【初日 至仏 無名沢】
【二日目 平ヶ岳】
【三日目 至仏 ムジナ沢】
26日 6:15 鳩待峠〜7:35、9:15 山ノ鼻〜12:50 至仏山〜14:15 山ノ鼻
27日 6:00 山ノ鼻〜6:55 猫又川(左右)二俣〜7:40 奥の二俣〜8:45 ススヶ峰のコル〜10:15 1920峰〜11:00 白沢山〜12:20 1936峰〜13:55 平ヶ岳〜15:05 1936峰〜18:15 ススヶ峰〜18:35 奥の二俣〜19:30 山ノ鼻
28日 8:00 山ノ鼻〜11:15、11:45 至山頂〜12:25、14:00 山ノ鼻〜15:45 鳩待峠
装備:ダンロップV-204、フィッシャーアウトバック168cm+3ピン+ポモカ50mm、BDブードゥー162cm+O1+アッセンション120mm、スカルパT3、他
今年のGWは11連休となり、前半は比較的長期に入山可能となった。周りに声を掛けても休みが重なるのが3〜6とのことで26日から単独で入山という予定にした。いろいろ考えたのだが、去年計画だけしてGPSに座標が入力したままになっている平ヶ岳にすることにした。ベースを山ノ鼻に設けて日帰り、前後の日は至仏を滑ろうということにした。
≪26日 至仏 無名沢≫
予定が立つと準備はすんなり進んだ。今回は鳩待から山ノ鼻という短い距離を担ぐだけで済むのでテントはダンロップVテン、マットも分厚いもの、スキーも2セットという豪華装備だ。それでもザックは15kg、スキーがそれぞれ2kg、4kgなので初心者の頃に立山雷鳥平にベースを設けた時よりずっと軽い。もちろん山ノ鼻からは日帰り軽量装備で行動である。

鳩待峠の駐車場は着いた頃には車もまばらだったが、上の駐車場は朝には満車になっていた。駐車場代は2500円。二日目以降は1000円である。鳩待から山ノ鼻への下りは鱗板も担いで17〜18kgとなってしまったザックの為、とても軽快とはいえない。格好は気にせずに滑り降りる。トラバースで木の枝に背負ったスキーが引っ掛かったりして難儀する。それでも歩くより早いかと思ったらツボ足の人が後ろから迫ってきた。そこから先は楽になりスキーの機動力でさくさく進む。

山ノ鼻で橋を見落としてしまい、尾瀬ケ原の方へ出てしまう。戻るのもなんだし、あっちにも橋があったはずだと思い、そのまま進むと橋が見えた。渡って山ノ鼻へ向かう。テントの受け付をする。一日800円だ。山行予定どころか住所氏名も書かなくて済む。

炊事場の裏手をちょっと整地してテントを立てる。向こうから女性二人連れがやってくる。挨拶して尋ねると橋はあるとのこと。やはり見落としていただけだった。彼女達も平ヶ岳に行く予定だそうだ。私の方は日曜の予報が芳しくないので月曜辺りに行く予定と話す。彼女達は日曜に行くとのこと。
テント設営も終わり飲料用の雪のブロックも切り出したので、至仏へ向かう。ムジナ沢を登ればいいのだが、手前の尾根に取りついた。去年3月に儚月さんと至仏に行った時に雪崩を警戒して尾根上にGPSウェイポイントを入力していたのである。でもその時は至仏には届かず悪沢を滑っている。樹林帯の登りはシールで直登出来、軽快に高度を稼ぐ。

樹林帯を抜けると広い斜面になる。だんだん尾根が細くなる所で左へ左へと植生を逃げていたらだんだんと左手が急斜面となったトラバースとなってしまった。途中右手から上がってきた一本のスキーのトレースを見つけそれを辿る。部分的には岩が出てスキーを脱ぐ羽目にまでなりながら標高2000mを越えてからいつまで経ってもトラバースしているような気分になる。左下では人の声がするが滑り降りている人の声である。岩陰となってしまったせいかGPSは衛星をロストしている。思っていたよりかなり南側に出てしまったようだ。急に尾根幅が広くなったかと思ったら山頂に出た。後で地図を見ると最後の方は夏道と合流してしまったらしい。

