山スキーとの出会い

 私が学生の頃、知人に「スキーせえへんの?」と尋ねられ、未経験の旨を告げたら、非常識のモンのようにからかわれました。公務員の三男坊として暖地広島の地で育った私は「スキーはブルジョワの遊びでできるはずのないもの」という劣等感に包まれてました。逆に「ほな、せんへんわっ」と意固地になり、それからというもの貧乏学生を盾に、誘いを頑なに拒み続けました。その頃は山にも行かず、健康とはまったく逆の夜の世界に入り浸ってましたしね。ホントよく飲みましたよ、あの頃は。遊びに何万円もかけるなんてことも死活問題でした。
 さて時は経ち、山に足を染めてしばらくたった後、春浅い御岳山に向かいました。冬山の経験などろくろくなかった頃です。2度目の御岳は快晴でした。頂上を踏みしめ、山スキーヤーおじさんと親しく言葉を交わし、すばらしい雪山のひとときを過ごしました。ラーメンのための湯を沸かしはじめたおじさんとは早々に別れを告げました。歩きで時間がかかるためです。雪山初心者は、とっとと雪深い3000mの稜線から下山しなければならなかったのです。所々ハイマツが顔を出している真っ白い何もない斜面が眼下に広がっていました。アイゼンの爪が雪面にしっかりかみつくのをこわごわ確認して下ったのをよく覚えてます。滑落は許されない角度と距離のある斜面を落ちる私を想像していました。どれぐらい歩いたでしょうか。後ろから軽々と滑り抜けた人がいました。先ほどのおじさんです。私を追い抜いき、下の斜面で私のはるか後方を振り返り、惜しむかのような表情で眺めてました。私がこわごわ下った斜面をです。「スキーなんて」と食わず嫌いだった私を瞠目させた瞬間でした。その次の冬が来るのももどかしく、11月にはゲレンデ用具を一式買い込み、2月にいきなり2泊のスキー特訓に出かけたのでした。


山スキーのトップページへ