2007/03/25,5/31
【時期と方法】
開花が近づいた頃の方が芽が大きくなって作業しやすいが、剪定の終了直後、できるだけ早く行うのが望ましい。
早い時期であれば、残す芽の大小の影響は開花時までになくなるので留意しなくても良いが、摘蕾が遅れて花弁が露出する頃になると蕾の大小が果実の肥大に影響してくるようです。
大きな芽を意識的に落としてやると、中ぐらいの一番多いサイズのモノを残す事になり、飛びぬけて小さな芽は最後まで小さな果実で終るため、後の摘果で落とす事になり、果実の大きさや熟期が揃って一斉に収穫できるので選果作業もはかどります。
大きな芽は開花の時期も早く、異常果になる確率が高く、実止まりしない事も多いのですが、長期間収穫したい時や、収穫後の調整が間に合わなくなるなどの理由で一斉に熟したのでは困る場合、大さな芽だけを意識的に残してやると、熟期がバラ付くようになります。
状況によってはどちらが良いとも云えず、好みで選ぶ問題です。
【摘蕾の程度】
剪定の程度によって摘蕾の程度も変わります。
整枝と剪定は目的の異なった作業で、新しく出た枝が伸びる空間を確保する整枝に対して、着果を制限するための作業が剪定です。
【異常蕾の観察】
開花前に雌しべだけが露出する蕾が見られたら、ホウ素の欠乏を疑います。
軽度の欠乏であれば開花の数日前に露出してきますが、欠乏度が進行すると花弁が露出・着色する前の 5mm 未満の蕾の状態で露出するようになります。
多くの場合、発芽前に石灰の投入を行った所為で、ホウ素が不溶化したのが原因なので、ホウ素入り資材の投入は土壌pH が低下した時に過剰症を起こす危険を伴います。
露出時期が早くなるにしたがって実止まりが悪くなるので、石灰投入の時期を開花後に遅らせ、ホウ素入り資材を投入するなどの対策が有効です。
間に合わない場合は、ホウ酸やホウ砂などを 3000〜5000倍にして散布しますが、開花が始まってからでも有効です。
【摘蕾と同時に行う作業】
・越冬害虫の処理
・幹の手当て
・剪定の修正
開花したばかりの桃の花は白か、薄いピンク色ですが、花弁に赤味のある品種では開花後の時間が経つにつれて色が濃くなります。
授粉を数回に分けて行う場合、色の違いを目安にすると2重交配を減らす事が出来ます。
硬核期前に1回目の摘果を完了させること。
硬核期を過ぎてからの摘果では、摘果した幼果が長期間園内に残るので、作業中に踏んで捻挫したり、伝染病の温床となる。
残す果実の向きは、肥大して下垂したときの様子を想像しながら行う。
上位枝での上向き果は、裂果や日焼け果の発生が増えるで落とした方が良いが、果実の重みで枝が下垂すると、横向きの姿になるし、下向きで残したものも他の果実や枝とぶつかったり、主枝の陰になって着色できなくなることもある。
シルバーマルチの使用を前提とした場合、全て下向きにしても構わないが、最下段の幹付近では日陰になってしまうので、上向きが必須のこともある。
シルバーマルチの効果は、概ね地上高2mまでなので、地面に立って手の届かない場所の果実は敷設の有無を考慮しなくて良い。
上枝・下枝などの呼称は、状況によって地上からの高さではなく、さらに上に枝があって覆われていれば下枝として扱わなければならない。
残す果実の周囲に、希望するサイズに達した時ぶつかって傷を付ける恐れのある枝は掻き取る。
花殻(冠状の雄しべの残骸)はできるだけ取り除いた方が良いと云われ、カビが発生して腐敗に至らなくても煤が残る場合がある。
果実が大きくなると除去が難しくなるので、「あとで・・・」等と考えずに無駄を承知で予備摘果の時から実行する。
