ガセネタ・コレクション(農業)
注意! 以下の表題は一般流通している伝説です。要約ではありません。
INDEX
- 塩化カリよりも硫酸カリの方が吸収されやすい
- グリホサート剤(ラウンドアップ、三共の草枯らしなどの除草剤)
- BT剤
- 農薬を3剤以上混用するときは展着剤が要らない
- C4植物は大気中のCO2濃度低下に適応して登場した
- 霜害を防ぐには、草を刈り取った方が良い
- 気温2℃で降霜が起こるのは放射冷却現象
- 枝打ちと節穴
- 樹形
- 整枝と剪定
- 2年草
- りんご・リンゴ・林檎
- サクランボ・桜桃(おうとう)
- 根圏・根域
- 糖度計(糖度と糖分含量)
- 桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿
- チッ素は葉肥、リン酸は実肥、カリは根肥
- 判定:ウソ
- 農業技術体系・土肥編(農文協)、資材業者の宣伝集より採収.( あまりにも気の毒なので、掲載ページ数と業者名は省略。)
- 東大出版会・UP BIOLOGY-14 「植物の養分吸収」を読んだという上記の筆者が、ドンナン平衡を簡単に解説すると、表題のようになるそうである。
- ドンナン平衡とは硫酸カリの吸収が優れていると言う理論ではない。
「植物の養分吸収」では、解説の為に核となる熱力学の方程式に実際の数字を入れて計算例を示している。
想像するに、1モル(mol)の塩化カリが電離すると1モルのカリウムイオンが出来、1モルの硫酸カリからは2モルのカリウムイオンが出るのを知らないため、同じ1モルどうし(重量で比較すると2倍以上の差がある)で比較して2倍も吸収できるように錯覚したのではないかと推測される。(化学式は原子や分子同士の反応する個数の比をあらわすので、質量の比を知りたければ個別に計算しなければならない)
現実には副成分の違いによってカリウムイオンの配置は変化するが、荷電した土壌粒子もカリウムイオンの挙動に影響(一般には「肥料の保持機能」〜土も、根と同じようにカリを吸収する)するので、配置の違いは無くなり、副成分の違いによる吸収の差は確認できていない。
- F.G.Donnan:農学以外の分野では"ドナン"と読み下され、生物細胞内外の電解質濃度の相違を説明した「ドナンの膜平衡(1911年に発表された)」の方が検索しやすい。
膜で仕切られた一方にコロイドのような膜を通過できないイオンを含むとき、濃度差によって透過性イオンの移動が起きても、電気的中性を満たすために不均一な濃度分布で平衡し、分布の不均一さは膜を透過できないイオンによって支配される・・・というお話。
細胞膜が単純な物理膜ではないとの考えから、重視されていないと解説される事が多いが、元来が観測された事実に対して熱力学の方程式を当てはめるだけで近似値が得られるという話であり、近年、原初の細胞膜は物理現象で生じた可能性が実験的に証明された(←リン脂質溶液に振動を与えるだけで勝手に球状に並んだ)事をあわせて見ると、功績は大きいと思う。
この種の除草剤について家庭菜園の先生方が語る「土に付いてもすぐ自然に還る」というのはまったくのガセでした。
「土に触れた成分は吸着されるので、植物に吸収されないから効果が無くなる」という意味の文章が拡大解釈されたようです。
その後に微生物による分解を受けますが、農薬登録の用件として半年で半分以下の濃度になるという以外、消失時期や分解して出来た物質の毒性は全く不明(未解明)です
また、原体の成分はアミノ酸に分類されますが、これはあくまでも化学的な定義上のもの−−アミノ基とカルボキシル基を持った化合物−−で、生物の体を構成する成分ではなく、致死量(飲んですぐ死ぬかどうか)以外の毒性も安全性も不明です。
「鱗翅目昆虫(蝶や蛾の仲間)だけががもっているアルカリ性の消化液で分解されて始めて毒性のある物質に変わる」というのはウソ!
