星穴岳

2003.12.06〜12.07


6日:国民宿舎手前駐車場6:30〜星穴沢橋6:50〜P1 8:10〜P2基部9:35〜P2通過10:40〜P3基部11:10〜P3通過12:00〜星穴のコル12:15〜星穴岳山頂12:25〜星穴鑑賞13:00、14:10〜東側ピーク15:00〜星穴のコル16:00〜下降地点(山頂とP3のコル)16:20〜金洞沢18:30〜ビバーク決定20:30

7日:ビバーク地点6:00〜駐車場6:50

装備:40mロープ2本、8環、ルベルソ、ユマール×2、シャント、カラビナ5枚、ヌンチャク×5、安全環付きカラビナ4枚、ハーネス、ハンマー、ジャンピング一式、スリングと捨て縄数本、ツェルト(使わなかったものは省略、私の装備) 

星穴岳は上州、表妙義主稜線の西端に位置する山である。山頂直下に大きな穴が空いており伝説では弓で射抜いた穴とされている。双耳峰の2つのピークが鬼の角で穴が片目、P3(隣のピーク)が細く突き出ているので鬼の金棒の様に見えると言われている。この山には1960年代に登山道が整備されたが1970年の遭難事故以降に廃道となったようで現在は地図に破線を残すのみである。鎖も錆びて各所で分断されており現在は登山禁止となっている。

この山の存在を知ったのは2年前に表妙義を縦走しようと思い立ち昭文社の地図を買ったことによる。その名前にまず興味を惹かれた。破線となった登山道跡にある危険箇所を示すマークが表妙義縦走路より連続していて多いことがこの山の難易度が高いであろうことを窺わせる。表妙義縦走路ですら事故も多く各登山口には上級者でもザイルなしは危険と書かれているのである。そんな訳で当初興味があった表妙義縦走を完遂しないままに興味の対象は星穴岳に移ってしまった。ネットで調べると記録は2つ見つかった(今はもっと多い)。一つは表妙義縦走路から西岳経由のルートでもうひとつは今はなき星穴新道ルートである。西岳からのルートの記録はいきなり西岳から懸垂下降で始まっている。星穴新道とて鎖は部分的にしか残っていないらしい。今の自分ではとても無理と思い、その時は西岳山頂に立ちそこから星穴岳を俯瞰するだけで終わった。

いつかはクライミングをやってロープを扱えるようになろうと思いながらも中途半端にギアを揃えつつ2年が経過してしまった。所詮素人が一人で始められるようなものでもなくかといって今更山岳会に入るというのも躊躇していた。今年やっと山から雪がなくなって夏山縦走も今一つ目標がなくなってきたのもあり、意を決してクライミングジムに通うことにした。自分の目標とは少し違うのではあるが取っ掛かりとしてはそれしかなかった。クライミングシューズなるものを買い、さらにジムでフリークライミングはシングルロープだからと言われてそれまで買っていたダブルロープの他にシングルロープも買って右も左もわからない所からスタートした。半年近くやっているうちにフリークライミングとしての目標も出来、山は冬支度を始めていたので星穴のことはすっかり忘れていた。そんな折りジムでビレイをお願いしているAさんに自分がクライミングを始めたのは星穴岳に行きたいからだと話したら自分達も行こうとしたけど途中(西岳直下)までしか行けなかったという話になった。そんなことから突然星穴に行くことになってしまった。

メンバーは私とAさん(♀)、Bさん(♂)の3人。私はフリークライミングの経験しかなくあとは本で読んだ知識だけである。Aさんはガイド山行とはいえ国内の数々のルートから海外まで行っている。これまで調べた資料でルートの状態や核心部も判明しているのでなんとかなるかなという淡い期待の元出発する。当然無理そうなら途中で引き返すつもりである。

何が必要か経験から分からないのでいろいろ余計に詰めたら15kg位になってしまった。国民宿舎手前の駐車場に車を止め準備しているときにBさんがロープを2本とも持ってくれるというので甘える。これでザックは軽くなった。林道ゲートは開いており車で入れたかなとか話しながらしばらく行くと女坂の登山口に到着。天気は時折小雨がぱらつくが予報では午後から晴れるとのことだった。