花ガラを除去するとシンクイムシが侵入し易くなる(取らない方が良い)と云う"ネタ"は、信憑性が薄い。シンクイムシの多発年と花ガラ除去の実行が偶然重なっただけと考えられるが、追試中。
摘果痕(果梗)も果実の肥大に伴って太くなり、肥大した果実に突き刺さって傷となったり・皮が破れて腐敗の原因となる。
硬核期以降の摘果では木化して翌年以降まで脱落せずに残ってしまう。
受精直後はどの果実にも2つの胚(幼い種子)が存在するが、落花から2週間もすると片方が萎縮して1つだけのなるのが正常で、2つとも育ってしまったものを双胚果と言う。
本来は片方が死んでしまう運命だったものが、ある程度育ってしまうと片方ではなく両方とも死んでしまうことがあり、果実の生育が止まって落果するため、摘果の過程で取り除くのが安全。
硬核期を無事過ぎてしまえば、概ねそのまま肥大して収穫時期を迎えるが、核割れを起こしやすかったり、途中で胚の片方が死んでしまった場合にも異常成熟して着色の途中で柔らかくなるなるなどの障害が多いので、できる限り摘除する。
通常、双胚果は肥大が早く、果形も正常化が扁平なのに較べて球形に近くなる。果形の差異は品種差があるので、必ず作業前や別の品種に取り掛かる前に、割って双胚果率や果形の特徴を確認すること。観察は果実中央部を真横に裁断して行い、無作為に10果以上観察するが、双胚果の果形の特徴を掴むためにはある程度予測して正誤の判定をする訓練も必要。
開花から1ヶ月を過ぎないと正常果との見分けが難しいので、この間に行う摘果は、極端な変形や明らかに小さな遅咲きのものを取り除く時以外、ランダムに行い、わずかに大きいものだけを選んで残したりすると「双胚果しか残らなかった」と云う結果になることがある。
通常、満開から2ヶ月経過した頃の殻が木化する時期を硬核期と言い、この時期に果肉部分の成長が盛んだと柔軟性を失った殻の縫合部から裂開してしまう「核割れ」と呼ばれる障害が起こる事がある。
核割れを起こすと胚が壊死しなくても果実が変形したり、果梗付近が裂開して雨水などの浸入によって腐敗する確率が高くなる。
摘蕾や摘果が核割れの原因とする説もあるが、摘果を遅らせる事で肥大を制限し、収穫時に200g未満であれば外観上の変形や果梗付近の裂開は起こらないだけという話。通常は果肉に渋みが付くなど商品として難を生じるが「客を騙して買わせる事ができる」というのなら仕方が無い。
従来は、硬核期に摘果を行うと果実の肥大が進んで割れやすくなる(のかもしれない)と言われていたが、摘果との相関は低く、潅水や草刈りの影響が大きい事がわかった。
汁液中の濃度を追跡したところ、カルシウムとホウ素の濃度が低下した時に果実が肥大しながら硬核期に入るという条件が揃った時には、9割以上が核割れとなる。
硬核期の間だけ摘果を行わずにいても肥大は止められないので、カルシウムとホウ素の体内濃度を低下させない管理の他、対策は無いと考えられる。
潅水では、どんな方法で行っても回数に応じて確実に核割れが増え、少量ずつ連日行った場合に絶望的な被害となる。
各産地で作成されている指導要領の通り30mm以上の量を与え、潅水の間隔を1週間以上あける事。
潅水が必要な時は暑い日が続くため、作業者が涼しむための水遊びに陥りやすく、他の作業を放棄して潅水ホースを手持ちして散水する場合がある。
この方法では、作業者が飽きてしまうので、土の表面を濡らしただけの少量潅水となり、すぐに乾いてしまうため、連日の繰り返しとなってしまう。
試みに、9割以上の核割れを発生させたのと同じ作業者・同じ潅水方法で塩化カルシウムとホウ酸を使い、液肥混入機を使用して、各々1ppm:0.1ppm となるように混入した灌漑用水を使った場合、核割れの発生率を3割以下にする事ができた。
