鎌尾根・鎌ヶ岳・カズラ谷(2000.10.14)
四日市市からみる鎌ヶ岳

 鈴鹿の山の中でも最もアルペン的なムードを持つ鎌ヶ岳
 今回は四日市市と鈴鹿市の境界にある「宮妻峡」から水沢峠に上がり、尾根伝いに鎌ヶ岳山頂に向かいます。

  <ルート>  
  ・宮妻峡ヒュッテ → 水沢峠 → 水沢岳 【1030m】 → 衝立岩 → 鎌尾根 → (岳峠) → 鎌ヶ岳 【1161m】
  ・鎌ヶ岳 → 岳峠 → 雲母(キララ)の分岐 → カズラ谷入り口 → 宮妻峡ヒュッテ
                          所要時間:今回は道に迷ったり、ザレ地にびびったりで約7時間
 <見所>
  @:宮妻峡・・・鈴鹿周辺は、どこへ行っても水がきれい!
  A:尾根からの展望・・・右手に四日市市から伊勢湾。遠くには知多半島。
                 左手には滋賀県側の山々越しに琵琶湖
                 正面には鎌ヶ岳・衝立岩、御在所岳、遠くに伊吹山
                 振り返ると丸く滑らかな山頂の入道ヶ岳
                 とにかく360度景色がいい!
  B:尾根の奇岩・奇石・・・花崗岩の風化でできた「衝立岩」や「きのこ岩」
                   途中の「ザレ地」や「鎖場」、「尾根の細い道」もスリル万点
  C:山頂付近の紅葉(10月末ごろ)
  D:鎌ヶ岳山頂からの眺め・・・ここから見る御在所もきれいです。振り返ると苦労して登った尾根が一望できる。


宮妻峡の駐車場
  鎌ヶ岳には宮妻峡から上ります。
  キャンプ場などもあり無料駐車場も結構広かった。
水沢峠登山口の途中
  林道を5分ほどあがったところ。
  沢の水は本当にきれいでした。
水沢峠への登山道入り口
  駐車場から5分ほどで「カズラ谷」経由の登山道が
  ありますが、ここは下山道に使い今回は更に10分
  ほど先にある水沢峠への登山道を使います。
  この道をそのまま通過すると「入道ヶ岳」へ通じます。

 

水沢峠への途中
  御在所に比べるとルートの目印(赤いテープや塗料)
  がわかりにくく、一人では心配になります。
  それでも先に通った人の足跡が残っていたので、多少
  とも安心できました。時折ルートが崩れて迂回ルート
  を取りますが通常の登山道より人の手の入った人工林
  はどこでも通れ為油断すると知らず知らずにルートを
  見失う可能性があり、注意が必要です。
水沢峠付近@
  水沢峠手前で振り返ると四日市の町がきれいに
  見えました。
 

 

水沢峠付近A
  麓から時間にして1時間弱で峠に到着しました。
  この峠は「鎌ヶ岳方面」「滋賀県側」「入道ヶ岳」などへ
  の分岐点です。
  但し、景色的には、ここはあまりよくありません。
  ここで滋賀県側から登ってきたおじさんに会いました。
←水沢峠付近B                  ↑  
 水沢岳頂上への上り口。結構急斜面です。    
真中の岩が大体人の大きさです。        
               水沢峠付近C  |
  苦労した最初の”取り付き”を上り、振り返ると入道ヶ岳がきれいに見えました。 
【前兆1】
  さて、最初のトラブルです。水沢岳への取り付きは急な斜面で、大変登り難い。おまけに途中でルートを見誤り、
  砂地(ザレ)に入り込みビビッてしまい、”撤退”することにしましたが、とにかく足場が悪く、戻ることもままならない
  状況になってしまいました。恐怖と緊張で一気に疲れてしまいました。
  なんとか、峠まで降りると先ほどのおじさんが「いけるとこまで行ってみる」と上り始めました。登る様子を見ている
  と、私が苦労して登ったルートの横の岩場をすいすいと登っていきます。
  要は、単に私の経験不足でミスコースをしただけで、本当はもっと楽に登れたのでした。
  ということで、私もおじさんの取ったコースを使って何とか登り始めました。

