21日 坂巻温泉03:50〜梓川左岸(徒渉不能)〜釜トンネル出口05:35〜下掘沢取付点06:40〜標高1700m地点08:00〜標高2050m下掘沢上部の登山道合流点手前付近の小丘10:20、11:05〜下掘沢取付点12:15〜坂巻温泉13:30 雨天敗退
装備 ザック10kg位+スキー5kg位、ピッケル、アイゼン他
前回上高地入りした槍沢行きの時は帰りの沢渡への歩きでかなり痛い目をみたので今回の駐車場所はもっと釜トンネルに近い場所にしようと検討した。シーズンオフの間は坂巻温泉に有料で駐車できるという情報を得たので(シーズン中は駐車場の所にも書いてあるが入浴者および宿泊者のみである)それを保険と考え、中の湯へ行く旧道のゲート前に停められないか考えて行ってみた。安房トンネル手前の青いルート表示看板を見て右折したが予想に反して冬期閉鎖ゲートは中の湯より先ではなく右折後すぐのところにあった(中の湯に行く人は釜トンネル手前の中の湯売店から電話するとゲートの向こうから迎えがくる)。ゲート手前の路側にはすでに1台の軽ワンボックスが停車している。その軽の位置が一番良い位置であるが、中の湯の送迎バスがマイクロバスだと仮定すれば5〜6台は駐車できる。とはいえ大型通過を考慮に入れれば2台位しか停めるスペースはないような場所である。2〜3日車を放置する場合には停めたくないような場所だった。後で考えると安房トンネル方向のもう少し先にチェーン脱着場があるようだったのでそちらも見ておけばよかったが素直に引き返して坂巻温泉に車を停めた。0時も回って当然宿も寝静まっているので事後承諾の形となってしまう。紙に無断で停めたことを詫び、帰りに駐車場代を精算する旨を書いて入り口の自動ドアの隙間にねじこんだ。こうすれば朝ドアの電源を入れるときに気が付いてくれるだろう。4時に目覚ましをセットして車の中で寝袋に潜り込むが窮屈でなかなか寝付けない。そうこうするうちにちょっとうとうとした位で3時頃になり起きてしまうことにした。今日は天気予報では前線通過の影響で午後には曇り、夕方には雨となっている。山ではもっと早くに崩れるだろう。早く出ればそれだけ行動時間が稼げる。準備をして4時前には出発する。

空は晴れて星が良く見える。20分ほどで釜トンネルに到着する。まだ早すぎて真っ暗なのでここでテルモスの中に入れるお湯を沸かすことにする。テルモスにお湯も入れ、荷物をがさごそやっている時に3人位のグループが入ってきた。装備からすると大正池近辺で写真撮影をする人たちであろう。

AM4:32、荷物をまとめ釜トンネルに入る。ヘッドランプが必要なほど暗いが前方を行く人のランプも見えるし、足元も凍っていないのでたまに点灯するが殆どライトなしで歩く。前を行く3人のうちの一人が遅れがちでだんだんと追いついてきた。その人が立ち止まって一息入れる。おそらく後ろからの足音が気になってやり過ごすのだろう。その人はトンネルの傍にそれていたのだがその位置が釜トンネルから梓川左岸に出る所だったのでその人のすぐ傍を挨拶して通り抜けた。ガイドブックには下堀沢堰堤で右岸に出るとなっているので川沿いにヘッドランプを点けて歩く。トレースがあるので行けるのだろう。
しばらく行くとトレースがなくなってしまう。とはいえ対岸に川に入らずに徒渉できるようなポイントはない。そのまま暫く行くと切り立った斜面になって下は川の水という所になってしまった。素直にあきらめて大正池方面から向かうことにして元来た道を引き返す。さっきのトレースのなくなった所に戻るとテントを設営した跡がある。よく見るとトレースはスキーではなくスノーシューであった。
釜トンネル出口から上高地に向かう道は除雪されてはいるが幅が随分と狭くなっていて両側が雪の壁になっている。大正池手前の橋の所に来るまでにはかなり明るくなってしまい、時間をロスしたのが悔やまれる。とはいえ帰りは梓川を渡って釜トンネル出口付近に戻ることが困難であることがわかったことは救いであろう。橋を渡ってしばらく行くと左手に道が分かれる。ここは戻る方向に分岐しているので少しわかりにくい。しばらく行くと沢らしくえぐれた所に出る。とはいえカマボコを逆さにした形状になっているだけで水は流れていない。ここでスキーをザックから降ろす。スキーは前回の四阿山での苦い経験より140cmの安物板はNさんに売ってしまい、BDのアークデーモン170cmにG3の貼りつけシールを新調した。今回が初である。シールは2つに折りたたんだせいか引き剥がすのに苦労する。腕力のない人の2つ折りはやめた方がいいかもしれない。