 6日AM6:50 登山口の看板

橋から少し行ってすぐ左岸に徒渉してさらに歩くと女坂を左に示す指導標がありここから右にそれる。しばらくは赤テープに導かれたのだが枯葉が積もってルートを失ってしまったようでテープも見れなくなる。そのまましばらく進んだ後、右手の斜面を登りつめて尾根に出ると明確な踏み跡に合流した。そこからさらにしばらく進むとルートが右に折れる部分があった。直進方向にも踏み跡があり、右手に見えるのがP1と判らずとりあえず直進してみると踏み跡は急降下して獣道のようになっている。引き返し右手のルートに行く。テープもありしばらく下った後登り返すとアンカーの20cm程の棒が岩に突き刺さっている所に来た。緩い岩のスラブで高度感はないが落ちると只では済まなそうである。ちょっと上に巻いて後続二人に手を貸して通過してもらう。そこから枯れ葉の積もった斜面を登り切ると行く手にP1が立ち塞がるように聳える。Aさんが「星穴→」のペンキ印を見つけるがあとの二人にはまだ見えない。念のためここでハーネスを付けてしまう。出だしは古いスリングがぶら下がっている。これに体重かけていいのかなと話しながらもそれなしでは登りにくそうなので右手に半分、スリングを持った左手に半分体重をかけて登る。そのスリングは錆びたハーケンに通してあった。そこから右にトラバースして行くのだが岩の上が濡れていて鎖もない。ここを慎重に進んで鎖に到達。大丈夫かどうかわからない鎖でセルフビレイを取り後続に手を貸してここを通過。そこからは鎖が上に伸びている。登ってみるとこの鎖は2つのアンカーから支点が取れている。そこから先は鎖に半分頼る程度となりP1を通過する。未だに一般登山者の癖が抜けてないから確保なしで行ってしまったが乾いていない限りここの最初はロープを使った方が良かったと思う。(他の記録を読むとこの垂れ下がったスリングと最初の鎖は以前つながっていたようである)

さらに進むと今度はP2が立ち塞がる。P2の基部手前まで進んで左を覗き込むがそれらしい鎖は見えない。少し戻ると下に鎖がぶら下がっているのが見えた。ここが核心部ということだったがこれまで読んできたイメージと違い易しそうである。とはいえフリーソロで行けるほどではない。立ち木でビレイを取ってもらいスタートする。最初は記録で読んだ通り潅木につかまって最初の鎖に到達。鎖のアンカーでランニングを取りつつトラバースする。途中の鎖がスリングで連結された箇所もそんなに難しくもない。そこから先が核心だった。岩は濡れていてホールド、スタンスに乏しい。靴は一応スカルパのメスカリートという見た目は登山靴だがエイドクライミング用とかいう代物である。とはいえ私の実力ではこれでカタログで謡われている5.9を登ろうとは思わない。上を見上げると左右に古いロープが掛かっている。それはP2基部から抜け口に向け大きくたわんでぶら下がっており、ここまではP2基部から懸垂で降りてきた方が簡単だったことに気が付く(「山の本」にあった打田氏の記録の振り子トラバースはこの古いロープが掛けてある辺りから懸垂で下降後トラバースしたのであろう)。そのロープに到達すればあとはゴボウで行けそうなので右手の潅木を目指し直上する。濡れていていやらしいがフリーで散々痛めつけられてきたのでいつもの感覚で行けば問題ない。潅木でランニングを取った後、ロープに到達、後続が登りやすいように固定ロープにカラビナをぶら下げ支点を取り、そこからロープを掴んでトラバース。さらに潅木で支点をとりつつ尾根に這い上がる。ここまでで40mロープほぼいっぱい。尾根の木立で支点を取ってAさんに来てもらう。

 6日AM9:55 P2トラバース出だしの鎖

カラビナには片方のロープしか掛けなかったので掛け替えながら来てもらう。Aさんは私が直上した所を横にトラバースしてしまい固定ロープに付けたカラビナから遠ざかってしまった。仕方ないのでもう一本のロープの方で確保を取ってもらい一旦ロープを解きカラビナからロープを抜く。最後にBさんにカラビナを回収してもらう。

