埼玉県:秩父市「秩父夜祭り」

岐阜の高山祭り、京都の祇園祭と並び日本三大曳山祭りとして有名な秩父夜祭り(埼玉県秩父市)に出かけてきました。 今回で4度目ですが、連れの糸凧嬢(婆改め)は初めての夜祭り見物となりました。 昼間は汗ばむくらいの陽気でしたが、日が落ちてからは急激に冷え込み、 夜祭りのシチュエーションとして最高の日となりました。

2003年12月3日(水)天気:晴れ
所要時間9時間30分(休憩を含む・含まず
[コース概要]
秩父鉄道/秩父駅〜旧秩父往還〜秩父神社〜番場通り〜東町通り〜中町通り〜
上町通り〜NTT交差点〜地方庁舎前〜団子坂〜御旅所(市役所駐車場)〜西武秩父駅…
あとは、ぶらぶら、いろいろ歩き回る。

■秩父鉄道秩父駅―屋台囃子に迎えられ

【写真1】秩父駅ホームからの武甲山

既に混みはじめた電車が午前11時に秩父駅に着く。ほとんどの乗客が降車した。 階段に殺到した人ごみが解消するまで、ゆっくりとホームから武甲山を眺めていた。【写真1】
降車客の喧騒に混じりどこからともなく秩父屋台囃子が聞こえている。 改札をでると、駅前には特設ステージがあり、 人だかりの中、地元の保存会による「秩父屋台囃子」が演じられていた。 6年ぶりに聞く屋台囃子の生演奏に、胸が熱くなる。
若手から、ベテランの叩き手が揃っている。因みに最年少は11月に 2歳になったばかりの男の子とのこと。

☆秩父屋台囃子
このお囃子を初めて聞いたときの驚きは今でも忘れられない。 日本にも世界に通用しうる民族音楽があったことに感動を覚えた。 とにかく一度、聴いてみて欲しい。 それまで持っていた「お囃子」のイメージが180度覆されるはずだ。

■旧秩父往還―屋台と久々に出会う

【写真2】引き回される宮地屋台

秩父屋台囃子をしばらく堪能してから、移動をはじめた。 まずは秩父神社へと思ったが大通り(旧秩父往還)の方に人だかりがしているので足を向けてみた。
駅前通りからの道との交差点を右手に折れたところに屋台が一台停まっていた。 「宮地屋台」であった。【写真2】
屋台の上の舞台でうら若きふたりの女子が舞いを披露 していた。 よく見ると中学1、2年かもっと若いかも知れない。 舞い姫のアップはこちら
交差点の信号機は屋台の通行の妨げにならぬようにあらぬ方向へ曲げられていた。

☆屋台と笠鉾
各町内あるいは複数の町の合同で上町、中町、本町、宮地の4台の屋台と 中近、下郷の2台の笠鉾が現在稼動されている。 高さ6、7b、重さは一番重い物で20dもあるという。これを数百人で引き回す。 屋台と笠鉾の違いは山車の上部構造の違いによる。 屋台の方は先の宮地屋台のように舞いや芝居が演じられるよう屋台の上部が舞台になっている。 一方、笠鉾の方は舞台がなく祭壇が飾られている。6つの屋台を見分けられれば夜祭り通の第一段階通過。
因みに、屋台は船をイメージしたものという。 山車の車輪部を隠すように巻かれた裾布には波しぶきが描かれており、 屋台囃子の大太鼓は波の音を模したものだそうだ。

■秩父神社―夜祭りのスタート地点

【写真3】秩父神社に入ってきた笠鉾

宮地屋台が旧秩父往還を本町方向へ移動し始めた。見物客も屋台の動きに合わせ移動を始める。 しかし、行く手にはまた別の屋台(多分本町屋台)が止まっており、身動きが取れなくなりそうだ。 仕方なく横道にそれると、そこはちょうど秩父神社の脇道であった。
秩父神社内もすでに人が溢れ返っていた。【写真3】境内にはまた別の山車が入っていた。 今度のは笠鉾であった。 笠鉾は社殿の正面まで進むとそこで60度ばかり向きを変える作業に入った。 山車は車輪が固定されている為、通常、直線運動しか出来ない。 方向を変えるために山車にはある仕掛けが組み込まれている。 十数dから二十dもある山車がまるでTRICKのように回転する様はこれも、 初めて見た者に驚きを与えるだろう。

☆山車の回転する仕掛け―「ギリ回し」
十数dから二十dもある山車が30人位の男たちにより、いとも簡単に回転させられるなんて 俄かに信じがたいことだろう。先人の知恵が、不可能と思われることを可能にしている。 その方法とは凡そ以下のとおり。
@屋台を太い木材を2本指し込み、梃子の原理で車体を半分浮かす。
A浮き上がった山車の車体の下に「ギリ」と呼ばれている回転の支点となる台を嵌める。
B浮かしていた車体を戻すと、「ギリ」がちょうど山車全体の重心直下にあるため、 微調整でつりあいが取れるようなバランスとなる。
C山車の回りに男たちがぶる下がり、 重心をさらに下げ「ギリ」を中心に少しの力で回転しやすい状態を作る。
D目的の角度まで山車を回転させ、@とAの逆の作業を行う。

