
上高地〜涸沢の巻
|
10月9日 昨夜作っておいたおにぎり8個をザックに詰めて平湯へ向かう。今考えれば行動食にはチト量が多すぎた。 6時にあかんだな駐車場へ到着。さすがに連休とあってすでに 多くの人がいる。もちろん上高地へ向かうバスの中も重いザックを背負って立ちっぱなし、大雨災害の通行規制が解除になったためスムーズに上高地に到着した。 8年ぶりの上高地の空はどこまでも青く澄み渡り、明神が高く突き刺さっている。登山初体験、しかも初っぱなからテントを背負っての山行きに克子はおとなしい。もっとも体調をくずして咳が止まらないから仕方のないことである。 昨日、「余り調子が良くないなら止めようか?」と訊ねると、「せっかく計画したから行く」と、根性娘らしい発言。そそくさとおにぎり製作を開始したのであった。 思い起こせば佐渡ドンデン山暴風テント大破事件をきっかけに急速に進歩した成瀬家野良遊びグッズ。装備だけなら三千メートル峰縦走も可能である。その最新鋭野良遊び機材がついに本来の実力を発揮するときが訪れたのだ。それにしても荒天嵐強風雨霰地震どんと来いmont−bell Kivaの重いこと重いこと。 最新グッズ「トレッキングポール」の音も軽やかに出発!駄菓子菓子・・・・・パッキングに夢中でザックの調整を忘れていた克子に山の神の忠告が・・・あまりにもいい天気でうきうきしていただけに機嫌も斜めに傾きかける。さすがの根性娘(もはやオバサンかなぁ・・・)も痛みには弱く何度も肩の痛みを訴えて休憩をとる。たかが上高地の「公園散策歩道」で予定時間を大幅オーバー!この先涸沢に至るには克子初体験の「本格登山道」が待ち受けているのだ。 お昼にようやく徳沢園に到着。河童橋から4時間もかかってしまった。くそ重たかったおにぎりを消費していると。な、なんと見慣れたウィックロンのラガーシャツが歩いて来るではないか。我が職場の代表的アルピニスト山越さんである。 その山越さんの一言で本日の目標を横尾のテン場に変更。あと1時間足らずである。この先グータラ登山は更にエスカレートするのだ。 昼食をとった後に克子の元気が戻ってきた。新村橋を越えて梓川のほとりを歩く明神の五峰も隠れ、屏風岩が迫ってくる。相変わらず空は高く屏風岩が浮き出て見える。そこに猿の軍団登場!「さるさるぅ〜」と叫ぶ克子、石に飛び移り損ねて大腸菌の殿堂梓川に転落する猿、山奥の猿はグレーの美しい立派な毛並みをしている。愛くるしい子連れや若猿の向こう側、一段高くなった崖の上からひときわ立派な猿がこちらを眺めている。たぶんあれがボスだろう。 登山者が危害を加えないのを知っているのか全く人を気にしないで猿の軍団は土手を上って行く。 ザックを工夫して痛みが少なくなってからは快調にペースがあがり2時に横尾に到着。標準時間の倍、6時間かけてのグータラ到着である。先行していた山越さんの斜め向かいにテントを張る。 横尾のテン場は細かい粒子の砂場の中で、ひとたび雨が降れば泥んこ必至である。今回はその心配もないのでホント適当に張ってしまった。 「まずはビールだっっ」と季節はずれの暖かさに夏モードに逆戻りした夫婦の意見は一致。しかし・・・・恐れていたことが現実になった。DRYビールしかないのだ・・・ガ〜ン。成瀬家家訓1「ドライビールは排除せよ」。「フンッ」とそっぽを向いて行こうとしたが、つい500円を自販機に投入。シルバーとブラックに彩られたアルコール入り炭酸米でんぷん麦芽飲料を手にしてしまった。「のどごしだけはいいなぁ」。これからはゴールドの体がまぶしい由緒正しい「YEBISU BEER」もしくは「MALTS」を担いでくることを決意した。 山家の集うテン場は壮観である。普段軟弱デロデロオートキャンプ場を目にしている身としては感激きわまりない。