6日AM11:00 P3手前から山頂方向

少し登ると見晴らしの良い所に出た。いつの間にか空には雲の切れ間に青空が見える。足元は垂直に切れ落ちている。半島の様に突き出たところからBさんが写真を撮る。

 6日AM11:10 P3最初の鎖の登り

そこからさらに登ると鎖が現れそれを登ると今度は左にやや下り気味にトラバース。7Mの下降と記録に書かれた鎖が見えた。懸垂下降だと時間がかかるのでとりあえず鎖を頼りに私が先に降りる。難しそうな所でAさんを待機しつつ下まで降りる。途中の鎖が1コマ岩で擦り切れ細くなっていたのでその部分にスリングを巻いた。下ると今度はP3のトラバースだ。出だしは支点、足場共に良くないのでちょっと先の鎖のアンカーまで行くことにする。最初は突き出たアンカー2本に乗ってトラバース、そこから何もないので岩の出っ張りを頼りにクライムダウンし幅の広いバンドに降りる。見るとそこから先は鎖もつながっており鎖もこれまでの中では一番しっかりしているように見える。そのまま行こうかとも思ったがつながっていないと不安というAさんの言葉もありロープ一本ぶら下げて進む。楽勝と思いつつ進んで行ったのだが途中で突然足場が崩壊した。両手で鎖にぶら下がって事無きを得たのだが油断は禁物だった。途中一ヵ所鎖が途切れた箇所もあったが無事トラバース終了。トラバース終了点にはスリングが残っている。自分のスリングをそこに掛け、岩角と2点で支点を取り後続を確保する。まずBさんがフィックスロープでロープにカラビナを掛けトラバース。次にAさんに回収しながら来てもらう。

 6日AM11:55 P3トラバース終了

ここからしばらく尾根上を登ってゆるい下りを降りるとP3と山頂とのコルに出た。帰りはここから懸垂下降になる所だ。

コルからは右に巻くように登っていくがどうも違うらしい。ちょっと手前方向に戻ると踏み跡を見つけたのでそちらから二人に登ってきてもらう。急斜面を登りきるとカール状の緩い斜面になったのでその真ん中辺りを登っていく。ここだと滑っても落ちることはなさそうである。木につかまりながら登っていくとあっけなく山頂の双耳峰のコルに出た。木にスリングとゲートをテープで巻いたカラビナが付いている。ここから下降して星穴を見に行けるのだろう。東側のピークは被り気味の垂直のフェースでこちらは登れなさそうに見える。北側の斜面に朽ちた指導標が転がっている。まずは山頂ということで西側の薮尾根を登り山頂に立つ。東側の方が高いようにも見えるがこちらが山頂のようである。西側に出っ張った岩がありそこの上に乗り記念写真を撮る。妙義は岩が脆いので乗った途端に転がったら嫌だなと馬鹿なことを考える。Aさんはこの岩に打ってある錆びたハーケンでセルフビレイを取ってザックも連結する。皆でパンやらおにぎりやらを食べて昼食にする。Aさんが言うにはここは八つ峰や前穂北尾根(無雪期)より難しいそうである。ガスも出てきて寒くなってきたのでコルに戻る。

6日12:25 山頂への最後の登り

6日12:30 山頂から望むP2

6日12:30 山頂から望むP3

 6日12:30 山頂の突端

 6日12:30 山頂から東方向

今度は星穴への下降である。ぼろぼろの垂壁にどうやって戻るのかと渋るAさんだったがBさんは腕力でなんとか戻れそうなので2人降りるという話で私が先に行く。Bさんに投げてもらったロープが途中に引っかかったので20m以上ある場合を考えて8環にシャントを併用して降りる。

 6日13:05 星穴へ下降

途中からオーバーハング気味で宙に放り出され振られるがなんとか下に降り立つ。降り立った所から東側やや下方に巨大な穴が空いていた。東側のピークの真下にあたる。これまで読んでいたイメージと違い巨大な穴だった。石門の穴の大きさに匹敵する。これは見なきゃ損ということでAさんにも降りてきてもらい3人で記念写真を撮る。

6日13:20 これが星穴

帰りはユマールを使ってもらおうと思ったが使い方が良く分からないということで私が上から引っ張り上げるということで登り始めた。とはいえ被り気味のとこの手前で普通の方法ではどう考えても人一人引っ張り上げるのは無理そうということでユマールを2つそこに置いていくことにした。Aさんは他から登れるのではないかと言うのだが私にとってはフィックスロープを辿る方が楽に思えた。ユマールの代わりにプルージックでスリングに足を乗せながらハーネスに付けたシャントを上げていく。途中からはゴボウで登る。上に着いたらロープの折り返し部分に結び目を作り1本をフィックスロープにしてユマールを使ってもらいもう一本をハーネスに付けてもらった。Aさんが登る途中ロープで岩が剥がれてヘルメットにぶつかって砕けた。半分土の塊みたいなものだったから良かったがまともな岩だとただでは済まなかったらしい。Aさんは結構苦労していたがBさんは腕力ですいすい登ってきた。

