25日 5:15 上高地〜9:20 奥又白池〜10:40
B沢〜12:00 B沢C沢間小尾根上〜12:30 1P下〜13:20
2P下(ロープ着ける)〜14:10 3P下〜15:05 4P下〜16:10 5P下〜16:30
緩傾斜帯〜17:30 四峰肩〜18:45 五・六のコル〜19:55 涸沢ヒュッテ
26日 7:15 涸沢〜10:30 上高地
装備:鐙2ヶ、ミゾーロックハンマー穴あき、ATC-XP、ジジ、シャント、ヘルメット、BDジェミニ、ツェルト(これのみ共同装備)、5mmロープスリング60cm 2本、6mmロープスリング60cm 2本、10mmテープスリング60cm 1本、ダイニーマソウンスリング60cm 6本、120cm 2本、30cm 2本、ナイロンソウンスリング60cm 2本、DMMロック付きカラビナ3枚、ペツルオーバルロック付き2枚、BDポジトロンロック付き3枚、DMMプロワイヤー7枚、BDホットワイヤー2枚、BDライトD2枚、BDオーバルワイヤー3枚、ハーネス、メトリウスナッツ#3、#5、バガブー、ロストアロー、アングル各1他

前回の前穂北尾根でソロでの本ちゃんトライは体力的にかなり厳しいものであることを痛感した。それでも年内に本ちゃん1本は行きたいと思い、フリーのマルチを予定していたT氏に四峰正面壁「北条・新村ルート」に行きたいと言ったらフリーの予定を先延ばしにして穂高につきあってもらえることになった。週末の天候が安定せずに予定が先延ばしになり、9月の最後の週末も予定日が近づくにつれ天気は芳しくなくなってきた。出発直前の予報では朝のうち雨が残り、あとは曇りという予報だった。予定は初日に一気に四峰を登って5・6のコル経由で涸沢で小屋泊というものだった。当初はツェルト泊という案であったのだが私が体力的にきついということで小屋泊にしてもらったのだった。今回の装備は水なしで12kg強で収まった。核心の4P目はT氏にリードしてもらうことにして一応フリーでトライという考えだった。
夜半降り続いた雨も明け方にはやんでいた。4:30にタクシー乗り場に向かい相乗り相手を待つ、単独の人と同乗してトンネルゲートが開く前に平湯側の列の後ろにつけ、上高地には5:10頃に着いた。時折小雨のぱらつく中、徳沢に向かう。新村橋を渡る頃には雨もあがり登りが始まる。パノラマコースに向かう団体を追い越し前回間違えた松高ルンゼでは遭難碑のプレートを目指す。パノラマコースへの分岐はプレートより少し手前を右に行くようだった。前回見た記憶がないので海の日以降に整備しなおしたのだろう。プレートから先は手も使う登りが続く。前回松高ルンゼから這い上がった部分に出ると傾斜がゆるむ。途中日も差して汗が滝のように流れ落ちる。荷物を軽くしたにも関わらずペースを保てず15分おきに足を止めて休んでしまう。T氏の方は全然余裕のようである。沢の横を通り過ぎしばらくで奥又白池への近道の分岐がある。左が近道なのだがすこし判り難い。赤テープに書いてなければ見落とすだろう。傾斜も緩くなり休憩の誘惑に負けそうになるがなんとか奥又白池まで頑張って登る。池のほとりに着くと座り込んでしまった。

一時あった晴れ間も失われガスが出てきて寒くなった。合羽の上を着てしばし休憩して食料を胃につめこむ。10時位まで休んでいたかったのだが体が冷えてきたので9:45頃には出発する。ガスで目的の方向がはっきりしない。5・6のコルへの踏み跡を進み、踏み跡が下へ向かう手前のガレ場を上に向かう。右手にケルンが積んである岩がありT氏がこのガレは沢ではないだろうということでT氏がトラバース方向に偵察する。ガスが一瞬切れて雪渓が見えた。ここからT氏が先行する。沢に着く直前、大きな音と共に対岸辺りで落石が起こる。