コンパクトにまとまったテント廻り、全天候対応の装備、機敏なキャンパーの身のこなし、全く文句のつけようがない。もっともキャンプ目的ではないので一概には比較できないが自分たちの目指すキャンプスタイルがそこには存在した。 ほかの山家からみれば我が夫婦の装備は絢爛豪華なのだろうが自分の背中で運んできたのだから文句ねぇだろーと思うと。屏風岩が「文句ない文句ない」と光って魅せた。 本来の目的(?)に使われたkivaは光っている。しかし重たかった。周りには軽量テント群がひしめき合っている。頭の中に「ステラリッジ2 重量2.1kg」と浮かんでしまった。どうやらまた無駄遣い(?)をしそうである。 テントと並ぶ重量物に食料がある。食事をメインに考えるバカ夫婦は本日もグルメである。それでも普段の野良遊びよりは気を使って軽量にまとめたつもりなのでさらに爆笑モノである。アルコール系だけでも1kg、味にこだわるので当然ナマ米。酒のつまみに非常食。ところが、隣のテントから牛肉のにおい、なんとすき焼きをしている。我が夫婦と同年代らしきカップル。こいつらも相当バカかもしれない。 克子の調子が良くないので山越さんのアドバイス通り「涸沢泊、奥穂高制覇パノラマ新道、屏風の耳」をあきらめて「涸沢空身往復おでん付き」に変更。焼酎が全身を麻痺させ始めたのでシュラフに潜り込む。明日もグータラ登山になるだろう。 | ![]() |
![]() |
|
|
10月10日 夕べは早く寝過ぎた。ぐっすり眠って起きても外は満天の星、ほかのパーティーはまだシュラフの中である。克子は相変わらずせいていて余り眠れないれしい。テントの中で湯を沸かして湿度を上げてやる。結露だらけになるだろうけど横尾定着に決めたので昼間のうちに乾くだろう。 フライには夜露が凍り付いている。プロトレックの気温計は氷点下3度を示している。ドロワットパーカーを着込んでコーヒーをすすり空を眺めるとやや白みがかってきた。あちこちのテントから目覚ましのアラーム音が響き始めた。 この時間にでれば克子を涸沢に残して一人だけ奥穂高ピストンもできるだろうが本日もグータラ登山に徹することに決めた。 朝焼けに染まる明神を写真に収め、軽食をとる。先日買った「焼き網」の調子は最高である。山越さんも目覚め氷河公園に向けて出立した。陽の光の面積がだんだん広がってついにテントに到達した。ゆっくりした蒸気がテントから上る。克子を起こして調子を聞く。やっぱり涸沢に行きたいらしい。 ゆっくり準備して朝食をとりキジを撃って8時半ようやく腰を上げる。今年中には架け替えられる横尾橋で記念撮影。味があっていい橋だったのに・・・。 背中にお菓子を背負っているだけの克子はむちゃくちゃ元気だ。ペースも昨日とはずいぶん違う。出立時間はグータラだけどペースは標準以上である。あっという間に本谷橋に到着。鉄製の橋のはずだったけど・・・・・どうやら大雨で流されたらしい。仮設の木橋をわたってグータラ登山の骨頂「喫茶タイム」だ。コーヒーを沸かし、ケーキを出してひとなごみ。上り下り両方ラッシュ状態。この先、道譲りでずいぶん時間を食うだろうと予感する。 さて、ここからがホントの登山道。屏風捲の登りが続く。元気だった克子の口数が急に少なくなる。下山者に道を譲り、後続者に道を譲りと忙しい。樹林帯の中では正面に見えるはずの南岳も隠れたままだ。だが、標高はどんどん稼げる。だらだらと登りが続く道よりはこの方が好きだ。尾根筋の折り返しをすぎると本谷の流れの音がずいぶん遠ざかったことに気がつく。「もうすぐ水平道だよ」と克子を励ます。時々せき込みながらも涸沢のおでん目当てに突き進む。 本谷の流れが南岳の懐に収まるのが見えると目の前に北穂高から槍へ続く稜線が広がる。そして目指す涸沢がずっと奥に道を吸い込んでいる。