小至仏山(悪沢)

2007.3.18

18日 戸倉駐車場 4:30〜戸倉ゲート 4:45〜津奈木橋 7:30〜標高1750m地点 9:10〜標高1935峰付近 10:45〜オヤマ沢田代 12:10〜小至仏山頂 12:50〜オヤマ沢1650m付近 14:15〜1866.9m峰〜林道(津奈木橋の次の橋)16:40〜戸倉ゲート 18:20〜戸倉駐車場 18:40

装備:Hagan RED Dragon 163cm、クリスピ スーパー、3種の道具、ゴーグル、GPS、35Lザック、ソフトシェル、他

儚月さんと山にスキーに行こうということになった。当初は平標辺りという話であったが全然雪がないそうである。そんな訳で今年は暖冬で雪も少ないし尾瀬の至仏に行きたいと私はメールを送った。とはいえ結構な行程で無理なんじゃないかという返信があったが、仙人氏の書き込みに至仏日帰りという投稿があり、津奈木橋からショートカットすれば行程も短縮になるとの情報もあり、その線で打診した。しかしながら携帯メールの短い文章でのやり取りで十分話が伝わっていないようであった。私の方はカシミールで国土地理院の地図データがネットで使えなくなってからGPSの緯度経度入力方法がなくなってしまい、去年は山旅クラブのお試しで凌いだが今年はどうしようもなくなっていたのだった。とはいえ津奈木橋から直に稜線に出るのにGPSなしだと初見ではつらい。本の付録のGPSデータと津奈木橋からの登りルートは1/25000図に定規を当てて座標を割り出した。

暖冬で舐めてかかっていたが、前の週末から冬型が続き状況が変ってきてしまった。これなら他エリアでも滑れるとは思ったが計画はそのままに衣類/手袋等の装備を変更して当日に臨んだ。戸倉ゲート手前の駐車場に車を止めて3時まで仮眠、準備をして4時半に出発。気温は氷点下10℃。

4:45 戸倉ゲート

ゲートから暫くは除雪されていて舗装路の上を歩く。30分程歩くと一段高くなった未除雪エリアとなりスキーを履く。積雪はガードレールの高さと同じくらい。昨日のものと思われるしっかりしたトレースがあり、ラッセルはなし。所々吹き溜まりがある。今日は我々が一番のようだ。林道の登りは緩く、帰りの滑りは楽勝という訳ではないようである。

5:15 ここから雪の上をスキーで

2時間も歩いた頃に儚月さんがあと800m位とGPSを見ながら言う。一頑張りでようやく津奈木橋が見えた。津奈木橋から沢の左岸沿いを目指そうとする儚月さんを引き止め予定ルートを書き込んだ地図を渡す。鳩待峠へ向かう道を僅かに進み脇の斜面を登る。ここからはGPSを出して標高50m毎に登録した ウェイポイントと合致するように地形を見ながら進む。斜度が一番きついのが1500m付近でここは迂回トラバースするようにウェイポイントを入れたが、見た目真っ直ぐ登れそうなのでショートカット。1500mに上がる直前は案の定きつくなり斜登高を交えた。GPSを出したり入れたりが面倒なのでストックにテーピングテープで固定する。シュイナードのピック付きグリップなのでピックを付けてぐるぐる巻きにする。方向を定め難いのでコンパスも反対側のストックにテープで固定。

7:30 樹林帯の登り

登りはラッセルであるが、スキーが沈む程ではなく軽快に高度を稼ぐ、すんなり鳩待峠と同じ標高に達し、さらに上を目指す。標高差100m程度で先頭を交替しつつ1600mで私が先頭になる。ほどなく傾斜が緩む1750mに近くなり斜登高を交えつつ最後の一頑張り。

9:10 標高1750m地点ここから緩くなる

遠くから人の声が聞こえる。稜線が近いからだろうか?でも夏道まで300mはある。ここで手袋を暖かいのに交換し、目出帽とゴーグルを付ける。稜線に出て吹かれてからより早め早めに替えた方が冷やさずに済む。稜線に出ると複数のシュプールがある。ボードのようだ。さっきの歓声はこれを刻んだ人達のものだったのか。急な登りをなるべく直登で行くと1866.9m峰に。上には大勢が休憩したような雪面の凹凸があった。これだけの大人数なら滑る歓声が遠くから聞こえたのも不思議ではない。そこから先はスキーのトレースが切れ切れに続くだけだった。樹間に吹き溜まった雪でラッセルはトップを持ち上げないとならなくなった。ハボックの儚月さんはかなりつらいようだ。こっちも板は軽いが短いのは同じ。雪はパウダーとはいえ重めで積雪の割にはつらい。トレースも風の通らない樹林の中だけ残っていてあとは消えている。風がある程度避けられる風上を進む。風は右から吹いてくる。

