有袋栽培の起こりは、病害虫の防除が主目的であったが、有効な農薬が販売されるようになって目的が変わってきた。
リンゴのように着色を良くするために使用される事は稀で、山間地の晩生種ではヤガ(夜蛾)やハチの吸汁害から守るためであったり(行動範囲が広いため、農薬の散布は役に立たない)、降雨による裂果や雨焼けと呼ばれる果皮の褐変を防ぐ目的が多くなった。
また、特殊な例として有毛の黄肉種では、着色させないために用いられる。
【材料】
使用される紙の種類により、新聞袋・電話帳袋・特漉き袋などに分けられる。
新聞紙は古紙ではなく、余分に印刷されて販売される事の無かったものであることが多く、価格は最も安い。
電話帳用紙も電話帳を回収したものではなく、NTTが製紙メーカーに発注した時に余分に作ってもらうそうである。以前は街頭の電話ボックスに備えるため、耐水性の高い良質な紙であったが、携帯電話の普及によって撤去されたため不用となり、質が低下して風雨に耐えない事が多くなったと云う噂がある(真相不明)。
製品の主流は製袋メーカーが独自に発注した専用紙(特漉き紙)で、用途・作業性・耐候性などに考慮した様々な種類がある。
際立った特殊性のあるものでは、耐水性のあるハトロン紙や、撥水性のワックス紙(ワックスに浸漬した紙)も使用される。
これらに対して、乾性油の含浸は製袋後に個人でも可能な加工で、飛躍的に耐候性を増す。
乾性油とは不飽和脂肪酸を多く含んだひまし油や亜麻仁油の事で、酸化して硬い皮膜を作るので、ペンキの材料として使われてきた。加熱によってより酸化し易くしたのが「ボイル油」で、これに顔料を混ぜたのがペンキの始まり。
【袋の内側/2重袋の内袋】
袋の内側は、無地のものと、黒く着色した「内黒袋」がある。
2重袋の場合、外袋は内黒の事が多く、内袋はワックスに浸漬した半透明のものが使用される事が多い。
内袋が赤や濃緑などに着色されたものは、除袋時の日焼け防止であって、着色を良くするためのものではないが、各地で色着きの良さを比較した農家の報告が後を絶たない。
【固定方法】
袋の固定には、袋を止めるための針金が付いたものが主流で、小型のものでは郵便封筒のように粘着剤の付いたフラップ式もある。
【口の形状】
外形では、袋の口が平らに切り落とされたものとV字の切れ込みがあるものに大別される。
切り口が平らなものでは、口を開けるのが楽なように片側が低くなっていたり浅い切れ込みが入っていたりと工夫のされたものが多い。
V字の切れ込みは、果梗の短いモモ専用に工夫されたもので、りんご・なしなどの果梗が長い果実には必要が無い。
【ミシン線】
除袋を楽にするためミシン線が入りの製品があるが、台風などに遭うと破れてしまう事がある。
同じメーカーの同一製品であっても、「もっと破り易くして欲しい」など、大口ユーザーからの要望に対応して強度は随時変更されるので、確かめるのは難しい事もある。
【その他】
特殊な構造のものでは、果実の肥大に伴って底部が開く「自開袋」や、雨焼け防止専用で収穫直前に掛ける半透明の「底なし袋」がある(構造上、袋ではないのでスカートと云う事もある)。
通常は、除袋しないと食味が低下するが、「黄金桃」に代表される有毛の黄肉腫では、商習慣により外皮が赤く着色したものは障害果扱いとなってしまう為、収穫前に破れない十分な大きさの袋を使用する。、
肥大が進むにつれて表皮に蓄積する葉緑素は遮光してもなくならないため、着色促進を兼ねる場合は早い方が効果が高いし、果実が小さな時に行った方が作業もはかどる。
時期が遅いほど袋掛けの時間は長く掛かるので、余計に忙しくなる筈であるが、「忙しくて、そんなに早く出来ない」と反論されるのは何故であろうか?
早期に被袋すると生理落果が増えるというのは、何の根拠もないデマで、人為的な作業ミスである事が多い。
多くの農家では、袋掛けに先立って”大好きな”早朝草刈りが行われ、朝露の消える頃に袋掛け作業に取り掛かる事が多い。
穿孔病菌(モモ穿孔細菌病および類似の感染病)が幼果期に感染すると病斑を作らずに落果するためと考えられ、実際に草刈り前後に分けて袋掛けをした実験では、袋内の落果が皆無になったのに較べ、草刈り後に行ったものは年によって1〜3割の袋内落果が起こった。
ちなみに、満開後1箇月を過ぎると感染しても徐々に落果が減り、落果を免れたものは感染時期が早いほど巨大な病斑を形成するようになる。
いくら袋掛けの時期を遅らせても、袋掛け作業のためという名目で、早朝の濡れた草を刈り飛ばせば、被害は免れないので注意を要する。
事前に摘果を行っておいた方が作業がはかどる。
地方によって、また人によって流儀があるので、・・・
前掛けなどを使って袋を持ち歩けるようにする。格納の際は、留め金の向きがいつも同じになるようにしないと、作業時に混乱する。
対象の果実に傷害がないか確認する。
周囲の別の果実との距離や、粗密の状態も確認し、最終選抜を行う。
幼果の状態では判りにくかった着果過多も、袋を掛け終えると一目瞭然になる。
留め金の入った場所が同じ向きになるように、同じ側の手で取り出す。
慣れてきてからでよいが、1枚ずつ取り出すのではなく、数枚同時に取り出して保持すると早く出来る。
袋の口を開けて果実に被せる
袋の口を寄せて針金部分を折る
亜流2(2重折り)
亜流3(縦横折り)
内袋が乳白色の2重袋を使用した場合、外袋のみ除袋して内袋を残したまま収穫する事がある。
主たる理由は、雨焼けの防止に役立つと云うものだが、冬の剪定の時に切り落とせば除袋の労力を軽減できると言い張るグループもある。
収穫の目安になる梗窪部周辺が覆われているため、適期の判定が難しく、もぎ取りの作業にも無駄な手間が掛かり、押し傷が発生しやすくなるなど、根拠とはならない。
裂果や雨焼けは、ホウ素とカルシウムの欠乏で促進される障害で、これら要素の吸収を助けたり、邪魔しない管理によってほぼ完全に回避できる。
除袋後に園内に放置された場合も、風で飛ばされて周囲に迷惑が掛かる。
自分の畑だけ綺麗になれば良いなどというのは論外だが、いつの間にかなくなるのを「土に還った」と思い込んでいるファンシーな農家も多い。
樹上に残したまま剪定時に回収する計画の場合も、回収を待たずに風で飛散する事が多く、周囲にとっては非常に迷惑なので、是非とも考え直して欲しい。
一番迷惑も手間の掛からない方法は、採収かごなどを使って除袋と同時に回収する方法だと思う。
このため、除袋作業は集中して行うべきである。
留め金に使用する針金は、#24≒Φ0.55mm(24番線、または直径0.55mm)を基準に好みで選ぶ。針金を使用せずにホチキス留めにすることも可能だが、袋掛けの時に余計な道具を持たなければならないので煩雑となる。何れにしても好みで選んで良い。
針金は、一旦広い場所(廊下など)で伸ばしてから強く引っ張った状態でタオルなどを当てて軽く曲げながら擦るか、バーナーで加熱すると伸ばす事が出来る。伸ばしてから3〜4cm に細断する