草刈りを行った場合も、直後から1週間くらいの期間に徐々に汁液中のカルシウムとホウ素の濃度低下が起こり、その後2週間くらいで回復する事がわかった。
(間違い作業1) 晴天の続く時期に、水分の損失を防ぐためと称して草刈りを薦められる事があるが、露出した地表は高温になり易いため、ヘア・ドライヤーを当ててで乾かしたのと同じ効果で乾燥が速まる事が多い。
(間違い作業2) 殻の硬化が始まったのを確認して作業を中断する事が多いが、直前まで行ったのでは間に合わない。満開後40日を目安に硬核期管理に入るのが望ましい。
(間違い作業3) シルバーポリマルチを敷設する場合、敷設後の作業者が暑くなるからと云う理由で、樹体も暑くなるだろうからと敷設を遅らせることがあるが、草刈りをしてしまった場合は地温が上昇して、水冷方式を採用している作物は高温の水で冷却しなければならなくなる。
草刈りは省略して敷設するか、どうしても刈りたい場合は刈り取り直後に敷設する。
(教訓)指導員の先生に逆らって、敢えてこの時期に摘果を強行する必要はありませんが、暇になったからと言って草刈りや潅水に励むのだけはやめましょうね。
核割れは、硬核期の終了後には発生しないが、一部の産地では長い間「硬核期だけに発生する障害」との思い込みから、殻の障害が原因で起こる成熟期の着色不良や果肉の異常軟化は気象によるものとして処理されていたらしい。
硬核期に起こる核割れは縫合線に沿って縦に割れるが、落花後2週後くらいから発生する硬核期前の核割れでは横に割れるのが特徴。
胚(種の中身)に養分を送る管は、核の中を通っているので、核割れが起こると胚は死んでしまうが、「あかつき」や「川中島白鳳」のような品種では正常に肥大して着色するため、外観では見分けられず、食味は劣るが着色しやすい品種なので早採りすれば「堅くて日持ちのいい」モモとして流通させる事ができる。
出荷は可能でも不味いので、評判を落とさぬようにご用心。
核障害の発生については、
「モモの硬核期前に発生する核割れ」を参照。
食味は劣っても糖度の高いモモを作る方法(←もちろん皮肉 ^^;)は「糖度計は塩と砂糖の区別が付かない」を参照
「短果枝」とか「下り枝」に良い実が付くというのは全くのガセです。
もともとの話は、収穫時の果実重量と周囲の枝の様子との関係だったのですが、いつの間にか前年の枝の伸び方と当年の果実の肥大と云う話にスリ替わったようです。
そのような枝に付いた実が良いのではなく、果実が育つ時に周囲に徒長枝が発生して果実の肥大を阻害しなければ大きな実になりやすいという意味が逆転したものです。
収穫間近の状態を見て、それが下垂した枝なのは結果であって、果実の重みで下がっただけです。徒長枝のように生育旺盛な枝は太って硬くなるので下がらないだけです。
大きな実の付いた周囲に短果枝が多いのも同じで、前年長果枝であったものが、頂芽だけ伸びて側芽が短果枝になった場合と、前年に着果させた枝が衰弱したために伸びずに短果枝になってしまったのとでは全く違う結果になります。
冬の剪定直後の樹形だけ重視して、間引き中心の剪定を行うと結果枝が老化して新梢も短くなりますが、肥大にも影響して小さくなります。
繰り返しますが、短果枝に付いた果実が良いのではなく、徒長枝とならず短果枝で終った枝は効率よく果実に養分が分配された・・・と云う結果論です。
・リン酸
リン酸は、欠乏した後に施肥などで環境が回復すると異常吸収する特性があり、異常な細胞分裂が起こって茎葉や果実が変形する。
双胚果は、発芽前の体内リン酸濃度が低い時に多発し、主として収穫後から落葉前の管理ミスによるリン酸の貯蔵量不足が、翌春の施肥などによって急激に解消された時に発生する疑いが強い。