10:45 標高1935峰脇

トレースは傾斜がないのに斜めに切れている。儚月さんが滑ったトレースだと言う。滑った跡をラッセルを嫌って登りに使っているのでジグザグのトレースになっている。時間が経てどもさっぱり進まない。悪沢岳への登りでへいこらしていた我々はオヤマ沢田代が小至仏だと思い、オヤマ沢田代から見える小至仏が至仏と勘違いしていた。小至仏の手前のコルからも一本のシュプールが出ていてそこがドロップポイントだと思っていた。儚月さんの話では悪沢を滑るなら小至仏に戻ってこないとならないと言う。ザックデポという話もあったが日帰り軽装なのでそのまま行く。小至仏に近づくと足元は氷化してきた。

12:35 小至仏への登り

左はアイスバーンになっていて左から吹く強い風によりテラテラになっている。風下はガスで殆ど視界が利かず斜度が読めない。アイスバーンと吹き溜まりの境界を登って行く。傾斜が変るせいで次がピークかと思うとその先にピークが見える。ようやく山頂が見えて先行していた儚月さんがお先にどうぞと先行させてくれた。100名山の山頂にしては小さな標石だなと覗き込むと小至仏だった。

12:50 小至仏山頂

儚月さんに鼻が凍傷になりかかっていると指摘され目出帽を鼻の上にずり上げる。至仏がガスの切れ間に見えた。コルに降りるとさっきにも増してつるつるのアイスバーンだった。出発時にアイゼンは置いて行くという選択をしたのでこの強風下さらに歩を進めるのはかなり時間を浪費しそうだ。当初考えていた13時リミットにもなっている。小至仏を登る時もさっきのドロップポイントに氷化した斜面を革靴で滑っていくというのは勘弁して欲しいと思ったのもあり潮時だった。儚月さんは初ではないということで山頂はどうでも良いようである。下りましょうということでシールを外す場所を探す。丁度良く、雪のブロックを積んだ竪穴があるので一人ずつ滑り込む。ここでシールを剥がし、外れたストックのリストループの応急処置をする。シュイナードのピック付きストックグリップは今回初使用で店の長期在庫を1000円で買ったものだったが氷点下10℃以下の強風化で硬化してしまったのか小至仏の登りで次々と樹脂が割れて取れてしまった。片側に付けたピックをここで外そうとするとロックレバーまで折れる。古い樹脂が割れるというのを目の当たりにして靴とかでなくて良かったと思う。リストループをピックを差す穴に通してバンドを入れようとするが入らない。儚月さんを待たせて悪いと思いながらもはかどらない。通さなくても結べば済むことに思い当たるのにえらく時間を要した。穴の外はすぐ急斜面なので穴の中で板を履いてしまい這い出す。山頂から東面は山を越える風がガスとなって全く視界が利かない。

鳩待方向に降りるということで南東にトラバースしつつどんどん高度を下げる。ガスの中で斜面にも目標物がないので平衡間隔が狂ってターンするとすぐこける。ようやく樹林が見えてくると傾斜も緩みまともにターン出来るようになる。

13:45 悪沢中腹

降りた後の登り返しを最小限にする為に右へ右へと滑って行く。斜面は適度な中斜面でまっさらなやや重めの浅いパウダースノーの上を好きな弧でターンを描く。後足に乗り込むと前足のトップが雪面に浮き面白いように曲がって行く。標高が1600mとなり鳩待峠と同じ程度となったので横の沢に向かってトラバースする。後で調べたらオヤマ沢であった。ここでシールを貼って高度を落とさずに横に進む。