ここからはスキーのトレースが付いているのでそれに沿って登山道をしばらく進む。地図で道が途切れる辺りで左下に下堀沢が見える。スキーのトレースもそちらに向かって下りている。
下堀沢は両側が切り立っていて取り付くのは沢下端しかないようである。スキーのトレースは梓川方向に向かっていて焼岳に登ったらしきものは全くない。人が登ったせいで土が落ち斜面下部が少しなだらかになっている部分を見つけたのでそこから登ることにする。スコップで適当に掘って弱層テストらしきものをする。15〜20cm位の比較的新しい雪の層があり、その下はしまっている。
上の雪の層も昨日今日のものではないので下の層から剥がれやすいということもなさそうだ。テレマークにはクトーがないので自作したものをこの時初めて取り付ける。急斜面を階段登高して2〜3mも進むと右スキーがずるずると滑り出す。足元を見ると自作クトーの歯が横を向いている。2mm厚のアルミ板では全く強度が足りない。ここでスキーを脱いで下に降りる。使い物にならないクトーもどきはここで歯を内側に折り曲げて(こんな簡単に手で曲げれる位だと用を成さないのは当たり前だ。とはいえ作成時はバーナーであぶってハンマーで曲げたので気が付かなかった)コンパクトにしてザックにしまう。スキーはザックに再度固定してストックをピッケルに持ち替えて登り始める。地図でかなりの急登であることは覚悟していたが、トレースも全くなくつぼ足なのでかなりつらい、取り付き点で右にトラバースしつつ登るところを直登してしまったためピッケルのピックを雪面に打ち込みながら登るということまでしてしまう。最初の部分を過ぎるとピッケルは確保以外に必要はなくなるが、雪の上層と下層が体重をかけるとはがれてしまい、足を下層の雪までけり込みながら高度を稼いで行く。スノーシューやわかんがあっても却って下層の雪を捕らえられずに滑ってしまうだろう。とはいえ下層の雪には場所によって柔らかいところもあり体重+荷物で90kg以上になっていることも手伝ってももまで潜ってしまう時もある。そういう時はトラバース気味に進みながら膝下位の所を捜す。ルートは木の幹に緑の紐で目印が付けられているのでそれを辿る。体重をかけ過ぎると足が深く潜ってしまうし、あまりかけないと今度は滑ってしまう。急な所は膝を雪に押し付けながら登って行く。ルート取は潜ってどうしようもない場合を除き直登する。なんだ坂こんな坂という気分で登ると傾斜が一段ゆるくなる場所に出た。
とはいえまだスキーを履けるほどにはゆるくはない(斜登高すればいけないこともないが)。あともう一息と思い登っていく。ここからはあまり雪面に足をけり込まずとも登って行ける。
ようやく登りつめ斜度のゆるい地点に出た。びっしょり濡れてしまった軍手を絞ると水がいっぱい出る。私は余程寒くない限り通気を優先して軍手を使っている。もちろんまともな手袋も持参している。地図で見てもここからはなだらかな登りしかない。スキーを降ろしピッケルをストックに持ち替える。トレースがないので地形を見つつ、帰りに自分で作ったトレースを滑り下りるのを考慮しながらルートを選ぶ、直登の方が簡単だが帰りに疲れて何も考えないでトレースを辿ることを思うと滑りやすい部分にトレースを付けた方がいいだろうと思ってのことだ。スキーを履いていくらもしないうちにさっきまで目印にしていた紐が見えなくなった。おそらく目印は下堀沢に近い方に続いているのだろう。地図で見る限り尾根の真ん中の方の斜度がゆるいので気にしないで進む。今回新調したスキー板はどちらかというとゲレンデ向きでトップの反りがあまりないので板が雪に潜りやすい。足を前に出した際に意識的にトップを上げるようにする。高度も高くなり樹間から穂高が見える。

