瑞牆山十一面岩末端壁「調和の幻想」

2004.10.17


17日:1P 開始 7:40〜1P TOP 8:10〜1P 2nd 8:25〜2P終了 9:10〜3P TOP 9:35〜2nd 9:45〜4P 終了 11:00〜5P TOP 11:35 2nd 11:50〜懸垂下降 取付13:10


装備:120cmスリング2本、60cmスリング4本、30cmスリング2本、捨て縄2本、キャメロット#0.2〜3を1セット、フレンズ#1、#1.5、#2.5、#4、BDストッパー#6〜10、DMMナッツ#1〜6、ヌンチャク4、バラビナ5、安環付3、簡易アブミ、FIVE TEN スパイア、以上個人装備(パートナーはフレンズ#6までフルセット+キャメロット#1〜3他)、9.5mm×50mシングル、8.5mm×50mダブル(バックロープ)

17日 駐車場から(13:30帰りに撮影)

T氏とは以前から瑞牆山へ行こうという話が出ていた。とはいえクラックでグレードも辛いとなるとまずはクラックの実力をつけてからだと思っていた。そんなこともあってT氏も「風鈴」ルートを候補に挙げてくれていた。だが調べてみても「風鈴」はネット上の記録は見当たらず、昔の「岩と雪」でも苔だらけと書かれていてあまり快適ではなさそうであった。そんな理由からどうせなら「調和の幻想」に行きましょうと言ったのだが、T氏は小川山で練習して様子見してからと慎重な姿勢を崩さない。全5ピッチでワイド系があるのが1、5Pなので2、3またはツルベで偶数ピッチを私が行けばT氏には丁度良く、私は少しくらいインチキすればなんとかなると甘い考えを持っていた。

金曜の深夜に小川山へ向かい土曜早朝に「親指岩」に向かう。「クレイジージャム」5.10dをトップロープで練習する為にまず「小川山レイバック」に行く。「クレイジージャム」の中間よりやや上にOWがあってその部分が明日の瑞牆の練習になるだろうということである。T氏がオンサイトトライを勧めてくれたが、朝一でNPルートをリードする気にはなれずあっさりフォローを選択する。T氏も何度か登っているにも関わらず10度を下回る気温の中では調子が出ないようで離陸を何度かやり直す。上部もレイバックで一旦上がるも乗越手前でクライムダウンしてジャムで登り直していた。私はゆっくり岩を観察出来たので右のフェースの2〜30cm程度の高さにあるスタンスと左足とのステミング+両手ジャムから右足フットジャムで離陸してすんなり登ることが出来た。却って乗越してからのスラブが緊張した。ツルベでフィンガージャムのトラバースで左を回り込み親指岩のてっぺんに出る。懸垂でクレイジージャムを下降してトップロープで練習する。T氏も何度もテンションする位なので当然私は2〜3m毎にテンションする羽目に、それでもなんとか上まで抜ける。T氏は2度トライ(2度目はOWで1テン)するが私は2度目は途中までで降りる。T氏の勧めもあり「小川山レイバック」をリードする。2度目なのもありプロテクション5個ですんなりRPを決める。このクラックは「レイバック」と「クレイジージャム」が表裏でつながっていて向こう側の声がよく聞こえる。その後は「マラ岩」に行き「レギュラー」5.10bが空かないので隣の「イレギュラー」5.10dをT氏が初見1テンで登りそんなに難しくはないと言うのを間に受けて取り付くも核心までは各駅停車でかなり腕の力を吸い取られた。明日は大丈夫なのだろうか?

