遍路-26  愛媛県の女性

6月26日

さ〜て、さ〜て、さて さて ・・ 遍路旅も24日めと
なりました。

 高知県から愛媛県に入ってずいぶんと違うなあと感じています。
「こんにちわ」と声をかけると高知では「ご苦労さま、
お天気悪くいけんのう」

愛媛に入ると「よきお参りですのう。お気をつけて」

 そして昨日あたりは、合掌して見送る。あるいは家中の者を
呼んで門前で合掌すると変わってきています。
歩き遍路は尊敬の対象のようで、通学途中の娘さんなんか実に
うれしそうに声をかけてくる。
高知ではこちらから声をかけるが、ここ伊予では向こうから
声をかけられることも多い。

 さて朝食を済ませて7:30 ホテルを出る。晴れ。
宿の主人から「鎌大師の尼さんは高齢のため昨年末引退して
今は街中のグループホームで暮らしている。後任が来たとは
聞いていないので、立ち寄っても無人かも知れない」との
情報を得る。
そこで鎌大師経由の遍路道は諦め国道をそのまま進む。

 300m程先で散歩中の老婆が立ち止まり、手押し車に腰をかけて
待っている。近づいて挨拶すると「お待ち下さい。」と持って
いたズタ袋に手を突っ込んでガチャガチャ言わせて小銭を
小さな両手いっぱいの、1円やら5円やら10円やら100円やらを
「お接待です」と差し出す。「私は88歳で足も弱りもう歩けない
ので替わりにお願いします」とのこと。飴もいただく。
お接待の心の中には「身代わりにお参りしてもらっている」との
想いもあるのか。

 途中、また昨日の青年に合う。何となく長嶋一茂君に似て
いるので「ナガシマ君」と仮称する。昨夜は北条市街の2km
手前の「道の駅」で野宿したそうな。速いものだ。
時速7〜8km程度で自分が1km歩く間にずうーっと先まで行って
いる。

 道は昨夕と同じように左に瀬戸内海を見て大きな岬は峠で
越える。
大きな大きな製油所がある。規模の割りに出入りする
タンクローリーが少ない。看板を見て納得。専用の設備で
沖合いから直接陸上の巨大タンクに陸揚げし、製油したものは、
敷地内にあるこれも巨大な専用タンクにせっせと備蓄しているのだ。

 14:40 やっと延命寺着。帰路下りの住宅地で道を失い道を
失い川沿いなどをうろつく。
途中、通りがかりのバアさんに「南光坊さんはどちら?」
と聞くが「先に泰山寺に行きなされ。すぐそこだから」と
言ってきかない。
「順番がありまずは南光坊にお参りせねばなりませんので」
お断りし今治の街中に入る、JR高架の下に派出所があり
聞くとすぐに南光坊があると判明。

 約600m北上して全くの街中に石段も無い平地にある
南光坊着。バスツアーの参拝者で込み合っている中
お参りと納経を済まし、納経所でいただいた地図により
今来た街中の道を南下する。
今晩のひょっとすると野宿に備えてコンビニで弁当を買い求める。

 16:00 街はずれの泰山寺着。さっき通った道筋から400m
ぐらいしか離れていない。道で出会った老婆が「泰山寺を
先にお参りしなさい」と言った意味がよく理解できる。
ギリギリではあっても次の栄福寺に間に合いそうだと判断し
更にその先の仙遊寺の宿坊を今夜の宿として予約し、
車道に出る。

 畑の中、田んぼの中の細いあぜ道、大きな川に突き当たっての
車道と、遍路道を確認しながら急ぎに急ぎ、走るように急ぎ、
16:50 タイムリミットギリギリで山のふもとの栄福寺着。

 ここでまたあのナガシマ君に会う。「アチコチ間違え、
コンビニで気になる雑誌の立ち読みをしてたら遅くなっ
ちゃった。」とのこと。
コンビニで立ち読みとはやっぱり現代人だ。「その辺で
野宿する」と言うので「仙遊寺には通夜堂もあるから
そこに泊まったら?」と誘い、電話させる。

 また南光寺からずっと先を歩いていてどうしても
追いつけなかった35歳ぐらいの、何やらいわくありげな
女性が「今日の宿として予約していた横峰寺の宿坊には
とても行けそうにないので困った。これからJR今治に
行って、電車とタクシーを乗り継いで行こうかな」と
言ってるので、「横峯さんは遠いし、タクシーでは費用
も大変だ。キャンセルして仙遊寺に泊まってはいかが?。
まだ十分空きがあるようなことでしたよ」と誘う。
「でもそれでは横峰の宿坊に迷惑をかけるし・・・・
やっぱり一旦今治に帰る」と言い、山門を出ていく。

 こちらは、もう時間を気にすることもない。ナガシマ君
とおしゃべりしながらゆっくり食事とする。
仙遊寺は山の上にポツンと見える。のんびりと山道を登り、
途中からは参道(車道)を歩き、小一時間で山門に着く。
納経所は当然もう閉まっているのでお参りだけして宿坊に入る。
ナガシマ君は通夜堂を教えていただきそちらへと行く。

 お風呂(温泉)は先客の女性が入っているからとしばらく
待たされる。さて?と思う間もなく風呂上りの女性とロビーで
出会う。
何とさっき「やっぱり今治に帰る」と分かれた方だ。
「遅くなるからと横峰寺の宿坊に電話したら、ムリせずにと
諭され、キャンセルしてこちらに来た」とのこと。松山の方で
何度かに分けて歩いてると言う。しかし速足だ。

 温泉にゆっくり浸かり、食事ですの電話で食堂に行く。
大きな宿坊だが、今日の客は東京のフリーライター氏、千葉の
退職サラリーマン(なぜか岸さんと言う)、高松在住の
0歳になると言う先達と自分。
その他に素泊まりの例の女性と通夜堂のナガシマ君。

 住職の奥さんが「ここの夕陽は最高です。今日はまた
特別に美しい」とガイドしてくれる。
山の上で瀬戸内海、いや正しくはその先の中国山脈に沈む
太陽は本当に美しい。いい日に泊まったものだ。

 夕食は小豆入り玄米ご飯などの完全精進料理。
大変な手間がかかっているとありがたくいただく。

 56,941歩 後半急いだが、温泉、夕陽、精進料理、そして
夕食後おそくまで語り合った先達さんなどの同宿者と、
最高の宿に疲れもすっかり飛んでしまうようだ
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