6日14:10 星穴からの登り返し

Bさんが登ってくる間にAさんに反対側から東側のピークに行けないか偵察に行ってもらう。結び目の付いた固定ロープとスリングがあるらしい。行ってみると固定ロープとは別方向に踏み跡がある。そこを登っていくと半分土に埋もれた一升瓶があり稜線に出る。山頂直下は垂直なフェースに見え、支点も皆無で登れなさそうにも見える。そこから山頂方向に向かうとピナクルに長いスリングが巻いてありそこからさっきの固定ロープが降りている。そこから見上げると山頂方向は傾斜もそんなでもなくホールド、スタンスも豊富に見える。それでもここは妙義だからいつ剥がれてもおかしくないのが心配ではある。最初の松の所までが核心である。そこの手前で落ちれば左右が切れ落ちているので墜落係数2である。見た目より難しく土の被った所を左足に乗って越えた所で足元が見えなくなってつまってしまった。フリーでもよくやってしまっている過ちだ。最初に見定めてから乗り越さないと。とはいえフリーでないからすぐ右足が見えないと言ってBさんにフォローしてもらう。足の位置を聞いてから両足に乗り込んでその先の岩を掴みなんとか松にたどり着く。そこにランニングを取ってあとは潅木に支点を取りつつ上まで登る。スリングの掛かった木があるのでそこでビレイして二人に登って来てもらう。3人揃った所で西側の端まで行く。

 6日15:00 星穴の上の東側ピーク

もう15時も回ってしまったので急いで戻る事にする。ピナクルまでは松にちくちく刺されながら下降して、次はフィックスロープ沿いに懸垂したがこれがやや斜上していたせいで振られてえらい苦労する。最後は錆びたハーケンに付いたスリングを掴んで降りる。

 6日15:25 東側ピーク下のピナクルからの下降

3人同じことを繰り返したので最初登った所をそのまま戻れば良かったと後悔。空も曇ってきて小雨も降ってくる。

もう途中で日が暮れるのは明白である。私以外は日曜に予定があるとかで今日中に降りないといけないと言う。山頂コル付近にも下降に使ったらしい残置スリング(今から思うとこれは星穴北側へ降りた支点?)をAさんが見つけたが当初予定したP3とのコルまで戻ることにする。最初の斜面を下るが左側に鎖が見えると言われた。それでも往路のルートが安全そうだったので元来たルートを取る。コルから下を覗き込むと星穴沢源頭部が見下ろせる。一番良さそうな位置にある木は枯れている。やや心配もあったがそれを支点にして横の木からバックアップを取って3人目がバックアップを回収ということにした。時間があればもう少しましな方法を考えていたと思う。ロープは投げずに抱えたのだが途中で絡ませてしまい放り投げたら何を間違えたのか1本結び目が出来てその結び目が8環を通り抜けてしまった。プルージックを使って荷重を抜き、それを解くのにも時間がかかる。ロープの残りが少なくなったところで末端に結び目を作りロープ一杯まで下降する。左手の木にスリングが残っている。滑りやすい濡れた岩を慎重にトラバースしてその木の根を掴む。もう一本先の木にもスリングが見えるがちょっとロープが足りなそうである。木にセルフビレイを取り後続に来てもらう。続けて2回目の懸垂下降、出だしにちょっと急な所がある以外は両足を付いて降りて行ける。ロープが一杯になりそうだがピッチ数が少ない方が早くなるということでそのまま下ってしまう。滑り台状のルンゼが下に見えるがロープが足りなそうである。案の定あと4m位でロープが終わってしまう。末端に数本スリングを連結してそれを掴んで後ろ向きにクライムダウン。そこは広場のような感じでザックを降ろしてヘッドランプを出す。もう日が暮れてしまった。Aさんにコールして降りてきてもらう間にこれではロープが回収出来ないということに気がつく。今日中に帰れるかわからなくなって慌てている自分がわかる。ザックからハンマーとジャンピングを出してAさんが降りてからスリングをゴボウで登り返す。スリング途中にセルフを取ってからBさんにコールする。Bさんが降りてくる間にリングボルトを打つ。案の定岩は脆く簡単に穴は空くが簡単に抜けそうである。もう一本打とうと思ったが岩が割れてしまった。右足はいいスタンスに乗っているのでBさんが降りてきた時に一旦ロープにぶら下がってBさんをやり過ごしそのスタンスに乗ってリングボルトでビレイを取ってロープを回収。リングボルトにスリングを介して真横方向に力が掛かるようにして半分足を使って慎重に懸垂下降。足を滑らせただけで抜けそうだ。無事下まで降りる。ここは落石の危険を考えなければビバーク出来そうな広さがある。

