いかがわしい晩霜害対策



 以下、霜害の常襲地帯は考慮しておりません。10年以上の周期で起こる大被害と例年数回程度の微小被害のレベルを対象にしています。
 また、平均気温が5℃以下となるような時期(概ね4月以前)の降霜も対象にはしません。

 指導書などにみられる耕種的対策には、除草・中耕して日中の地温を上げなさいと書いてあありますが、現実の圃場で実行した所では被害が増大しています。
 途中で除草を中止した晩に降霜が起きたような場所ですと、除草部分だけ線を引いたように枯れて明瞭な差を見ることが出来ます。(野菜・果樹とも)

 日中の地温が上がれば、夜間の地温が下がるのも遅いだろうという「想像(考察と云うらしい)」が唯一の根拠だそうですが、想像よりも現実に観測された事を優占するのが科学です。

 この現象に対して、

 等の理由を与えることも可能ですが、これも想像の一種です。


 指導書類でみる霜害を起こす危険のある温度は、被害を受ける部位での温度(-1〜4℃)を例示したものと、気温(+1〜3℃)を例示したものが存在します。
 氷点下にならない温度で凍結の害が起こるのは不思議な感じでしょうが、「気温」というのは、単なる空気の温度という意味ではなく、百葉箱の中の温度という意味です。もちろん、百葉箱さえ置けば高層ビルの屋上でも、建物の北側(日陰)でも良いという訳ではなくて、周囲何メートルを芝生にしろとか、地上何メートルに置けとかのの設置基準に沿っていなければなりません。
 夜間の温度低下は草地に比べ裸地で著しいため、危険温度も2〜4℃高くなって氷点下ではなくなっています。0℃より高くても凍結の害があるわけではないので、うっかり間違えないようにね。

追加:有機農法系の書籍に見られる似たような誤解に、0℃以上の温度で水を凍らせる特殊な細菌がいるというネタ。引用元を当たったところ、確かに「高温でも凍結する」と云う文章があったのですが、「−5℃は、−6℃より高温である」と云う意味の「高温」を「0℃以上」と、誤って書き換えたみたいです。

【指導者の皆様へ】
 被害を起こす指標になる温度は、作物の表面温度なのですが、「気温」と「作物付近の空気の温度」や「作物の表面温度」の違いに注意して下さい。
 表面温度の測定には特殊な温度計が必要ですが、付近の空気の温度も全く同じなので、普通の寒暖計で構いません。
 「気温」の定義が、「規格通りに設置された百葉箱の中の温度」なので、この設置規格と違う地面が露出したような場所ではもっと低くなる点だけが重要です。
 けっして、サーミスタ温度計のような無駄なお買い物をなさいませんように。

【観察の注意】
 下草の有無が気温に影響するのが観察できるのは、降霜のあったときに多く、下草が繁茂した園の方が概ね2℃高くなりますが、降霜の無い日の気温には違いが見られないことがあります。

【大後美保:新編農業気象学通論.75-76pp.(1982)】より引用
小麦:低温に遭遇したとき、上葉・下葉・穂・茎幹・節間の順に凍り、葉・穂の凍害を起こす温度は−5℃、茎間で−3〜4℃。 クワ:完熟した葉では−4.2度で2時間 カンキツ:果実・葉・枝幹の順に強く、−1〜2℃でも長時間なら被害を受けるが、−5〜6℃でも短時間なら被害を受けない

【長野県:果樹指導指針.299-301pp.(1991)】より抜粋。
種類色の着いた蕾開花中小さい幼果
リンゴ-3.9-2.2-1.7
モモ-3.9-2.7-1.1
ウメ-3.9-2.2-1.1
はたんきょう-3.3-2.7-1.1




 降霜のメカニズムについても、高気圧に覆われて夜間の上空が晴れた為に起こる「放射冷却現象」や「無風状態が作る気温の逆転層」が原因に揚げられています。

 過去30年間の当園に限ると、夜間に晴れて無風になっただけで被害が起きた事は無く、晩霜の被害があった日には必ず、日の出後もしばらくの間、気温が下がり続けるのが観測できます。

