以前ビレイデバイスをジムでテストしたが、時間があったので今度は計算と簡単な実験から両者の結果を組み合わせて墜落時にビレイヤーのロープを抑える手にどの程度の力が必要となるか計算してみた。実験は静的な状態でロワーダウンさせる場合の値を使ったので実際と条件が異なる。
まず、ロープをカラビナに通して180度折り返してカラビナの動摩擦を測定した。ロープによる差は殆どなく、引く側に2の力を掛けると引かれる側に1の力が掛かる結果となった。カラビナの厚さで10%程度の差が生じた。当然薄い方が摩擦が大きくなる。この結果から墜落時の衝撃のうちクライマーが2/3、ビレイヤーが1/3を引き受けると仮定した(2:1)。しかしこの値はペツルのカタログでは(1.5:1)であるし、文登研の実測では(1.68:1)のようである。また下記の計算は中間支点は1箇所だけという前提である。
次に各ビレイデバイスを8.1mm(ベアール アイスライン ゴールデンドライ)、8.5mm(エーデルワイス シャープ)、9.5mm(マムート インフィニティ)を用いて自分の体をプーリーにより折り返したロープでロワーダウンさせた時の引き側のロープの引っ張り力を測定した。測定はゆっくり降ろす状態で測定した。停止状態での値ではない。この値と体重からプーリーの摩擦分を減じた値からビレイデバイスの引き手側の過重を比で求めた。ロープはアイスライン以外はそれなりに使用したもの。
墜落時の衝撃力は
衝撃力=重量×重量×(1+2×K×墜落係数÷重量)^0.5 *^0.5:√のこと
K=重量×長さ÷伸び
Kはカタログスペックより
8.1mm:435(11.5%/55kg) 8.5mm:550(10%/55kg) 9.5mm:1176(6.8%/80kg)
クライマーの重量を80kgとして上記式に各値を代入すると
墜落係数 0.3 0.5 1.0
8.1mm 2.4kN 2.8kN 3.5kN
8.5mm 2.6kN 3.0kN 3.8kN
9.5mm 3.2kN 3.9kN 5.1kN
中間(最終)支点に掛かる衝撃力は上記の2倍、ビレイヤーに掛かる衝撃力はクライマーの半分であるから
墜落係数 0.3 0.5 1.0
8.1mm 1.6kN 1.9kN 2.3kN
8.5mm 1.7kN 2.0kN 2.5kN
9.5mm 2.1kN 2.6kN 3.4kN
上記値から各ビレイデバイスの抑え手側の力を実験値で求めた比より計算すると
8環(ペツル ヒュイット)
墜落係数 0.3 0.5 1.0
8.1mm 43kgf 52kgf 63kgf
8.5mm 33kgf 37kgf 48kgf
9.5mm 33kgf 41kgf 52kgf
ATCガイド(ハイフリクションモード)
墜落係数 0.3 0.5 1.0
8.1mm 22kgf 26kgf 30kgf
8.5mm 20kgf 24kgf 28kgf
9.5mm 20kgf 24kgf 33kgf
ATCガイド(ローフリクションモード)
墜落係数 0.3 0.5 1.0
8.1mm 37kgf 43kgf 54kgf
8.5mm 35kgf 39kgf 50kgf
9.5mm 26kgf 33kgf 41kgf
ATC
墜落係数 0.3 0.5 1.0
8.1mm 37kgf 43kgf 52kgf
8.5mm 37kgf 43kgf 54kgf
9.5mm 未計測 ← ←
ルベルソ
墜落係数 0.3 0.5 1.0
8.1mm 46kgf 52kgf 63kgf
8.5mm 39kgf 46kgf 56kgf
9.5mm 35kgf 43kgf 56kgf
ルベルシーノ
墜落係数 0.3 0.5 1.0
8.1mm 37kgf 43kgf 52kgf
8.5mm 非対応 ← ←
9.5mm ↑ ↑ ↑
DMM バケット
墜落係数 0.3 0.5 1.0
8.1mm 46kgf 52kgf 63kgf
8.5mm 24kgf 26kgf 33kgf
9.5mm 未計測 ← ←
感覚的に判りやすい様にkgfに換算した。試しに静過重でどこまで耐えられるか試してみた。21kgと14kgの重量をプーリーで折り返してロープを握って抑えてみた(ロープを引いてバランスさせたので摩擦分は無視した)。21kgだと8mmロープで手袋してなんとか止められる程度。素手だとゆっくり滑っていきそうになる。14kgだと素手で止まる。両手を添えるとして2倍としても30〜40kgf、体重を超えればとても止めることなど出来ないであろう。
END