• どこまで歩けるか 〜2003年1月版
    • 「一日にどのくらいまでなら歩けるか?」と自問自答したことがある。その時の答えは、時間で言うなら丸一日、距離で言うならば100kmくらいか、と多少曖昧ではあるが、相当なイメージを持っていた。
    • というのも、2000年の秋に新穂高温泉〜双六岳・三俣蓮華岳経由 三俣山荘泊〜鷲羽岳・水晶岳・赤牛岳経由 奥黒部ヒュッテ泊〜平の渡し経由 五色が原山荘泊〜薬師岳経由太郎平泊〜黒部五郎岳・三俣蓮華岳・双六岳経由 新穂高温泉帰着、という縦走を行った経験から、それ相応に歩けるものだと自信を深めていたからである。特に、太郎平から新穂高温泉までを一日で行くのは結構大変なもので、これが出来るくらいだったら、大抵のことは大丈夫だろうと思っていた。
    • 2002年に行った日帰り登山で言えば、易老渡から光岳のピストンが登り・下り2000m、沢渡からの鹿島槍ヶ岳のピストンが登り・下り1800mであるから、装備を軽くすれば、2500mの登り・下りも可能だと思っていた。
    • この様に歩くことに関しては些か自信過剰であった事もあって、四国遍路を歩こうと思い立った時も全行程を1400kmとすれば、一日当たり70km歩けば20日で終わるなどと思っていた。とは言え、その様な距離を歩いたことも無かったので、取り敢えずの下見がてら、1番寺から歩けるところまで歩いてみようと思い立った。
    • 歩き始める前に一番考え込んだのは、靴を何にするかという事である。登山をやっていると、どうしても登山靴をベースに考えてしまう。しかし、どうみてもオーバースペックである。ほとんどがアスファルト歩きにもかかわらず、ハイカットの靴を履く理由は全く無い。とはいえ、雨を心配すると防水性の悪い靴は履く事が出来ない。ということで、ローカットのゴアテックス付きのウォーキングシューズを買い求めた。ところが急いで買い求めたせいか今ひとつ足にフィットしない。ということで、結局、登山靴で下見をする事になった。
    • 登山靴の特徴は、ソールがしっかりしているという事である。すなわち、底が固い。言い換えれば、フレックスが少ない。だからこそ捻挫もしにくい。登山というのは、基本的に坂を登ったり下ったりする事であるから、底が固い靴で滑らないように慎重に足を進めることになる。一方、単にアスファルトを歩く場合、そこに滑らないように慎重に歩くという概念は無い。だから、自然とストライドが大きくなる。ストライドが大きいという事は、爪先で蹴って歩く感じになるのだが、この時靴底が硬いと爪先が曲がらず、無理な力が足全体にかかってくる事になる。そうして、足がだんだん痛んでいき、仕舞いに歩けなくなってしまう。
    • こうして、初めてのアスファルト歩きは、25km程度で終わってしまった。100km歩くなどよくも大口をたたいたものだと思った次第である。
    • 登山靴が駄目なのは身をもって理解できたため、先日買い求めたウォーキングシューズでリベンジする事とした。単にどれだけ歩けるかを確認するためであるから、地元の倉敷から国道2号線をひたすら西に歩く事とした。このウォーキングシューズ、意外と底が固い。結局、同じ症状が出てきて、30km程度で再び断念となった。
    • ここまでくると普通に使われているジョギングシューズを使わざるを得なくなってくる。ジョギング用に作られているのだから、フレックスは抜群。足の疲れは、ほとんど無い。再び、倉敷から国道2号線を歩き始めると、10時間あまりで東尾道に着いた。距離にして約60km。ようやく、長距離を歩ける素地が出来上がったといえる。
    • これまでの試行錯誤の結果、登山の登り・下りと、平地を単に歩くという行為は、似ているようで全然異なる運動形態であることがはっきりと分かった。「登山の運動生理学」にも、登り・下りでは大腿四頭筋を多用し、平地歩きでは下腿三頭筋を多用するとある。つまり使う筋肉からして違うのである。考えてみれば、登山はべた足で、平地歩きは先にも書いたようにつま先で蹴って歩く感じである。
    • さて、この蹴って歩く感じというのが、また曲者である。蹴って歩くという事は、皮膚が擦れる可能性を高めているため、結果的にまめが出来やすくなってしまうのである。実際、先日の60kmを歩いた際に、足の指にまめが出来てしまった。この時、登山のくせで厚めの靴下を履いていたのが拍車をかけたものと推測した。すなわち、厚い靴下は衝撃吸収としては良いのだが、フィット感が不足するため、擦れ易くなってしまうのである。
    • というわけで、新たな挑戦では薄めの靴下、それも5本指のものを履いてみる事とした。5本指にしたのは、言うまでも無く、指と指を分離する事によって指が靴下の中で擦れないように配慮したためである。この靴下で四国遍路を行い、35km/day、50km/day、50km/dayと順調に歩く事が出来た事から、いよいよ最長記録を試してみる事とした。試すのは、四国遍路 第23番寺薬王寺から第24番寺最御崎寺までの81kmである。
    • 結果から言えば81kmを歩きとおした。したがって、最長記録は81km/dayとなった。ところが、万全であったかというとそうではなかった。特に足の裏がジンジンとしびれ、最後の10kmは歩くのも容易でなくなってしまった。これは単純に歩きすぎの問題だと思われる。アスファルトの上を繰り返し歩くのであるから、一回あたりの衝撃は小さいとはいえ、足裏や膝には相当な損傷が蓄積されるのだと思われる。だいたい80kmというのは80,000mであり、歩幅を仮に1mとしても80,000歩を歩く事となる。実際の歩幅はこれよりだいぶ小さいから、1.5倍としてみればなんと、120,000歩にもなる。一日に10,000歩も歩けば相当なものと言われる事からすれば、尋常じゃない歩数である。
    • 薄手の5本指靴下は効果抜群で、まめが出来るようなことは無かった。この点からすれば、選択は正しかった事になる。ただし、踵付近が靴と擦れて穴があく寸前となってしまった。また、まめはできなかったもののその擦れた踵が痛み、歩くのが段々と億劫になってきてしまった。次回の試行錯誤では、踵の擦れをどれだけ抑え込むかを考えてみるつもりである。
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