
まずは2作品紹介します。随時更新予定です
いままで読んだ山の本の紹介をしています。
既に絶版になってしまった本もありますが、よかったら読んでみてください。
ちなみに、お薦め度は、☆5つが最高評価です。ここに載せているものは☆3つ以上のものになると思いますが。。。
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孤高の人(上・下) 新田次郎著 新潮文庫 お薦め度:☆☆☆☆☆

山が好きな人なら一度は耳にしたことがあると思いますが、昭和初期に活躍した加藤文太郎の生涯を描いた新田次郎の傑作小説。
特に、上巻の終わりに書かれている厳冬期の北アルプス横断は、事実である重みと併せて、読み応えがあります。
富山県真川から薬師岳、黒部五郎岳、三俣蓮華岳、黒岳(水晶岳)、野口五郎岳、烏帽子岳と長野県大町へ、加藤文太郎曰く
『日本海から太平洋へ...』ということになるのですが、当時単独行自体が市民権を得ていない時代であり、しかも厳冬期の北アルプスを
全ての荷を背負って横断するということは常識的には自殺行為でした。
その危険な山行を乗り越え、加藤文太郎は『不世出の登山家』『単独行の加藤文太郎』という地位を手にします。
しかし、友人の投獄、会社での人間関係、かつての恋人(片思い?)との再会と別れなど、小説ゆえに脚色ももちろんあると思いますが、
数々の苦難に悩み、そして風雪の北鎌尾根へ挑みます…
新田次郎には数多くの山を舞台にした著書がありますが、その中でも至高の作品です。
私は山を始めた高校時代によく読んだ本で何回も読んでいますが、何度読んでも、そのストーリーに引き込まれてしまいます。
また加藤文太郎自身の著書として『単独行』という本も出版されています。これは加藤文太郎自身の遺稿集とでもいうべきもので
『孤高の人』と併せて読めば、これまた最高です。
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黒部の山賊 伊藤正一著 (絶版) おすすめ度:☆☆☆☆☆

黒部源流の山々に関する本、もしくは北アルプス登山黎明期の本の中でもっとも詳しく、実体験に基づいた本です。
なにしろ著者は戦後、長野、富山、岐阜の3県にまたがる黒部源流に位置する三俣小屋の主人となり、『黒部の山賊』達と共に山を守ってきた
伊藤正一さんであり、とにかく全てが実際に起きた出来事ばかりであるため、読み進むごとにワクワクドキドキです。
私などはなぜか遭難本が好きで結構読んでいるのですが、山小屋から見た遭難の話や遭難にまつわるミステリアスな話など
ちょっと他の本にはないリアルさがあります。
本文からちょっと抜粋すると...
林平と倉繁と鬼窪の三人が棒小屋で猟をしていたある夜のこと、外は吹雪で物凄く荒れくるい、黒部の谷は底無しの奈落のように、
真暗な闇の中に落ち込んでいた。その谷の方向から”オーイ、オーイ”と呼ぶ声が盛んに聞こえてきた。
彼らの連れて行った猟犬は、その声の方向に向かって、火がついたように吠え立てた。
そのとき、倉繁が”オーイ”と返事をしてしまった。
「バカ!倉繁、化け物だぞ!」
といったが倉繁は”オーイ、オーイ”と、くり返しながら、どんどん谷の方向へ行ってしまう。
雪は深く、その先は断崖である。もちろん人間などいるはずもない。
林平と鬼窪は必死になって彼を小屋の中に引きもどした。
「あのときは倉さんあぶなかったなあ。どんどん変な方へ行ってしまうんだもの、おりゃあ、やっとつかまえていたぞよお」
「うん、あんまり呼ばれるもんだから、夢中でそっちへ行こうとしたんじゃ。俺もあんときは変だったと思って、あとで考えたらば、
あの日は喜作(喜作新道で有名な小林喜作のこと)の命日だったんじゃ」
喜作父子は何年か前に、同じ棒小屋へ猟に行っていて、なだれにやられて死んだのである。
なんでも山で”オーイ”と呼ばれたら、”オーイ”と返事をしてはいけないそうだ...それは化け物が呼んでいるのだという...
そして伊藤さん自身も同じ経験をしているそうなのだ。さすがは黒部、北アルプス最深部である。
ちなみに抜粋した本文中に出てくる遠山林平、倉繁、鬼窪、そして遠山富士弥が、『黒部の山賊』そのものである。
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