山頂はガスで視界が利かない。ムジナ沢へ向かうとしてもさっぱり感覚が掴めない。登りと下りを別にしているのと事前調査不足がたたっている。おまけに日帰りの人が多いのか鳩待に戻りやすい悪沢の方にしか人が滑っていかない。登って来たルートを滑りに使おうとはとても思えない。そんなこんなで悪沢方面へ降りてしまう。ガスで視界が利かないので先行者のシュプールを追いつつ、その中でも真っ直ぐ降りているのを選ぶ。結果悪沢より一本か二本北側の沢を降りたようだ。

川に出た所で対岸に渡渉すれば良かったのだが、このまま左岸を行けばいいかなと進んだが、山ノ鼻手前でどうにも進めそうにないことが判り渡渉する。ちょっと深かったせいか、ブーツの継ぎ目から浸水して中が少し濡れてしまう。対岸に渡ってしまうと往路と同じで難なく山ノ鼻に戻る。テントに戻ってすぐに雨がフライシートを叩き始める。
≪27日 平ヶ岳≫
初日は濡れたインナーブーツや靴下を乾かすのに専念してあまり晩飯を食べずに疲れて寝てしまう。日曜は雨かと思っていたが、夜半に雨が止む。ラジオで天気予報を聞くと日曜は低気圧の影響は北日本だけのようだ。そうなると平ヶ岳を当初の予定通り日曜に変更した方がいいだろう。普段の疲れがたまっていたので2時起きの4時スタートなぞ出来るわけもなく5時に起きて6時にスタートする。
昨日の女性達パーティーもテント前で出発する準備が整いつつあるところだったが一足先に出る。体が温まった所でジャケットを脱いでいるところで抜かれる。追いついたがいずれこっちの方がペースが遅いはずなので後ろをついていく。やけに彼女達も早いと思ったら同じ鱗板だった。今風の太めの板なので一見では見抜けなかった。右岸をちょっと高巻くところで彼女達が立ち止まったので先行させてもらう。しばらくすると離れたのか一人になる。

GPSも衛星を補足していたので横着して地図を見ないで進んでいた。GPSに入力した予定座標の地図上のイメージは去年考えていたことですっかり忘れていた。そんなこんなで右俣と左俣の分かれる場所と、左俣の奥が二俣になっている辺りが頭の中でごっちゃになっていた。

左俣に入ってすぐにテントが張られている。ここで左岸にスノーブリッジで渡る。ここで渡ってしまうと渡り戻さないとならないがトレースもあるのでそのままトレースに連られて進む。左俣に入ってからの奥の二俣も左に目にしていたのだがやり過ごしてしまう。そこから暫くしてトレースも消えてしまう。ここでようやくGPSを取り出し自分の位置を確認する。行き過ぎてしまったようだ。踵を返してトレースのある所まで滑って戻ると尾根への取り付きを見つけた。

スキーで登るのに丁度良い斜面で斜登高を交えながら登って行く。ここからはトレースは無視して登りやすそうなラインを選ぶ。

急な登りも僅かですぐ傾斜が緩む。彼女達の声が聞こえるので見ると一本左の尾根を登っている。こっちがヘマしているのに低い位置を登っているのであちら側は登り難い斜面なのだろう。

傾斜はどんどん緩くなって殆ど平になる。そのまま進むとまた最初と同じ位の斜面が出てくる。ぜいはあ言いながら登り切ると下に彼女達が追い付いてきた。

だんだん天候が回復して来て遠くまで眺望が利くようになる。ススヶ峰のコルの手前で追いつかれてしまう。ショートカットして急斜面を直登している。

稜線に出てもちっとも楽にならない。ススヶ峰の向こう側は下り斜面になっている。ここはシールを貼ったまま滑る。稜線はアップダウンしていて今後の苦行が予想される。

1911峰の辺りでまたガスが去来し始める。彼女達が記念写真を撮ろうとしていたのでシャッター押し役を買う。バックに景鶴山が見える。1920峰へ向かうとまた尾根が細くなっていく。東側は雪庇がありトラバースするに急過ぎるし、西側は切り立っているから稜通しで進むしかない。

1920峰からの下りは「こんなに降りちゃうの?」という感じで標高は1800mまでリセットされる。

前方を見渡すとまだあんなにあるのかと思う程に稜線が続いている。

1920峰からはシールを剥がして滑る。細板をなんとか誤魔化しながら適当に下る。歩行は軽快だが滑りはちっとも面白くない。コルまで降りたらシールをまた貼って出発する。白沢山手前の1895峰は西側を巻く。