土曜のうちに植樹祭の森駐車場に移動して車中泊、日曜は朝6時頃に出発する。遠回りをしてしまい取り付きには7時過ぎに到着。正しいアプローチは駐車場から遊歩道に入ってすぐの右側の遊歩道に入り、十字路を過ぎ(我々はここで右折してしまった)、Y字を右へ行き、チップを敷き詰めた遊歩道が登山道になって大岩正面の分岐を右に踏み跡を辿ると沢沿いの踏み跡とT字で合流するのでこれを左に折れてしばらくである。

17日 7:25 取り付き

アプローチで温まった体もギアを準備しているうちにすぐ冷めてしまう。ワイドギアはT氏のだけで済ますということで私のキャメ#3.5〜5は取り付きに置いていく。正面のワイドクラックがルートなのだが見た目にも5.9にはとても思えない。T氏のリードだからなんとかなりそうだが自分がリードなら登る前に敗退しそうだ。

1P目5.9(T氏のリード)

朝一で冷めた体で動きがぎこちない。最初は階段状を上がりワイドクラックを登る。フレンズ#6ですら嵌る所がなく右のフレークにもカムを入れてロープが屈曲している。最初は右のフレーク沿いにやっていたがチムニーに半分体を入れてフレークに足を突っ張って登って行った。ワイドが終わる部分も悪そうで苦労している。待っている間に靴のつま先が冷えて感覚がなくなってきた。

私の番になった。ビレイしている間にチョークバックとか忘れ物に気が付きザックに取りに行く。ワイド手前でクラック右下の岩に手を掛けると剥がれてしまった。30cm四方位と大きいが持ち上げて移動出来る重さでもなくそのまま落とす。取り付きで破裂音と共に砕けて破片がT氏のザック真横で炸裂する。ワイド部分に来たがどう登ればいいのだろうという位スタンスに乏しい。フォローの気安さで安易にレイバックで右のフレークを掴んで上がろうとするも足が滑ってフォール。蓑虫のようにロープにぶら下がる。かなり気分が凹んだがその後のピッチはここでのフォールで割り切れてなんでもありで登っていけた。結局チムニーに入り込んでずりずりと上がっていく。頭がつかえる部分で一旦フェースに出るのだが空間に身が踊るので緊張感がある。リードしなくて良かったと思える部分である。思い切り行けばホールドスタンスともに拾えるのであるがリードではつらい部分だろう。上部で傾斜が緩みハンドジャムを交互に入れながら登っていく。T氏がスリングを下げてくれたがジャムの方が安定した。

2P目5.8(私のリード)

1P目でかなり息が上がって一休みしたいくらいだがすぐにツルベで登る羽目に。出だしはやや被ったワイドクラックで先ほど回収したT氏のフレンズをセットする。ワイド部分は広すぎて当然ジャムは決まらない。クラックの奥にもクラックがあり一ヶ所ハンドジャムが決まる。その上はフィンガー位。1Pで回収したT氏のギアがギアラックの手前にあるのでフレンズを入れてみるがうまく決まらない。引っ張ると外れそうになってここで落ちるとテラスにグランドと思い一旦降りてしまう。今度はその下にキャメ#0.5を入れる。クラックも湿っていてなかなか思い切りがつかない。T氏に急かされてキャメA0で乗っ越す。乗っ越すと傾斜が緩み体も安定する。左のクラックにキャメを入れてさらにその少し先にフレンズ#1を入れてA0でスラブに乗る。最初にA0してしまったのでフリーで挑戦するのをやめてしまった。スラブに乗る部分はつるっとしていてスメアで誤魔化さないと乗れなそうなことも拍車をかけた。そこから先は傾斜も緩くスタンスもあるので楽になる。ランナウトしそうなので適当にキャメ#0.2を入れて登ると染み出しで濡れていて傾斜も増し、びびってさっきのキャメの1.5m上にもキャメ#0.4を入れてしまう。ここまでで7つもカムをセットしてしまっている。濡れているのでまたA0で行く。使いすぎて小さいカムがなくなっってきたのでストッパーの#10まで使ってA0でほいほい登っていく。右手のビレイ点でなく左の立ち木というのは知っていたのでキャメ#2をクラックに入れて左の簡単な部分を回り込む。そこは広いテラスになっている。T氏は最初、私がセットした外れそうなフレンズを掴んでしまってそれが抜けてフォールしていた。スラブはすんなり登ってきてカムが鈴なりと冷やかされる。

