GPS

登山でGPSを利用することは現在では一般的になっている。携帯電話にもGPS機能搭載の物が現れGPSの恩恵に預かれる人が多くなったことと思う。以前は地図とコンパスが使えなきゃダメと云われたものだが、ここまで進歩してくると読図とか関係なしにGPSで地図画面を見ながら目的地へのルートファインディングが出来てしまうだろう。ただGPSは衛星が捕捉出来て機器が故障なくバッテリー上がりなく動くことが前提である。衛星補足はさておき、後者は機器の信頼性向上にて解決するのではないかと思う。自動車社会の今、自分で車を修理出来る人は僅かでタイヤ交換すら出来ない人が多いのにそれが問題となることはないように。

私がGPSを購入したのは1998年のことだった。当時で44000円だった。機種はガーミンのGPS38Jで、目的は登山ではなく、新しい機器に惹かれてのことだった。ただ緯度経度しか表示しないこれは登山をするようになるまではお蔵入りになってしまった。

カラー液晶で地図も表示されるGPSの便利さは認める。しかし、私のGPSの使い方は白地図が基本である。GPSの用途は山スキーに限られ、地図による読図が困難な状況を想定して山行前に準備をした上で持参する。地図による読図が困難な状況とは。

1.平坦で広い斜面が多く、地形と現在地の相関を得にくい場合。

2.1の場合で樹林によって視界が遮られる場合。

3.1の場合でガスによって視界が遮られる場合。

4.1〜3に共通するが、トレース・指導標等がなく一切が雪の下の場合。

5.保険的な意味で日没とともに遠方の視界が失われる場合。

古いGPS38Jは最新の機種に比べていろいろと不便なことが多い。おそらく以下に書いていくことも現行機種では異なってくることだろう。最新機種に代替したいという思いはあるが、これまでGPSなしだと困るという危機的?状況では裏切られたことがなく、なくてもいいかと思える時だけ衛星ロスト等の不便に見舞われているのでまだしばらくはこれでいくと思う。

私のGPS一式

写真が私のGPS装備一式である。右手のケースはザックの肩ベルトに付ける為のもので、ザックを降ろすことなく常にGPSを取り出して確認出来る。左の電池ケースとコードは外部電源を構成していて低温下での本体の電圧低下を補っている(使用時は電池ケースをポケット等に入れて保温する)。低温に強いリチウム電池を使用しないと冬は電池電圧低下によりGPSがダウンしてしまう。液晶画面は氷点下15℃程度で若干見難くはなるが動作には問題ない。

GPS背面

GPSの背面は写真のようになっている。この電源ピンとアースピンに外部電源を接続する。純正の通信ケーブルまたは車のシガーソケットアダプタ等のコネクタを使えば綺麗に作成出来ると思うが安く済ます為に自作コネクタで代用していた。ただ使っているうちに写真のようにピンが折れてしまい、半田付けにて接続していたが、今春ついにここから給電出来なくなってしまった。本体側の問題と思うが、防水構造で簡単に分解出来ないので一時期より安くなったリチウム電池を今後(低温時)使うことにし外部電源使用は中止した。データ入力とデータ出力ピンはPCとの通信に使用する。PCと接続すればカシミールへトラックログをダウンロード出来るし、逆にウェイポイント等のデータをGPSにアップロード出来る。接続に際しては専用ケーブルを使っても良いが、データ出力=TXD、データ入力=RXD、アース=GNDの3本をRXDとTXDをクロスにしてPCのRS232Cポートに接続すれば良い。詳細は割愛するが、規格12V駆動のRS232Cは5V駆動でも殆どのPCで通信可能である。

立ち上げ画面

赤い電源ボタンを押すと上の画面が表示される。1996とのことであるから相当古臭い。落とす時は同じボタンを3秒間押し続ける。

衛星補足画面

電源を入れると上の衛星補足画面になる。GPSは前回電源を落とした時の緯度経度、もしくは入力して設定(前回電源を落とした時の緯度経度を更新)された緯度経度の情報を用いて初期化を行う。この時、設定された緯度経度が正しくないと衛星補足がうまくいかない。ただ、そういう場合は自動的に初期化の選択画面が表示されるので「オートロケイト」を選択する。ただ、オートロケイトだと初期化に時間を要する。予め登山口の緯度経度高度を入力しておくと初期化時間を短縮出来る。