白沢山で時計を見るともう11時。とても12時までには着けそうにもない。遅くとも13時には着かないと帰りがタイムアウトだ。そろそろ山頂を諦めるかビバークを選択するかの潮時である。彼女達に引っ張られてなんとか来ているが帰りの体力温存も必要である。

白沢山からの下りは彼女達は軽快にテレマークターンで降りて行く。こちらはなんとか降りるのがやっとという状態。1936への登りで彼女達のうち一人がシールを貼り直しているのに追いついたのを最後に電池が切れたように登りのペースがダウンして置いてきぼりにされてしまう。ビバークを視野に入れた場合には疲れ切る訳にはいかない。登りになると足が重い。

平ヶ岳手前の平坦地で意を決してシールを剥がす。トータルで見れば若干斜登高を交えてもその方が自分の場合は早いだろう。ここでまたなんとか差を詰められ、平ヶ岳山頂への斜面を登る姿を前方に捉えた。登っている位置と時間を頭に入れる。今12:45だから自分があの場所に到達した時点でどのくらい遅れているか分かる。25分だった。さらにそこから先は足が重くなりこの差はもっと広がるだろう。彼女達が滑り降りてくるまでの時間で山頂までの距離が分かる。なかなか降りてこない。休み休みちんたら登っていると声が聞こえて降りてきた。ビバークするつもりだと言ったら心配してくれて行動食を分けてくれた。「なんとしても帰ろう」みたいな言葉を貰って励まされた。山頂はすぐそこというので空身で行くことにする。ザックを斜面にデポし、ガスの中軽くなった背中の恩恵で鉄の棒が刺さった山頂に到着。

山頂は広い平原状で鉄の棒がなければホントに山頂?という感じで何もない。

剥がしたシールを懐に入れて滑り出す。空身なのでなんとかテレマークターンで滑れる。とはいってもすぐ足を引っかけてこけそうになる。ザックまで戻って彼女達に礼を言って別れる。彼女達は今日のうちに山ノ鼻のテントを撤収して関越を走って帰るのだそうだ。おそらく明日は仕事なのだろう。

二人綺麗なテレマークターンで降りて行く。カメラを出すのが遅れて豆粒になってしまった。ビバークは何回かやっているが、やはり夜半耐え忍ぶのはつらいぞと自分の中の記憶が呼びかける。トレースがあるのでヘッデンでもGPS使ってでもやれるところまでやってみようという気になる。

平ヶ岳山頂からは適度な斜面で滑りやすい。ガスも出ているのでひたすら彼女達のトレースを追うことにする。

直滑降でもトレースに合わせた方が抵抗が少ない。1936峰までは登り返しもなくぐんぐん進む。後ろを振り返るとスキーの機動力を痛感出来る。

白沢山への登りで彼女達の姿を捉えるがこれが最後だろう。シールは張ったり剥がしたりでかなり濡れにより糊が劣化している。登りは自分のペースで呼吸がいつも通りになる位にゆっくり行く。白沢山からの下りはテレ姿勢などという考えは捨てて何でもありで転ばずに確実に下る。平らな所は時には二本に分かれたり、一本につながったりする彼女達のトレースを忠実に追う。これさえロストしなければ暗くなっても帰れる筈という思いで。
1920峰への登り返しはだんだんしんどくなったので試しに板を担いでみる。2本で2kg程度なので重荷にはならない。それでも潜る足と比べるとやはりスキーで登る方がましという結論になる。この1920峰の登り返しはガスで視界が利かないのもあっていつまで経っても終わらない感じだった。

ススヶ峰への登り返しでは気温もぐんぐん下がってきたのか登りで休み休み行くとシールが雪面に凍って張り付いた。シールは実質テールフックとトップのゴムバンドのみでつながっいる感じだ。この登りは予想に反してあっけなく終わる。ススヶ峰からの下りは彼女達のトレースとつぼ足の踏み跡が混ざっている。彼女達が滑った後に引き返した人がいるのだろうか?しばらく下るとテントが張ってある。彼女達のシュプールは完全にロストしたがはっきりしたつぼ足のトレースを追いつつ滑ると、見覚えのある場所に出た。稜線に上がってきた場所だった。まだ視界が得られる程には明るい。これで帰れる確信を得た。コースは一瞬迷ったが、途中で暗くなっても間違いのない登って来たトレースを使うことにする。彼女達は沢を滑ったのだろうか?登りのトレースは滑るのに最適とは限らない。暗くなったらスキー担いでつぼ足でも構わない。そう思いつつ、古いスキーのシュプールを追いつつ下ると新しいシュプールを見つけた。彼女達のだ。あとはそのシュプールを信用してトレースする。一人はまめにターンしていてもう一人は横滑りしている。

