
| ■ 本当に美しいもの ■ |
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2時30分起床。実質、睡眠時間2時間。狭い床に雑魚寝状態だったので寝たか寝てないのか分からない位、体が重い。外は相変わらず真っ暗で何も見えない。ここでトイレを逃すと野外で放出しなければならないので、トイレに向かう。小さくは近くのスーパーから、大きくはディズニーランドまで古今東西、否応なく女子トイレというものは行列が出来ている。震えながら順番を待ち、完了と共に出発。 さすがに一眠りしただけあって、多少体力は回復していた。でももう楽観は出来ない。痛みの伴う経験がそれ位は学ばしてくれた。しかしこの教訓も役立つことなく、早くも9合目に辿り着く前に限界は訪れた。所詮、一朝一夕で得た張りぼて体力。期待はしていなかったが、早かった。 だが、そんなことが問題にならない位大きな問題が立ち塞がった。空気が薄いのである。この問題、地上諸君には決して分からないだろうが、本当に大変なのだ。 神経を研ぎ澄まして登らないと、いつ落ちても不思議じゃない岩場で、意識が朦朧としてまったく集中できない。ハッと気付くと「明日の晩御飯、お好み焼きがいいな」なんて本当にどうでもいいことを考えている。とにかく集中しなければ!決死の決意で登り続ける。 どの位時間がたっただろう。フッと顔を上げるとそこは神の国だった。 日の出が近いせいか、少しづつ空は明るみ、雲の切れ間からは光が差し込む。高度の低い山々は雲を切り開き頂上を覗かせる。霞がかった山腹は古代中国の水墨画を思わせるほど神秘的だ。 見上げると、頂上が目の前にある。後少し、後少し。虚ろな意識の中でそう唱えながら一心に登り続ける。最後の一歩友達の手を取り、肩を並べてゴール。 私も友達もそこにへたり込んでしまって、なかなか動けない。最後の気合で景色が良く見える場所を陣取り、無言で空を見る。 周りの人々がざわつき出したその時、叙々に光を帯びてきた空は、日の出をキッカケに弾けるようにオレンジ色に染まる。薄暗かった雲も光を浴び、視界全体がオレンジ色に包まれる。 皆言葉が、出なかった。静寂の中太陽は勢いを増して空へ上ってゆく。 それは、今まで見た事の無い、神々しく美しい光景だった。誰かが大きく手を打った。それに同調して、拍手喝采。皆思い思いに歓声を叫び、私も声の限り友達と歓びを称えあった。 頂上に集まった人々の割れんばかりの拍手の中、太陽は空を上りきった。 本当に苦しく辛かったけれど、こんなに辛さが報われる光景が世の中に存在すること自体に驚きでした。ここで、私達の富士登山記録は終わりますが、是非よかったら皆様、死ぬまでに一度は日本一の山、富士山に挑戦してみてください。 |