
この山行はへなちょこ2号と3号の2名で行われた。登山前日の夕方に白馬へ車で入り、
ペンションでご一泊。天候が崩れているのが気になる。
2号の目が変にギラリと光ったのを3号は不安に思った。
なぜ、ツインルームなんだ!?
ペンションのマスターは山に登るらしい。夕食時にいろいろ話をしたが結構詳しく、
うれしい事に翌日は山は晴れるという事だった。
が、翌日は朝からシトシト小雨が降っていた。なんじゃ?
車で移動し、ゴンドラで八方尾根の下まで運んでもらう。
カッパを着るほどでもないし、着なければ濡れるしで困ったもんだ。
しばらくの間そのままで登ったが、第3ケルンを越えたあたりでカッパを着る事に。
3号はカッパが大っ嫌い。カッパを着るとアッという間にバテてしまうからだ。なぜかは知らない。
八方尾根は晴れていればそれなりに歩きやすいのかもしれないが、
雨に濡れた蛇紋岩は本当によく滑る。
歩きづらいこと、この上ない。
しばらく耐えていたが、カッパの苦しさに耐え切れず丸山ケルン手前の扇雪渓でカッパを脱ぐ事に。
小雨に濡れても、汗でぐしょ濡れになるのも変わらん。体力を失うカッパの方が不利と判断した。
その判断が功を奏して途端に元気に。
唐松岳頂上小屋に着く頃には小雨もやみ、中休止をとることにした。
周囲にいる人達の半分くらいが五竜岳を目指すようだった。
皆一様に天候が早く回復してくれる事を願っていた。
100m向こうが真っ白の世界ではおもしろくもなんともない。
軽く食事をとった後、五竜岳へ向けて出発。
まったく視界は利かない。
したがって写真も何もない。
つまらん・・・
大黒岳を越えて少し行くと、五竜山荘に到着。
この頃にはガスは出ているが、雨はずっとやんでいる。
濡れた装備を乾燥室で乾かしてさっさと夕食にかかる。
この夜は暑かった。窓を開けて寝たのだか外気が入ってくると部屋の中で白く曇っていた。
熱気ムンムンの怪しげな部屋・・・
翌日は期待通りに晴れた!
小屋から外に出ると雲海が眼下に広がっている。
朝食を済ませると出発だ。



五竜岳直下の尾根で始めてブロッケン現象を見た。
周囲の人たちも騒いでいた。
ただ皆、ブロッケンという言葉が出てこない中、2号が平然と「ベッケンバウアー」とつぶやいた。
笑いの渦に包まれた。
でも、本当に後光が差しているようだ。
まるで自分がお釈迦様にでもなったかのように。
五竜岳山頂につく頃には、尾根伝いは完全に晴れた。
下界は知らない。ハッキリしない天候だろう。
雲海の向こうにひょっこり鹿島槍ヶ岳が頭を出している。
美しい双児峰である。
今日はあの山を越えて行くのだ。


五竜岳を越えて少し行くと鎖場が現れた。
そんなに危険なポイントがあるとは思わずにこの山行を企画したが
それなりの鎖場であった。
縦方向の鎖場は恐怖感を感じないが、横方向の鎖場にはそこそこ恐怖を感じる。
つまり、荷を背負った状態で危険個所をまっすぐ歩く自信がないだけのことだ。
早い話、足腰がへなちょこって事。
一箇所、二箇所くらいならよかったのだが
割と長く続く鎖場だった。
2号と3号が「ひゃーひゃー」言いながら渡っている横を
見た感じ、ごく普通の華奢な女性がヒョイヒョイヒョイっと岩の上を飛ぶようにして
我々を追い越して行った。
これには参った。
へなちょこ山岳会としては顔を見合わせて「がっはっはっはー・・・」
と笑うしかなかった。
「まあ、あれはきっとベテランなんだよ」なーんて誤魔化しながら。
そんな危険そうな、そうでないようなポイントを抜けると
思ったよりなだらかな尾根を進む事になった。
山小屋を出発して3時間半が過ぎた頃だろうか。
尾根の先がガスで見えなくなっている手前で
黒っぽい壁面を持った山小屋が現れた。
キレット小屋である。
かなりしっかりした小屋だが、建っている場所がすごい。
八峰キレットのほんの手前、尾根のくぼんだところに建っている。
ここで昼食を取ることにした。
となりで調理を始めたベテラン中年夫婦は野菜を炒めながら焼きうどんを作り始めた。
自分達のレトルト食事と交換して欲しいと心から思った。
食事をしているすぐ隣には八峰キレットが待っている。
これを越えれば後は危険な場所はなく、なだらかな尾根を下山まで続ける事になるはずだ。
食事を始めた頃からまたガスが出始めた。
雨をもたらすようなものではないが、
展望が利かないのは尾根を歩く我々にとって非常につまらない。
食事を終えると、さっそく八峰キレットに取り付いた。
ガイドブックに書いてある程、危険は感じなかった。
時間的にも危険度もそんなに大したことは無かったように思う。
五竜岳直後の鎖場のほうがはるかに嫌だった。


