9月17日 上高地 5:15〜中畠新道分岐 7:55〜奥又白池 10:45、12:15〜5・6のコル 14:30
9月18日 5・6のコル 5:15〜5峰 5:50〜4峰 6:45〜3峰 11:00〜2峰 11:30〜前穂山頂 11:50、12:40〜奥明神沢のコル 13:30〜明神主峰直下幕営地 14:35
9月19日 明神主峰直下幕営地 6:50〜2峰 8:45〜3峰 9:20〜4峰 9:50〜5峰台地 11:15〜岳沢登山道7番 13:40、14:00〜上高地 14:30
装備:9mm
40mロープ、他クライミング装備(靴は2人とも軽登山靴)、ツェルト2〜3人用、夏用化繊寝袋、他 ザック15kg程度
白馬主陵に行った後はしばらく山に行けなくなってしまった。仕事が忙しくなり海外出張も重なり夏の予定は全てキャンセルする羽目になってしまったのだ。当初単独行を検討していたのだがいろいろな人にメールを送るとRさんが3連休に行けるとのこと。彼女は本格的なクライミングは未経験とのことなのでいくつか案を出したら前穂北尾根に行きたいとのこと。前回雨だったので晴れた時にもう一度行っておきたかったのと今回は3日あるので明神岳を継続することにして計画を立てた
いつも通りタクシー相乗りで朝一番に上高地入りして奥又白池に向かう。Rさんを先頭に中畠新道を登る。ここは3回目になるがいつも息が上がる。休憩ばかりしていたら後ろから来た人にも抜かれてしまう。Rさんは私に合わせてペースを落としてくれる。彼女の方は余裕のようだ。
ようやく奥又白池に着く。ここでこれから2泊3日分の水を補給しないとならない。以前調べた時はわき水ありとなっていたのだが池の向こう側に川が流れていたのでそこで補給していた。その川は完全に涸れていた。ここで水なしではどこにも行けないので2人で探す。「踏み跡を下って」となっていたなと思い池から真下に降りるがどう見てもここはキジ場である。さらに「池の向こう側」という記述も思いだしさっき見た涸れた川を下っていくと水の音が聞こえてきた。ここで2人合わせて7L補給し、さらに飲めるだけ飲む。
今日はガスがないので5・6のコルまでのルートは明瞭である。下からは奥又白池に向かって沢山の人達が登ってくる。トラバース道はガレ場を横切るところでどんどん標高を下げるのだがそれを嫌って真横にトラバースしたのだが浮き石が多く緊張させられる。5峰基部まで横断して岩壁沿いに下って回り込む。
5峰のルンゼからまた登りとなりペースが落ちる。ルートは写真右手、左岸側にある。
ようやっと最後の核心部固定ロープのトラバースに出る。Rさんがまず先に行く。最後の部分で足を滑らせ固定ロープに手を掛けて登っている。後に続くが乾いているせいかロープに触れずにトラバース出来た。普通の縦走路ならここは鎖場になってしまうだろう。あとはゆっくり登ってコルに飛びだす。コルには既にテントが一張張られている。その隣にツェルトを張る。お隣さんは明日は西穂まで行くそうだ。食事を食べてさっさと就寝する。
翌朝は4時に目覚しをセットしたのだが何度も目が覚めて3時半には起きてしまう。お隣さんも起きて食事をしているようだ。お湯を沸かして朝食をとり撤収する。出発する頃にはヘッドランプもいらないくらいになる。涸沢側からも人が登ってくる。お隣さんはヘッドランプをつけて既に出発している。前にはすでに2〜3パーティーは登っているようである。5峰はRさんを先頭に難なく登ると前方に4峰が姿を見せる。。
4峰は前回と同じように涸沢から登り途中で奥又側に向かって稜線上に登るとペンキ印のところだった。ここから左に行き過ぎてしまう。登る所を見落としてしまったようだ。Rさんは戻ろうと言うのだが正面の岩が登れそうなのでとりあえず私が登ってみることにする。一手被って悪く3級くらいある。上に出るとあとは稜線上をたどればピークに行けそうなのでRさんに声を掛けてロープを投げる。出発時にハーネスは着けているのでロープを結ぶだけだ。岩角にスリングを巻いてビレイする。こうしている間に後ろから来た3人パーティーが正しいルートから先に行ってしまうのが見える。Rさんはロープの確保で安心したのかすんなり登ってくる。