人間も酸性の胃液を中和するためのアルカリ性の消化液(胆汁)を出しますから、もし本当なら、胃液の分泌が十分でない幼児や胃切除をした人たちはとても危険なことになります。
日本では販売されていませんが、アメリカなどでは鞘翅目昆虫ののコガネムシを殺すためのものが市販されていますし、遺伝子組換え作物(今のところ、トウモロコシ、のみ)に入っているのもこのタイプの毒を造る遺伝子です。
実際に人間に害が無いといわれているのは、死者が出て有名になった大腸菌o-157のように腸壁細胞に特異的に結合する(磁石みたいに吸い付く)タンパク質が無いために、毒性を持っていても発揮できないだけです。この特異性というのは腸壁に吸い付く確率が低いというだけなので量を多くとればとても危険です。
低いと言っても、1/1000程度なので、合成農薬と違って勝手に増えますから、1000倍に増えるのは、この細菌が2つに分裂する時間のたった10倍(2^10=1025)の時間でしかありません。
この種の毒を持ったものは、殺虫剤ではないけれども虫を殺す効果のある資材として有機農法や減農薬栽培用の資材に採用されています。
植物の活力を増して害虫への抵抗性を高めるという資材(バイオ型葉面散布剤)にも、多くの銘柄に入っています。
開発者本人が何が入っているのか判らないという「EM菌」の場合、製品ごとのばらつきが大きいために分析すら困難なのですが、2/3の確率で分離できます。(少し習えば素人でも簡単に分離できます)
この毒素を作る細菌は非常に繁殖力が強く、簡単に培養できるのでアメリカの有機農法では盛んに使われていて、20年以上連用した愛好家たちに発がんさせていた事が確認されているのですが、摂取源の多くは台所で繁殖したものという可能性が指摘されています。(→散布に従事しない人も危険)
日本でも有機農法が流行する前は、これを防止するための死菌製剤が主流でした。キャベツなどの害虫「コナガ」に対する特効薬だったのですが、新タイプの良く効く合成農薬が登場して一時駆逐されかかりましたが、有機農法の普及に伴って「化学合成では無いのでイメージが良い」という理由で(農薬の)出荷量が増えつつあります。
毒素を保ったまま殺菌するための高い製造技術が必要(ゆえに製造コストも高い)なのと、「勝手に増えてくれるので効くような気がする」という無知が手伝って新規登録された薬剤も発売され、有機農法以外の農家も生菌製剤を使うのが主流になりつつあります。
【注】食中毒によって死者を出した「病原性大腸菌o-157」の毒性物質は、大腸菌そのものが持っているタンパク質ではなくて、このタイプの大腸菌だけに寄生するファージウィルスの外殻成分だそうです。
同じ o-157 でも毒性があるのと無いのがあるとか(→寄生されていない大腸菌は安全)、
抗生物質を使うと症状が重くなる(→均衡する腸内細菌が死ぬのと、宿主が死んで外に出てくるため)などという判りにくい報道が行われたのは、マスコミ記者が理解できずに割愛されたからなんだとか。
この寄生ウィルスの外殻タンパクが”ヒト”の腸壁細胞とも親和性があった為に、牛などでは発病せず、ヒトの口から入ったときに悪さをした。
- ネタ元:農文協・発行の月刊誌、および誌面を再編集した単行本多数:
- 同様のネタの拡張版で、「展着剤は入れない方が良い」「試験場で試験する時は展着剤を使わない」などもガセ。
- 農薬の種類・作物時の生育ステージ・湿度などによって、散布液の付着しやすさが変わるため、状況に応じて加減しなければならない。
- 平成14年以降の農薬取締法改正に伴って、種々の拡大解釈から展着剤についても出荷団体ごとに指定された製品を使用しなければならない風潮が強くなり、展着剤の選定論議は消滅した。
(登録があっても、出荷先との契約などで使ってはいけない場合や、金品提供の見返りに販売額を保証する習慣などがあり、多くの場合農家には知らされていないので、指示された通りの物を使わないと出荷停止命令が出される。)
- 月刊誌「現代農業」を根拠とするデマには「展着剤はどれも同じ(値段が違うだけ)」というのもあったが、近年では鳴りを潜めている。