北穂の稜線を右に見ながら涸沢をさかのぼる。空は突き抜けんばかりの青空。克子を連れてきて本当に良かったと思う。 最後のガラ場にとりつく。奥には涸沢ヒュッテの吹き流しが見えるが実はここからがえらいのだ。頭上にヘリが舞っている。後で聞いた話では西穂独標と槍で事故があったらしい。前穂の頂をかすめて陽の光が容赦なく降り注ぐ、日焼けしたらしく唇が乾く。久しぶりの登山なのでちょっとばててきたがどうやら半分はメシバテらしい。完全にへたばるとヤバイので写真を撮りつつ、休みつつ、道を譲りつつのんびり行く。 十年前は先行者をどんどん追い抜いていかに速く歩くかと無茶をしていて景色を楽しむ余裕がなかったが、今はカメラ片手に穂高の表情をゆっくり楽しめる。人に追い越されるのも悔しいとは思わない。 紅葉は残念ながら落第点、しかし、天気は文句なしの満点。家からわずかの時間でたどり着ける別世界はいつも苦労の甲斐のあるところだ。ガレ場のでこぼこ階段がだんだん登りやすくなるとヒュッテはすぐそこ。空腹遭難寸前ながらようやくたどり着いて克子とガッツパンチを交わす。 ヒュッテのテラスで当然ながらおでんと生ビール(またもやDRYだよかんべんして)常念山脈、涸沢槍、北穂、奥穂、前穂、屏風に囲まれた至福のビールだ。克子はさすがに疲れたらしくいつもの食い物に対する執着がない。だが、それもカレーが運ばれてくるまでの間だけだった。どうやら克子もメシバテしていたらしい。 「食い足りん」という克子に非常食のプレッソパスタを開ける。奥穂へは行けなかったけれどつれてきて本当に良かったと思う。一人で登るのとは全然違う幸福感で満たされた。 さて、下りは得意中の得意。しかも、新兵器トレッキングポールのおかげで更に能率向上、ガラ場ウェーデルンも調子がいい。標高差七百メートルを一気に下った。体が標高についてこれない克子は「耳がモーモー」らしい。登りは4時間半下りは2時間半結果的には実にいいペースで往復できた。 テン場に戻るとすでに山越さんが帰っていて驚かされる。靴擦れでリタイヤしたとのこと。山越さんほどのベテランでもそんなことがあるのかと少し安心(?)する。 さて、今夜もバカ夫婦のグルメは続く。さんざん山を歩いても更に手の込んだ料理をするとは全くあきれるばかりだ。「こんな人物がパーティーに一人いるとさぞかし幸せな登山ができるだろう。」と自分に感心する。 | ![]() |
![]() |
|
|
10月11日 いよいよ最終日、上高地へ下るだけなので更にグータラ構える。家路の遠い人はすでに出発準備をしている。克子を寝かしたまま一人で槍見河原に出かける。槍沢ロッジを早朝にでたパーティーに何組も出会い、のんびりできる北アルプスの麓に住んでいることを感謝する。 栂林の向こうにちょっとだけしかし、鮮やかに槍の穂先が見える。「次はあそこかな」と思いつつテン場に戻ろうとすると隣のテントの熟年夫婦が訪れた。昨夜の克子のせきこみと自分のいびきをわびるとせき止めの漢方薬を下さった。祭りもいい人だらけだけれど山もいい人だらけだと思う。 テン場までジョギング(クロカン?)する。やっぱり足腰は少し衰えているし息も上がる。明日からトレーニング再開! 一足先に高山へ帰る山越さんを見送る。テントはあれ放題でいまだに帰る気配もないバカ夫婦である。それでも一つ片づけてはタバコ、二つ片づけてはお茶、とグータラ撤収は進む。11時半にようやく出発準備ができた。克子のザックも調整をし直したので「快適」と喜んでいる。今度は初っぱなからハイペース、標準時間で徳沢園到着。昼を作るかどうか迷ったあげくロッジのそばを食べる。これが大正解で手打ちのおいしいそばだった。 更にハイペースを続け明神でアイスクリーム大休憩。そして上高地河童橋へゴールイン標準時間3時間で到達した。 |
|