14:15 シールを貼り直す

GPSをナビモードにするが鳩待峠から離れて行く。ラッセルがきつくスピードが上がらないためにナビの速度表示が0km/hのままで方向が合っているのかよくわからない。二人とも滑降ルートにウェイポイントを入力しなかったのでこの時点ではオヤマ沢にいることに気づいていない。しばらく進むと沢芯にシュプールがあった。私はこのシュプールを追って登り返せば鳩待峠に行けるのではないかと言ったが、儚月さんはこのシュプールを辿って登り返せば稜線に出るのでそこから滑れば鳩待峠だと言う。確かに登れば地形図と標高から位置特定が容易になる。二人交替でラッセルしながら登り返す。時計は14時を回っている。暗くなる前に林道に出ないとビバークになってしまう。疲れもたまって行動時間目一杯で雪洞を掘ると大変な夜を迎えることになってしまう。装備も削ってツェルトと僅かの食料とガスがあるだけだ。途中で儚月さんが往路の津奈木橋からのルートを滑れないかと言う。時計の高度計を見ると1800m、予想より かなり手前でトラバースしたようである。今考えれば鳩待峠からの距離を地図に落とせば簡単に現在地を特定出来たのに疲労で判断力が低下していたようである。GPSをナビモードから1km半径円の表示に切り替える。1866.9m峰はすぐそこである。儚月さん先頭に往路に戻る。トレースは風ですっかり消えている。往路の軌跡に乗ったので後は慎重に進めばヘッドランプになっても帰ることが出来る。ここでほっと一安心。しかし安心したのもつかの間儚月さんが斜面が急になったと言って1866.9m峰南面をトラバースしてしまう。先頭を交替して稜線に戻り、ボーダーの休憩跡に着く。ここもすっかり跡形もなく平らになっている。ここでシールを外し滑っていく。少し滑ってはGPS画面を確認しながら往路の1750m付近に到達する。ここまで降りてもトレースは全く残っていない。

ここで安心して滑りやすい斜面を下ったら尾根を一本間違えてしまった。降りれないことはないと思うが疲労で判断力も鈍っているのでトラバースして戻ることにする。儚月さん先頭でどんどんトラバースする。しかしながら尾根の方向が違っているのかトラバースして戻ってもどんどん往路と離れて行く。途中、往路に一本沢を挟んだ尾根にシュプールを見付けたがさらにトラバースして標高1600mでようやく往路に戻る。途中、儚月さんがトレースを見付けたと言って足跡を見るがどう見ても人のものではなく動物のようだった。遠くにカモシカらしき姿が見え、じっとしている。「クマじゃないですよね?」との問いに「カモシカでしょう」と答える。「ワナに嵌っているのでは?」と妙なやりとりが続く。疲労で頭がお互いぼけ始めているがカモシカは学生の頃からさんざん見ているので彼らの姿、動きはだいたい見当が付く。ストック2本を打ち鳴らすとさっと身を翻して走って行った。

そのうち沢が見えてきた。水流が出ているとのことで沢の右岸の急斜面をトラバース。なんとか林道に出た。橋が見える。儚月さんは津奈木橋と言うが、そばにあった建物もないし津奈木橋なら既に一旦林道を横切っていることになる。GPSの座標から津奈木橋から鳩待峠に向かう道の途中に出たはずだ。儚月さんは水上方面に向かう林道に出たと思っているようだ。しばらく鳩待方向に進むがやっぱりおかしいと引き返す。滑り降りると津奈木橋だった。

16:40 林道から振り仰ぐ

往路と違って多くの人が通ったのかはっきりしたトレースが付いていて予想よりはスキーを滑らせることが出来る。儚月さんは林道に出てからペースが上がりなかなか追いつけない。休みたい程疲労しているが根性で後を追う。休んでもここまで疲労していると却って遅くなるだけだと頭では理解していても体がついてこない。一人だったら座り込んでしまいたいくらいだ。平らな所で板を交互に進めるのがつらい。板が後滑りしないようにするには足裏に神経を集中しなくてはならないが散漫になっていて効率が悪い。たかだか1時間強だったのが2時間以上に感じられてようやくスキーを履いた所に着いた。

17:55 スキー外す

ここでチョコの残りを全部食べてテルモスの中身もガブ飲みして座ったままで板をザックに付ける。休憩すれば元気が出るかと思ったら体が冷えて却って調子が悪くなった。とぼとぼと歩いてようやくゲートに到着。

18:20 戸倉ゲート

ゲートから駐車場も往路と違いすごく長く感じたがなんとか無事に帰り着いた。帰りの車中では空調の設定温度を30℃にしても二人とも中々体が温まらず、今日一日の大変さを痛感した。

今回は儚月さんとの二人パーティーでルートファインディング、ラッセルを分かち合って充実した山行となった。日帰りで至仏山頂を目指すという当初の目論見は外れ、期待していた尾瀬ヶ原の展望も全く得られなかったが久々に冬山に行ったという充実感が得られた。また仙人氏の書かれていた津奈木橋からのルートは登りにも良く、滑るのも楽しい良い斜面でした。この場を借りてお礼申し上げます。

儚月さんの記録

END

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