衛星状態頁

初期化が終わると上のような画面になる。3Dナビ表示の時は衛星を3個以上補足しており、緯度・経度・高度のデータが使用可能である。2Dナビの場合は衛星の補足が2個のみであり、高度が使えない。一番右の弱受信は衛星補足が1個とかになってしまった場合で、地形の変化や樹林が濃くなった場合に陥る場合が多い。弱受信ではもうデータの信頼性はなくなってしまうが、2Dナビでも一見、緯度経度が表示されているが嘘をついている(データが更新されない)場合がある。バーが黒いのが捕捉衛星であり、この本数で状況を把握する。白抜きバーは衛星は補足しているがデータ収集中の状態である。3Dナビ以外の状況が長時間続いた場合には電源再投入により初期化を行った方が良い。左のバーが電池残量で、右上の数字が水平位置精度だそうだが、ここはあまりチェックしない。電池残量はなくなったり低温下で電圧が下がれば警告表示が画面中央に出る。「右の伝言ページキーを押す」がそれである(この場合は弱受信警告)。

緯度経度表示

初期化が無事終わると上の写真の左画面に切り替わる。一番上の方位は進行方向であり、止まっている状態では機能しない。今時の携帯のように使用時はバックライトが点灯しないと見えない訳ではないので暗い時は赤いボタンを押してバックライトを点灯させる(上右)。点灯時間は設定で変更可能である。

緯度経度設定

先に説明した登山口の緯度経度の設定は先の画面で「設定」キーを押して変更する。緯度経度の部分にカーソルを移動して、再度「設定」キーを押すと上の写真のようになる。

白地図画面

地図画面は上の写真のようになる(合成)。画面の設定は「進行方向が上」と「北が上」が選べる。ルートが明瞭な場合は地図との比較がしやすい「北が上」でいいかもしれないが、雪の中をラッセルしながらルートを修正したい場合には「進行方向が上」が便利である。画面中の「ヤリ2800」、「ヤリ2700」はウェイポイントであり、予めGPS内のメモリに緯度経度値を入力し設定する。

ウェイポイント設定

ウェイポイントの登録は上の写真のようにして行う。まず、メニューで「ウェイポイント」を選択して「設定」キーを押す。次に右の画面が表示されるので「新規作成」にカーソルを動かして「設定」キーを押し、名前、緯度、経度を順に入力する。

ウェイポイントの決定は以下の順で行う(山スキーを想定)。

1.1/25000地図上(またはPCの地図画面上)で登りルートを決定する。

2.ポイントは標高50または100m毎に決定する。名称は山の名前の頭文字1字+標高とすると分かりやすい。

3.ルートの屈曲点ではポイントを増やしたり工夫して直線的に進まない工夫をする。

4.尾根上やルートが分かりやすい部分では間隔を広くする。但しホワイトアウトの場合も想定。

5.滑るルートは雪崩の危険や視界が利かない場合を考慮して設定する。沢筋を滑る予定の場合はGPSの重要度は低くなるので、エスケープルートとなるポイントを設定しておくのも一考。

6.決定ルートは持参地図にも鉛筆等で引いておく。

ウェイポイントの緯度経度を得る方法は

1.カシミールでウェイポイントを入力し、ケーブルでGPSにアップロードする。私の場合は日本語版のGPS38JだとGPS内で文字化けしてしまい、名前変更に却って手間がかかるのでやらず。

2.カシミール画面上にウェイポイントとしたい場所をカーソルで指示して、その値をPC画面から直読みして入力。私はこの方法を永らく使ってきた。

3.国土地理院1/25000地図上に定規を当てて座標を取り、緯度経度を計算する。ネット上の無料地図が使えなくなってしまってからは手間が掛って面倒だがこの方法を使用。緯度経度の単位が60進数なので注意が必要。この方法だとPCがなくても使うことが出来る。定規スケール1mm単位で0.1mm単位を読める人(1mm間隔でも0.5mmなら誰でも読めるでしょう?)なら精度的にPC使うのと差はない。緯度によるが概ね0.1mmが上の写真の一番下の桁の0〜9"の1単位に相当する。距離にすると2.5m。