しばらく歩くと焼岳も正面に見えるようになる。
トレースがないのと帰りに滑ることを考えると登ったり降りたりというルートは取りたくないので地図を見ながら慎重に進む。大雑把に地図を見ると幅の広い一つの尾根なのだが小さな丘状の部分や、尾根状の部分があり地図の細かい部分も見る必要がある。雪山はやはり25000分の1が必須であろう。普段は面倒なのと細かい等高線も見る必要がないので25000分の1は保険程度でしかないが今回は逆である。急斜面は日当たりが悪かったせいかこの辺りに来ると雪がかなり湿っている。ところどころ融けて褐色になっている部分もある。シールも濡れて雪がだんごになる。とはいえ気温も雪温も高いので板を雪面にたたきつければすぐ取れる。

写真では判別しづらいが明らかに天気は下り坂。

1900m付近を過ぎあまり下堀沢から外れないようにと思うあまり右手の小尾根を登ったら左下にゆるい谷状の地形を見下ろせた。その下の方が正解と判ったので帰りに登り返さないで済むように小尾根の傍を真っ直ぐトラバースして行く。

高度計が2000m辺りを示す頃に正面に焼岳を望む方向に小高い丘状の所が見えた。西の方角を見ると山々には雲がかかっており上層雲の状態からも天気が下り坂であることが読み取れる。その丘の上まで行ってどうするか考えることにした。焼岳直下のカール部分はここから見ると私にはまともに滑れない斜度に見える。雪の状態も褐色の部分が多くこの辺りより日当たりが良いせいでかなり悪いようだ。昼まではもって欲しいと思った天候も期待より早く推移している。スキーからシールを剥がし、下りのザックの軽量化の為に昼飯の準備をする。
昼を食べなければもう少し先まで行けるのだが、この場所は眺めが良いので割り切ってしまう。風のことを考えなければテント場としても適所だ。今日もアルファ米とレトルトカレーである。ザックを立てて風下側にスキー板を配し上にストーブを置く。時折突風で火が消えてしまう。雪で風よけを作ればいいのだが面倒だ。そのせいでやけに時間がかかるが燃料も軽量化すればいいと思い全開で沸かす。遠くに人の声が聞こえる。だんだんと近づいてきてい4人グループであるのがわかる。1人が数メートル先行していて後の3人がだんごになっている。私のトレースを忠実に辿ってこの小丘に登ってきた。坂巻温泉から出て釜トンネルを抜けて来たという。先頭のリーダーの人にトレースのお礼を言われてしまった。3人目の女性にも改めて丁寧にお礼を言われた。私は天気が下り坂なのでここで降りると言ったが、その人達はもう少し登ってみると言って先に進んだ。単独ということでここで降りる決定を下してしまっていて惜しいような気がしたが、山では深追いをしないというのを自分で決めているので諦める。確かに感覚的にはまだまだ持ちそうだが、それは下界の感覚であると自分を戒める。この暖かい気温で雨具は非常時の備えで厳冬期用のヤッケであるし。雪を溶かしてレトルトカレーを暖め終わる頃にはさっきの人達はカールの左尾根を斜登高で進んでいる。
スキーを履いて手袋も軍手からゴアのオーバー手袋に付け替える。転倒時に眼鏡を保護するためにゴーグルも付ける。とはいっても下りは安全第一である。歩くよりは早いという以上には欲は出さない。雪は重い湿雪である。スキーは予想通り操作しやすい。カタログでは「レーサーやエキスパートの力強い滑り」云々となっているが私の体重+荷物の重さでは中級者用の板に乗っている感じである。おまけにカービングであるからスキーが雪に潜っていても曲がりたい所で曲がることができる。とはいっても殆どボーゲンで滑っているのだが。疎林の斜面では危険は冒せない。本当はあまりこけていてさっきの人達に追いつかれてしまうのが嫌というのもあった。情けない間隔の開いた2本のシュプールを刻みながら降りて行く。慎重に降りてはいるのだがやはりヘタクソ故何度かこける。板は問題ないが靴が浅い革靴であるゆえ、少し後傾でバランスを崩すと元に戻れない。とはいえ後傾のリカバリーが困難なのを除けば私の滑走スピードではなんら問題はない。板を買い換えたような切実な問題はないと思う。少し傾斜がきつくなったが私の付けたトレースは容赦なく真っ直ぐである。斜滑降+キックターンやら木の間を折り返すようにボーゲンで降りて行くとそこは最初スキーを付けた所であった。