17日 2P目スラブ上部(13:00下降時撮影)

3P目5.8(T氏のリード)

T氏に3P目をリードする?と問われたが今までの調子だとどうせ3P目も良いスタイル(フリー)で登れないような気がしたので、A0になってしまうのならツルベで登りたいと思いT氏にリードしてもらう。最初の階段状を登って直上よりやや右手に位置するクラックを登っていく。左のカンテ沿いのクラックとなっていたので視界に入る一番左のクラックかと思ったがそうではないようだ。リングボルトで右にトラバースということだったが感覚的にはトラバースというより右に移るという感じでT氏はしばらく迷っていた。

17日 9:20 3P目開始点から

私の番になって階段状を登っていく。最初のクラックは適当に登る。リングボルトから先が少し厳しかった。リングボルトでA0レストした後、思い切って登っていく。この部分はリードだと緊張しそうな部分である。フォローなので甘いホールドも使って登っていく。

17日 9:35 3P目階段状を上がった地点

4P目5.10a(私のリード)

いよいよ核心のピッチである。とはいえ他の記録を読むとここが一番難しいわけでもないようである。ギアを整理してT氏のギアは返却して自分のギアで行く。まずは木登りから。感じとしては「セレクション」3P目をクラックからでなく木から取り付くような感じである。それでも木に登る高さも高く乗り移る側のスラブもこっちの方が悪い。木にスリングを巻いてランニングを取り片足だけ乗り移ってから左手のクラックにフレンズ#4を入れる。これでA0してスラブに乗り移り右にトラバース、少し行くとダイクが明瞭になってすんなりリングボルトに到達。ここで落ちた時のことを考えボルトの頭にナッツをタイオフする。直上はつるつるなので右にトラバース。フレーク沿いに登る。フレークを掴んでいる手で耐えているような感じで余裕がなくこのフレークにセットしたキャメロット2つにランナーを取損ねスラブの核心部でロープの重みで身動き出来なくなる。ポケットが上下に並び、下のポケットに右手、上のポケットはエイリアンが決まるらしいが当然キャメ(#0.5)とフレンズ(#1)は決まらない。足元のカム2つでは心許ないが行くしかない。ロープを引っ張ってから登れば良かったのだが足の踏ん張りでロープを引き出し登る。無事上のホールドを掴んで一安心。ここで左のクラックに行けばよかったのだがこの薄いフレークにキャメを入れて直上してしまった。左にトラバースするのも悪そうだったので安易に直上したのと核心部のハングのクラックが目の前に見えているにも関わらず上部抜け口にあるオーバーハングのクラックと勘違いしていたせいもある(上のハングは5.10aとはとても思えない)。落ちたらフレークが割れてカムが外れてしまうと思ったらもう動けなくなってしまった。右手の枯れ木の根元のスタンスにトラバース、この根元にスリングを巻いてランニングを取る(フォローのT氏には回収のため変なラインを取らせてしまうことに)。レストは出来たがルートから逸れてしまったためニッチもサッチもいかなくなる。キャメ#3に落とさないようにスリングを付けて腕に巻きつけて持ち、ある映画で見たシーンのように右手で枯れ木を握り左手をうんと伸ばしてハングクラック抜け口に向ける。全然届かない。スタンスは悪くなかったので右手を枯れ木に触れる程度にして左手を伸ばしたら今度はセットすることが出来た。これにクリップしてテンション。両手を下げてレストする。あとは右手A0、次に左手のフィストジャムで耐えて落ちてもこのカムで止まると信じて右手を伸ばしたらようやく安定した体勢を取れた。ここでレストして右上の枯れ木の根元にもスリングを投げて回し、ランニングを取る。この木を掴んで登り木の所で小休止。