3・4のコルではさっきの3人パーティーがザックを降ろしているところだった。先行がさらに2パーティーはいるようである。3人パーティーのトップが登り始めたらリングボルトのところまで上がる。ビナ2枚とスリングで流動分散を取る。トップの人が上を見ながらソロの人が3級の部分で動かないでいるという。皆でソロで来るなら3級くらい躊躇無く登れないとといったことを話していた。3人パーティーの後続が登り始めたらRさんに声を掛けて上がってきてもらう。ロープを結んで一通り説明する。出だしのリングボルトに最初のランニングを取り登り始める。去年は4級の部分に行ってしまったので左に回り込んで3級の部分を登る。途中右手に去年の4級部分の核心部が見えた。去年は濡れていて難しかったが、今見ると簡単そうに見える。そこで右に移り去年と同じ所を登る。Rさんの回収時間節約の為、ここまでランニングなしで来たがここで2本のハーケンに別個にランニングを取る。左下のハーケンに足を乗せて登ると難なく上のホールドに手が届く。さらに一登りで去年使ったのと同じ岩にスリングを巻いて支点を作る。前の3人パーティーは少し上のハーケンの刺さった岩でビレイしている。Rさんに「ビレイ解除」のコールをして登ってきてもらう。4級の部分ではテンションを掛けてもらってビナを回収してもらう。回収以外ではテンションが入ることもなく登ってくる。さらに後続のトップが3級の左側から登ってきた。Rさんにはそのまま登ってもらって先行3人パーティーの使っていたビレイポイントまで上がってもらう。ソロの人は登り返しのロープソロをやっているようだった。ペツルのアッセンダーで右のルンゼ入口手前右のハーケンにフィックスしたロープをたどっている。先行3人パーティーはソロの人を抜かす為か左のチムニー左脇のフェースを登っている。私は去年、ソロの人が登っているのと同じ右のルンゼを登ったが3人パーティーに習って左に行くことにする。3人パーティーが空けたビレイポイントで支点を作っている時に右のルンゼ内で轟音が響き渡りソロの人がテーブル大の大岩に押しだされるようにして飛びだしてきた。そのまま止まることなくいつのまにか大岩が先でその人が後を追うような形で空間に消えていた。一瞬後に岩が砕け散る音がした。私は一瞬のことでここまでしか見なかったのだが同行のRさんは一部始終を見ていた。ソロの人がテーブル大の大岩(これは私が去年登った時にもあり、ぐらぐらしていて右の壁を使いながら静かに乗越した)に両手を掛けて登ろうとしたらそれがそのまま崩れてきて、その岩に押しだされるようにしてルンゼ内を滑ってきてルンゼを出てきた所の岩とその大岩との間に頭を挟まれて頭から血が飛びだし、その後、一瞬止まるように見えたものの大岩と共に下に落ちていったとのことだった。
すぐにRさんからザックの雨蓋に入れてある携帯を出してもらう。110番につながったので状況を説明する。しばらく待たされ山岳救助隊の人が出る。状況を聞かれて現場をよく見るとソロアンカーは残っている。そのロープの末端はここからではよく見えない。ロープは残っていると説明したがよく見ると弛んでいる。一部芯が出ているもののロープは切れていない。ロープが切れていないのに落ちているという状況がよく説明出来なかった。
ヘリが来るまで待つ間に後続パーティーに登ってもらう。自分達はどこでも泊まれるし水もあるので今日の予定変更はあきらめる。場所をさらに移動し、安定して座れる場所でピナクルにスリングを巻きセルフを取る。しばらくして東邦航空なのか小型のヘリが来る。北尾根全体を見るように飛んでいる。ここの現場には気付いていないようだ。何回か旋回した後、涸沢に降りてしまう。