その先は記録で読んだチョックストン滝のようである。木に支点を取り最初は空中懸垂気味に下降、後は足を使いつつ下降する。ロープは濡れて落葉も絡んで大変である。ロープが一杯になったので沢芯からそれて木にビレイを取りに行こうとしたのだが暗いのと一抱えある岩で体を上げようとしたらそれがぐらぐらするので危険を感じ諦めてロープ一杯まで下ってぶら下がる。ロープ一杯のすぐ下の岩の出っ張りが使えそうなのでそこでビレイを取りコールする。岩の出っ張りは少なく常に荷重を掛けないとスリングが外れそうである。とはいえ荷重が掛かって抜ける形状ではないのでそのまま懸垂する。傾斜はすぐ緩くなって明るければロープなしでも降りれそうだがロープ一杯まで下降する。コールの後、その先を見に下る。上から声が聞こえてくる。支点の岩がぐらぐらすると言う。そう言われても降りてしまった身では代替案を出せる状況にない。やはり暗くなってから時間に追われてヘッドランプでの下降はするものではないと痛感する。結局上方向にはぐらぐらするが過重方向には動かないのでそのまま下降したとのこと。

そこで各自携帯を取り出し連絡を取る。この時点ではまだその日のうちに下山するつもりでいた。そこから先は手は使うがロープは必要なかった。いつしか手もたまに使うだけになって沢が広くなっていった。沢芯は左に向かっているがここで扇状地を右にそれながら下降すると左右両方から水の音が聞こえて来た。右が金洞沢で左が星穴沢だろう。右の沢に向かって降りて行くと簡単に徒渉出来た。徒渉した向こうには明確な踏み跡もあり、これが女坂だと思われる。そのうちケルンも出てきた。これで今日中に帰れると思ったのもつかの間、ケルンが積んであり赤ペンキで丸印がある岩から先がわからなくなった。ここが徒渉点で対岸に行くという意見も出たが事前に調べた限りでは星穴沢と金洞沢の出合いの手前で右岸を行くのでそこを渡ると左岸に出てしまう。渡って踏み跡を辿ると案の定出合いで行きづまってしまった。かといって右岸にも道が見つからない。それにどう見てもあの赤ペンキは沢の下流側から見える位置に書かれている。何度かさ迷いながら判らないという結論に達してビバークすることになった。携帯も通じずかといってまた登る気にもならず仕方なくツェルトをタープ状に張る。予定に入っていなかったので1〜2人用しか持ってきていない。一人カロリーメイト4本ずつ食べて寝ることにする。あんまり寒くないと思ったが眠ると寒くて目が覚める。Aさんが寒いと訴える。寝るのは諦らめて火を起こす。Aさんが人工の石を積んだかまどらしきものがあると言うのでそっちに移動して焚き火をしつつ暖まったらツェルトに戻り冷えたら焚き火に戻りを繰り返しているうちに明け方の冷え込みで焚き火から離れられなくなった。

 7日AM2:36 焚き火

夜が明けて明るくなる少し前に出発する。赤ペンキケルンまでは明確な踏み跡がある。ケルンは位置を示すものだが対岸にはそれらしきものがない。まだ薄暗いので先までは見えない。そのまま沢の右岸を歩いていくと右手に一般路の踏み跡としては頼りないバンドがある。そこをそのまま行くと明確な踏み跡に出た。あとは気楽に明るくなって視界も利く道を下っていくとあっけなく林道に出た。

今回はAさん、Bさんというパートナーに恵まれて念願の星穴岳山頂に立つことが出来た。初めてゆえ不手際が多かったが山頂に立てたのも2人のおかげである。またHPに記録を残された先輩諸氏にも大いに助けられました。

END

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