17日 10:25 4P目上部、正面の岩の下から左に回りこむ

17日 10:25 4P目スラブを見下ろす

どう見ても真上のオーバーハングは行けそうに無いのと、左に回りこむのが岩の弱点をついていてすっきりしているように思われた。オーバーハング真下では座ってレスト出来たのでここのクラックにナッツをセットしてジャミングし岩を抱えるように回り込んだらテラスがあった。スリングも使い切ってしまったのでもしもの為に用意したアブミで支点を作りビレイ。最初手前の木に回したのだが、枯れていたので奥の懸垂支点の木にセットし直した。ロープは非常に重い。T氏は順調に登ってきて最後のプロテクションを外して岩を回り込む所で妙な姿勢で登って来た。トラバースなのでフォローの方が大変なのだ。

17日 11:25 5P目開始点からOWを見上げる

5P目5.8(T氏のリード)

私の方はすでにヘロヘロだったがT氏はすぐにリードを始める。最初とりあえずフレンズをセットし次にOW下部でフレンズ#6を使ってしまいその後ランナウトしてしまうことに。それでも安定した登りで下部のOWを越えていく。2つ目のOWの手前でカムをセットする場所を捜すもないようである。キャメ#5やフレンズ#6以外は使えないようである。それでもランナウトして2つ目も越えて行く。その先は木でランニングを取り階段状に登っているようだったがその先で行き詰まっていた。下から見るとスラブのように見えていてルートを見つけるのに苦労しているかに見えた。「テンション」のコールがかかり聞き間違いかと思いながらもロープを巻いていく。しばらく休んだ後、今度は順調に登って行き、「解除」のコール。

OWは傾斜も緩く中に潜り込めばなんとかずり上がれる。それでも私がリードだったらランナウトは出来そうに無い。OWを越えて階段状の所で写真を撮り一休みしてさらに登る。

17日 5P目上部核心のチムニー(12:25下降時撮影)

目の前にフレアしたチムニーが現れた。中にフレンズが3つ並んでいる。手を突っ込んでもジャムが決まりそうな部分はなく外側にフレアしているのでどう登ったらいいものか。手がかかる所が殆どない。疲れていたのもあって時間をかけてフリーで行くのを諦めてカムでA0しながらずり上がる。そこを抜けるとあとは簡単なスラブ登りで終了点。

17日 11:50 終了点から駐車場を見下ろす

17日 11:55 終了点からの眺め

17日 12:10 終了点から上を見上げる

終了点はペツル8mmアルミハンガーともう片方は8mmのアイボルトである。懸垂支点だから片側をけちったのか?ハンガー側に捨て縄を追加して懸垂下降。次のテラスからは2P一気に降りようという話だったが下のテラスの木に引っかかるのが嫌だったのとそこにもビナ2枚の懸垂支点があったので切る。

17日 12:50 3P終了点テラスより

2P目終了点だけビナがなかったので1枚残置して1P目終了点まで下降。そこからさらに1ピッチ計5ピッチの懸垂下降で取り付きに降りる。

17日 13:25 取り付きからの眺め

感想:実力以上のルートに取り付いてしまった感じがする。前日の小川山の疲れを差し引いてもまだ自分がリードするルートではなかった。フリーマルチということでロープはシングルにしたがルートが屈曲しているのでダブルの方が良いのかもしれない。スリングも本ちゃん並に用意するべきだった。ワイドカムも持てるなら多く持っていくと安心感が増す。4P目スラブではポケット(上下にポケットが数センチ間隔で並び上にプロテクション、下をホールド、ここでは両足で立ってレスト可能)にカムが決められるのとそうでないのとで精神的に非常に大きな差が出ると思う。キャメ#0.5だと4枚の歯のうち2枚しか入らないがエイリアンだと入るらしい。小川山レイバックのように延々とジャムで行けるような所はなく要所でフェース登りの切り替えも混じるので初見では非常に難しく感じた。

END

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