 日の出後も気温が下がり続ける様な現象が夏に起こると、「今日の最高気温は日の出前に記録されたものです」というニュースになることがあります。
 もともと夜間温度の低い冬〜春は、さずがに日中の気温の方が高くなるのですが、日の出と共に気温は上がらない事もあることだけ押えておきましょうね。  このような時には、北からやって来る冷たい空気の塊が、一気に気温を下げているわけですが、これに高気圧を伴って晴れてしまうと、放射冷却だの逆転層だのと言うのが重なるのですが、そうで無い限り、晴れただけで降霜害は起きないのではないだろうか・・・というのが、指導に胡散臭さを感じる場所です。

 「三寒四温」と云う成句があって、「え〜!まだ五寒二温じゃね〜の」などといった言葉遊びを耳にした方もある事でしょう。ここでは足して「7」になると云うのが重要で、「日曜日の度に雨が降る」様な現象も同じ原因によるものだそうです。
 時々勘違いしている方もおいでの様なので補足しますが、寒い日と暖かい日が交互に訪れると言う意味ではありませんよ。
 特定の地域の気温に限ると、少しづつではなくて、いきなり暖かい日がやってきて数日続き、急にまた寒くなるのが7日周期で続くのが実際の天気です。
 過去千年以上に渡って7日の周期で地球を1周しながら、北極付近から吹き込んでくる冷たい空気の塊(寒気団)がこの周期を作っているのだそうです。
 もちろん、北極から日本までは長い道のりですから、途中に邪魔をする連中(気団)がいれば向きが変わって日数がずれることもありましょう。冬季と梅雨は3日くらい簡単にぶれるので、教えられるまでそんな規則性があることには気付きませんでした。
 初めは「何でずれないのだろう」と思ったものですが、風を作るのは太陽の光で、太陽の光が昼と夜を作っているので、風に日数ベースの周期ができてもおかしくないし、昼と夜の繰り返しで日数を数える限り、端数ができて0.1日ずつずれたりすることもないということでしょうか?

 このように、特定の場所での気温(日平均温度)が徐々に変化するというのではなく、暖気団と冷気団(大気の塊)が移動することで急激に変化するのが気象変動の主な原因です。




 結露があった場合、結露直後の水は純水に近いため、凍結しやすい水分になります。
 作物体内の水分は、様々な物質を溶かし込んで凍り難くなる「凝固点降下」と呼ばれる状態になっていますが、本来凍らないはずの温度でも氷核(氷の細片)が存在すると、「染み」が拡がるように氷のエリアが広がっていく現象が起こります。これを「氷核活性」と云い、何種類かの細菌がつくる代謝物が氷片と同じように凍害の起こる温度を高くする事が発見され、「氷核活性細菌」と呼ばれるようになりました。

 一時期、「氷核活性細菌」の密度を下げるために殺細菌剤の散布が検討された事もありますが、農薬の使用になるわけですから、現状では凍害防止の目的で登録が無いと違法になります。




摘蕾と霜害

 一般の指導要領では、霜害は個別に対応すべきもので、他の作業との関連は考えない事になっていますが、趣味ではない「営利」を目的とした経営である限り防霜コストを考慮すべきです。

 低温感受性(低温で被害を起こす程度)の変化に付いて、多くの農家は、開花期に一番弱くなると思い込んでいますが、実際には生育ステージが進むほど低温に弱くなります。
 殆どの場合、春先は日が経つにつれて気温も高くなるので、遅く咲かせるほど低温の害に遭い難いというだけのことです。

 モモ等の摘蕾をする樹種では一般に、大きな芽を残すように指導されていますが、大きな芽というのは開花時期がが早い訳ですから、一番被害を受け易い芽です。
 花芽が3つ並ん複芽の場合、葉芽になるはずだった真ん中の花が一番先に咲きますから、変形などの異常果の割合が高いのも摘蕾で落とす理由になります。




きっかけの事件

 近所のブドウ園で、夕方から園の半分だけ機械除草して日暮れとなったところに降霜が起こり、園の半分だけ綺麗に枯れてしまった事がありました。
 枯れたのは除草した部分の直上で、枯れた範囲は境界の30cm未満でした。

 この事例で検討すべきなのは以下の点です。

 考えられるのは、下草に結露して凍った時に発生する潜熱の効果で、繁茂の量が多いほど結露の量も多いので、潜熱の解放が役に立ったのではないかという事。