水沢岳手前@
  ほっとしたのもつかの間。目の前にザレた細い尾根が...
  たかだか10mほどですがやっぱり怖い。
  と立ち止まっていると、前方から犬を連れた女性が平気
  で歩いてきました。ビビッて恥ずかしい...
水沢岳手前A
  わたりきったところで四日市方面を見ると視界を遮る
  ものも無く、大変きれいでした。
 
 
水沢岳山頂
  水沢岳山頂は尾根の途中の小さなスペースで、木が
  多く景色はあまりよくありません。
  よく見ると木々の隙間から目的地「鎌ヶ岳」が見えます。
水沢岳山頂付近
  標識に従って進むと目の前に鎌ヶ岳がはっきり見え
  ました。
 
【前兆2】
  尾根づたいに進むと小さな標識らしきものがありましたがほとんど字も読めません。
  そのまましばらく進みましたが、ふと見ると鎌ヶ岳が右手の方向に見えます。
  あれ?っと思い、先ほどの標識らしきところまで戻ると標識のそばの木に「鎌ヶ岳は右へ」という標識がありました。
  (もっと見やすいところに書いといてよ!)
きのこ岩@
  水沢岳の頂上を過ぎると下りになります。
  目の前の大きな木はなくなり、更に鎌ヶ岳までの
  尾根道がはっきりわかります。
  先は長いけど天気もいいので楽しみです。
きのこ岩A
  ところが、この下りはクセモノ。「きのこ岩」と呼ばれる
  花崗岩の風化した岩がごろごろしており、これがまた
  急斜面。
  脇の木の枝につかまりながら徐々に下山しました。
【前兆3】
  調子よく岩場の下までくると、そのまま急斜面の沢がはるか下まで続いていました。「どうやって降りるんだ?」と
  不安になりながら、先ほど同様沢沿いの木の枝につかまって10mほど降りたところで、どうも様子が変。
  やはり誰も通った形跡が無いのです。沢も急斜面ですし、人が通るとは思えません。第一鎌ヶ岳へは尾根づたいに
  行くはずです。”これはまずい!”とまた上り始めましたが、これが急斜面でなかなか登れない。
  やっとのことで岩場まで戻りよく見ると、沢の頂上で沢を横切るように足跡があるではありませんか!
  ここでも危うくミスコースをするところでした。周りの景色をよく見ておいてよかったとつくづく思いました。


 
屏風岩への尾根    前方に次の目標「屏風岩」と目的地「鎌ヶ岳」が見えます。
屏風岩@
屏風岩の手前に近づくと登山道もはっきり見えます。
中央の白ハゲの真中の白い道を通って岩場の頂上に上ります。
頂上の手前までは思ったより簡単に取り着けましたが、最後の5mくらい
の岩場の上がり方が分かりません。
岩場の下を右に探るとすぐ断崖絶壁になり、垂直な壁を登るのは困難です。左に行ってみると、そこに鎖がぶら下がっており、岩の隙間に沿って
頂上に上がるルートがありました。
屏風岩A
  頂上は4畳半ほどの広さがあり、もう上り始めて3時間
  ほどたっておりましたので、ここで昼食としました。
屏風岩B
  さあ後半です。鎌ヶ岳は目の前。どんどん先に進みましょう。
屏風岩C
  尾根づたいの道はアップダウンの連続で大変疲れます。
  ここを過ぎればもう目の前に「鎌ヶ岳」が見え、頂上には人影も見え始めました。

鎌ヶ岳@
  さあ、鎌ヶ岳の頂上もここまで 
  くれば後15分ほど。
鎌ヶ岳A
  山頂のほんの手前の広場です。
  10人ほどの人が山頂からの景色を楽しんでいました。
  ここから見ると今まで通ってきた尾根や遠くに「きのこ岩」の水沢岳が見えます。

