遍路−4 トムとジェリー
今日は書くのが間に合わず、旅立つ前のある掲示板の記事とそ
れへの岸の投稿です。
1.ある掲示板の記事(投稿者不明)
ジェリーが大人になった頃
2003/ 5/ 8 15:41
トムはもうこの世にいませんでした。
トムは自分の命の終わりがすぐ傍まで来ているのを知ったとき
こっそりジェリーの前から姿を消しました。 ジェリーの前で
弱って涙もろくなった自分を見せたくなかったのです。
トムはジェリーの心の中ではずっと喧嘩相手として 生きつづけ
たかったのです。
トムがいなくなったのに気づいたときジェリーは悲しみません
でしたが、退屈になるなと思いました。
トムとの喧嘩は最高にスリルのあるゲームでしたから。
胸の奥が不思議にチクチクはするのですが、それが何なのか、
ジェリーにはよくはわかりませんでした。トムの願い通り、
ジェリーの心の中でトムはいつまでも仲の悪い喧嘩相手でした。
そんなある日ジェリーの前に一匹の猫が現れました。トムより
のろまで 体も小さい猫です。喧嘩相手のトムがいなくなって
寂しかったジェリーは、 今度はこの猫を喧嘩相手にしようと
考えました。そこでジェリーは、 穴のあいた三角チーズが仕
掛けられたねずみ取りを利用して、その猫に罠をかけることに
しました。いつもトムにしていたように。
ジェリーは物陰に隠れて、ねずみを求めて猫がねずみ取りの近
くに来るのを 待っていました。そして思惑通り猫が罠に向かっ
て近づいてきます。
ジェリーはしめしめと思いました。いつものように自分がねず
み取りにひっかかるふりをして、逆に猫をねずみ取りにかけて
やるんだ。 うふふ。手か尻尾を挟んだ猫の飛び上がる姿が頭
に浮かび愉快です。
でも、その猫はトムではありません。猫はチーズの近くまで来
たとき、 ジェリーが出てくるより早く美味しそうなねずみの
匂いに気づき、目にもとまらぬ速さで隠れていたジェリーに襲
いかかってきました。
ジェリーはいつもトムから逃げていたように逃げましたが、
トムよりのろまなはずの猫にすぐに追いつかれてしまい、体を
ガブリと噛まれました。ジェリーも噛みつき返しましたが、
トムより体が小さいはずの猫は平気です。
血まみれのジェリーは薄れてゆく意識の中で、本当は鼠が猫と
喧嘩して勝てるわけがないことと、いつもトムはジェリーに
「してやられた」ふりをして、わざとジェリーを捕まえないで
いたことを、そのとき始めて知ったのです。
トムの大きな優しさと友情に気づいたのです。
そしてトムがいなくなった時におこった胸のチクチクの正体に
も気づきました。
かけがえのない友を無くした悲しみでした。
ジェリーの魂が体を抜けた時、空の上には優しく微笑みジェリー
を待っているトムがいました。
「また喧嘩ができるね」
「のぞむところさ、今度こそは捕まえてやるぞ」
2.岸の投稿ー1
自分もジェリーかなあ
2003/ 5/ 9 10:24
メッセージ: 438 / 532
投稿者: slowdown59 (男性/仙台)
すてきな、すてきな物語をありがとう。
自分も、いろんな人と喧嘩して、好き勝手に生きてきました。
トムのようにいつの間にかいなくなった喧嘩相手も一人や二
人ではありません。
そして、つい先日、今度は自分が消えることとしました。
トムのように、ジェリーに知られることなく消えられれば良か
ったのですが、いつの間にか多くのジェリーの知るところとな
り、連日の送別会をしていただき、記念品までいただいてしま
いました。
多くのジェリーをほっぽり投げて自分だけ消えてしまって、
申し訳ない気持ちでいっぱいです。
ごめんね。多くのジェリー諸君。
そしてごめんなさい。今までいつの間にか消えていった何人か
のトムさん。ここにきて、やっとトムさんの気持ちが少しはわ
かりかけたかなあとの想いです。
しばらくして落ち着いたら、四国にでかけます。すでに鬼籍
に入られたトムさんもいるのです。88ヶ所のどこかで、トム
さんに会えるかも知れないとの想いを込めて、歩きます。
3.旅を終えての岸の報告
トムには会えなかったけど・・・
2003/ 7/ 8 12:06
6月3日から今朝まで36日間、トムに会いたい一心で歩き旅を続
けて来ました。
ごうごうと吹き荒れる室戸岬への道をワンワン泣きながら歩き
、足摺岬に向けて豪雨の中、滝のようになった山道を登り、梅
雨空の女体山越えなどつらいことが多々ありましたが、それ以
上に行く先々での多くの方々の暖かいお接待に支えられながら
トムを探して歩き通し、今朝、無事に帰ってきました。
残念ながら会いたいトムの姿には会えませんでしたが、何度か
声は聞こえました。
民宿・旅館の布団の中では一度も聞けませんでしたが、宿にた
どり着けず、お寺さんの通夜堂ですきっ腹を抱えてまどろんで
いるときや、その通夜堂も使わせてもらえず風の吹き込む東屋
で夜明けを待つ間によく聞きました。
新入社員の時に厳しく叱られ、やがて転勤して消え、定年前
に逝ってしまったトムや、同じく新人時代に指導いただき、自
分が転勤になり帰ってきたら、いなくなっていて定年後まもな
く癌に斃れたトムなどの声が確かに聞こえました。
お二人とも当方は忙しさにかまけてお葬式にも行かなかった、
いけないジェリーを今でも気にかけて、呼びかけてくれたのです。
ごめんなさい。多くのトムさん達、今度は自分がトムになる
時がまもなくやって来ます。
そうしたら今度はしっかりと姿も見えることでしょう。新人
時代同様にまたシゴイいて下さい。その日を心待ちにしてます。
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