雪渓はほんの少し残るだけで沢の横断はガレ場の横断である。ガスが切れてもA、B、C各沢の分岐は見えても四峰までは見えない。落石を警戒しつつ横断する。足元は非常に不安定である。一番右のルンゼがC沢だったのだが一本手前のB沢に入ってしまう。参考にした記録通り上にチョックストンの詰まった滝も見える。

小滝は右から巻くのは岩が不安定でトライするも諦め先行T氏に続いて水の流れる滝を登る。チョックストンを右に巻き上に出る。T氏はどんどん登って行くが滝を越えたら右の小尾根に登ると書いてあったので右の草付きを先行してもらう。浮石とドロと抜けやすい草ばかりで登りにくい。四つんばいで30cm程滑ってしまう。尾根の上には踏み跡があり反対側の急斜面を下っている。しばらく木をつかみながら下るとガスが切れ、正面に四峰が姿を現した。下にはザックらしき物とかが散乱している。

T氏が悪いから懸垂しようかと言ったのでハーネスを付け木を支点に懸垂下降する。40m程度でC沢に降り立つ。上から見てザックに見えたのはダンロップのゴア合羽だった。取り付きが良くわからないがT氏が凹角が右上する。トポを見ると地形的に松高ルートのようにも思えたがとりあえずついて行く。途中ピトンが一枚あり浮石が多く悪いのでT氏がロープつけようか?と言ってくれたのだがT氏が運動靴なのに対し、私のはある程度の岩はこなせるアプローチシューズなのでそのまま行く。T氏は凹角を進んでいるがざれて悪そうなので私は右のスラブを行く。所々ハンマーでチッピングされていて登りやすい。
リングボルト2本のビレイ点に到達してここでロープを付けて靴をフラットソールに履き替える。この時点では「北条・新村ルート」ではなさそうとは思っていたのだが最初の予定通り私がリードで2P目(1P目と思っていた)を開始する。上に向かって凹状になっている所を登っていく。3級にしてはちょっと難しい感じでピンも少ない。それでも悪い部分にはピンがある。それより浮いている岩が多いのが曲者だ。凹角上部で左に逃げ、T氏のロープあと少しのコールを聞き傾斜の緩んだ所で右にトラバースしてテラスに出る。ピンを捜すが見つからないのでバガブーを一本打ち、岩の割れ目にハンマーのピックを突っ込んで掻きだし隙間にナッツをセットする。実はピトンを打った30cm程上に残置が一本あったのであった(T氏に指摘され気が付く)。ここまで40m強。T氏は難しいルートを選んでしまったらしく途中5級程度あったと言っていた。

T氏が登ってきてどうやら「北条・新村ルート」ではないらしいとなったが右手にトラバースは出来ず、右には懸垂でしか移動出来そうにない。上に見える三角の出っ張りは松高ハングだろうという結論に達したが時間の余裕もないのでそのまま登ることになる。T氏はビレイ点から直上後右にトラバースして上に登って行く。姿が見えなくなってしばらくで「ビレイ解除」のコール。ロープは30m強出る。ピトンを回収して続いて登る。トラバース部分の岩が脆いのを除けば今度のピッチは比較的簡単。

ハング右下にリングボルト2本とピトン1枚のビレイ点がある。ハング一帯は染み出しで全面濡れている。T氏が「リードする?」と聞いてくれたが「行きます」と答えた。本来核心は譲ることになっていたがつるべの成り行きと4級A0なら行けるだろうということでリードさせていただく。とはいえ濡れていて最初の一歩で滑りそうである。スタイルは捨ててビレイ点でA0して左のスタンスに乗り込む。ハング下に紐の付いたピトン、その下にもう一本、そこから左下に一番近いピンが見えるので左にトラバース気味に上がる。最初のピンにクリップして上を見上げるが濡れていてつるつる、おまけに足を置けそうな所は岩がぐらぐらする。さっさと諦めてアブミ登場。アブミに立ち込んで次はどうするかと思っても相変わら濡れてつるつるで細かいスタンスを拾う気になれない。結局アブミの架け替えになる。A0用に垂れているロープスリングにアブミを掛けて良く見るとちぎれそうである。手前のアブミの足を1段上げてピトンの穴にアブミを架け替える。下のアブミを回収しようとするとピンがぐらぐらしているのに気づく。