待っている間に現場を観察してようやっと状況が確認出来た。下から登ってきたソロの人はルンゼ右手前に縦に3本連打されたハーケンのうちの一本に環なしビナで9mmロープをフィックスし下のフィックスしたロープを外しに一旦下降した。その登り返しのユマーリングの最、私の前を通っていった。その時両手で余ったロープを抱えていたのでソロの場合通常ロープはそのままにしておいて登り返してから上で引いて回収すると教えてあげたのだがそれだと引っ掛かると言われてしまった。次にアッセンダーをそのままずらしながらリードをしていたようである。私はてっきりソロデバイスか何かに付け替えるものだとばかり思っていた。当然この時点ではハーケン一本でアンカーを作成していることにも気付いてなかった。それで滑落の最にアッセンダーが表皮を剥いて、なおかつ頭を下にして滑落していったのでアッセンダー上部の穴にビナを通してなかったのかロープによって押し広げられたアッセンダーのカムのすき間から表皮が剥けて細くなったロープが擦り抜けてしまい止まることなく落ちてしまったようだった。ただRさんの見た話しからするとソロの方法が正しかったとしても助からなかったと思われる状況だった。またもし我々がその人より先にそこを登っていたら同じ目に遭っていた可能性も否定出来ない。
後続のパーティーには事故の起きたルンゼは避けるように勧めさらに1時間以上待つ。ようやっと長野県警のヘリが来る。落ちた人は岩に囲まれているせいかヘリはなかなか見つけられないようだ。我々2人は何度も下を指さすのであるが現場を特定出来ないようである。何度も旋回してようやくホバリングしてスピーカーから3・4のコルで待っているパーティーに移動を促す。救助隊員が2人降りてくる。
先に降りた救助隊員が現場に到着してこちらに手で合図を送ったところで私は登る準備を始める。下から登ってきた人がロープマンでフィックスロープをたどっているので尋ねると7人パーティーとのこと。何時間も待てないので譲ってもらい登り始める。Rさんも登るので出だしだけランニングを取りあとはノープロで登る。少し登るとあとは歩きになり、7人パーティーのトップの脇を通りすぎ岩の間を縫ってハーケン2本の所でビレイポイント作成。ちょっと貧弱だが平坦部の奥なので妥協する。ジジをセットしロープをある程度引いていく。とりあえずハーケンが飛んだ場合にと体とジジを連結する。ヘリが飛び去って音がしなくなったらすかさず解除のコールを送る。彼女もすんなり登ってきた。登る時に彼女に貸したビレイ器(ピウ)を落としてしまったとのこと。とりあえず私のATC-XPを貸し使い方を説明する。そこから去年と同じフェースをひと登り。去年使ったピナクルを支点にする。その先はロープはいらないので巻いて首に掛けて登る。去年と同じように右を巻いて簡単なところを行く。
2峰の懸垂支点にスリングを一本追加して懸垂下降の準備をする。後続は7人全員揃うまで追い付いて来ないと思われるのでゆっくり時間をかけて説明する。ジジにカラビナ2枚掛けて私が先に降りる。Rさんには私のATC-XPで下降してもらう。下で岩角でセルフを取りロープを引いて確認する。ロープ末端を手に持ってRさんの下降を待つ。彼女も初めてにしてはすんなり降りてくる。セルフを取ってもらいその後ATCを解除してもらう。そこからはセルフも外して歩くだけなので先に安定した場所に上がってもらう。ロープを回収して後を追う。そこから少し登ると前穂山頂である。山頂には沢山人がいる。
さっきの事故のこともありRさんはこれから先の明神縦走に不安を持ってしまった。私は岳沢に降りてもいいし、このままその辺でビバークして明日考えてもいいよと言った。山頂で長く休憩したら少しは回復したみたいでとりあえず明神山頂まで行ってみようということになった。ここからは私が簡単なところでも前を歩くことにした。また当初5峰まで行く予定であったのが時間を大幅にロスした為に無理となったので良い場所を見つけたらそこでツェルトを張るということにした。
紀美子平への道標のところからそれて明神へ向かう。さりとて難しいところもなく普通の縦走路のように踏み跡もしっかりある。
主峰への最初の登りは見た目はロープ出さなくていいのかなという感じであるが出だしがちょっと難し目なだけですぐ傾斜は緩くなる。
後ろを振り返ると前穂〜奥穂〜西穂と見える。前穂もここから見ると全く違う形をしている。
主峰の向こうに2峰が姿を現す。ここから見ると険しそうだが3級だそうである。主峰への登りはざれた稜線を行く。
一日の疲れも出てきて休み休みゆっくり歩く。
主峰の山頂手前で平らに整地された場所を見つけた。大昔の空き缶やらも転がっている。今日はここで張ることにして荷物を降ろす。岩しかない場所なのでナッツを岩の下に入れてツェルトを固定する。とりあえずで6本も持ってきたのがここで役立つ。張り追えてから空身で山頂に行く。