- 主として有機農法系の書籍は上の記述に統一されている。
- 生物学では一般に、砂漠のような乾燥気候下では葉の気孔が水分の蒸散を増すため、僅かに開いただけでも十分な二酸化炭素を取り入れられるように進化したものと紹介されている。
- 判定:ウソ
- 草刈りを途中で止めた畑で降霜があると、草を刈った場所だけ霜害が起る事がある。(程度の問題で、極めて低温であれば除草の有無を問わずに枯れる)
- ここが問題:
地被物があると日中の地温上昇が妨げられるので、取り除いて日中の地温を上げた方が夜間の地温も高くなるはず・・・という思いつきだけのものらしく、実験データに基づくものではない。
- 現実には、日中の温度上昇は夜間との温度差を大きくして作物の抵抗力を奪うため、降霜時の温度が同じでも害を受けやすくなるのと、日中の地温が多少高くなっても夜半までに冷え切って朝まで保たない。
地被物が無い場所の夜間の温度低下は激しく、概ね夜10時前には草生地の地温の方が高くなるという地温の逆転が起こる。
熱い風呂に蓋をしないで翌朝まで放置したのと、ぬるいながらも蓋をしておいた風呂とで、翌朝の水温はどちらが高いかという考察をしなければならなかったというオチ。
- 放射冷却とは、伝導・対流以外による熱の放出現象で、夜間に保温の役目をする雲が無い(=晴れる)と気温が下がり易という以外の意味は無いが、農業分野では、作物の表面温度が気温よりも低下すること…と誤解されている事が多い。
- 「気温が2℃以下になるとで降霜の恐れがある」と云うのを指して、気温が0℃以上で凍るのは何故かと尋ねられた先生が困った挙句にその場で作ったのが、「放射冷却現象」という怪説。
- 「気温」は漠然と空気の温度だと誤解さているが、本来は百葉箱内の温度と云う意味で、百葉箱の設置方法は細かく決められている。
百葉箱の周囲は草地でなくてはならないが、裸地での夜間温度は草地よりも低くなる。
また、無風時に地表付近の温度は高い場所よりも低くなるため、除草の行き届いた地表の温度は気温よりも数度低い氷点下になるのは頻繁に起こる現象といえる。
降霜時の作物付近の空気の温度は作物表面の温度と同じ氷点下になるので、余計な心配(新しい学説)は要らない。
- 小中学校の常識:枝打ちをしないと、板にしたとき節穴が出来る
- 判定:ウソ
- 幹の途中に太い横枝が出来ると、それより上の部分の幹が細くなるので、板や柱を作ろうとすると幅が足りなくなって無駄が多くなる。
枝を払った部分から下の幹は同じ速さで太るので、先端だけ残して横枝は全部取ってしまった方が良い木材原料になる。
また、年輪の間隔は狭いほど丈夫になるので、出来るだけゆっくり育てた方が良い。
- 節穴は、枯れた枝が残ると死んで柔らかくなったままの組織が巻き込まれてしまう為、板にしたとき生きていた時に硬くなった枝の部分が抜けてしまう為。
枯れ枝が残らない限り節穴は出来ない。
- ジャンル:果樹の剪定
- 過去の常識1:樹形にこだわる必要は無い
- 過去の常識2:全体を葉のような形に切るのが良い
- 最近の常識:収穫期の樹形が大事で、果実の重みが無い剪定直後の形だけ整えても無意味。
- ジャンル:果樹の剪定
- 過去の常識:同じ
- 最近の常識:整枝は、間引いて空間を空けること。
剪定は結果数を制限して1果重を大きくする摘蕾の前倒し作業。
- ジャンル:花き
- 過去の常識:播種後、年越ししてから開花するもの。(秋まきの1年草は2年草と呼ばれることもある)
栽培上の都合で変わるので、まとめて1・2年草と呼ぶ
- 最近の常識:植物生理学では、2年草は緑植物体バーナリゼーション型と呼び、開花・結実後に枯れてしまう植物のうち、発芽して一定以上の葉が出た状態で寒さに当たらないと花が咲かない植物を指す。
- ジャンル:果樹
- 過去の常識1:リンゴと書くより林檎と書いた方がかっこいい
- 過去の常識2:植物名はカタカナで書くのが習慣
- 最近の常識:「林檎」は、「りんき」と読み、リンゴの品種名。日本でも一時栽培された事がある。「りんご」と読ませるのは無理がある!