最大光量に設定してあるヘッデンが薄暮より相対的に明るくなる頃には大分高度を下げた。ヘッデンは夜間懸垂下降対策で用意したBDベクトラIQだから普通のヘッデンよりかなり明るい。彼女達が左俣の奥の左俣から往路取りついたので私が登って来た側には降りないだろうと思って最後の処理はどうするのかと思っていたら崖っぷちのような所から見事な横滑りとトラバースで沢に降りていた。このようなことが出来るのはスキーならではだ。倣って同じ所を降りる。

あとは沢山のトレースがある猫又川沿いを行く。左俣と右俣の出合にあったテントの脇にはツェルトが増えていた。仲間うちなら構わないが、全く関係ない同志であれだけ接近して人気の無い山奥で張るのはどうだかなと思った。そういえば山ノ鼻のテン場でもそういうのがあったっけ。
右岸の幅が狭くなる斜面のトラバースも彼女達のトレースを使わせてもらい、結局なんだかんだで殆ど山ノ鼻まで導いてもらった。テントに着いたら最低限の水分補給をして寝袋に入った。
≪28日 至仏山 ムジナ沢≫

平ヶ岳の疲れもあるし月曜は停滞と思ったが、一日テントでじっとしていられる訳はない。睡眠がとれた所で濡れ物を乾かして準備し、朝はゆっくり起きつつ食糧を胃に詰め込む。今日はムジナ沢を滑って連休混雑前に帰ることにした。体力的にもあと一日延長する理由がない。

天気予報だと関東は昼から晴れてくるようでお昼山頂を目指せばいいと思い、ある程度片づけてから出発する。今日はもちろんファットである。上の方はガスが掛って見渡せない。斜面はクラストしていて昨晩の冷え込みを窺がわせる。昨日ビバークなんかしなくてホントに良かった。

休み休みゆっくり登っているつもりだが意外に順調に進む。やはり長時間行動してもスキーは疲れが翌日に残りにくいなと思う。

登る程にガスが晴れてきてルーファイは容易である。下部は沢の左岸を進み上部で右岸の雪原に登る。そこからはストレートに山頂を目指す。今日は昨日と違って板幅目いっぱいのアッセンションなのでガンガン直登する。調子に乗っていたら後ろにずり落ちた。

あっけなく山頂が見えてきた。この時点ではまだ山頂の稜線かどうか疑っていたのだが、そこより上はなかった。山頂からのカールの真中は雪がつながってないらしく北側の稜線を延々トラバースする人が何人かいる。いずれそちらもダメで岩に囲まれた所に滑り降りてしまっている人もいる。真中の状況もここからでは良く分からないが板を外しているようである。唯一つながっているのは東側の支尾根沿いを辿るラインだ。上からだと判り難いのかそのラインを選択している人は滑っているうちの半分くらいだった。

登りつめた所が山頂で拍子抜けする。昨日の疲れが残っている身にはいいペースだ。

昨日あそこまで行ったんだなと思うと感慨深い。思い出に残るツアーとなったがもう2回目は勘弁という感じだ。

山頂で待ってもこれ以上すっきりした天候は期待出来そうにないので出発する。山頂直下はガリガリに凍っている。それでも昨日と違ってテレマーク姿勢で滑っていける。

ある程度降りてから、当初目星をつけていたムジナ沢中央部へトラバースする。

正面に燧ヶ岳を見ながら滑降だ。昨日の物と思われるえぐれたシュプールが轍となって邪魔をする以外は軽快に滑れる。ファットの強引さを知ってしまうともう細い板には戻れない。

登りで観察していたのでひたすら沢芯を滑り降りた。振り返って写真を撮り、山ノ鼻へ戻る。ゆっくりテントを片づけてファットにシールを貼ってとりあえず鱗を履く。板が重いせいもあってザックの体感重量は20kg近い。計算しても18〜19kgとなる。

もう体力は残ってないかとも思ったが、大して急な登りもなく無事鳩待峠へ帰還することが出来た。往路復路共に夏道沿いらしい所を通ったのだが、川上川を詰めて最後に斜面を登る方が楽で早いことが他ガイドパーティーを観察していて分かった。
今回の平ヶ岳はかなり読みが甘かった。自分の実力では朝はヘッデンスタートするべきだったのだと思う。テレ二人連れの彼女達には感謝します。
END