以上書いてきたが、地図の上で現地のルートをイメージして最適ルートを引ける能力(地図上でのルートファインディング)がないなら素直に地図入りGPSの購入が無難。ただ、山スキーなど地図でおおよその見当が付く場合は良いが岩場等は地図でルート決定が困難なので使えない。ただ私の場合には岩場や稜線上のルートではGPSは使わないので不便は感じない。GPSを使うようになって当初想定したラインと現地での判断が合致した場合は嬉しいものである。一部書籍にて楽しみは奪われるがウェイポイントがCD-ROMに入った物が売られている。

ナビ画面

上はナビ画面の写真である。GPSのナビ機能は滅多に使うことはないが、知っていると便利なので覚えておこう。ナビ機能を使うシチュエーションは

1.雪に埋もれた山小屋などピンポイントで正確に位置を特定したい場合。

2.最寄のウェイポントとの距離が離れていて白地図画面では行動の軌跡が細かくなり過ぎるか画面外に最寄のウェイポイントが出てしまう場合。

3.ガスに巻かれたり樹林によって見通しが利かない平坦な山頂付近で山頂の標識に辿り着きたい場合。

一番下のスケールが自分の進んでいる方位(赤丸)と進むべき方位(中心)とのずれを示し、左上の方位の数値が目的地の方位、左下の方位の数値が現在進んでいる方位。右上の距離が目的地までの距離で、右下の速度が自分の移動速度である。赤矢印が進むべき方向で現在進んでいる方向より右へ修正することを指示している。この矢印が真っ直ぐ上を向くように進めば良い。「モクテキチ」がウェイポイント名。この機能は平原で植生を避けながら直線的にラッセルする時に非常に効率が良い。逆に深くて殆ど進めないラッセルでは速度が0.0km/hとなってしまい方位表示機能がうまく機能しなくなる。(説明の為に赤色で画面合成してあるが、実際は色はつかない)

他にも複数ウェイポイントをつないで登録する「ルート」機能もあるが私は全く使っていない。この機能を使えば全区間ナビで行けるので便利かもしれないが、設定操作が煩雑なのと私のGPSではルートに登録可能なウェイポイント数が少ないので使っていない。

設定画面

最後に各種設定を見てみよう。メニューで「設定メニュー」を選択する。

1. 操作:モードは「ノーマル」と「バッテリーセーブ」の2種。軌跡を取るなら後者が電池の持ちが良い。一番下の0秒はバックライトの点灯時間で自動消灯だと見ているうちに消えることがあるので赤ボタン再押しで消灯するので自動消灯をオフにする。

2. 航行誌:これは軌跡ログの設定で、長時間の行動を記録するのに5分間隔にしている。スキーの滑降時には飛び飛びになるが、歩行時は問題なし。記憶済%表示と100%の差分が記録メモリの残りとなる。

3. 地図:地図の向きは「上が北」と「進行方向上」のどちらか、「ウェイポイント間が上下」もあるがこれは使わない。航行誌は最大値の768にしている。他は全て「はい」で表示される。

4. ナビ:地図データは測地系を示す。私は昔から「Tokyo」を使っているが、現在は「WSG84」の世界測地系が標準。1/25000図には両方の表記あり。この辺は理解した上で使い分けるか統一しないと大変なことになる(GPSはここの選択を変更しても内部に登録されたウェイポイントの緯度経度データを変換してくれることはない)。

GPSのおかげで便利なことが多かった反面、強引なルート取りをしてしまったことも多々あった。防水で土砂降りの中で使っても問題なかった。極寒の中、手袋したままでボタンを押しながら使ったこともある。使い始めの頃はウェイポイントを入力して使うということを知らずに緯度経度と地図の現在地を合わせるのに苦労したこともあった。これからGPSを使おうという人はGPSにデータを入力するのが山行の始まりだと思って楽しんで欲しい。

2008.6記

END

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