■番場通り―安田屋のメンチカツ

【写真4】 安田屋

秩父神社から南へ細い商店街が伸びる。番場通りである。 ここは道幅が狭い上に両側に出店が並ぶ為、非常に通過に時間がかかる。しかし、 数々の老舗がならぶ通りでもあるので、なるべくなら一度は我慢して通り抜けよう。
さて、通りの中ほどに「安田屋」という肉屋があり、店の前では揚げたてのカツとフライが売られている。 私のお気に入りはメンチカツである。早速、2個購入。食べながら歩く。( 安田屋の前につるされていた猪)心なしか以前のメンチとは味が違って感じた。
途中の「ベルク」というスーパーはこの日駐車場を休憩所として開放している。 一角には焼きそば、焼きうどん、トン汁、餃子、燗酒などが売られている。 また、小さなステージがありそこでも屋台囃子の演奏が行われていた。 屋台囃子を聞きながら安田屋のメンチをつまみにワンカップの燗酒をすする。

☆迂回路の達人
旧秩父往還の本町通り、中町通りは夕方が近づくにつれ一層混雑してくる。 19時以降はこの通りを使っての移動は困難である。また、番場通りは常に通り難いので、 秩父駅方面から西武秩父駅方面への移動は秩父鉄道線路沿いをお花畑駅を抜けていくのが良いが このルートも18時以降、団子坂への通行が出来なくなる。結局、 旧秩父往還の1本西側の路地を抜けるのが早い。

■団子坂―夜祭りのクライマックス

【写真5】 団子坂

番場通りから東町通りを右折し、旧秩父往還へ出ると中町通りとなる。東京電力をすぎ、 NTTの交差点まですすむ。この交差点を左折し地方庁舎前を抜けて秩父鉄道の踏み切り手前で更に左折し、 すぐに右折すると、 再び秩父鉄道のお花畑南側に接する踏み切りとなり、 その先の一段上がった市役所の駐車場が御旅所と呼ばれろところで、 そこに上がる坂が「団子坂」ということになる。【写真5】
団子坂の両脇は普通の店や家が並ぶが、今日ばかりは副業に精を出す。 バイク屋さんは本日休業。
団子坂は高度差5b位だろうか、たいしたことはないと思っては早とちりである。 坂の傾斜を観察すると、上り始めはなだらかであるが、頂上付近で最高の傾斜角となっている。 山車を牽引しているもの達にはまるでオーバーバングしているように感じるのではないか。
残念ながら、私は団子坂を山車が登るところを生で見たことはない。

☆屋台は踏み切り渡るの?
踏み切り内の架線は高さ5b位のところに張られている為、屋台は完全に引っかかってしまう。 当然屋根に乗っている人は感電してしまうかもしれない。 私も最初にこの踏切を訪れた際にそういう疑問をもった。しかし、 通行中の人の訝しげな視線を省みず踏み切り内で架線を観察すると疑問は氷解する。
ここにも秩父人のTRICK好きが隠されていた。踏み切りの部分だけ予め他の架線とは違う構造になっていることがお分かりになるだろうか?
かくして、この日は19時台から秩父鉄道は秩父駅及び影森駅での折返し運転となる。


■御旅所―夜祭りのフィナーレ

【写真6】 亀の子石

団子坂を登ると「御旅所」と呼ばれる広場に出る。秩父市役所の裏庭のようなところだ。 よる、7時に秩父神社を出発した6台の笠鉾と屋台は、最終的にこの御旅所に勢揃いする。 そして、 この祭りのフィナーレを見るためには特設の桟敷席の桟敷券を購入しなければならないのだ。 しかし、お金がない人用のコーナーもちゃんと用意してある。席取りは熾烈のようである。 そこからは「団子坂」も辛うじて見ることができる。
「御旅所」の由来ははっきりしていない様であるが、その一角に鎮座する「亀の子石」【写真6】が謎を解く鍵であろうことは素人の私にでも容易に想像が付く。 秩父神社の女神が武甲山の男神とランデブーするのがお旅所なのだが、「亀の子石」は武甲山に背を向け頭を秩父神社にムケている!!! ちょっと、表現が18禁になってしまったか………