- 「りんご」は果実の種類を現す名前で、「りんごの木」と「リンゴ」は、りんご(果実)が実る植物の名前。
りんごがどんなものか知っている人は多いが、りんごの木だけを見て、りんごのなる木だとわかる人はさほど多くない。
- 英語の"apple"は果実(本来は、果実全般を指す単語らしい)だけを指し、りんごの実がなるのは”apple_tree”だしょ?
- ジャンル:果樹
- 農家の常識:全く同じ。桜桃といった方が玄人っぽくてかっこいい。
- 日本人の常識:「サクランボ」は、桜桃という植物の実
文学で「桜桃」と云えば開花の風景(樹姿)を連想させるのが普通。桜桃を栽培して「桜桃の果実」を出荷するのが農家の仕事。
- ジャンル:土壌環境
- 過去の常識:雰囲気じゃない?
- 最近の常識:「根域」は茎幹を中心にした根の広がりを指す語。
「根圏」は個々の根の断面を中心に図解したようなときに、根の表面付近を指す語
- ジャンル:分析器具
- 農家の常識:水溶液中の糖分だけ計測できる器械。糖度とは糖分含量のこと
- メーカーの常識:もともと屈折率を測る器械で、ショ糖溶液の濃度に応じた目盛りが付いているだけなので、砂糖と塩の区別は付かない。
- ジャンル:ことわざ
- 一般解釈:桜の木は切り口の直りが遅いので、切ると枯れてしまうが、ウメはいくら切っても大丈夫。
- (TVネタより)戦後間もない頃まで、造園業者も桜の枝を切ると枯れてしまうと信じていたが、ダムで水没する村の象徴であった桜の大木を移植しようとした時に、大きすぎて運べない事がわかり苦肉の策として切り縮めたが、見事成功した。
現在では、桜の樹を剪定するのは寿命を延ばすために必須の作業として定着している。
- 新しい教訓:桜は花を楽しむものなので、開花前に剪定したり、枝を折って持ち帰るのはやめましょうね。
ウメは実を食べるので、剪定をして間引いてやらないと良い実がつきませんよ。
- ある大学(失念)で検証したところ、ウメの方が傷口の直りが悪いことが判りましたとさ。
多くの桜の寿命は50年程度と云われ、数百年の樹齢に達するものは稀な存在。老木となって枝が折れた後に枯れてしまう事が多いためにできた思い込みと考えられる。
- 最近では、枯れ枝や病気に掛かった枝を中心に春先に剪定する風景がニュース材料になって居るくらいなので、ますます居心地の悪いことわざになりつつある。
- 本来は欠乏症の判定法で、増肥によって増収できる性質のものではなく、欠乏したとき影響の出やすい部位を云った物です。
表題は野菜様のもの。果樹ではリン酸が根肥でカリが実肥になります。
- リン酸とカリのページで詳述しているので、ご参照下さい。