鎌ヶ岳山頂
  山頂は先ほどの広場から数mのところ、御在所側にあり
  ます。背景の山は御在所です。
  ちょうど14:00。4時間半かかったことになります。
鎌ヶ岳から見る御在所
  ロープウェイ近くの岩場が「中道」で「キレット」「おばれ石」などが見えます。
  しばらく休んで14:30ごろ下山することにします。
【前兆5】
  鎌ヶ岳から降りる途中、いきなりミスコースし、変だと思いながらも垂直な岩場を降りてしまいました。
  すぐに気が付きコースに復帰できましたが、もう少し無理して降りていたら転落していたかもしれません。
【前兆6】
  コースに復帰してまもなく今度はガレ沢(長石谷方面)に下りてしまい、ここでもすぐに変だと気が付き、
  何とかコース復帰できました。「変だ」と思ったのは、登ったときに通って記憶が無かったからで、そうで無ければ
  絶対気が付きませんでした。
 岳峠
  ガイドブックではカズラ谷コースなら2時間程度で宮妻口まで
  いけそうです。暗くなるまでに帰りたいので先を急ぎます。
カズラ谷コース

  途中はまったく景色も悪く、黙々と降りる
  のみです。
  どんどん下山します。一本道で迷うなんて
  思えませんでした。
  が、途中で完全に道が分からなくなりまし
  た。

  近くに赤いテープがあるのでこの道が登山
  道であることは間違いないのですが、
  この先の降りるルートが見当たりません。
  真っ直ぐ尾根つたいには道も無く、逆に
  右も左も沢に降りられそうですがどっちが
  正しいのかどうかが分かりません。

  まだ下山開始から2〜30分のところです。

【遭難!?】

  今思い出してもよく生きて帰れたと思います。
  登りの場合、目標が目の前に見えており、ミスコースも早めに気が付きましたが、くだりでは目的地が
  見えないので、つい沢に下りていけばよい、とおもってしまいました。
  後でガイドブックをよく読むと、”カズラ谷コース”といってもほとんど尾根を通る、と書いてありま
  したが、
   ・その時は気が動転していたため、沢を降りること以外考えられなかった
   ・夕方で暗くなるまでに下山したいという気持ちが強かった
   ・御在所・釈迦とここ数週間で何度か山を経験しており、まあ何とかなるだろうと気楽に考えたこと
   ・もう一度岳峠まで戻って下山コースを変えようか迷いましたがここまで降りてきた道が急だったので、
    また戻るのが嫌だった
  など、多くに要因はあるのでしょうが、とにかく下山ルートを見つけられず、足跡らしきものを頼りに
  一気に沢に降りました。(今思うと、自分が歩き回った痕だったかも)
  きっと、よく探せば尾根に出る細い登りの道があったのでしょう。

  下りのルートは道も無く、枯れ葉の急坂を一気に滑り落ちるように降りていきました。
  途中の木は腐っており、つかんでもぼろぼろだったり、根っこから抜けたりで、だんだん恐怖でのどが
  からからになります。
  それでもとにかく下っていくと小さな沢に出ました。なんとかこのまま降りれば宮妻峡に出られるのでは、
  という気持ちで沢つたいに進んでいくと、沢が5〜10mくらいの何段かの滝になっています。
  もう沢つたいには降りられず、また尾根に向かって登っていきました

  途中は道も無く急坂で、木の隙間をくぐるのも荷物が邪魔で一気に体力を消耗します。
  小枝がめがねに当たってめがねを落としたり、足元の浮石を踏んで滑り落ちたりで、もう気持ちはあせる
  ばかり。とにかく滝を越えるとまた沢に下り、また滝が出てくると山を登るということの繰り返しです。
  沢を一旦あきらめて尾根を越えると新しい沢が出てきました。もう完全に自分の位置を見失いました。

  怖かったのは、急斜面を降りて沢に出たものの、また滝が出てきて今度は周辺が急な岩場でもう登る
  ことも降りることもできない、と思ったときです。
  それでも落ちついて滝の周辺を見ると、何とか登れそうな場所を見つけられましたが、20mくらの岩場
  で、土からでた根っこにつかまって急斜面を横ばいに伝って行くときは「遭難した人は、こうやって滝に
  落ちたりして死ぬんだろうな」と思いました。