☆亀の子石は天文台
真面目な話、「秩父神社」と「亀の子石」と「武甲山」は同一直線上に乗ると言うことだが、 若干西よりを指しているようだ。 武甲山山頂ではないらしい。unchikukozouさんによると「大蛇窪」と言うのが武甲山北面にあるそうなのだが…。 しかし、それはあくまでも言い伝えの領域を出ないのではないだろうか。
私の仮説はこうである。「その方角に12月3日の20時から23時頃にかけて、武甲山の稜線越しに昇る恒星があるのではないか、 それが、暦上の何かの節目を示している。」
但し、旧暦で考えなくてはいけないのかなど、私の手に負える研究テーマでは間違ってもない。


■西武秩父駅―もう一つの玄関口

【写真7】 西武秩父駅

御旅所から、南へ3分ほどで「西武秩父駅」にでる。駅前には、西武線で到着した人たちであふれている。 こちらの駅前にも特設ステージがある。 駅に列車が到着するごとに演奏が行われている。司会者の「名調子」が演奏中にかぶり、少々興ざめである。
演奏は5、6分のショートバージョンで、司会の拍手の強要でもって終わる。演奏だけでも自然に拍手が起こるだろうに…

☆西武鉄道と秩父鉄道は繋がっている
池袋から三峰口への直通があるので、繋がっていることは知識としては知っているが、 実際にどうやって繋がっているかは興味があった。西武秩父駅北側の踏み切りに立って、 三峰口方向を見ればわかる。(お詫び:写真を撮り損ねました。)
左手一段上の西武秩父駅から線路が下ってきて踏み切り手前で秩父鉄道線に合流する。 直通電車に乗ったことがないので後は推測だが、直通電車の時刻表には西武秩父の次の停車駅が御花畑とあるので、 列車は一旦、西武秩父駅から横瀬方向へ戻り、秩父鉄道へのポイントを通過し停車、 進行方向を変えて御花畑に入線する。その後再びスイッチバックして影森方向へ動き出す。
ということで、池袋から三峰口への直通電車は途中「飯能」、「西武秩父」で2回、 「御花畑」でと4度進行方向を変えることになる。

■夜を待つ―

【写真8】 飾り置きの屋台

秩父駅から西武秩父駅までをざっと歩いてきた。もう一度、ゆっくりと秩父駅へ戻るように散策する。 秩父駅前に飾り置きされているのは「宮地屋台」である。【写真8】
次第に日が傾き、秩父盆地に夕闇が迫る。汗ばむ陽気が一気に冷え込み、燗酒が欲しくなる。 山車には提灯が付けられ、夜の準備が進む。
ベルクのステージでも、屋台囃子の演奏が続けられている。 焼き鳥を肴に熱燗で暖を取りながら、太鼓と篠笛の音に酔いしれる。
そうこうするうちに御幸行列が始まる時刻が近づく。夜の山車を見るのによいポイントは地方庁舎の通りであるが18時以降、 NTT交差点で一般人の通行は禁止される。

☆歩行者への交通規制
NTT交差点から地方庁舎前を通り団子坂に至る道路は18時以降歩行が禁止される。 但し、沿道にある桟敷席へのお客はフリーである。NTT交差点で警官のバリケードにより進入を止められるが、 側道からは抜けて行けるため、この規制区域での見物は歩道上でのみ可能である。

■夜祭りの高まりの中で―山車と屋台囃子のコラボ

【写真9】 夜の笠鉾

見学ポイントを決め、山車の来るのをひたすら待ちつづける。 屋台囃子がかすかに聞こえ始め、50bほど先の交差点に近づきつつある気配が高まる。 19時に秩父神社を出発した先頭の笠鉾が姿を見せる。交差点の真中で停まると、 大太鼓の重厚な連打から小太鼓の乾いた連打に変わる。「ギリ回し」の作業に入ったのだ。 山車が大きく傾くと、歩道を埋めた見物客の中からどよめきが起こる。 「ギリ回し」を知らない為、ハプニングで山車が倒れそうになったと勘違いするらしい。 山車が回転すると今度は歓声が沸く。「ギリ回し」の作業が終わると。 続いていた小太鼓の連打が一際激しく甲高くなり絶頂に達した瞬間に、 今度は大太鼓の激しい連打が始まり、それを合図に十数dの笠鉾が一気に加速して動き始める。 屋台囃子が数百人の引き手を統率している。 この瞬間が私にとって夜祭りの最大の魅力を感じる場面である。

☆秩父屋台囃子ふたたび
大太鼓、小太鼓、横笛、鐘のシンプルな構成ながら、迫力あるリズム、静と動の波。 大太鼓の「ド、ド、ド、ド、ド、ド、ド」小太鼓の「テン、テケ、テケ、テケ、テケ、テケ」 澄んだ笛の音が風のように静と動をリンクする。 屋台下部の車輪軸間の狭い空間での囃子の演奏とは思えないパワーを感じる。
※夜間に写した写真はほとんどうまく取れていないためお見せできないことをお許し下さい。


【写真10】 町内札



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