ここまで降りてくる間、さっきの人達は私が帰りにたどる為にわざと迂回した部分をショートカットしている以外には忠実に私のトレースを辿っていた。この最後の下りで難儀している位なので迷わずここでスキーを外しザックに付ける。下りは登った時と違い非常に楽である。たまに足を潜らせてしまうが下りのためかどうってことはない。さっきの人達の足跡は踏み抜いた形跡も全くなく私より軽いのだろう。そういえば私より背が高い人はいなかった。
よくこんな急なトレースもないところを登ってきたものだと思う。下の方までくるとトレースが二手に分かれる。自分の作った方を辿る。さらにちょっと下るとスキーで斜登高した跡がある。途中までスキーで登ってからあきらめたようだ。最初ピッケルで登ったところは降りたくなかったので最後はスキーの斜登高の跡を辿る。
ほどなく下堀沢に出る。またスキーを履くこともできるが大差ないのでそのままつぼ足で行く。元来た道にトレースがないのでさっきの人達はここまでは別のルートを通ったようだ。大正池付近の橋の下は梓川が雪で埋もれていたのでどこかに徒渉点があるのかもしれない。下堀沢から元の道に上がるシュプールを見落としそうになり、ちょっと戻るように登ろうとしたらももまで踏み抜いてしまった。ピッケルを逆さについて足を引き抜く。
気温が高いせいか私が行きにつけたトレースも融けてはっきりしなくなっている。最初にスキーを履いた地点の沢に着くがここでも足を踏み抜いてしまう。
沢を越えてしばらくで最初の分岐に出る。テントのための雪壁かイグルーの跡みたいなものがある。
いくらも行かないうちに最初の橋に着く。
これで雪の上は終わりだ。数人の登山者の姿が先を行くのが見える。
この辺りは雪崩が多いようだ。標識も曲がっている。この写真を撮った後にぽつぽつと始まった。
下堀沢下部はこのようになだらかでちょっとスキーで遊ぶにはいいかもしれない。明日を休暇にして4連休に出来るせいか入山者数組とすれ違う。トンネルに入る頃には小雨になった。トンネルの中で先を行く人達に追いついた。何も考えずトンネル幅いっぱいに広がって歩いている。縫うようにして抜いて行く。釜トンネルを出た所でタクシーの運転手さんに声をかけられる。坂巻温泉に車が停めてあるからと言うと迎えに来てくれるのと勘違いしていた。今日は目的を半分で切り上げたので体力が余っている。そのタクシーは入山者をここまで乗せてきた帰りのようだった。前回の槍沢行きの時だったらと思う。小雨の中、坂巻温泉に向かう。
荷物を車に載せてタオルを引っ張り出しているうちに雨が本格的に降り出した。
今回は着替えを持ってこなかったのは失敗だった。フロントで対応してくれた女性は親切で私のメモも読んでくれていたようでメモから車のナンバーも写し取ってくれていた。ここで入浴料+駐車場代計1000円を支払い露天に向かう。トイレも風呂もスリッパがきちんと並べられていて印象が良い。あまりに整然に並びすぎているのがシーズンオフを物語ってもいる。露天風呂には階段を下に降りるようになっている。脱衣場は湯のわきにあった。ここは外からも直接来れるようになっている。湯船の一部と脱衣場の上には屋根がかかっている。雨が湯面を打っている。湯から上がり汗の染みた衣類にまた袖を通し階段を上ると傘までちゃんとそこに置いてあった。
天候に恵まれなかったが下山判断が結果として有利に働き悔いのない山行になった。上高地という土地柄先々週の四阿山より雪質を期待したが、春の陽気でもっと悪い状態であった。とはいえ雪の量は豊富で天候次第でまだまだ良い日があると思われる。