  この後も同じようなことの繰り返しで足がつり始めてもう動けなくなり”本当に遭難したんだ”と実感
  しました。覚悟を決めて携帯電話から警察に電話をしようと思いましたが電池切れで通信できず、
  おまけに時計代わりに使っていたので時間もわかりません。空は明るいのですが、太陽はもう尾根に
  隠れ始めています。もう下手に動かず平坦なところを探して野宿しようと腹をくくりました。

  倒木の近くに1m四方ほどのスペースを見つけ、一気に横になり、しばらく寝ていましたが、明るいうちに
  自分の位置を確認しておこうと再度ガイドブックを読み返しました。
  沢から少しでも明るい尾根に向かって登ったため、尾根越しに回りの山が見えました。この沢がカズラ谷
  なら向こうの尾根が登山ルートのはず。あそこの山が水沢岳でこっちが入道ヶ岳など、何度もガイドブック
  だけは読んでいたので、山の形からおおよその位置がわかり、方向的には間違いないことは確信しま
  したが、再度登山道を探す気力はもうありません。

  それでもしばらく休むと「多分結構近くまで降りているに違いない」とかってに思い込み、少しでも明るい
  うちに降りられるとこまで降りようと再度動き始めました。

  今度は、なるべく沢に下りず山の斜面を歩いていくと、幸いにも木が伐採されたところに出ました
  ”助かった”と思ったのもつかの間、あちらこちらに伐採された木が道を塞ぐように倒れており、どうにも
  先に進めなくなりました
  足がつっているのでどうしても余計に動きたくなく、ついつい道が分からなくなると沢の方に降りたくなり、
  結局また斜面を登って体力を使うという典型的なパターンです。

  もうかなり気も弱くなり”道がわからーん”と本気で叫んでいました。
  当然返事も無く、またあきらめかけて休憩していると、ジャリジャリという車がオフロードを走る音がしまし
  た。 (気のせいかもしれませんがそう思うしかありません。)
  はっとして、再度下山道を探すためにその場でじっと倒木の隙間などを見ていると、なんとなく”あれが
  道かな?”というルートらしきものを見つけました
  もう、いくしかありません。太陽は完全に稜線に沈んでいます。
  とにかく暗くなる前に、という気持ちで、倒木の隙間をくぐってどんどん進みました。
  道幅は30センチほどですが明らかに人が通った道です。おそらく営林署の方が仕事で使った道でしょう。

  再度沢が近づいたとき、目の前の木の枝に赤いテープがありました。登山道に出たのです。
  「あー、助かったあ」と安堵の声が出てしまいました。

  しばらく歩いて行くと人が渓流釣りをしています。
  安堵感から「駐車場は近いですか?」と声をかけてしまいました。先ほどまでの事が嘘のようです。
  10分ほどで「カズラ谷登山道」入り口に出ました。ここから駐車場まで5分程度。

  駐車場で、汗と泥でぐっしょりになった服を着替え、車のエンジンをかけると16:30でした。
  頂上から2時間!?ガイドブックを読み直すと本当なら1時間で降りられたところを2時間かかったこと
  になります。でも、私にとっては何時間も山中をさまよった気がします。頂上からほとんど道無き
  道を降りてきたのですから。

  とにかく山がそう深くなく、下山道を短時間なコースにしたのが幸いしました。
  今後はもっと余裕を持った計画で、単独登山は控えます...。

夕闇の鎌ヶ岳
  ほとんど放心状態で町に戻りました。
  コンビニで飲み物を買い、振り返ると夕闇の鎌ヶ岳が
  見えました。
  ほんの数十分前のいろんなことが頭をよぎりました。
P.S.
  家に帰っても、疲れてよく寝られるかと思ったら、緊張のためかなかなか寝付けませんでした。

  また、こんなに天気がよかったのに翌日は「雨」
  野宿していたら本当にどうなっていたことか...。
  とにかく笑い話で終わってよかった...。