次のピンはハングの向こう側で届かない。最上段に立ちこみフリーに移る。右手はガバでとりあえず目の前のピンで左手A0して少し先のピンに右手でロープをクリップ。A0していたピンを右のガバで体を保持しつつ左手と口を使ってもう一本のロープもクリップ。2本クリップしたとはいえとても墜落には耐えそうもない。アブミは回収不能なので泣きを入れてT氏に回収をお願いする。ここからA0なしの正規のフリーになる。だんだん岩が乾いてきて登り易くはなるが途中のピン間隔も長い上にぐらぐらするのが多い。核心を抜けたので一休みしたいところだが悠長にレストする訳にもいかず高度を稼ぐ。結構ランナウトしながら凹角右上の小さなテラスに到達する。ピトンが4枚ありこれと岩の頭に掛けたスリングでビレイする。登っていると短く感じるが確保していると長く感じる。そろそろ夕方だなと思いながらT氏を待つ。T氏も苦労しているようだ。それでもおそらくアブミの回収時と思われる「張って」のコール以外にはテンション掛けることもなくじりじりと登ってくる。

T氏の頭が見え核心を越えたことが判る。あとは順調にビレイ点まで到達する。フォローなのでアブミを使わずフリーで登ったとのこと。最初のハングは右手の細かいホールドを拾ってきたそうである。
5P目は15mも行かずに終わってしまう。ランニング2本を回収しながら早いペースでさっさと登る。登った所はやや外傾した1帖ほどのテラスであった。ここでロープをしまって四峰の肩を目指す。浮石だらけで気は抜けない。ピークを目指しつつ途中で右手の尾根に乗りしばらく行くと肩の辺りに向かってバンドが見えた。

バンドを辿るとT氏が懸垂支点があると言う。それは見覚えのあるものだった。確か懸垂支点を左上に見たと思い、そのままトラバースするも行き過ぎてしまう。T氏がそっちではないだろうと言うので戻ってよく見ると真下にルートが見えた。懸垂支点真下の岩の涸沢側を巻いてクライムダウンするので判り難いのだ。

あとは踏み跡を頼りに下っていく。T氏はずっと奥又側から降りていってしまったが、私は記憶を頼りに途中で涸沢側を巻いて降りる。4・5のコルで靴を履き替えヘッドランプを出す。五峰はピークの涸沢側を巻くのだが暗くなるとやはり判り難い。ここから先頭を代わって私が前に出る。ヘッドランプは星穴の時にLEDだけで懲りていたのでBDのジェミニを持ってきていたのだ。LEDキセノン兼用なので状況に応じて使い分けられる。五峰は簡単だったように記憶していたが暗いと踏み跡を見つけにくく、なるべく稜線に忠実に降りていく。5・6のコルで携帯で下界にメールを送る。コルにはテントが2張りある。コルからは踏み跡を辿るも途中で見失い適当に下っていく。いつまで経っても同じガレ場で非常に長く感じたが時計を見るとさほど時間は経過していない。傾斜が緩み岩が大きくなってきてペンキ印も見えるようになり、ほどなく涸沢ヒュッテに到着した。夕食も大丈夫で布団も一人で1枚と快適だった。

翌朝はT氏とボルダーをしつつ稜線のガスが晴れるのを待ったが、ガスが切れることなく7時過ぎには上高地目指して下山を開始した。

今回はT氏と一緒だったおかげで随分精神的にも負担が少なかった。T氏は数多くの本ちゃん経験を持っており、私は足下にも及ばない。今回単独や自分と同レベルのパートナーとだったら入山翌日の登攀でも敗退またはビバークは避けられなかったと思う。
END 追記:この記録中ではあぶみ使用個所を松高ハングと記したが後で他の記録を読むと松高ハングの次のピッチらしい。松高ハングはそれと意識せずにひょいと越えてしまっていたようだ。あとから調べ直すとどうも無名のルートを登ったようにも思える。
2010.8.20 改めてトポと見比べると4峰東南面 明大ルート辺りだったと思われる。どうりでトポと辻褄が合わない訳である。