山頂から2峰を観察する。フィックスロープが残っていてルートは明瞭である。横を見ると東陵が見える。下はなだらかだがここから見ると山頂直下は一気に突き上げているように見える。しばらく景色を楽しんだ後寒くなってきたのでツェルトに戻る。
幕営地は丁度岩陰で風が遮られ、正面も一枚岩で落石の危険が殆どない。今回の明神縦走でのベストはここと5峰台地から下った2箇所である。
翌日は6時起床予定で5時台に目が覚めた。ツェルトに雨が当たる音がする。合羽を着て準備を済ませ外に出てみると一部青空も見えている。今日はなんとか持ちそうだ。2峰には主峰山頂から下るとすぐに着く。準備をしている間にまた小雨がぱらつきだした。残置ハーケンとナッツでビレイ点を作り登り始める。出だしにはハーケンは見当たらない。乾いていれば簡単なのだろうが、濡れているので面に靴を置くと滑ってしまう。セミになっているとRさんから声がかかる。自分としては完全なレストポジションでオブザベーションしているつもりなのだがそう見えないようである。体を上げて一段上がった所でナッツを取りだしランニングを取る。そこから先は簡単になってナッツや残置ハーケンでまめにランニングを取りながら登る。今日は後続がいないので急ぐ必要もないしRさんの回収の練習にもなる。岩の割れ目に沢山打たれたハーケンに何重にもスリングが巻いてある支点で自分のビナとスリングでビレイポイントを作る。重なっている岩ではないのでハーケンが打たれたリスからぱっくり割れないのかなと考えてしまう。Rさんも順調に登ってくる。時間があるので細かな説明をする。2ピッチ目はトラバースから始まる。今度は1ピッチ目よりえらく簡単で残置ハーケンにランニングを取っていく。途中ナッツを一つ決めててっぺんのピナクルでビレイする。スリングはつないで3.6mにして使用した。ここでロープをしまう。3峰は稜線を忠実にたどる。最初は巻くのだがそのまま岳沢側の巻き道をたどると途中で終わっている。3峰と4峰のコルから岳沢側に支尾根が発生している。ガスが濃いと間違えそうである。急な岩場を下るとコルに降りる。
ここから4峰への登りは明瞭な踏み跡をたどるだけである。5峰はピーク直下が岩場で遠くから見るとどう登るのだろうと思ってしまう。近くで見ると正面やや右にチムニーがあるのでそこを登る。もっと右から巻けばさらに簡単なようである。5峰から我々はそのまま稜線上を進んでしまったが右に降りて巻くのが正しかったようだ。ハイマツを掴んだり後ろ向きにクライムダウンしたりしながら岳沢側にすこしづつトラバースしたら赤テープのある踏み跡に合流した。
そこから先は明瞭な踏み跡が稜線に忠実に続いている。踏み跡が切れて岩になっても真っ直ぐ稜線を進むだけでまた踏み跡が現れる。雨がまた降ってきたので一度脱いだ合羽を着る。Rさんがお腹が空いたと言うので休憩して私はカロリーメイト、Rさんは朝作ったアルファ米を食べる。時計を見ると11時だ。そこから先は尾根がどんどん下っていきその真中の踏み跡をたどると登山道のような感じになる。ただ傾斜はきつく疲れた足にはつらい。
両側が切り立った尾根は想像以上に細かった。フィックスロープが張ってある。自分に取っては難しくもなんともないが感じとしては妙義主稜線縦走路のようだ。フィックスロープには触れずに歩く。そこから先は樹林帯の急な下りであった。途中何度か間違えそうになるがその度にRさんに指摘されて元に戻る。岩場が終わって集中力が低下しているようだ。うんざりするほど急で滑りやすい踏み跡を下ると下から人の声が聞こえてきて登山道に飛びだした。
そこからは意外に上高地は近く30分かからなかった。整備された登山道を飛ぶように下って連休の混雑した上高地に戻った。涸沢紅葉には早いからか、釜トンネルが広くなったせいかバスは待ち時間なく乗れてすんなり帰ることが出来た。
今回は連れていってあげる形となったがRさんは積極的に教えたことを吸収してくれてこのルートをソロで行くより非常に楽に縦走することが出来た(水も持ってもらったし、最終日はロープも持ってもらった)。ロープを使う時は良いパートナーに恵まれることが大切なことを再認識した山行だった。
END