は何だろう。
T平会長がよく言っているように、たとえ時間に遅れても、完登することが価値があるのだ。
僕はPeak付近でビバークかと思っていたが、MT副隊長が「暗くても小屋まで行けると思う」とのことなので、とりあえず小屋を探してみることにする。
あいかわらずMM隊長は地図もコンパスも出していなかったし、MT副隊長もコンパスをきっていなかったが、
この期に及んで道迷いとか誰かが足を踏み外して滑落というようなヘマをしたくなかったので、しっかりコンパスをきって進むことを主張。
MM隊長、地図とコンパスはザックに入っていても意味無いですよ。
小屋の方角に向かって尾根を下っていき、平らになってから小屋を求めてしばし探索。
辺りは暗く、お互いちょっと離れると行方がわからなくなりそうな状況で、僕がもう諦めかけていたその時、MM隊長が叫んだ。「小屋だ!」
半信半疑で近寄ってみると、そこには紛うことなく小屋が鎮座しておられた。思わず「小屋キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!」と叫んだものな。狂喜乱舞。
相変わらずMM隊長の野生の勘はスゴイ。みんな手を取り合って喜ぶ。
小屋の中に入ると、さして広くもないが、風が強い外から比べたら別天地。
しかも、なんと!毛布まであるのですよ!至れり尽くせり。安っぽいペラペラの毛布だけど、シュラフカバーだけで寝るよりははるかにマシ。
みんなで非常用ガスと非常食を出し合い、ささやかに食事を取る。
深夜はとても風が強く、小屋が軋むほど。小屋を見つけられなかったらかなり酷い凍傷になったかもしれないと思った。
MM隊長のアイゼンのこともあるので最悪D尾根経由で下ることも考えたが、
修理したり僕の持っていたユニットバンドで締めたりすると下る分には問題なさそうだったので、下降ルンゼを下ることにした。
下降ルンゼの降り口は小屋のすぐ側。
雪崩の不安も考慮したが、主稜線は雪が少なく、下降ルンゼ自体も上部は雪が締まっていたので問題無しと判断した。
出だしはけっこう傾斜があるが、すぐに緩くなる。後は沢中に入り過ぎないようにしながら適当に下る。
やはり沢地形っぽくなると雪がそこそこ多い。だが、雪崩の不安を感じるほどではなかった。
八ツ手岩に入っていたっぽいスノーシューのトレースがあったのでそれをゴッツァンさせてもらった。ウンコ岩でワカンを回収して下山。
MEMOにも書いたが、有名なルートではないので人に言ってもあまり評価はしてもらえないだろうけれど、
前年に全く歯が立たなかったルートをリードすることができたという意味で、自分の中では記念碑的な山行になった。
本文中にも書いたけれど、僕にとってターニングポイントになるほどの登攀ができたと思う。
去年登れなかったからこそ、今年は何としてでも登ってやると思っていた。
最初の方で「born to climb you」と書いているのは大袈裟ではない。
(※ ちなみに、御察しの通りこの表現は今クールの某ドラマの主題歌に採用された曲を捩ってますよ。エヘヘ)
そのため、ピッケルとしてもバイルとしても性能の高いBlack Diamond社のShrikeを購入したし、2週続けてドライツーリングにも通った。
あの1ピッチ目を登るには、どうしてもドライツーリングの技術が必要になってくると思ったからだ。
(もっと性格に言うなら、今回取り付いた凹角のもう1本左の浅いのっぺりとした凹角から取り付くのが正解ではないかと事前にMM隊長と話していて、
そこを登るためにドライツーリングの練習をしていたわけだが、アプローチの際に見た限りではとてもそこは登れそうになかったので、前年と同じ凹角から取り付いた。
でも今から考えるとそれで正解だったと思う)
実際にドライツーリングを使ったのはワンポイントだったが、あの赤岩での訓練がなかったら自信を持って登れたかどうか。
そういう意味で、僕の我侭な赤岩訓練山行に一緒に行ってくださった方々には本当に感謝しています。ありがとうございました。
ちなみに、この山行で生まれて初めて凍傷を作った。両頬と目の間、それから両腕。腕の凍傷ってなかなか無いよなぁ。
最後に。とても登り甲斐のあるルートなので、ぜひ多くの人に登ってほしいです。
技術的には高難度のフリークライミングをしている人にとってはもの足りないかもしれませんが、
いい支点が取れないため、どこでヘマをしてももれなく致命傷、という一味違った生粋のアルパインクライミングが楽しめるはずです。