八峰キレットからいったん下ってから登りきったところが鹿島槍ヶ岳 北峰山頂だった。
この時はすでにガスが一帯に立ち込めて、視界はほとんど利かない状態。
待っても晴れそうにないので吊尾根を渡って南峰に行く事にした。
南峰もやはりガスが立ち込めて視界はほとんどゼロ。
今日はおとなしく小屋でくつろいだ方が良さそうだ。
というわけで「冷池山荘」を目指す事にした。
鹿島槍ヶ岳から離れると口惜しいことに晴れ始めた。
しかし振り返ると頂上付近はガスに覆われて見えない。
「今日はダメな日だね」とあきらめる。
鹿島槍ヶ岳を離れて布引山を目指す。
この登山道は非常に快適なものだった。
ゆるやかな下りで、足元もしっかりしている。
おまけに左右の展望も利く。
布引山の近くのハイマツ帯の中で何やら動く物体が・・・
雷鳥だった。
あまり大きくないようだ。
と、そこでへなちょこ山岳会は学術的な発見を見た!
雷鳥が飛んだのだ!!!
しかしここで誤解のないように断っておくが
バッサバッサ ピャーと勢いよく飛び立ったわけではない。
バタバタと もがくようにして数メートル先にグシャっと落ちたような感じだ。
不恰好な奴・・・
思わず2人で笑ってしまった。
布引山から冷池山荘までもずっと快適な登山道が続く。
3時ごろに山荘に到着。
山荘から振り返ってみる鹿島槍ヶ岳はやはり雲の中だった。
冷池山荘前の空き地でBEERをやりながら、ウダウダ時間をつぶしていると
たくさんいたおじちゃん、おばちゃんの中の関東から来たおばちゃんと
情報交換をした。というよりおばちゃんが一方的に話し掛けてきた。
トムラウシから利尻岳まで攻めて、百名山制覇まであと少しという
とんでもないおばちゃんだった。
5時ごろに炊事場で食事を作り、BEERで優雅なお食事となった。
就寝はまるで屋根裏部屋のようなところだった。
窓際で東向きだから、ご来光が布団の中から見えるな、なーんて思いながら寝た。


翌朝、素晴らしい天候となった。
窓から朝日が差し込む前に目を覚まし、外に出るとひんやりした空気の中で
徐々に明るくなり、明るくなると同時に暖かくなるのがわかった。
昨日来た方角に目をやると 朝日を浴びてほんのりと紅くなった鹿島槍ヶ岳がそこにあった。
改めて見るとかっこいい山だ。
昨日のようにベッケンバウアー・・・
じゃなくてブロッケン現象が見えないかと、
朝日を背にいろいろな角度でポーズをとってみたが何の効果も無かった。
周囲からは 何の踊りだ? としか映らなかったかもしれない。
かっこわるー・・・


冷池山荘を出発して1時間ほど行ったところで西方に目をやると
立山・剣岳がデンと横たわっていた。(左側が立山、右側が剣岳)
文字通り横たわるといった感じで、
剣岳は、はるか彼方にあってもそのゴツい岩の頂だけで威圧感がある。
「去年はあんな山に登ったんかね!?」
と、2人で改めて感心。
爺ヶ岳手前のハイマツ帯でまたもや雷鳥発見。
あまり人間を恐れていないようだ。
Thunder Bird っていうくらいだから本当に雷を呼ぶんだろうか?


爺ヶ岳を超えて種池山荘に到着。
うぉーーー!
めっちゃんこ綺麗な山荘!
さすが出来たてホヤホヤだね。
冷池から2時間くらいの距離だからこっちまで足を伸ばせば良かったかな?


種池山荘を後にして我々は柏原新道を下っていく。
これが侮れない。
ゆるやかな下りが延々と続くのだが、地図上の距離・時間に比べて遠いような気がする。
扇沢登山口につく頃には結構疲れてしまった。
下山していた他の登山者2人と我々2人合わせて合計4人でタクシーに乗り込む。
タクシーを使って信濃大町駅に出るのに
北アルプス交通のバスを使っても、4人でタクシー代を均等割しても変わらないそうだ。
信濃大町駅から白馬駅まで大糸線でカタコト揺られていく。
我々が徒歩で2日かかった移動距離を、近代文明は20分くらいで可能にしてしまう。
近代文明、万歳!
車を八方まで取りに行くと空が曇ってきた。
夕立になりそうだ。
木崎湖近くの温泉から出ると案の定、ひどい夕立になった。
天候に関しては、やはり我々はいつもついている!