双子果は前年に行われる花成途中の障害で、発生数も少なく、外観で容易に判別出来る為に問題となる事は少ない。
【写真】開花期の2重雌芯花と双子果(左:外観 右:切断面)
双子果を摘果せずに残した場合、片方だけが萎縮・壊死して腐敗・脱落してしまう事が多く、双子果実として収穫できるものは少ない。
・カルシウムとホウ素
気象不順や硬核期の摘果によって発生するという従来の説は根拠がない。体内で再移動しにくいカルシウムとホウ素の吸収が衰えると一時的な欠乏を起こして発生し易くなる。潅水や除草などの管理ミスによる事が多い。
収穫時の枝オセ(枝による押し傷)発生は、果形や果梗の長さによって助長される。
・写真は亜鉛の欠乏で果梗が短くなったもの(品種:川中島白桃)
果梗長が3mm以下になったら、硫酸亜鉛などの資材投入が必要。
・摘蕾や摘花が不十分だと幼果の縦伸長が不足し、最終肥大期に果実の尻部が盛り上って来るので、収穫時に傷つけやすくなる。
また、開花前に亜鉛が欠乏すると果梗が短くなるばかりでなく、扁平果になり易く、枝との接触が増えるので枝オセの発生を助長する。
一般には収穫時に果梗付近の果皮や果肉が剥けてしまう障害を指すが、「ゆうぞら」など特定の品種では、収穫前に果梗の木部が果実から離れてしまい、周囲の果肉が肥厚して落果しない状態になる事があり、収穫時に果肉が傷付く事が多い。この果実は渋みがあってすこぶる不味いが、着色するので特選品として流通してしまう事もある。
収穫後の果梗痕は、正常果では平らになっているが、異常果では半球状に盛り上っており、核に続く維管束が離れた後も成長していた事が伺える。
このような果実をもぎ取る前に軽く押し上げてみると、隙間の分だけ果梗が果実内に入っていく様子も見る事が出来る。
左は、果梗付近の果肉が取れてしまったもの。果梗が離れる前に採ったので離層面はまだ白い
右は、果梗痕が果肉に埋もれた状態のもの。果梗痕は既に褐変している。
果肉に渋みがあるほか、着色前から萎びたような状態で、掴むと空気の抜けたゴム球のようにフワフワしているが、力を入れても押し傷にならない。
核果類は幹や根が腐って出来た空洞に新しい根が入り込んで一次的に旺盛な伸長を見ることがある。
中心部が早く腐り、表皮側が遅くまで残る事が多いため、入り込んだ根は分岐せず、細根も少ないまま旺盛に伸長する。胴吹き枝が発生して1年目の伸長は3mに達する事もあるが、細根は少なく、古い根の外(土)と接触していないため、施肥しても吸収できない。
こうした種類の枝は3年以上(5年が望ましい)古い枝と共存させてから独り立ちさせる必要があり、主枝や結果枝の更新と称してすぐに切り戻すと、直後に枯れてしまう事が多い。(参照→モモの剪定)
核割れなどに伴って胚が壊死すると収穫期になっても着色せずに軟化する事が多いが、「あかつき」など一部の品種では、平年であれば正常果と区別できない外観で収穫出来る為、産地での評判が良い(見た目が良いのに不味い物が混じるので、消費者の評判は別もの)
胚が壊死しても着色する品種であっても、着色の時期が遅れるので過熟気味になってから収穫されることが多く、「日持ちが悪い」と云われる事になる。
完熟して柔らかくなってからの方が美味しいという産地の常識に対して、「硬い桃が食べたい」と云う消費者が居るのを無知と決め付けるのは間違いで、収穫から日が経っていないのに柔らかくなったものは不味い可能性が高いせいもある事を留意されたい。
本来であれば、障害を持つと着色し難くなる品種は美味・不味の区別が容易なので、見た目と味の解離がなく、消費者を騙す事のない良い品種なのだが、食味と外観が一致しない品種の登場で、産地と消費地での騙し合いになってしまったのは残念な事と思う。